弁護士の仕事内容とは? 民事事件・刑事事件での役割の違いなども解説
具体的な業務内容は、私たちの身の回りで起こる争いに関する民事事件や、警察が介入し刑法上の犯罪が対象となる刑事事件を担当します。
弁護士の役割は法律の専門家として、人々の生活をサポートするとともに、不正が行われることのないよう社会を監視し、誰もが安心して暮らせる世の中を構築していくことです。
ここでは弁護士の業務内容や役割などの仕事内容について詳しく解説していきましょう。
弁護士の仕事とは
弁護士は、司法試験を突破して国家資格を取得した法律の専門家であり、人々からの法律相談に乗ったり、依頼人に代わって相手方と交渉したり、裁判で争ったりすることが主な仕事です。
私たちが暮らす日本は「法治国家」であり、多くの人々が快適かつ安全・安心に暮らし、また円滑に経済活動を行うためにさまざまな法律が整備され、それに基づいて国家が運営されています。
しかし、個々の権利や心情、利害関係などは複雑に絡み合っているため、たとえ望まなくても、法的トラブルに巻き込まれる可能性は誰にでもあります。
そうした問題が発生した際に、法律知識を駆使して事態の解決にあたるのが弁護士であり、扱う案件は民事事件と刑事事件の2種類に大別できますが、どちらも依頼人の利益を守ることが役割です。
弁護士法において「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」が使命であると記載されている通り、弁護士はまさに社会正義のために働く職業といえるでしょう。
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弁護士の業務の内容
民事事件に関する業務
民事事件は、個人間や法人間など、私たちの身の回りの生活上で起こるさまざまな争いに関する事件です。
- お金を貸したのに返してくれない
- 離婚や相続で揉めた
- 交通事故に遭った
- 医療ミスが疑われる
など、案件の種類は多岐にわたります。
民事事件における弁護士の業務も、問題の深刻度合に応じてさまざまであり、法律についての助言だけで片付く場合もあれば、代理人として書面を作成したり、相手方と交渉を行ったりすることもあります。
話し合いでの解決が難しければ、最終的には訴訟を起こして裁判に持ち込み、法的手段での決着を図ります。
民事裁判における業務は、まず依頼人の希望を聴取すること、次に事実関係を調査して、依頼人に有利となる書類や証言などを集めること、そして裁判で依頼人の弁護を行うことです。
テレビドラマなどでは、よく法廷で熱弁をふるうシーンがクローズアップされますが、実際の民事裁判はもっと事務的であり、弁護士の仕事も証拠集めなどの準備作業が大半を占めます。
裁判によっては、訴状を提出して次回の期日を決めるだけで終わり、10分程度で閉廷となることも珍しくありません。
刑事事件に関する業務
刑事事件は、警察が介入し、刑法上の犯罪が対象となる事件で、
- 暴行
- 傷害
- 器物破損
- 窃盗
- 詐欺
- 脅迫
- わいせつ
- 賭博
など、さまざまな種類があります。
刑事事件における弁護士は、罪を犯した疑いのある人(被疑者)や、罪を犯したとして検察に起訴された人(被告人)の代理人となり、事件を調査したり、検察官を相手に弁護活動を行ったりすることが仕事です。
弁護士といえば刑事事件を担当しているようなイメージをもつかもしれませんが、刑事事件を手掛ける弁護士は少数派です。
これは、警察官や検察官が、事件関係者などを強制的に調べられる強い権限を持っている一方、弁護士にはなんら捜査権が与えられておらず、事件の調査や証拠集めが非常に難しいことが影響しています。
また、被疑者や被告人の多くは、知り合いに刑事事件を得意とする弁護士がおらず、金銭的余力に乏しい人も少なくないため、裁判所が選定した「国選弁護人」に頼るケースが目立ちます。
しかし、憲法には「誰もが公平に裁判を受ける権利がある」と明記されており、罪の重さに対して不当な量刑が課されたり、えん罪が発生したりすることを防ぐため、弁護士の働きは極めて重要です。
