一級建築士と二級建築士の違い
この2つの資格は、取得までにかかる時間や難易度のほか、手掛けることができる業務の範囲なども異なります。
この記事では、一級建築士と二級建築士のさまざまな違いについて紹介します。
一級建築士と二級建築士の仕事内容の違い
一級建築士と二級建築士では、扱える建物の範囲が異なります。
二級建築士は、延べ床面積500平方メートル以下の建物に限って設計や工事監理を行える一方、一級建築士にはそのような制限は一切なく、どんな規模の建物でも手掛けることが可能です。
一般住宅であれば、よほどの大邸宅でもない限り500平方メートルを超えることはありませんが、マンションやオフィスビル、商業施設などの設計に携わるなら、まず間違いなく一級建築士資格が必要です。
おおまかにいえば、戸建住宅を設計したいなら二級建築士で構いませんが、それ以外の建物も幅広く取り扱いたいなら、一級建築士の資格取得まで目指す必要があるでしょう。
なお、将来的に独立を考えている場合であっても、必ずしも一級資格でなければいけないわけでなく、二級建築士として事務所を運営している人も珍しくありません。
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一級建築士と二級建築士の受験資格・免許登録要件の違い
一級建築士と二級建築士では、試験の内容も異なれば、建築士免許を登録するための受験資格や免許登録要件も異なります。
二級建築士の受験資格・免許登録要件
二級建築士試験を受けようとする場合、大学・短期大学・高等専門学校の建築学科などで専門科目を履修した人については、卒業後すぐに受験資格が得られます。
また、合格後は実務経験不要で免許登録が可能です。
高等学校と中等教育学校で建築を学んだ人についても、二級建築士試験はすぐに受験できますが、免許登録にあたって2年以上の実務経験が必要です。
もうひとつ、「実務経験7年以上」という条件を満たすことでも二級建築士試験を受けることが可能です。
1階または2階建てで、延床面積300平方メートル以下の木造建築物についての設計を行える「木造建築士」についても、受験資格や免許登録要件は二級建築士と同様です。
一級建築士の受験資格・免許登録要件
一級建築士については、より資格を得るためのハードルが上がり、どんな学歴であっても最低でも2年間の実務経験が必須です。
ただし、令和2年度の改正建築士法の施行によって、実務経験は試験受験時には求められず、免許登録の前までに積んでいればよいことになりました。
大半の人は、いきなり一級建築士資格を目指すのではなく、まず学校を卒業した後に二級建築士資格を取得し、働きながら一級建築士資格の勉強に励むようです。
なお、二級建築士の資格を持っている人は、学歴は関係なく一級建築士の受験資格が得られます。
ただし、その場合には、免許登録には4年以上の実務経験が必要です。
一方、木造建築士として何年働いても、一級建築士の受験資格は得られない点には注意する必要があります。
一級建築士と二級建築士の資格の難易度の違い
一級建築士試験、二級建築士試験ともに、試験は「学科」と「設計製図」の二段階選抜で実施され、学科試験を突破した受験者だけが設計製図試験に進むことができます。
双方の試験を突破した最終合格率は、二級建築士試験で25%前後、一級建築士試験で10%前後となっています。
また、二級建築士試験を受験する人の大半は実務経験のない学校卒業間もない人であるのに対し、一級建築士試験の受験者は100%設計事務所などで働いている実務経験者であるという違いがあります。
これらを勘案すると、試験問題自体の難易度は、二級より一級建築士試験のほうがはるかに高度であるといえるでしょう。
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一級建築士と二級建築士の学校・学費の違い
二級建築士の資格勉強は大学や専門学校などで、一級建築士については働きながら勉強することが一般的です。
ただ、一級建築士、二級建築士ともに、資格学校や予備校などで初心者向け・経験者向け、Web講座・通学講座といった、個人の事情に合わせて選べるさまざまなコースが開講されています。
資格取得のためには、大学や専門学校などの建築学科に進学することが最も有力なルートであるものの、それ以外の人にも建築士について学ぶ方法は多様にあるといえるでしょう。
社会人としてすでに他業界で働いている人のなかにも、終業後に予備校に通って建築士資格取得を目指している人は大勢います。
学費について見れば、各学校やコースによってかなり幅がありますが、二級建築士で20万円~60万円前後、一級建築士で30万円~80万円前後となっており、専門性が高い分、一級資格のほうが費用がかかります。
一級建築士と二級建築士の給料・待遇の違い
会社員として働く場合の建築士の給料は、勤務先によって差がありますが、二級建築士の年収は440万円~520万円、一般建築士は年収600万円~700万円程度が相場のようです。
一級建築士の登録には一定年数の実務経験が必要であるため、そもそも資格保有者の年齢層は一級のほうが高いという事情もありますが、それでも保有資格による待遇差ははっきりしているといえます。
独立する場合は、営業力や経営者としての手腕も問われるため一概にはいえませんが、取り扱える案件の幅が広く、また一件当たりの単価も高い分、やはり一級建築士のほうが高給を得やすいでしょう。
開業している一級建築士のなかには、会社員の何倍、人によっては何十倍もの高給を得ている人もいますが、一方で十分に案件を受注できず廃業して企業に就職する人もいます。
一級建築士と二級建築士はどっちがおすすめ?
資格取得の難易度、扱える建物の幅広さなどから考えると、二級建築士よりも一級建築士のほうが優れているといえるかもしれません。
しかし、住宅の設計を専門に行いたい人にとっては、一級資格はそもそも不要です。
あくまで手掛けたい建築の方向性によって資格が異なると解釈すべきでしょう。
ただし給料などの待遇面には明確な差があるため、高収入を得たい人は、一級資格を目指したほうがチャンスが大きいのは間違いありません。
また、昨今は戸建住宅の需要が落ち込み、それに代わってマンションが非常に人気を集めている影響もあって、二級建築士が手掛けられる案件は減少しつつあります。
リフォーム案件などもあって、二級建築士が活躍できるマーケットは十分に残されていますが、安定的に働きたいなら努力して一級建築士を目指したほうがよいかもしれません。
「一級建築士と二級建築士の違い」まとめ
一級建築士と二級建築士は、手がけられる建築物に違いがあります。
資格の難易度としては一級のほうがだいぶ高く、まずは二級を取得してから一級を目指す人もいます。
免許登録までにかかる時間も変わってくるため、将来どのように働きたいかをよくイメージして、進学先を選ぶとよいでしょう。