心理カウンセラーの仕事・役割とは? わかりやすく仕事内容を紹介
心理カウンセラーの仕事とは
心理カウンセラーとは、ストレスなどによる心のトラブルを抱えるクライアントに対し、心理面からサポートをするスペシャリストです。
さまざまな悩みや不安などを抱えるクライアントに対して「カウンセリング」を行い、「行動療法」「精神分析療法」といったさまざまな心理療法を実践しながら、クライアントが抱えている心の問題を、クライアント自身が解決できるように手助けしていきます。
心理カウンセラーは、大きく分けて「医療」「教育」「司法」「福祉・公衆衛生」「産業」「研究」の6つの領域で活躍しています。
子どもからお年寄りまで、あらゆる年代・立場の人にとって心理カウンセラーは必要とされているといえます。
なお、ひとくちに「心理カウンセラー」といっても、どの領域で働くかによって、仕事の流れや求められる資格・スキルなどには違いが出てきます。
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心理カウンセラーの業務の内容
カウンセリングが基本
心理カウンセラーの業務の中心になるのが、「カウンセリング」です。
カウンセリングは日本語でいえば「相談」という意味にあたり、クライアントと向き合う際の基本となります。
クライアントが何に悩んでいるのか、どういう心の状態にあるのかを把握するために、カウンセリングは慎重に行われます。
そのなかで、「行動療法」「精神分析療法」といったさまざまな心理療法を実践しながら、クライアントが抱えている心の問題を、クライアント自身が解決できるように手助けしていきます。
指示や押しつけはしない
カウンセリングでは、心理カウンセラーはクライアントの話をきちんと聞き、共感することを大事にします。
「こうしなさい」と自分の考えを押しつけたり、指示を出したり、クライアントの言葉を否定したりはしません。
あくまでも相手の話を理解・共感しながら心理学の専門知識とスキルを生かして、クライアント自身が考えを整理し、自分で問題を解決していけるための手助けを行います。
心理カウンセラーの役割
心理カウンセラーとは、ストレスなどによる心のトラブルを抱えるクライアントに対し、心理面からサポートをするスペシャリストです。
ひきこもり、不登校、摂食障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、人の心のトラブルにはさまざまなものがあり、それらを引き起こす要因となるものや背景は、クライアントによってまったく異なります。
また、目に見える症状が出ていなくても、学校や職場、家庭などあらゆる場所で、日々ほんの小さな悩みや不安を抱える人は大勢います。
たとえ小さな心の問題であっても、それらが積み重なったり、複雑化してくると重症化することもあるため、トラブルの種を早期に摘み取るということは、人々が心身の健康を保ち、元気に生きていくうえでとても重要なことです。
心理カウンセラーは、このようなあらゆる心のトラブルを抱える人に対し、心理学に関する専門知識を生かして「カウンセリング」を行いながら、問題解決のためのサポートをします。
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心理カウンセラーの勤務先の種類
心理カウンセラーが活躍できるおもな領域
心理カウンセラーは、大きく分けると以下のような領域で活躍することができます。
医療
総合病院の精神科、心療内科、メンタルクリニックなどで働く心理カウンセラーです。
医師との連携を図りながら、患者さんに対して心理テストや心理面接などを行います。
精神科をはじめ、小児科などさまざまな科において必要とされており、「医療カウンセラー」や「ソーシャルワーカー」といった名称で働くこともあります。
教育
いわゆる「スクールカウンセラー」という立場で働くことが多いのが、教育領域の心理カウンセラーです。
おもに小・中・高等学校の教育現場で、学校生活や進路などに悩む児童や生徒、またその保護者にカウンセリングを行ったり、心理面から教員のサポートを行います。
このほか、公立の教育相談所などで活躍する人もいます。
司法
家庭裁判所、少年鑑別所、刑務所、警察関連機関などで働く心理カウンセラーもいます。
基本的に、これらの施設は行政機関となり、そこで働くカウンセラーは公務員の身分となります。
福祉・公衆衛生
児童相談所、精神保健福祉センター、老人福祉施設といったさまざまな福祉施設において活躍します。
対象者は児童から高齢医者まで幅広く、行政機関の公務員として勤務する人もいます。
