裁判所事務官採用試験の難易度は高い?合格率や倍率は?
全国にある、裁判所では、多くの公務員が裁判を支える裏方の仕事を担っています。
ここでは、裁判所職員(裁判所事務官・家庭裁判所調査官補)の試験について、試験科目、日程、難易度などを紹介します。
裁判官以外の裁判所での仕事に興味を持った方は、ぜひ参考にしてみてください。
裁判所事務官の採用試験について
裁判所の事務官になるための選考試験は、大まかに「総合職試験」と「一般職試験」の2つに分かれます。
総合職試験には「院卒者試験」と「大卒程度試験」という2つのカテゴリーがあります。
それぞれ、「裁判所事務官」と「家庭裁判所調査官補」のポジションに分かれます。
なお、2014年度までは、「総合職試験(裁判所事務官)」は「総合職試験(法律・経済)」という名前で、「総合職試験(家庭裁判所調査官補)」は「総合職試験(人間科学)」と呼ばれていました。
一般職試験は「大卒程度区分」と「高卒者区分」の2つに分かれ、それぞれが「裁判所事務官」のポジションになります。
裁判所事務官 総合職・一般職試験の難易度は?
裁判所事務官の採用試験は非常に難関と言われています。
具体的なデータを見ると、合格倍率は次のようになっています。(※2023年度データ)
裁判所事務官(院卒者区分):7.3倍
裁判所事務官(大卒程度区分):18.5倍
家庭裁判所調査官補(院卒者区分+大卒程度区分):7.6倍
裁判所事務官(大卒程度区分):3.6倍
裁判所事務官(高卒者区分):11.9倍
特に総合職の大卒程度区分の合格率は「2%以下」であり、非常に厳しい試験となっています。
他の区分においても倍率は高く、容易に合格することは難しいでしょう。
また、受験する地域によっても試験倍率は異なるため、受験する際には地域ごとの倍率も考慮する必要があります。
裁判所事務官と家庭裁判所調査官は併願できる?
裁判所事務官と家庭裁判所調査官は併願することは一般的にはできません。
裁判所の職員の採用試験は通常、同一日程で一斉に行われ、ここ数年は5月の第二土曜日に実施されています。
そのため、裁判所職員同士の併願は原則として認められていません。
ただし、裁判所事務官・総合職には例外があります。
受験申込時に、総合職試験の各試験種目を有効に受験すると同時に、一般職試験にも合否判定を受ける特例があります。
この制度を利用すると、一般職を滑り止めにしつつ、総合職を受験することができます。
試験日程が同じであり、一般職の試験問題が総合職の試験問題と重なることから、この制度が設けられています。
裁判所事務官採用試験の内容
裁判所事務官になると、全国の家庭裁判所、高等裁判所、最高裁判所で働き、裁判の円滑な運営に貢献します。
法律の専門知識はもちろんのこと、効率的かつ円滑な裁判の遂行にはさまざまな専門的な知識が必要です。
試験の内容も幅広く、法律知識だけでなく、人間性や適性、一般常識も求められます。
さらに、総合職になると政策論文や人物試験(集団討論や個別面接)もあり、総合的な対策が必要です。
裁判所事務官採用試験に合格するまでの流れ
裁判所事務官の採用試験は、「総合職試験」と「一般職試験」の2つに大別されます。
総合職試験は、「院卒者試験」と「大卒程度試験」という2つの区分に分かれており、どちらの区分でも「裁判所事務官」と「家庭裁判所調査官補」の2つのポジションがあります。
※なお、平成26年度までの試験では、「総合職試験(裁判所事務官)」が「総合職試験(法律・経済区分)」と呼ばれ、「総合職試験(家庭裁判所調査官補)」が「総合職試験(人間科学区分)」として実施されていました。
裁判所事務官採用試験の受験資格
裁判所事務官採用試験の受験資格は、以下の通りです。
総合職試験(院卒者区分)
30歳未満で、次のどちらかに該当する者
(1) 大学院の修士課程または専門職大学院の課程を修了した者、もしくは修了見込みの者
(2) 最高裁判所が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者
総合職試験(大卒程度区分)
(1) 21歳以上30歳未満の者
(2) 21歳未満の場合は、次のどちらかに該当する者
(ア) 大学を卒業した者、もしくは卒業見込みの者
(イ) 最高裁判所が(ア)に掲げる者と同等の資格があると認める者
一般職試験(大卒程度区分)
(1) 21歳以上30歳未満の者
(2) 21歳未満の場合は、次のいずれかに該当する者
(ア) 大学を卒業した者、もしくは卒業見込みの者
(イ) 短期大学または高等専門学校を卒業した者、もしくは卒業見込みの者
(ウ) 最高裁判所が(ア)または(イ)に掲げる者と同等の資格があると認める者
一般職試験(高卒者区分)
(1) 高校または中等教育学校を卒業後2年以内の者、もしくは卒業見込みの者
(2) 最高裁が(1)に掲げる者に準ずると認める者(例:中学校を卒業後2年以上5年未満の者など)
以上のように、採用試験の種類や区分によっても受験資格は異なります。
