警察官の需要・現状と将来性

警察官の現状

警察官の数は、警察法によってその定員が定められています。

警察官の人数は、警察庁勤務の人が約8000人、各都道府県警察で働く人が約28万8000人、併せて30万人弱となっています。(令和2年度現在)

公務員である警察官は、民間企業などとは異なってリストラなどはありませんので、自らの意思で退職したり、あるいは不祥事などを起こさない限りは、定年を迎えるまで働き続けることが可能です。

ただ、近年では、その「不祥事」を起こして懲戒免職処分になる警察官が度々ニュースで取り上げられ、悪い意味で世間の注目を集めています。

特定組織との癒着、捜査費用の私的流用、実体のないカラ出張、部下に対する陰湿ないじめ、パワハラ・セクハラなど、不祥事の種類はさまざまであり、なかには裁判沙汰に発展したケースもあります。

本来、警察官は一般市民よりも高い倫理観をもつべき職業ですので、これからの警察官には、その職務にふさわしい、正義感とモラルのある人材の登用が望まれます。

警察官の需要

警察官は、国の治安を維持し、私たちが安心して暮らせる社会を守っていくために絶対に必要な職業ですから、時代や景気動向などに左右されることなく、安定した需要があるといえます。

人口が減少していくことを考えれば、大きく採用人数が増えることは想定しにくいですが、毎年1万人前後の退職者が見込まれるため、それを補充する新規採用はどこの都道府県警でもまず間違いなく行われ続けます。

ただ、警察官の新規採用人数は地方自治体によって異なっており、基本的には人口に比例しています。

このため、警視庁(東京都)をはじめとした都市部では数百名単位の採用がある一方、地方の都道府県警では数十名前後の採用に留まっているところもあり、各地域における需要はかなり差があるといえます。

警察官の将来性

警察官は、公務員という安定した身分にあり、また社会秩序を守るという普遍的な役割を担っているため、将来性はきわめて安定しているといえます。

ただし、給与などの待遇面については、現状こそ危険かつハードな業務に見合った給与水準にあるといえるものの、中長期的には不透明感が残ります。

少子高齢化に伴う税収減、社会保障費用負担の増大によって、日本の財政はひっ迫しており、政府は公務員全体の給与削減を推し進めています。

このため、同じ公務員である警察官に対しても、今後人件費削減のための給与カットが行われる可能性も払拭することはできません。

これから警察官を目指す人は、国家の財政事情、政治動向にも注視しておく必要があるといえるでしょう。

警察官の今後の活躍の場

ほかの業界と同じように、警察組織においても情報技術や科学技術はめざましい勢いで進歩しています。

犯罪捜査に用いられる手法も日々高度化しているため、それらに対応できる専門警察官の育成が今後の課題といえるでしょう。

ハッキング行為、サイバーテロなどに対応するためのサイバー犯罪対策スタッフ、いわゆる「ホワイトハッカー」は、その最たる例といえます。

新規採用の場においても、プログラミングなどのIT知識・スキルをもつ学生を筆頭に、理系人材を積極的に受け入れる動きも目立っています。

また、日本を訪れる外国人観光客や、日本で就労する外国人労働者の数が年々増加し続けており、それにつれて外国人の犯罪件数が増加したり、犯罪が国際化することが懸念されています。

それらを取り締まる警察官に対しても、高い語学力や国際感覚を備えていることが、より重視されるようになるでしょう。

参考:警察官に関するデータ

110番通報受理件数の推移

警察庁の資料によると、令和2年中の110番通報受理件数は、約840万件であり、約3.8秒に1回、国民約15人に1人から通報を受理したこととなります。

110番通報受理件数の推移_令2

出所:警察庁 令和3年 警察白書

地方警察官の退職数の推移と退職者予想

毎年10,000人近くの地方警察官の退職者数が見込まれています。そのため、今後も警察官の採用は現状と同程度はあると想定できます。

地方警察官の退職者数の推移_28

出所:警察庁 平成29年 警察白書