職場によって「ソーシャルワーカー」「福祉職」「相談員」「福祉行政職」といった、さまざまな名称で働きます。
産業
おもに企業内の相談室や併設のカウンセリング施設で勤務し、企業で働く人の心身の健康づくりをサポートします。
人間関係や職場環境などに関するカウンセリング業務のほか、メンタルヘルスの啓発、キャリア支援にも携わります。
一般的に、この分野で働く心理カウンセラーは「産業カウンセラー」ともいわれます。
研究
大学の教授や講師として心理学の講義や研究を行う人と、学生相談室といった学内の相談機関でカウンセラーとして従事する人がいます。
研究を行う場合、論文の執筆や講演活動なども業務内容に含まれます。
ボランティアで活動する人も多い
上記で挙げた領域は、基本的に「職業」としての心理カウンセラーの活躍の場となります。
つまり、仕事を通じてお金をもらい、生計を立てる、ということになります。
一方、ボランティアとして心理カウンセリングを行う人も少なくありません。
カウンセラーのボランティアを募集する団体は多くあります。
各地の社会福祉協議会、また「いのちの電話」などの電話相談機関もボランティアで構成されています。
ボランティアの場合は報酬が与えられませんが、心理学の知識を生かして人の役に立ちたいと考える人は多くおり、ボランティアとしての心理カウンセラーのニーズもたくさんあります。
働く場によって求められる資格・スキルなども異なる
ひとくちに「心理カウンセラー」といっても、どの領域で働くかによって、仕事の流れや求められる資格・スキルなどは異なります。
たとえば、心理カウンセラーの資格にはさまざまなものがありますが、産業領域であれば「産業カウンセラー」、教育領域であれば「キャリアカウンセラー」といった資格が必要とされたり、持っていることで就・転職に有利になることがあります。
なお、どの領域で活躍する場合にも生かせるとされる資格が、心理職における唯一の国家資格である「公認心理師」や、心理系の民間資格の中では最も権威があるとされる「臨床心理士」です。
そのほか、医療領域で働く場合には、カウンセリングの技法などに加えて医学的な基礎知識まで求められたり、司法領域では犯罪心理学の知識も必要となるなど、目指すところによって学ぶべきことは変わってきます。
心理カウンセラーの仕事の流れ
心理カウンセラーの仕事の流れは、働く施設や企業などによっても異なりますが、だいたいは以下のようになります。
まずは、心の不調や悩みを抱えるクライアントから依頼を受けて、カウンセリングの日程を決めます。
カウンセリング当日は、施設内の相談室やカウンセリングルームでクライアントを待ち、1対1での対話を行っていきます。
カウンセリングの基本は「傾聴」「共感」「受容」です。
「傾聴」は、相手の意見や考えを否定せず、そのまま受け入れる姿勢です。
心理カウンセラーに対して自分の悩みを丸ごと話せるクライアントは決して多くなく、緊張や不安などでいっぱいになってしまう人も少なくありません。
だからこそ、心理カウンセラーにはゆっくりと時間をかけて相手の話を聞き、よき理解者になる姿勢が必要とされます。
「共感」は、クライアントの気持ちを理解しようとする姿勢です。
孤独感を抱えているクライアントに対して、心理カウンセラーは、クライアントが感じているつらさ、苦しみに寄り添うことを大事に考えます。
そして「受容」は、クライアントの気持ちを受け止めることです。
クライアントは、自分をそのまま受け止めてくれる相手がいると実感できることで安心し、問題に対して前向きに取り組もうという意欲が生まれます。
この3つのポイントを押さえたうえでクライアントに合った心理療法を実践し、何度もカウンセリングを繰り返し、クライアントの状態をより良い方向へ導きます。
心理カウンセラーが独立・開業するには?
経験を積んでからの独立が賢明
心理カウンセラーは、学校、企業、病院などさまざまな場所で活躍していますが、なかにはどこの職場にも属さず、独立開業して働く人もいます。
ただし、独立して事業を軌道に乗せることは決して簡単ではありません。
カウンセリングスキルはもちろんのこと、クライアントを見つけるためには集客が必要になりますし、事務所の経営をするマネジメント能力も必要になってきます。
どこかの組織に属していれば、周囲のスタッフと協力したりベテランの心理カウンセラーにすぐ相談することもできますが、個人で開業するとなれば、すべてを自分で考えていかなくてはなりません。
ですから、経験の浅い心理カウンセラーがいきなり独立して成功するのはとても難しいことだといえます。
まずはどこかの組織に所属して、確かな実力と自身、そして人脈を作るところからスタートするほうが賢明でしょう。
独立・開業に必要な資格やスキルは?
