建築士に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
ここでは、建築士に向いている人・適性・必要なスキルなどをご紹介します。
建築士に向いている性格・適性
美的センスがある人
建築士は建物の形状、用いる材料、外装や内装、それぞれの箇所の色合いなど、ありとあらゆることを決定しなければなりません。
単調になりすぎないよう、ところどころにアクセントを加えつつも、建物全体を違和感なく調和させるには高い美的センスが必要になります。
このため多くの建築士は、常日頃から海外の著名な建築物を訪れたり、美術館で絵画や陶芸などの芸術作品を鑑賞したりして、自身のセンスを磨き続けています。
美しいデザインが好きだったり、学生時代に美術などが得意だった人は、建築士に向いているかもしれません。
理科や数学などの理系科目が得意な人
建築士の仕事には、あらゆる理系の知識が必要です。
また、構造を計算して必要な強度を確保することも重要な作業ですから、仕事で数学を用いる頻度もかなり高いといえます。
このため、物理、化学、生物、地学、数学など、理系分野へ幅広く関心を持てる人が、建築士に向いているでしょう。
正義感がある人
日本で建物を作る際には、建築基準法という法律に則った設計・施工を行わなければなりません。
定められた項目は多岐にわたりますが、たとえば大地震が発生しても建物が倒壊しないための「耐震強度」などがあり、一つでも基準に満たない項目があれば「違法建築」となってしまいます。
かつて国内では、名の知れた一級建築士が耐震強度を偽装して建物を建てていたことが発覚し、社会全体を揺るがす大問題となったことがありました。
建物の安全性を確保し、そこで暮らす人々を守るという使命を担っている建築士にとって、偽装は決してあってはならないことです。
建築士という仕事に就く上では、社会的責任をまっとうできる正義感の強さが求められます。
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建築士に必要なスキル・能力
建築士としての基礎スキル
- 設計製図スキル
- 建築基準法や都市計画法などの法律知識
- 各材質の強度などの構造知識
- 工事現場での監督方法
これらは建築士試験の受験科目となっており、建築士の資格を取得できた時点で、ある程度の基礎能力は身についているはずです。
実務に必要なパソコンスキル
近年では建築士の仕事もパソコンによる作業が必須となっており、とくに設計製図作業においては「CAD」と呼ばれる製図専用ソフトを使いこなせなければ仕事になりません。
おまけに、CAD操作は建築士試験の範囲外ですので、試験勉強とは別に各自で扱い方に習熟する必要があります。
職場によっては、お客さまに対して設計内容をわかりやすくプレゼンするために、パースなどを駆使した3D図面の作成まで求められるケースもあります。
また、図面以外でも見積りを作成したり、工事実行予算の管理を行うためにはエクセルなどの表計算ソフトが必要になるため、基礎的なパソコンスキルは一通り身につけておくことが望ましいでしょう。
実務に必要なアナログスキル
パソコンの各種スキルが不可欠である一方、実際にお客さまと接するようになるとアナログスキルも必要になります。
手書きのパースや間取り図がその代表的な例で、お客さまとの打ち合わせのなかで、フリーハンドで図面などを書き、即興のイメージを伝える機会は頻繁にあるでしょう。
また、設計コンセプトを伝えたり、デザインの特徴などを説明するには、図面やパースだけでなく文章を加えたほうがより伝わりやすくなりますから、文章作成能力があるとなおよいでしょう。
建築デザインの学び方
まずは「建築の基本」が何より大切
どんなことにもいえることですが、物事を学んだり習得したりするには「基本」が大切になります。
「基本」なくして応用はありませんし、「基本」を飛ばしてしまうといくら才能があってもいずれボロが出たりほころんだりするものです。
「デザイン」というと才能だけでできると思われがちですが、とくに建築デザインについては基本を知らずにできるものではありません。
なぜなら、建築はデザインのみを優先すればいいわけではなく、建築物の機能や強度、さらには法的な規制を満たした上ではじめて実現するものだからです。
せっかくよいデザインができたとしても、機能や強度が伴わなかったり、規制をクリアーできなかったりすれば、それこそ「絵に書いた餅」となってしまいます。
建築デザインをするには、まず「建築の基本」を知ることが大切です。
色彩感覚や質感の養い方
色彩感覚や質感は建築デザインの中でも重要なウェイトを占める要素ですが、どうやって磨くのでしょうか。
