警察官の高卒と大卒の違いは? 難易度や配属後のキャリアについても解説
高卒・大卒から警察官になる方法の違い
各都道府県が実施する警察官採用試験は、以下のような区分で募集・実施されています。
- Ⅰ類:大卒程度
- Ⅱ類:短大卒程度
- Ⅲ類:高卒程度
志望者は、それぞれの最終学歴に応じた区分の試験を受けることが一般的ですが、「程度」という言葉からもわかるように、受験するために学歴が必須というわけではありません。
年齢などの要件を満たせば、高卒であってもⅠ類の試験を受けたり、反対に大卒がⅢ類を受けたりすることも制度上は可能です。
採用試験を受験し、合格を目指すという点において、高卒・大卒によって警察官になる方法に違いはないといえます。
ただ、筆記試験の難易度を考えれば、特段の事情がない限り、目指す区分に応じた学校に進むことが望ましいでしょう。
また、都道府県によっては、各区分、高卒・大卒で明確に受験者を分けているところもあります。
勤務を希望する地域が具体的に定まっているなら、各都道府県警察の過去の採用状況を確認してみるとよいでしょう。
なお、「キャリア」と呼ばれる「警察庁」勤務の警察官になるには、試験を受けるために大卒以上の学歴が必要です。
高卒・大卒から警察官になる難易度の違い
警察官採用試験の競争倍率は、都道府県によって多少の差があるものの、高卒程度のⅢ類、大卒程度のⅠ類とも、近年は6倍~10倍前後で推移しています。
ただし、筆記試験自体の難易度は、それぞれの学校卒業レベルに見合った知識が問われるため、Ⅰ類のほうがⅢ類よりはるかに難しいことは間違いありません。
Ⅰ類では政治や経済、法律に関する専門知識が必要になるのに対し、Ⅲ類で求められるのは国語、英語、数学など各科目の高校卒業レベルの知識です。
もしも高卒からⅠ類を受けるならば、独学で大学卒業レベルの知識を身につけなければなりません。
かなりの長期間にわたって勉強だけに集中できる環境がないと、試験合格は難しいでしょう。
高卒警察官と大卒警察官になった後の違い
高卒からⅢ類試験を受けて警察官になった場合と、大卒からⅠ類試験を受けて警察官になった場合とでは、共通する点・異なる点の両方があります。
以下では、警察官として採用された後にたどる時系列順に、高卒がⅢ類、大卒がⅠ類という前提で、比較してご紹介します。
研修期間
高卒でも大卒でも、警察官として採用されたあと「警察学校」に入学して、警察官に必要な知識・技能を学ぶのは同じです。
ただし、その在学期間については、高卒が約10か月間であるのに対し、大卒は約6か月間と、4か月ほどの違いがあります。
これは、大卒で採用された人については、ある程度法律などの基礎的な知識をすでに有しているとみなされるためです。
したがって、あとから警察学校に入学した大卒者が高卒者より先に卒業するケースもあります。
配属後
警察学校卒業後は、高卒の人も大卒の人も、まず交番勤務となるケースがほとんどです。
ただ、初任給には若干の違いがあり、大卒のほうが高卒より3万円~5万円ほど高く設定されています。
なお、警察官の世界においては、実年齢に関係なく勤続年数の長いほうが「先輩」であるため、大卒で警察官となった場合、自分より年下の警察官から仕事を教わることも珍しくありません。
その後のキャリア
高卒であっても大卒であっても、生活安全部門や交通部門、刑事警察部門など、数年単位での部署異動を繰り返して、さまざまな経験を積んでいくことは共通しています。
しかし、階級を上げるための昇任試験を受けるのに必要な勤続年数には差があり、高卒者は4年間であるのに対して、大卒者は2年間ですみます。
このため、スタート時点の階級こそ高卒・大卒ともに「巡査」ですが、その後に巡査長、部長、警部補と昇任していくスピードは、高卒より大卒のほうが早くなりやすいでしょう。
これに伴って、得られる給与も大卒のほうが高くなる可能性が高いといえます。
警察官になるなら、高卒・大卒どっちがおすすめ?
警察官になるにあたって、大卒のほうが、研修期間の短さや初任給の高さ、昇任するスピードなどの面で、高卒より有利といえるかもしれません。
しかし、高卒の場合、大卒よりも4年早く警察官としてのキャリアをスタートさせていますから、それだけ多く現場経験を積めますし、収入の点でも4年ぶん大卒者より多く得られます。
警察官の仕事では、現場で身につけていく「実務スキル」が非常に重要であり、4年の経験はそう簡単に埋まるものではありません。
早くから第一線でバリバリ活躍したいという人は高卒で、キャリアアップの意欲が強く、将来的に管理職を目指したい人は大卒で、それぞれ警察官になることがおすすめです。