心理カウンセラーとして開業するうえで、絶対に必要とされる資格などはありません。
実力さえあれば、誰でもカウンセリングを行うことはできますが、それでもクライアント側からすれば、「本当にこのカウンセラーは信用できるのだろうか?」という不安を抱くものです。
そこで、独立開業する時点では、何らかの心理系資格をとっておくほうがよいでしょう。
とくに「公認心理師」や「臨床心理士」をはじめ、「産業カウンセラー」や「認定カウンセラー」など、業界内外でそれなりに知名度の高い資格を持っていれば、自らのスキルを示すことができます。
加えて、心理カウンセラーとしての経歴や得意分野などもなどもできるだけ公開しておくほうが、クライアントとしては安心できるでしょう。
独立のスタイルは人それぞれ異なりますが、クライアントありきの仕事ですから、信用・信頼してもらうことを第一に考えていくべきです。
実際に開業している先輩心理カウンセラーとつながりを持っておけば、いざ困ったときにアドバイスもしてもらえるでしょう。
独立・開業した心理カウンセラーの働き方
心理カウンセラーの独立・開業といっても、具体的な働き方は人によって異なります。
よくあるのは、ホームページやSNSなどを立ち上げ、そこから集客し、クライアントの相談にのるというケースです。
自宅の一部をカウンセリングルームにして、あるいはレンタル会議室などを利用して、クライアントとの対面でのカウンセリングをメインで行う人もいれば、メールや電話でのカウンセリングを中心にやっていく人もいます。
このほか、ある程度の実績を積むと心理学に関する講演やセミナーをしたり、カウンセリングスクールを開いて新たな心理カウンセラーを育てていくような人もいます。
独立・開業すると、特定の組織での仕事だけにとらわれない分、さまざまな仕事に挑戦できます。
心理カウンセラーと関連した職業
心理カウンセラーとセラピストの違い
心理カウンセラーと関連した職業のひとつが、「セラピスト」です。
セラピストは、民間療法のセラピーを実施することで心身の不調やストレスを抱える人を癒やす仕事です。
セラピーには、有名なアロマセラピーのほか、カラーセラピーや森林セラピー、絵本セラピー、動物セラピーなどさまざまなものがあります。
セラピストの業務の一部として心理カウンセリングが含まれることもあるため、両者の役割は近しい面もあるといえるでしょう。
しかし、心理カウンセラーがクライアントとの会話を重視しながら相手に共感をし、クライアント自らが問題解決に向かっていくサポートをするのに対し、セラピストは癒やしを目的とした施術を実施します。
心理カウンセラーは、基本的にクライアントに対して「こうしなさい」などと言うことはありませんが、セラピストの場合、問題解決になるような具体的なアドバイスを相談者に提示することもあります。
なお、どちらの職業も働くうえで絶対に必要な資格はありませんが、専門性を高めていくための勉強が必要です。
心理カウンセラーと臨床心理士・公認心理師の違い
もうひとつ、心理カウンセラーと似た職業といわれるのが「臨床心理士」です。
わかりやすく考えると、さまざまな種類の心理カウンセラーの中に、臨床心理士が存在するといえるかもしれません。
臨床心理士は資格の名称でもあり、定められた大学や大学院で心理学を専門に学び、臨床心理士試験に合格して資格認定された人のことをいいます。
一方、心理カウンセラーは正式には職業名ではなく、臨床心理士をはじめとするさまざまな心理系の資格を持っている人や、心理カウンセリング業務に携わる人のことを総称して、こう呼ぶことが多くなっています。
また、臨床心理士と近しい職業に「公認心理師」があります。
公認心理師は、業務内容や役割としては臨床心理士と似たようなものとなっていますが、日本の心理職における初めてかつ唯一の国家資格として、2018年より新たに試験がスタートした資格です。
さまざまな心理カウンセラーのなかでも、臨床心理士と公認心理師は、社会的な評価も高く、就職・転職の際にも有利になる資格です。
心理カウンセラーと精神科医の違い
心理カウンセラーと精神科医は、どちらも人の心に深くアプローチし、人が抱える不安や悩みを解決するために力を発揮していく仕事です。
しかし、両者にはさまざまな違いがあります。
最も大きな違いは、精神科医は「医師」の一種であるため、心の病を患う患者さんに対して病気を診断して薬を処方できるということです。
精神科医になるには大学の医学部で6年間学び、医師国家試験に合格し、さらに研修医としての経験も積まなくてはなりません。
一方、心理カウンセラーは医師ではなく、なるために必須の資格もありません。
カウンセリング等を通して相手の心の問題に触れていきますが、医学的な治療や投薬を行うことは認められていません。
心理カウンセラーはクライアントの話を聞き、さまざまな心理検査を行いながら、クライアント自らが問題と向き合い、より良い方向へ進んでいくための支援を行っていきます。