宅建士とはどんな資格?

宅建士とはどんな資格?

世間には数多くの国家資格や民間資格、TOEICや英検、漢検などの各種能力検定がありますが、そのなかでも宅建士(宅地建物取引士)は、かなりポピュラーな部類に入る資格といえます。

毎年20万人を超える人が受験しますので、一般の書店では多数の参考書や問題集が販売されていますし、資格予備校でもさまざまな講座が開かれています。

たとえ不動産にそこまで興味がなくても、進路選択や就職活動を行う際に、宅建士というワードを見たり聞いたりした人も多いでしょう。

以下では、世間一般の知名度が高い宅建士という資格について、その概要や歴史、特徴についてご紹介します。

今後の進路の検討材料にしたり、資格取得を目指すべきか決めかねている、あるいはほかの資格と待っている人については、その判断材料としてください。

宅建士資格の歴史

黎明期の宅建士

不動産屋というと、どことなく胡散臭い、信用ならないという、あまり良くない印象を抱いている人も少なくないかもしれません。

昭和27年に宅地建物取引業法が施行されるまでは、正にそのイメージ通り、ある意味「やりたい放題」の環境でした。

一般人が無知であることを逆手に取って、法外な仲介手数料を当然のように請求したり、実際には二束三文の土地を無理やり売りつけたり、なかには他人名義の不動産を勝手に売買した事例もあったようです。

こうした状況を問題視した当時の建設省、現在の国土交通省は、宅建業法を制定して宅建業者を免許制にし、昭和33年からは宅建士の前身となる「宅地建物取引員」資格を創設しました。

不動産取引の際に必要となる「重要事項の説明」は、宅建資格を持つ者しかできないことになり、これは今日に至るまで変わらない制度です。

しかし、同制度は現在と比べるとはるかに緩く、試験問題は30問しかなかったうえ、テキスト類の持ち込みも可能で、試験というよりも研修に近い内容だったようです。

当初の合格率は90%を超えていましたが、その後、昭和40年にテキストの持ち込みが禁止されて難化されるとともに、名称も「宅地建物取引主任者」に変更されました。

その後も、昭和56年からは問題数が現行と同じ50問になるなど、徐々に現在の難易度に近づいていくことになります。

バブル期の宅建士

不動産業界全体のイメージを悪くしているもうひとつの理由として、バブル期に横行した「土地転がし」や「地上げ」があります。

社会全体の好景気が続き、株価が連日最高値を更新するなかで、土地や建物の価格も天井知らずの高騰が続き、右から左へ転売するだけで、不動産業者は莫大な利益を得ることができました。

金融機関も、実際の不動産価格をはるかに超える金額を半ば強引に貸し付けて、一般人のなかにはバブル崩壊後に多額の借金を抱えて自己破産する人が急増しました。

そうした喧噪のなかにあって、不動産業者から詐欺被害に遭った人もかなりおり、今日までの「不動産業者イコール悪徳」という印象の大きな要因となっています。

そうした被害を防ぐべく、さまざまな問題が生じるたびに制度が見直されていますが、まだまだ負のイメージを払拭できているとはいえません。

現在の宅建士

平成27年に、宅地建物取引主任者から現在の宅地建物取引士へと名称が変更され、士業資格の仲間入りを果たしました。

上述のように紆余曲折あったものの、不動産取引の際に必須となる重要資格であることは変わらず、非常に高い人気を保っています。

ただ、こうした過去からの歴史が古く、また毎年2万人以上の人が新たに資格を登録しますので、現在の宅建士は全国で100万人を超えています。

このため、不動産業界で働く人にとっては、今や「持っていて当然」の資格になりつつあり、単に資格があるというだけではさほど優遇されなくなっています。

不動産会社によっては、役職者に昇進するには資格取得が必須条件となっているところもあるようです。

これから宅建士を目指す人については、あくまで資格取得はスタート地点に過ぎないと考えて、プラスアルファのスキルを磨いていく努力が必要になるでしょう。

宅建士資格の特徴

就職の際のアピール材料となる

不動産業界で既に働いている人にとっては、さほど資格保有者は珍しくありませんが、学生時点で取得していたり、不動産業界に入ってくる前に取得している人はかなりまれです。

このため、不動産業界や建設業界への就職を考えている人については、あらかじめ宅建士資格を取っておくと、ほかの就職希望者との差別化につながります。

試験には受験資格がありませんので、年齢や学歴に関係なく、高校生や大学生、フリーター、主婦でも受けられますし、難関ではあるものの、通信教育などを利用すれば、初学者でも十分合格可能です。

民法などの法律をはじめとして、宅建士としての知識は汎用性があり、自己啓発的な側面も強くありますので、ほかの業界に就職・転職する場合でも、勉強しておいて損はありません。

がんばって合格できれば、「履歴書に書ける資格」として、強力なアピール材料となるでしょう。

資格取得後も勉強し続けなければならない

宅建業法や建築基準法、税制など、不動産を取り巻く各種法律は非常に多く、またかなりの頻度で改正がなされます。

かつてアスベスト(石綿)による健康被害が問題となってからは、重要事項説明のなかにアスベストの調査結果を記載することが義務付けられましたし、耐震偽装問題以降、建物の耐震性調査も追加されました。

2011年の東日本大震災で甚大な津波被害が発生してからは、対象不動産が津波危険区域に該当するかどうかも、記載することが義務化されています。

こうしたことから、宅建士は、資格取得前はもちろん、資格を取得した後も、各種研修を受講したり、自発的に勉強したりして、常に自身の知識を最新の内容にアップデートし続けなければなりません。

働きながら勉強もこなすのは大変ですが、宅建士としての重い説明責任を果たすには、継続的な努力が不可欠です。

5年ごとに資格を更新する必要がある

過去に不動産業者がさまざまな問題を起こした歴史もあって、宅建士資格は一度取れば生涯有効というわけではなく、運転免許証のように、5年ごとに更新しなければなりません。

更新するには法定講習を受講することが必要であり、近年の法改正の内容や税制改正大綱、裁判の判例などを中心とした講義が実施されます。

本来であれば、自学自習して身につけるべき内容ですが、なかには自分では勉強しない人もいますので、宅建士の質を一定水準以上に保つために、こうした更新制度が取られています。

なお、法定講習を受けるには、新しい宅建士証交付手数料と併せて16,500円の費用がかかりますが、勤めている場合は所属企業が負担してくれるケースもあります。