刑事になるには? 仕事内容や必要な素質について解説

警察官の中でも、強盗事件や窃盗事件といった事件捜査を専門とするのが「刑事」です。

刑事は希望すれば誰でもなれるわけではなく、まずは一般の警察官として経験を積み、適性を認められる必要があります。

この記事では、刑事の仕事内容や、刑事になるために必要なこと・素質などを解説しています。

刑事の仕事内容

刑事とはどのような役割をもつ人なのか、刑事の仕事内容について説明します。

凶悪な犯罪や事件の捜査・解決を目指す警察官

刑事は、各都道府県の警察本部・警察署内の刑事部門に所属し、「刑事事件」を担当する警察官です。

警察組織においては、「刑事警察」とも呼ばれています。

刑事は、張り込み捜査や聞き込み捜査などを行って、事件や事故に関する情報を集め、犯人を逮捕することを主な役割とします。

手掛ける刑事事件の種類によって、刑事部は、以下のように複数の課に分かれています。

【刑事部門の「課」】

  • 捜査一課:殺人や傷害、強姦などの凶悪事件を担当する
  • 捜査二課:詐欺や贈収賄といった知能犯を追う
  • 捜査三課:空き巣や万引き、ひったくりなどの盗犯を追う
  • 捜査四課:暴力団など反社会的勢力の取り締まりを担当する
  • 小規模な都道府県では、三課・四課が設置されていないこともあります。
  • 警視庁(東京都の都道府県警察)では、2022年4月から三課と四課が統合されて「暴力団対策課」という名称になっています。
  • テレビドラマや映画などの影響で、刑事は張り込みや追跡などに多くの時間を費やすと思われがちですが、実際にはデスクワークをする時間も少なくありません。

    もちろん犯人を検挙し、検察庁に送検することがひとつの目標ではあるものの、検察官が起訴・不起訴を決定したり、裁判で事実関係を争ったりするためには、それらの根拠となる膨大な捜査関係資料の作成が不可欠です。

    このため、刑事は現場の実況見分調書や証拠物品の報告書、被害者をはじめとする関係者の聞き取り調書など、文書作成業務に多くの時間を使います。

    フィクションの世界には書類づくりに追われて残業する刑事などまず登場しませんが、実際の業務にはそのような側面もあることを知っておきましょう。

    刑事と警察官の違いは?

    「刑事」と「警察官」は、異なる職業ではありません。

    警察官という大きな職業があり、そのなかの一部の人が、刑事(刑事警察)として働いています。

    警察組織は非常に大きく、内部はいくつもの部門に分かれています。

    刑事のほかには、交番勤務で地域の人々の暮らしを守る「地域警察」、交通事故の防止や取り締まりに取り組む「交通警察」、特殊詐欺や日常的な困りごとを担当する「生活安全警察」などを担当する警察官がいます。

    警察官としての長いキャリアの中で、能力・適性などが認められて刑事(刑事警察)に任命される人もいれば、そうでない人もいます。

    刑事になるには

    刑事は、新任の警察官がいきなりなれるものではありません。

    まずは交番勤務などで実務経験を積み、評価や推薦を受けることで、刑事になる道が開けていきます。

    まずは一般の警察官として経験を積む

    刑事になるには、警察官採用試験を受けて警察官となった後に、経験を積み、上司から推薦してもらう必要があります。

    新任警察官は、各警察署の地域課に所属して交番勤務を行うことが一般的ですが、その際に犯人を検挙したり、捜査員として活躍したりすると、推薦されやすくなるといわれます。

    このほか、各種訓練や、柔道や剣道といった武道の成績が評価されるケースもあります。

    また、日頃から上司に対して刑事志望であることをアピールしておくことも有効です。

    刑事になるための講習を受けて合格を目指す

    上司の推薦を得られれば、「刑事講習」を受けて実務を習うとともに、書類審査や面接などで刑事としての適性を判断されます。

    そして刑事講習に合格した者のなかから、欠員補充要請に合わせて刑事部門の各課に配属されます。

    推薦を受けられるのは各所轄署において年間2~3人程度といわれているため、そこからさらに刑事講習を突破して刑事になれる人はほんの一握りです。

    なお、上司からの推薦状を得ること以外にも、日常業務において目立った活躍をすると、刑事部門の人から直接声をかけてもらえるケースもあるといわれています。

    刑事に必要な素質

    刑事には、テレビドラマなどによくあるような、真実を見抜く鋭い観察力や推理力、判断力ももちろん必要ですが、それよりも重要なのは精神的・身体的にタフであることです。

    刑事の仕事はときに危険にさらされる可能性もありますし、犯罪現場を見るなど気分の悪い思いをすることも多々あります。

    また、なかなか事件が解決できない場合には、何日も根気よく捜査を続けなければならず、ろくに帰宅することさえできないケースも珍しくありません。

    体はもちろん、心も強い人、あるいは強くなろうという気概のある人が求められます。

    刑事講習における面接においても、そういった業務の過酷さを認識したうえで、それでもなお刑事になりたいという強い意思を示すことが必要です。

    刑事の給料・待遇

    刑事とはいっても、警察官であることに変わりはありません。

    そのため、給料は他の警察官と同じように「階級」によって決まります。

    ただし、犯罪捜査を行う刑事は危険をともなう仕事に携わる機会が多くなるため、犯罪予防・捜査手当など「特殊勤務手当」が増える傾向にあるといわれます。

    警察官の階級別の給料目安は、以下の記事で詳しく解説しています。
    警察官の階級一覧・階級別の役職・仕事内容・年収

    刑事のキャリアアップ

    刑事として現場経験を積むなかで適性が認められると、さらなるキャリアアップの道が開かれます。

    たとえば、以下のようなキャリア例があります。

    • 警察本部の国際捜査課に異動して、外国人の絡む国際犯罪を捜査する
    • 外務省に派遣されて海外の領事館で勤務する
    • 特殊詐欺などの知能犯を専属的に追いかける など

    ひとくちに刑事といってもその仕事内容は多岐にわたっており、求められる素質も異なるため、自分の得意分野や強みによってさまざまなキャリアが考えられるでしょう。

    「刑事になるには」まとめ

    刑事は、警察官の一部であり、強盗事件などの事件捜査を専門に行う人のことを指します。

    刑事になるためには、まず警察官として交番勤務などの経験を積み、上司から推薦してもらう必要があります。

    普段の勤務態度や実績、適性などを認めてもらうことも重要です。

    刑事としてキャリアを重ねると、さらに国際犯罪や特殊詐欺といった専門的な事件捜査を専門にする道も開けます。