グラフィックデザイナーは自分よがりにならないことが大切(体験談)
クライアントと消費者の橋渡し
グラフィックデザイナーをひと言で表現すれば、「他人に、上手にものを伝えられるスペシャリストであれ!」ということです。
グラフィックデザイナーの仕事は、自分の個性や主張を画(え)にすることではなくて、第1に、クライアントの意向をよく聞いて分析し、プロとしてもっとも効果的な表現手法を導き出すことにあります。
第2に、その表現手法によって描いた作品が、消費者にも良く伝わっていくかを客観的に判断することにあります。
どんなにすぐれた作品でも、人にきちんと伝わっていなければ広告としての役割は果たせませんし、本の装丁やイベント演出の仕事を請け負っても、内容や主旨を正しく伝えることはできません。
私たちグラフィックデザイナーは、クライアントの代弁者であり、消費者とのあいだに立って、橋渡しをする役目であることを忘れてはいけないのです。
自分よがりにならない
昔、ある有名なアーティストのセミナーに参加したときに、「技術も資格も時間も才能も、人のために愛情をもって大切に使え」という主旨の話を聞いたことがあります。
私はそのひと言に、ものすごい衝撃を受けました。当時の私は、「自分が、自分の、自分で」といった意気込みだけで仕事をしており、それこそがグラフィックデザイナーでありアーティストだと思い込んでいました。
油絵や水彩画を描く芸術家でさえ、画商や画廊の意向を無視して絵を描くことは、ほとんど許されていません。
もちろんどんな絵を描くかは画家の勝手ですが、そのような作品には、買い手が付かないことが多いのです。
画商はそれをよく知っているので、人気のある題材やタッチを画家に求めます。
このように、画家でさえ意向を汲んで作品づくりに立ち向かっている時代に、駆け出しのグラフィックデザイナーに過ぎない自分が、あまりにも偉そうではないかと気づかされた次第です。
グラフィックデザイナーは、商業デザイナーとも呼ばれるように、人様の商いをたすけるために広告やデザイン制作を行う職業です。みなさんも「伝える」ことの大事さ忘れず、クライアントや消費者に喜ばれる作品をつくりつづけてください。