弁護士の年収・給料はいくら? 現実の収入や初任給はどれくらい?
近年、弁護士はさまざまな働き方が増えつつあり、収入にもばらつきがみられるといわれます。
ここでは、弁護士の年収がいくらなのか、勤務先や働き方などから比較して解説します。
弁護士の平均年収・給料の統計データ
弁護士は、医師やパイロットなどと同じく、高収入が得られる職業の代名詞といえますが、実際の収入はかなり個人差が大きくなっています。
イメージ通りに数千万円もの年収を稼いでいる人がいる一方で、得られた報酬と事務所経費の差があまりなく、食べていくのもままならないという人もいます。
また、近年は法科大学院(ロースクール)をはじめとする司法制度改革の影響によって、法曹資格取得者が増加傾向にあり、弁護士間の顧客獲得競争がかなり激しくなっています。
このため、全体の収入は下がり気味で、かつてほど稼げなくなっているという声もよく聞かれます。
弁護士の平均年収・月収・ボーナス
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、弁護士の平均年収は、51.2歳で1,122万円ほどとなっています。
また、月額給与は約77万円、年間のボーナスは約197万円です。
・平均年齢: 51.2歳
・勤続年数: 5.6年
・労働時間/月: 155時間/月
・超過労働: 1時間/月
・月額給与: 770,800円
・年間賞与: 1,967,200円
・平均年収: 11,216,800円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
弁護士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
賃金構造基本統計調査をみると、弁護士のボーナスは月給のおよそ2ヵ月分となっています。
一般的な弁護士の年収を900万円とすると、平均月収は約64万円、ボーナスは約128万円という計算になります。
そこから、所得税や住民税、健康保険などの社会保険料を差し引くと、独身者の場合、手取りは月々47万円~48万円、ボーナスは約92万円です。
ただし、独立開業していると、自身の給料は、弁護士報酬から事務所家賃などの経費を差し引いた金額となりますので、月々の収入はばらつきがちです。
弁護士の初任給はどれくらい?
一年目の平均年収は500万円ほど
法務省、最高裁判所、日弁連(日本弁護士連合会)の調査によると、弁護士1年目の平均収入は500万円~550万円前後、手取りは約300~320万円となっています。
ボーナスを2ヵ月分とした場合、月収に換算すると約35万円~40万円であり、一般的な職業の2倍近い初任給が得られる計算です。
ただし、弁護士として活動するには、日弁連や所属する都道府県の弁護士会に納める会費などが毎月数万円必要であり、所得としてはもう少し下がります。
また、事務所の規模による差もかなり大きく、小規模な個人事務所の場合、初任給が25万円前後で、諸経費を差し引くと一般の大卒者とほぼ変わらないというケースも珍しくないようです
初任給をもらう年齢がほかの職業より高い
弁護士の初任給は非常に高額なように見えます。
しかし弁護士になるには、法科大学院への進学や司法試験の合格が必要であるため、道のりは非常に難関であり、弁護士になるまでに何年も費やす人も少なくありません。
弁護士として初任給をもらえるのは同世代と比べて遅くなるため、同世代で既にほかの職業についている人と比較すると、さほど変わらない額になるということもあります。
弁護士の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
弁護士の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がる傾向にあります。最も年収が高い世代は、60~64歳の1,791万円です。
全年代の平均年収は1,122万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「法務従事者」で司法書士、弁理士など他職業を含むデータです。
弁護士の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
10人〜99人の事業所に勤める弁護士の年収は1,122万円、100〜999人規模は1,030万円、1000人以上規模は1,170万円、10人以上規模平均は1,122万円となっています。
1000人以上規模に関しては、企業の法務部に勤める弁護士と考えられます。
上記グラフの基タイトルは「法務従事者」で司法書士、弁理士など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
弁護士の福利厚生の特徴は?