民事事件と比較すると、法廷で発言する機会も多くなりますので、刑事事件を扱う弁護士が少ないからといって、民事事件より仕事のやりがいが劣るというわけではありません。
さらに、近年では裁判員裁判制度が導入され、法律知識を持たない一般人に対しても、裁判の争点や被告人の言い分などをわかりやすく伝える力が求められるようになっています。
刑事事件を扱う弁護士は、民事事件を手掛ける弁護士とは求められるスキルがやや異なるといえるでしょう。
弁護士の役割
法律は、私たちの自由や権利などを保障しており、お互いの権利と権利がぶつかり合ったときには、その権利の範囲を調整するという機能も有しています。
民事事件をどのように解決するかということや、刑事事件の被告人に対してどのような刑罰を科すかということも、すべて法律に基づいて行われます。
しかし、法律は六法をはじめとして非常に分量が多く、またその内容も極めて複雑で、一般人が理解することは困難です。
弁護士は、法律の専門家として人々の生活をサポートするとともに、不正が行われることのないよう社会を監視し、誰もが安心して暮らせる世の中を構築していくことが役割です。
法律相談や代理人業務だけでなく、人権を守るための啓蒙活動を行ったり、講演会を開催したり、企業や地上公共団体の顧問になったりと、弁護士はさまざまなフィールドで活躍しています。
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弁護士の仕事の流れ
弁護士の仕事は、トラブルや悩みを抱えた依頼者から法律相談を受け付けるところからスタートします。
問題の内容や原因、依頼者の要望、相手方の主張などを整理して、まずは当人だけで解決できるよう法的なアドバイスを行います。
それだけでは事態を収拾することが困難であると判断される場合、弁護士は依頼人と代理人契約を結び、相手方と示談交渉を行ったり、最終的には裁判を起こして法廷で争ったりします。
すぐに相手方と合意して和解が成立することもあれば、何年間もかけて高等裁判所や最高裁判所で戦うケースまでさまざまです。
問題が解決したり裁判が結審したりすると、依頼人から弁護報酬を受領して弁護士の一連の業務は完了となります。
弁護士の勤務先と仕事内容の違い
弁護士の勤務先の種類
弁護士は、法律事務所に勤める人が圧倒的多数を占めます。
しかし、ひとくちに法律事務所といっても、それぞれに異なったカラーがあり、事務所の大きさも対象顧客も得意とする分野もさまざまです。
有名事務所としては、
- 西村あさひ法律事務所
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所
- 森・濱田松本法律事務所
- TMI総合法律事務所
- 長島・大野・常松法律事務所
があり、これらは5大法律事務所と呼ばれます。
数百人の弁護士を抱え、大規模に事業を展開している弁護士法人もあれば、弁護士は代表者一人だけで、債務整理や相続など、特定分野だけに限定して事業を行っている小さな事務所もあります。
また、弁護士過疎地をなくすために日弁連が運営しているひまわり公設事務所や、国が出資している法テラスといった組織も有名です。
さらに、法律事務所以外にも、一般企業や中央省庁、地方公共団体に就職する人もおり、近年は会社員や公務員として働きつつ資格を生かす「組織内弁護士」も増加傾向にあります。
そのほか、大学や大学院に勤めるケースもあり、弁護士の勤務先はさまざまな選択肢があるといえるでしょう。
法律事務所で働く弁護士
法律事務所で働く弁護士の仕事としては、まず法律相談が挙げられます。
時間単位の報酬で、一般市民からの相談に応じる事務所もあれば、顧問契約を締結している企業からの相談のみに応じるという事務所もあり、そのスタイルはさまざまです。
抱えているトラブルを解決するために、アドバイスだけでなく法的対応が必要と判断される場合は、依頼者と代理人契約を締結し、各種書類を作成したり、示談交渉を行ったり、損害賠償を請求したりします。