上記で説明した受験資格を簡潔にまとめると、以下のようになります。
<総合職(院卒者区分)>
30歳未満であり、大学院修了及び修了見込みの方
<総合職(大卒程度区分)>
21歳以上30歳未満の方(21歳未満で大学卒業及び卒業見込みの方も受験可)
<一般職(大卒程度区分)>
21歳以上30歳未満の方(21歳未満で大学卒業及び卒業見込み、短大卒業及び卒業見込みの方も受験可)
<一般職(高卒者区分)>
高卒見込み及び卒業後2年以内の方(中学卒業後2年以上5年未満の方も受験可)
裁判所事務官採用試験の合格難易度
裁判所事務官の採用試験は、受験者数も多く試験自体の難易度も非常に高いため、「難関」と言われています。
採用試験は総合職試験と一般職試験に分かれますが、それぞれには一次試験と二次試験があり、さらに総合職試験の場合は三次試験が実施されます。
これらの採用試験を突破するためには、早めからの対策が必要です。
試験の勉強方法
総合職試験も一般職試験も、両方とも「多肢選択型」の試験形式です。
したがって、幅広い範囲の知識を問われる内容であると言えます。
特に、教養科目の中で数的処理はある程度の慣れが必要ですので、できるだけ多くの問題に取り組んでおくことが重要です。
数的処理は慣れていれば確実に得点できる領域なので、重点的に学習することをおすすめします。
試験内容の変更に注意する
2020年度から、裁判所事務官の試験科目に大きな変更がありました。
以前の1次試験での専門記述が廃止され、代わりに2次試験で専門記述が導入されました。
しかし、専門記述は試験当日に問題を見てから2つのテーマから自由に選択できる形式に変更され、選択の制限がなくなりました。
つまり、受験者は自分の得意な分野の問題だけで受験することができるようになったのです。
また、人物試験も変更され、個別面接のみで構成される人物試験Iと、集団討論と個別面接を行う人物試験IIの2つに分かれました。
今後も定期的に変更がある場合があるので、試験科目については早めにチェックしておくことをおすすめします。
裁判所事務官採用試験後の流れ
裁判所事務官になるための条件は、裁判所職員採用試験に合格すること、そして内々定をもらうことの2つです。
裁判所職員採用試験に合格すると、「採用候補者名簿」に高得点順に名前が掲載されます。
この名簿は8つの高等裁判所の管轄区域ごとに作成され、それぞれの高等裁判所が実際に採用する候補者に内々定の連絡が届きます。
それぞれの高等裁判所が管轄するエリアは次のとおりです。
札幌高等裁判所:北海道
仙台高等裁判所:宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県
東京高等裁判所:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、静岡県、山梨県、長野県、新潟県
名古屋高等裁判所:愛知県、三重県、岐阜県、福井県、石川県、富山県
大阪高等裁判所:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県
広島高等裁判所:広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県
高松高等裁判所:香川県、徳島県、高知県、愛媛県
福岡高等裁判所:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県
2023年の試験では、採用予定数453名に対して2,351名が合格しました。
採用は成績順に決まるのが原則であり、採用予定数の枠内に入る高順位で合格することが確実に採用されるための重要なポイントです。
裁判所事務官採用試験のまとめ
裁判所事務官になるためには、国家公務員試験を受験する必要があります。
高卒からでも裁判所事務官を目指すことができるため、学歴による制限はありません。
ただし、試験の難易度や倍率は高く、総合職試験と一般職試験のどちらを選択するかが重要になっています。
裁判所事務官を目指す場合は、出来るだけ早いうちから対策をし、好成績で合格することがポイントとなります。
裁判所事務官採用試験の結果
2023年度までの裁判所事務官採用試験の結果です。
2012年度以降は、院卒者試験と大卒程度試験を合計した数字としています。
裁判所事務官総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分+大卒程度区分)採用試験受験者数の推移
裁判所事務官総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分+大卒程度区分)採用試験の有効受験者数は減少傾向にあり、2023年度の受験者数は前年度よりやや減少し395人となりました。
裁判所事務官総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分+大卒程度区分)採用試験合格倍率の推移