弁護士にはさまざまな雇用形態があり、まず新人のうちは「イソ弁」となります。
イソ弁とは、「居候弁護士」のことで、給料をもらって法律事務所に勤務する弁護士のことです。
「アソシエイト弁護士」とも呼ばれ、この間は組織から福利厚生を受けられます。
しかし、弁護士はキャリアのかなり早期のうちに独立開業することが前提となっており、経験を積むと「ノキ弁」となります。
これは「軒先弁護士」のことで、法律事務所に雇われているわけではなく、名目上のみ法律事務所に所属している弁護士です。
ノキ弁は組織に所属はしていても個人事業主待遇となるケースも多く、福利厚生制度は基本的に適用されません。
このため、弁護士は平均年収が高い反面、福利厚生については、新人時代を除くとほぼ無いに等しいといえます。
自営業者として、月々の年金を支払ったり、退職金を積み立てたり、民間の各種保険に加入するなど、個人でさまざまなリスクに備えておく必要があるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
弁護士の給料・年収の特徴
若いうちに年収がピーク付近まで上昇する
法曹の収入・所得,奨学金等調査の集計結果によると、弁護士の年収を経験年数別に見た場合、およそ10年目くらいまでは、かなりのハイペースで収入が増えていきます。
独立者はもちろん、組織に所属して働く場合であっても、弁護士の収入は手掛けた依頼数との相関性が非常に高いため、仕事に慣れるにつれ、収入も加速度的に伸びていくようです。
このため、弁護士は、キャリアのかなり早期から、年収がピーク近くまで上昇するという点が特徴的です。
会社員などの場合、ベテランとなって管理職に昇進した時点で大きく昇給するケースが一般的ですので、それと比較すると、弁護士の賃金カーブは通常の職業とは大きく異なっているといえます。
弁護士になるには、4年制大学卒業後にロースクールを修了し、さらに司法修習をこなす必要があり、キャリアのスタートは遅くなりがちですが、就職後は一気に巻き返すことが可能です。
参考:法務省 法曹の収入・所得,奨学金等調査の集計結果(平成28年7月)
生涯年収がきわめて高い
一般的なサラリーマンや公務員とは異なり、弁護士には定年退職制度がありません。
このため、能力と熱意さえあれば、何歳になっても現役で働き続けることが可能であり、70歳を超えて活躍し続けている弁護士も珍しくありません。
実働年数が長いうえ、若いうちから高給が得られることもあって、弁護士の生涯年収は非常に高くなりやすく、約4億円、あるいはそれ以上に達するというデータもあります。
実際に、2023年弁護士白書によると、弁護士の収入の中央値は1,500万円、所得(収入から必要経費を差し引いた額)の中央値は800万円となっています。
平均的な日本人の生涯年収は約2億円といわれていますので、弁護士は一生でほかの人の2倍~3倍も稼ぐことが可能であり、夢のある職業といえるでしょう。
収入格差が拡がっている
弁護士は、職業全体の平均としては非常に高い給料となっているものの、実際は、弁護士間の収入格差が拡大し続けているのが現状です。
上述したように、近年は新司法試験制度の導入によって新たに弁護士となる人が増えている一方で、訴訟件数などは横ばいで、弁護士への依頼自体は増えていません。
需要が変わらないのに供給量が急増した結果、弁護士業界の競争環境は非常に厳しくなっており、稼げる弁護士と稼げない弁護士の二極化が進展しています。
稼げる弁護士の例としては、業歴が古く、安定した顧客基盤を築いている独立開業者や、大手法律事務所に所属するパートナーなどが代表的で、なかには年収数千万円を得ている人もいます。
反対に、稼げない弁護士としては、法曹資格取得後にすぐ独立開業する「即独」と呼ばれる人や、競争力で劣る小規模事務所に所属する「ノキ弁」などがおり、年収200万円に満たないケースもあります。
一概にはいえないものの、弁護士という職業は、かつてのように「資格さえあれば誰でも稼げる」というわけではなくなっているのは間違いありません。
これから弁護士になる人については、司法試験合格を目指すのはもちろん、試験に受かった後のことも、できる限り明確にプランを描いておくことが必要です。
独立開業には実力と営業力が必要
弁護士にとって、独立開業するか、弁護士事務所に勤務し続けるかは、働き方だけでなく年収においても重要な選択肢です。
開業弁護士の場合、年収は売上げのみであり、年収300万円以下の人もいれば1億円を超える人もいるといわれます。
安定した収入を得るには、実力と営業力が必要になってくるでしょう。
また、高収入を得ていても1日の大半を仕事に費やしていて休日がなかったり、人件費を削減するためにさまざまな仕事を自分一人でこなしている人もいます。
収入ももちろん大切ではありますが、開業を目指すのであれば、ワークライフバランスや仕事のやりがいなどをふまえた上で働き方を考えなくてはならないでしょう。
勤務先別に見る給料・年収