相手方との話し合いで決着がつかない場合は、訴訟手続きを行って、法廷で争います。
なお、裁判というと、ドラマなどでよく取り上げられる刑事裁判のイメージが強いかもしれませんが、実際は民事裁判を手掛ける法律事務所が大多数であり、刑事裁判を請け負う弁護士は少数派です。
一般企業・公的機関で働く弁護士
全国でおよそ4万人いる弁護士のうちの約2500人、割合にしておよそ5%ほどの人が、一般企業の法務部や官公署といった組織で働いています。
数としては決して多くありませんが、近年は法律事務所の就職競争が激しくなっていることもあって、企業に就職する弁護士の数は急速に伸びており、ここ10年で10倍近くに増加しています。
組織内弁護士の仕事内容は、事業運営における法的アドバイスや、契約書のチェック、社員へのコンプライアンス教育、訴訟する際・訴訟された際の対応、顧問弁護士とのやり取りなど多岐にわたります。
弁護士資格を保有していると、基本給に加えて資格手当が付与されたり、責任ある役職を任されたりと、ほかの社員より優遇されるケースが多いようです。
教育機関で働く弁護士
大学の法学部や法科大学院、あるいは司法試験予備校などで、学生に対する教育を行う弁護士も一定数います。
教授職などに就き、専任で学生への指導だけにあたる人もいれば、法律事務所と兼務し、弁護士の本業のかたわらに、非常勤講師として週にいくつかのコマを受けもつ人もおり、その働き方はさまざまです。
また、若手の弁護士が、法科大学院の学生をフォローする「チューター」をしたり、司法試験の模試や司法修習試験などの採点アルバイトをすることもあるようです。
独立して働く弁護士
弁護士は、単独で、またはほかの弁護士と共同で、法律事務所を経営する人も少なくありません。
近年は若手弁護士の早期独立が目立っており、司法修習を終えて弁護士登録したあと、1~2年で独立する人も多く、なかには修習終了後すぐに独立する人もいるようです。
独立している場合、弁護士としての業務に加えて、営業活動や人事管理、経理処理といった経営者としての業務も平行して手掛けなければならない点が特徴的です。
また、近年は弁護士数が急増していることもあって、都市部を中心として法律事務所は飽和状態にあります。
アピールポイントをつくって他者との差別化を図らなければ、たくさんの事務所のなかに埋もれてしまうため、成功するには経営者としての手腕がより重要になっているといえるでしょう。
弁護士と関連した職業
検察官
検察官は、検察庁に所属する国家公務員であり、警察から送検されてきた被疑者を取り調べ、起訴するかどうかを判断することが仕事です。
刑事裁判においては、検察官は原告となりますので、被告人の代理人を務める弁護士とはしばしば法廷で争うことになります。
なお、一般的に検察官は検事と呼ばれることもありますが、検事という名称は、全部で5つある検察官の階級名のうちのひとつです。
裁判官
裁判官は、弁護士・検察官と並ぶ三大法曹資格のひとつで、裁判を取り仕切り、判決を下すことが仕事です。
裁判官になる道は、司法試験に合格した後、司法修習を受けるまでは弁護士と同じですが、その後、所定の審査を受けなければなりません。
審査をパスするには、
- 司法試験および司法修習において極めて優秀な成績を収めること
- 裁判官にふさわしい人格であると認められること
が必要であり、職業に就くための難易度は弁護士を上回ります。
司法書士
司法書士は、クライアントから依頼を受けて、不動産登記や商業登記など、法務局に申請する手続きを代行することがおもな仕事ですが、弁護士と同じく人々からの法律相談に応じるという役割もあります。
また、所定の研修を修了した「認定司法書士」については、弁護士と同じように、簡易訴訟において依頼者の代理人となり、法廷で争うこともできます。
司法書士・弁護士ともに法律系国家資格であり、業務内容や求められる知識は共通している部分が多いため、司法書士が法律事務所に勤めるケースもあります。
弁護士が独立・開業するには?