裁判所事務官総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分+大卒程度区分)採用試験の合格倍率は2012年度をピークに近年低くなっており、2023年度は前年度より下降し15.8倍となっています。
裁判所事務官総合職試験(家庭裁判所調査官補)採用試験受験者数、合格率
院卒者試験と大卒程度試験をあわせた数字です。倍率は、第1次試験有効受験者数÷最終合格者数です。
裁判所事務官一般職(裁判所事務官,大卒程度区分)採用試験受験者数の推移
裁判所事務官一般職(裁判所事務官,大卒程度区分)採用試験の有効受験者数は2020年度に大幅に減少しましたが、2023年度は8,575人となりました。なお、一般職試験の数字は、全国の合計です。
裁判所事務官一般職(裁判所事務官,大卒程度区分)採用試験合格倍率の推移
裁判所事務官一般職(裁判所事務官,大卒程度区分)採用試験の合格倍率は、近年7倍前後となっておりましたが、2023年度の合格倍率は前年度より下降し3.6倍となりました。
裁判所事務官一般職(高卒者試験)採用試験受験者数の推移
裁判所事務官一般職(高卒者試験)採用試験の有効受験者数は近年3,000人前後を推移しております。2023年度は3,003人となりました。
裁判所事務官一般職(高卒者試験)採用試験合格倍率の推移
裁判所事務官一般職(高卒者試験)採用試験の合格倍率は近年下降傾向にあります。2023年度の合格倍率は11.9倍となっています。
2024年度 裁判所事務官採用試験の概要
総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分・大卒程度区分)
試験日 | ・第1次試験:2024年5月11日(土) ・第2次試験:筆記試験 2024年6月8日(土)、人物試験 2024年6月10日(月)~6月21日(金) ・第3次試験:2024年7月16日(火)~7月17日(水) |
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試験地 |
第1次試験東京都、横浜市、さいたま市、千葉市、水戸市、宇都宮市、前橋市、静岡市、甲府市、長野市、新潟市 第2次試験筆記試験:第一試験地に同じ 第3次試験東京都 |
受験資格 | [院卒者区分] 1994年4月2日以降に生まれた者で次に掲げるもの 1 大学院修士課程又は専門職大学院専門職学位課程を修了した者及び2025年3月までに大学院修士課程又は専門職大学院専門職学位課程を修了する見込みの者 2 最高裁判所が1に掲げる者と同等の資格があると認める者 <大卒程度区分> 1 1994年4月2日から2003年4月1日までに生まれた者 2 2003年4月2日以降に生まれた者で次に掲げるもの (1)大学を卒業した者及び2025年3月までに大学を卒業する見込みの者 (2)最高裁判所が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者 |
試験科目 |
第1次試験<基礎能力試験(多肢選択式)> 第2次試験<論文試験(小論文)> 第3次試験<人物試験> |
合格率 | 15.8倍(2023年度) |
合格発表 | ・第1次試験:2024年5月30日 ・第2次試験:2024年7月4日 ・第3次試験:2024年7月31日 |
詳細情報 | 裁判所 採用試験情報 |
一般職試験(裁判所事務官,大卒程度区分)
試験日 | ・第1次試験:2024年5月11日(土) ・第2次試験:2024年6月10日(月)~7月8日(月) |
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試験地 | 東京都、横浜市、さいたま市、千葉市、水戸市、宇都宮市、前橋市、静岡市、甲府市、長野市、新潟市 大阪市、京都市、神戸市 名古屋市、津市、金沢市、富山市 広島市、山口市、岡山市、鳥取市、松江市 福岡市、長崎市、大分市、熊本市、鹿児島市、宮崎市、那覇市 仙台市、福島市、盛岡市、秋田市、青森市 札幌市、函館市、釧路市 高松市、高知市、松山市 |
受験資格 | 1.1994年4月2日から2003年4月1日までに生まれた者 2.2003年4月2日以降に生まれた者で次に掲げるもの ⑴ 大学を卒業した者及び2025年3月までに大学を卒業する見込みの者並びに最高裁判所がこれらの者と同等の資格があると認める者 ⑵ 短期大学又は高等専門学校を卒業した者及び2025年3月までに短期大学又は高等専門学校を卒業する見込みの者並びに最高裁判所がこれらの者と同等の資格があると認める者 |
試験科目 |
第1次試験<基礎能力試験(多肢選択式)> 第2次試験<論文試験(小論文)> |
合格倍率 | 3.6倍(2023年度) |
合格発表 | ・第1次試験:2024年5月30日 ・第2次試験:2024年7月31日 |
詳細情報 | 裁判所 採用試験情報 |