大手法律事務所で働く弁護士の給料
大手法律事務所としては、西村あさひ、アンダーソン・毛利・友常、森・濱田松本、TMI総合、長島・大野・常松の5大事務所が挙げられます。
こうした大法律事務所は非常に高給として知られており、初任給の時点で年収1000万円以上を得ることが可能です。
その後も実力に応じて年収が増えていき、「アソシエイト」と呼ばれる一般層で年収5000万円、経営層となる「パートナー」では年収1億円に達する人もいるようです。
ほかの職業とは比べものにならないほどの超高給といえますが、結果が出なければ数年でクビを言い渡されることもあり、雇用は決して安定的ではありません。
四大法律事務所の年収
大手法律事務所のなかでも、以下の4つの事務所は四大法律事務所と呼ばれ、全国に数ある法律事務所の中でも別格の扱いとなります。
- 西村あさひ法律事務所
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所
- 長島・大野・常松法律事務所
- 森・濱田松本法律事務所
これらはいずれも数百人規模の弁護士がおり、主に企業を顧客としている法律事務所です。
大規模な渉外案件やM&A案件など専門的な案件を扱うため、非常に年収が高いことで知られています。
入社時から年収1,000万円を超えることも当たり前で、新人と呼ばれる「ジュニアアソシエイト」の相場は1,000万円~1,200万円ともいわれます。
勤続すると「シニアアソシエイト」となり、年収は1,300万円~3,000万円にアップしますが、徐々に担当した案件の規模や仕事量等によって差が出てきます。
経験を積んでパートナー(経営者)となる道が開けてくるころになると、数千万円から数億円になることも珍しくありません。
中小法律事務所で働く弁護士の給料
大手以外の弁護士事務所の場合、年収は事務所によって差があります。
初年度から700~800万円以上出るところもあれば、300~400万円ほどにおさまるところも少なくありません。
勤務弁護士であっても、案件の内容や仕事量によっては差がありますので、どのような案件をどの程度扱っている法律事務所なのかをしっかりと調べておく必要があります。
インハウスローヤー(企業内弁護士)として働く弁護士の給料
インハウスローヤー(企業内弁護士)とは、企業や官公庁、学校などの組織内に籍を置いて業務にあたる弁護士のことです。
一般的には企業の法務部に配属され、企業法務や知財関連、コンプライアンスの業務にあたることが多いです。
日本組織内弁護士協会が行った企業内弁護士に関するアンケートによると、平均年収は750万円~1,000万円と回答した人が多くなっています。
法律事務所に在籍する弁護士よりも仕事量が安定しており、毎月決まった給料が支払われるため、近年注目を集めている働き方です。
参考:日本組織内弁護士協会 企業内弁護士に関するアンケート集計結果
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弁護士の働き方による年収・給料の違い
アソシエイト弁護士の場合
アソシエイト弁護士とは、法律事務所に勤務して働く弁護士のことで「イソ弁」とも呼ばれます。
アソシエイト弁護士には大きく分けると「ジュニアアソシエイト」と「シニアアソシエイト」があります。
事務所の考え方や業務内容にもよりますが、多くの場合入所したての新人をジュニアアソシエイトと呼び、3~5年程度専門業務を経験するとシニアアソシエイトになります。
大手法律事務所の場合、ジュニアアソシエイトでも年収が1000万円を超え、シニアアソシエイトに昇格すると1500万円程度になります。
一方で、中小の法律事務所や地方都市の事務所に勤務する場合には、1000万円を切るケースも珍しくなく、年収600~700万円ほどになることも珍しくありません。
パートナーの場合
パートナー弁護士とは、所長以外の経営者のことで、法律事務所を共同経営する弁護士です。
おもに弁護士5年目~12年目の弁護士がなる事が多いですが、アソシエイトのように給料をもらうのではなく、自分が営業してこなした案件の依頼料が収入になるため、年収には大きな差が出てきます。
パートナーになると年収1000万円はゆうに超え、仕事の内容や案件によっては数千万~億単位の年収になる人もいます。
一方で、パートナー弁護士になると、事務所の経費負担をしなくてはなりません。
勤務先によっては、経費負担が増えてしまったことで給料がアソシエイト時代より下がってしまう人もいます。
独立して働く場合
独立開業した弁護士は、年収1,000~1,500万円ほどの人が多いのではないかといわれています。
仕事量や案件の内容によって大きな差があり、経費負担を差し引くと年収200~300万円ほどになってしまう人もいれば、1億円以上を稼ぐ人まで、非常にさまざまです。
独立開業する場合は、事務所の立地や専門性によっても年収は大きく異なると考えられます。
弁護士が収入を上げるためには?
