裁判官の罷免・国民審査とは?
裁判官の罷免
裁判官は公平中立な裁判をおこなうために、憲法によって手厚く身分が保障されています。
一方で、裁判官にあってはならない国民の信頼を裏切るような行為を犯した場合には、裁判官であっても辞めさせることができる仕組みが必要です。
そのため、裁判官を罷免する仕組みとして、罷免事由等が限定された「裁判官弾劾制度」が採用されています。
弾劾法2条により、裁判官が弾劾裁判により罷免されるのは「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき」、また「その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき」と定められています。
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国会議員で構成される裁判官弾劾裁判所
「裁判官弾劾裁判所」は国会が憲法64条に基づいて設置した機関で、衆議院と参議院の合計14名の国会議員で構成されています。
裁判員はすべて国会議員から構成されますが、所属する政党や会派から独立し「国民の代表」として、それぞれの良心に従って裁判員の職務を果たします。
最高裁判所裁判官の国民審査
最高裁判所裁判官の国民審査は、「憲法」と「最高裁判所裁判官国民審査法」に基づき、すでに任命されている最高裁判所の裁判官がその立場にふさわしい者かどうかを国民が審査する制度です。
最高裁判所は、内閣の指名に基づいて天皇によって任命された「最高裁判所長官」と、内閣によって任命され天皇の認証を受けた14人の「最高裁判所判事」によって構成されています。
国民審査は、内閣が裁判官の人事権を濫用することを防止し、司法権に対しても国民の民主的なコントロールを及ぼすために非常に重要な意義を持つものです。
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国民審査の方法
最高裁判所裁判官は、任命後初めておこなわれる「衆議院議員総選挙」の際に国民審査を受けます。
その後は、審査から10年を経過した後におこなわれる「衆議院総選挙」の際に再審査を受け、その後も同様となります。
最高裁判所は、財産の争いを解決したり、犯罪を犯した人を罰するために訴訟を審理する、日本の司法制度における最高機関です。
国民は、その最高裁判所の裁判官としてふさわしくない、辞めさせるべきだと思う裁判官がいれば、名前が記載された投票用紙に「×」を書きます。
そして「×」の票が有効票の過半数に達すると、その裁判官は罷免されることになります。
国民審査の形骸化
最高裁判所裁判官の国民審査は、昭和24年の衆議院選挙から実施されていますが、これまで国民審査によって罷免された裁判官は1人もいません。
考えてみればわかりますが、今の最高裁判所裁判官が誰で、どのような経歴を持ち、これまでどんな審判をおこなってきたのかを知っている人は、国民全体でどのくらいいるでしょうか。
大きな事件で、ニュースで何度もとりあげられた裁判であれば知っている人も多いかもしれませんが、一般的に最高裁判所裁判官のことをよく知る人は少ないでしょう。
そして国民が投票用紙に何も書かなかった場合は、「裁判官を信任した」とみなされます。
こうした状況から、実際にどれだけの人が本当に信任しているのかは疑問が残る部分であり、制度の形骸化が問題となっています。