こちらもまずは基本が大切です。色彩の組み合わせの基本は建築の学校でも学びますが、本当に基礎的なことしかやりませんから、実務でこなすためには自分で学習する必要があります。質感についても同様です。
その上で重要なのは、さまざまなものを見ることです。
街を歩けば建築物は山ほどあります。そのなかには、すてきなデザインのものもあるでしょう。
外構のまとまりのよいお家、外壁の組合せが上手なお家、窓の位置や屋根の形がカッコいいお家など、外から見るだけで学べる点はたくさんあります。
店舗や事務所に関しては内部を見ることができますので、そこからデザインを学ぶこともできます。
最近では公共施設でもデザインのよいものがありますから、学ぶ機会はますます増えているといえるでしょう。
デザイナーは虫の目よりも鳥の目
建築デザインをするに当たって、気をつけるべきことがあります。それは視野を広く持つこと、つまり「鳥の目」を持つことです。
たとえば、とてもすてきな材料があったとします。色も質感も申し分なく、予算的にも取り入れられるものだとしましょう。
そうなるとついつい、その材料のことばかりを考えてしまい「虫の目」となりがちですが、全体との調和が取れて、はじめてその材料が生きるものです。
この場合の「全体」とは、その材料を使う空間だったり場所だったりもしますが、設計コンセプトからも外れていないことが大切です。
これを無視して虫の目で設計すると、全体を見た時にちぐはぐ感というか違和感を覚えることがあるため、気をつけなくてはなりません。
設計やデザインをしたら、一息入れて全体を眺めるようにしたほうが、最終的に上手くまとまることが多いのです。
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建築士に向いていないのはどんな人?
空間把握が苦手な人
建築士は、2次元で書かれた図面から、実際の3次元でのできあがりを想像しなければなりません。
うまくイメージできないと、施主の希望とかけ離れた建物になりかねませんから非常に重要な能力といえますが、平面図から立体的な空間を把握することは人によって得手不得手が大きいでしょう。
自分中心の人
建築士は、理系の知識が多数問われる専門職であるものの、研究職などとは異なり、お客さまと直に接することの多い職業です。
極端に愛嬌をふりまく必要はありませんが、あくまでお客さまあっての商売であり、コミュニケーション能力は重要です。
人付き合いが苦手で、自分中心の人は建築士として活躍しにくいかもしれません。
高所恐怖症でも建築士になれる?
建築士でも高い所には登る
建築士の仕事は設計図を書くことだとイメージされることが多いですが、それ以外にも、設計図どおりに施工が進んでいるか監理したり、現場監督業務を行ったりと、工事現場に出向くことが多くあります。
当然、工事現場に行けばさまざまな部分の確認をするのに高いところに登る必要が出てくるため、高所恐怖症の方にとってはこのことが一番、建築士を目指すのにネックに感じてしまうかもしれません。
しかし、高所恐怖症の度合いにもよりますが、大抵の人はこれを克服しています。
高所恐怖症でも建築士の仕事が務まるか?
軽度の高所恐怖症の方のうち、ほとんどの人は慣れることでそれを克服できています。
高所恐怖症であるといっても、建築の工事現場では安全管理として足場があったり安全帯を装着したりするため、よほどのことがない限りは墜落や転落が起きないものですし、それらを起こさないように現場管理のほうできちんとしているものです。
重度の高所恐怖症であっても、足場の手すりにしっかりつかまって動けば、それほど怖いものではありません。
とくに現在では、足場の周りに囲いがあって外の景色がさほど見えませんから、恐怖感も少なくなっています。
完全に克服するのは難しい場合がありますが、苦手だとしてもやってやれないことはないレベルにまで慣れていくケースはあります。
高所恐怖症の方向け現場確認マニュアル
それでも高所恐怖症が気になるのであれば、以下の点に注意するとよいでしょう。
・足場がしっかりと整備されたところを選ぶ
・足元が整理されている場所を選ぶ
・手すりなどのとっさにつかまる場所があるところを選ぶ
・安全帯を着用する
・靴底が滑りにくい靴を履く
・動きやすい格好を心がける
・不安定な体勢は避ける
・屋根の上など、どうしても無理なところは写真などで確認する(ズームや職方さんにお願いするなど)
建築士に向いている性格・適性のまとめ
建築士に向いている性格や適性はいくつかありますが、これらは自分自身の努力によってカバーできるものも多いです。
建築士に必要なことをしっかりと調べ、苦手なことがあれば今のうちから意識しておくと、克服できるでしょう。