外資系企業でインハウスローヤーとして働く
インハウスローヤーは需要も多く、採用も非常に増えてきています。
一般的な法律事務所に勤務するよりも仕事量が安定しており、給料も比較的高めの水準であることから近年人気を集めています。
とくに外資系企業の場合は給料が高く、弁護士会費用を負担してくれるなど手厚い福利厚生が整っている場合が多いです。
まったくの未経験からインハウスローヤーを目指すのは難しいですが、経験を積んで転職を目指すのもひとつの方法です。
大手法律事務所などへ転職する
年収アップを目指すのであれば、より都市部や大手の弁護士事務所に転職するのがよいでしょう。
もちろん大手法律事務所は転職のハードルも高いですが、転職に成功すれば年収アップだけでなく、弁護士としてのキャリアも右肩上がりです。
また年齢が若いうちは専門性がなくても比較的採用されやすいため、積極的に挑戦するとよいでしょう。
独立・開業する
独立開業して高収入を得られるかどうかは、すべて自分の手腕にかかっています。
弁護士としてのスキルを高める努力はもちろん、顧客獲得のための営業活動や広告活動、人脈づくりなども、積極的に行っていく必要があるでしょう。
体力に自信があるなら、単純に労働時間を増やすことで収入を上げることもできるかもしれません。
さらに、収入としては同じでも、事務所運営を効率化して人件費や家賃などの経費を減らすことで、手元に残るお金を増やすという方法も考えられます。
独立開業して収入を増やす方法自体は無数にありますので、自身にあったスタイルを模索していくことが重要となるでしょう。
専門性を高めブランディングをする
これから需要の見込めそうな分野に注力するなど、時代の変化を見据え、専門性の高い案件をより多く担当することも大切です。
企業法務の中でも特定分野に特化したブティック型弁護士事務所で学ぶこともひとつの方法です。
専門性をしっかりと身につけておけば、多くの案件を担当できるだけでなく、転職や企業の際にもおおいに役立つでしょう。
弁護士で年収1000万円を目指せる?
弁護士は、年収1000万円は珍しくない職業です。
とくに四大法律事務所に勤務する場合、一年目から年収1,000万円を超えることも珍しくありません。
一方で、勤務する法律事務所の規模や、担当している案件の専門性、仕事量によって年収は大きく異なるため、すべての弁護士が年収1000万円を目指せるわけではありません。
弁護士で年収1億円以上稼げる?
日弁連の2018年の調査結果を見ると、回答した約2800人のうち、収入が1億円以上と答えた人は53人、所得が1億円以上と答えた人は6人いました。
ただし、弁護士で1億円を目指すには、法律事務所に勤務するのではなく、独立開業するか、大手弁護士のパートナーになるかしなくてはならないでしょう。
業界トップの法律事務所では、10年勤続すると年収5,000万円、パートナー弁護士(経営者)になれば年収数億円になる人も出てきます。
アメリカの弁護士の年収はどれくらい?
アメリカは訴訟大国として知られており、弁護士のニーズが高く、活躍の場が広いです。
アメリカで働く弁護士の場合、中小規模の法律事務所でも年収は1,000万円は超えるといわれています。
日本の弁護士で1000万円を稼ぐとなると、四大法律事務所で働いたり、パートナー弁護士として経営にかかわるなどごく一部に限られていますが、アメリカでは1年目から1000万円を超えることも珍しくありません。
ニューヨーク州の法律事務所に勤める弁護士の1年目の平均年収は16万5000ドル(約1800万円)といわれており、日本とは大幅に差があることがわかります。
一方で、アメリカの法律事務所では仕事ができないと容赦なく契約を打ち切られてしまうこともあるため、実力が伴っていなければ働き続けるのは難しいという現実があります。
弁護士の年収の将来性は?
日本では、2006年に新司法試験制度を導入し、弁護士の数が大幅に増えました。
弁護士は定年制度がないため、人口減少にある日本では徐々に弁護士の数は増えつつあり、案件や仕事の奪い合いになっている現実があります。
業界トップの大手法律事務所では年収1000万円を超える年収を手にする人がいるものの、中小の法律事務所や独立開業している人のなかには年収300~400万円ほどに収まっている人もおり、収入の二極化が進んでいるといえます。
2018年の弁護士白書によれば、弁護士の平均所得は2008年では1667万円であったにもかかわらず、2018年には959万円と10年の間に大幅に減少しています。
こうした結果を見ると、一部に高額な年収を得る人はいながらも、弁護士の平均年収としては今後徐々に下がっていくものと考えられます。