不動産鑑定士と宅建の違い
不動産鑑定士と宅建(宅地建物取引士)の仕事内容の違い
不動産鑑定士と宅建資格は、どちらも不動産に関する代表的な専門資格ですが、仕事内容は明確に異なります。
不動産鑑定士は、国や地方自治体、裁判所、銀行、あるいは一般の個人などから依頼を受けて、不動産の価値を評価する鑑定業務をおもな仕事にしています。
一方、宅建は、不動産の売買や賃貸などの取引を仲介する際に必要となる資格で、顧客に物件を紹介したり、契約書を作成したりすることがおもな仕事です。
両者の違いはそれぞれの資格に認められた独占業務にも端的に表れており、不動産鑑定士は「鑑定評価」が独占業務である一方、宅建は取引時に義務付けられている「重要事項の説明」が独占業務です。
ただし、収益物件の取引をはじめとして、両者が連携してひとつの案件にあたるケースも珍しくはなく、お互いの業務は密接に関係し合っています。
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不動産鑑定士と宅建のなる方法・資格の違い
不動産鑑定士も宅建も、国家試験を受けて合格した後に、それぞれの資格を登録することで業務を行えるようになります。
ただし、不動産鑑定士試験は択一式、論文式の2回の試験を受けなければならないのに対し、宅建試験は択一式1回のみの試験であることが異なります。
さらに、登録するための条件も大きく異なり、不動産鑑定士の場合、1年~2年にわたる研修を受講したうえで、「修了考査」と呼ばれる最終試験を突破しなければなりません。
これに対し宅建資格の登録実務講習はわずか2日間ですみますし、2年間の実務経験があれば講習自体が免除されます。
両者の資格を比較した場合、不動産鑑定士のほうが、宅建資格よりも働き始める前にいくつもの段階を踏まなければならない点が特徴的といえます。
不動産鑑定士と宅建の資格の難易度の違い
不動産鑑定士試験は、司法試験、公認会計士試験と並ぶ文系三大試験に位置付けられており、きわめて難易度が高いことで知られています。
択一式、論文式の双方を突破した最終合格率は毎年2~3%程度であり、近年はやや上昇傾向にあるものの、それでも5%前後の狭き門です。
一方、宅建試験の合格率は例年15%ほどで、難関といえる数字であることに変わりはないものの、不動産鑑定士と比べるとかなり難易度は低いといえます。
必要となる勉強時間を比較しても、不動産鑑定士は2000時間が目安とされている一方、宅建は400時間と5分の1ほどです。
さらに、合格後に必要な研修期間の差を踏まえると、不動産鑑定士のほうが、宅建よりもはるかに長期的なビジョンに立って取り組まなければならない難関といえるでしょう。
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不動産鑑定士と宅建の学校・学費の違い
不動産鑑定士・宅建ともに、学歴などの受験資格はなく、どこか特定の学校に通わなければいけないというわけではありません。
しかし、試験の難易度を考えると、不動産鑑定士については資格の専門学校や予備校に通って集中的に勉強することが望ましく、試験勉強のために仕事を辞める人も少なくありません。
ただし、経済的事情などで仕事を辞められない場合は、通信教育を利用して長期的に自宅で学習するという選択肢もあります。
これに対し宅建は、専門学校などに通う人はどちらかというと少数派で、自宅で学習するケースが一般的であり、仕事と勉強を両立させることは比較的容易です。
市販のテキストなどで対策し、ほとんど独学で宅建試験に合格したという人も大勢います。
学費などを含めた経済面を比較すると、不動産鑑定士のほうが宅建より負担が重くなってしまうケースが多いでしょう。
不動産鑑定士と宅建の給料・待遇の違い
不動産鑑定士の給料は、勤務先によってかなり差がありますが、年収600万円~700万円が相場といわれており、一般的サラリーマンよりもかなり高給となるケースが多いようです。
外資系企業に勤めたり、独立開業して自分の事務所を経営している人のなかには、年収1000万円を超えている人もおり、難関資格に見合った収入が期待できるといえます。
一方、宅建資格保有者は、基本的に不動産会社で働く会社員としての年収に資格手当が付与される程度であり、年収にして450万円~600万円前後がボリュームゾーンです。
ただ、宅建資格の需要が強い仲介系の不動産会社は、月々の営業成績によって成果報酬(インセンティブ)が支払われる給与体系のところが多いため、実力次第ではより高収入を得ることも可能です。
それでも、宅建資格保有者が不動産鑑定士の給料を上回るケースはまれであり、不動産鑑定士のほうが高給となりやすいことは間違いありません。
不動産鑑定士と宅建はどっちがおすすめ?
不動産鑑定士と宅建資格の双方を比べた場合、特筆すべきはその取得難易度の差です。
不動産鑑定士を目指すならば、長期的な学習計画を立てて、どっしりと腰を据えて取り組まなければならない一方、宅建資格はそこまで構える必要はなく、比較的気楽に資格取得を目指すことができます。
したがって「この仕事で一生食べていく」という明確なビジョンが定まっており、長く厳しい勉強に耐えるだけの覚悟と経済的余力があるなら、不動産鑑定士を志望したほうがよいでしょう。
反対に、自分が不動産業界に向いているのか、いまひとつ確信がもてなかったり、あるいは今ある仕事を続けながらムリなく勉強したい場合には、宅建を目指したほうが無難です。
少々遠回りになりますが、まず宅建資格を取得し、不動産業界でのキャリアをある程度積んでから、万全を期して不動産鑑定士試験に挑むプランも考えられます。