独立開業弁護士の働き方・仕事内容
弁護士は、将来的に独立開業することをある程度前提とした職業であり、自分の事務所を経営している弁護士は数多くいます。
そのスタイルもさまざまであり、「ボス弁(ボス弁護士)」としてほかの弁護士を雇用し、自身は事務所経営に専念するという人もいれば、誰も雇うことなく、一人ですべての仕事をこなす人もいます。
また、単独ではなく、ほかの弁護士と合同で法律事務所を立ち上げ、共同経営するというケースも少なくありません。
いずれの場合であっても、その独立弁護士の仕事内容は、弁護士としての実務に加えて、経営者としての営業活動や広告宣伝活動、家賃・人件費などの経費管理、税務処理など、多岐にわたることが特徴です。
とくに近年は都市部を中心に法律事務所は飽和状態にあるため、講演会や法律相談セミナーを開催したり、ホームページを充実させたりと、顧客獲得のために多くの時間を割く必要があるでしょう。
独立開業するまでのキャリアパス
司法修習を終えた弁護士は、実務経験を積むために法律事務所などに就職し、数年間の勤務を経た後に独立開業するケースが一般的です。
ただ、近年は司法試験制度改革によって弁護士数が増えたために、法律事務所で働きたくても就職口がみつからないという人もおり、修習修了後すぐに独立する「即独」と呼ばれる人も一定数います。
しかし、経験も実績もなく、また人脈もないまま独立しても、クライアントを獲得することは非常に困難で、せっかく開業しても数年ともたずに廃業に追い込まれるケースが目立ちます。
たとえ業務内容や待遇面、勤務地などの条件を多少妥協してでも、一旦はどこかの法律事務所に就職し、基礎スキルを修得しつつ、将来の独立に役立ちそうな人脈づくりに励むべきです。
また、独立開業するまでに、将来有望そうな分野や、まだ比較的競争相手の少ない分野を見出すなど、自分の事務所の経営方針をある程度打ち出しておくことが望ましいでしょう。
独立開業弁護士のメリット・デメリット
弁護士が独立開業するメリットとしては、まず、自分の望む働き方ができるという点が挙げられます。
高収入を目指して、朝も夜も、平日も土日も関係なくがむしゃらに働くこともできますし、家庭生活を優先させて、仕事をセーブしながら働くこともできます。
また、数多くのスタッフを雇用して大規模に事業を展開することも、あるいは、ほとんどランニングコストをかけず携帯電話1本で小さく働くことも可能です。
さらに、サラリーマンなどと違って定年退職もないことから、自分が望む限り、何歳まででも働けます。
反対に、独立開業する最大のデメリットは、経済的な保証が一切なくなるという点です。
近年は、都市部を中心に弁護士が供給過剰となっているため、独立を成功させることは非常に困難な環境となっており、食べていくのがやっとという弁護士も少なくありません。
生き残っていけるかどうかは、マーケティング力や経営企画力、あるいはコネクションなど、経営者・個人事業主としての手腕次第といえるでしょう。
独立開業弁護士の給料・年収
独立開業した弁護士の平均年収は、約1400万円といわれています。
世間一般のイメージ通りの高収入といえる数字ですが、実際の給料は年収300万円以下から1億円以上まで大きな幅があり、平均値は決して実態を表しているとはいえない部分もあります。
日本弁護士連合会のアンケートをみても、所得帯として最も多いのは「200万円以上、500万円以下」であり、一部の成功者が全体の平均値を大きく押し上げていることがわかります。
それでも、上位50%は年収750万円を超えており、上位30%は年収1000万円を超えていることから、明暗がはっきり分かれやすいとはいえ、経済的に成功できる可能性が高いこともまた事実です。
弁護士がいくらの収入を得られるかは個人の実力次第です。
目先の数字にとらわれるのではなく、独立開業がもつリスクとチャンスを天秤にかけ、慎重に判断することが大切といえるでしょう。
弁護士の仕事内容のまとめ
弁護士は法律知識を駆使して事態の解決にあたるのが仕事です。
離婚や相続の揉め事や交通事故などを扱う「民事事件」と、暴行や傷害、窃盗や詐欺などを扱い「刑事事件」を担当しますが、どちらも依頼人の利益を守ることを役割としています。
私たちの生活をサポートし、社会を監視し、誰もが安心して暮らせる世の中を構築してくれる存在です。