独学で不動産鑑定士に合格できる? 勉強時間はどれくらい?
不動産鑑定士を独学で目指す人はいる?
不動産鑑定士試験の難易度はきわめて高く、受験者の大半は資格の専門学校などに通って、豊富な経験をもつ講師の指導を受けて試験に臨んでいます。
自宅の周りに予備校がなかったり、仕事の都合で通学が難しい人でも、インターネットを利用した通信講座を受講してWeb上でビデオ講義を視聴したり、添削を受けたりするケースが一般的です。
実際の合格者をみても、完全に独学で合格したという人はきわめてまれです。
しかし、不動産鑑定士試験には受験資格が定められていないため、制度上は独学でも試験を受けることは可能です。
以下では、なぜ不動産鑑定士試験に独学で合格することが難しいのかに着目して、独学で勉強する場合のメリット・デメリットについてご紹介します。
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独学のメリット
コストを抑えられる
独学で勉強する場合のメリットとして、まず試験対策にかかる費用を安く抑えられる点が挙げられます。
民間の資格専門学校に通学する場合、コースにもよりますが、入学金などを含めて最低でも30万円はかかります。
その点、独学で勉強する場合、必要となるのはせいぜいテキスト代程度であり、科目ごとの参考書を合わせても数万円あれば足りるでしょう。
ただし、不動産鑑定士試験のテキストは、大手予備校が受講生向けの復習用教材として販売しているものが大半であり、まったくの初学者を対象としたものは非常に少ないのが実情です。
自分のペースで勉強できる
専門学校などの講義を受ける場合、決まった時間、決まった場所に集まらなくてはなりませんが、独学の場合は、勉強する時間帯も場所も、勉強内容も、自分で自由に決めることができます。
不動産鑑定士試験の出題範囲は広く、各人の学習進捗状況によって理解度はバラバラであるため、ほかの人に合わせることなく、マイペースに勉強できるのは独学の大きなメリットといえます。
しかし、近年はスマートフォンやPCを利用して、自分の好きなときにWeb上で講義を受けることもできるため、通信教育でも独学とほぼ同じメリットを享受できるでしょう。
独学のデメリット
鑑定評価理論を理解しにくい
不動産鑑定士試験では、行政法規、民法、経済、会計など、幅広い分野から問題が出題されますが、最も大きな配点比率を占めているのは鑑定評価理論です。
従って、鑑定評価理論でどれだけ得点できるかが合否を分けるカギとなりますが、同科目は単なる知識の丸暗記で対応できるものではなく、独自の思考方法を身につける必要があります。
まったく予備知識のないところから「最有効使用の原則」や「適合性の原則」といった鑑定評価理論特有の考え方を理解することは、独学では非常に困難といえるでしょう。
論文式試験が対策しにくい
不動産鑑定士試験は、一次の短答式試験、二次の論文式試験の2段階に分けて実施されます。
短答式試験は5肢択一のマークシート方式であり、例年ある程度似通った問題が出されますので、過去問を徹底的に繰り返し学習すれば、独学でも合格は可能かもしれません。
しかし、短答式試験合格者だけが受けられる論文式試験は、上述の鑑定評価理論に代表されるように、独自の考え方を理解したうえで、解答を2000字程度の長文にまとめる必要があります。
独学の場合、そもそも理論の組み立て方や語句の言い回しなどの書き方を覚えるまでに多大な時間がかかるうえ、短答式とは違って、自分の書いた論文を自分で添削することはきわめて困難です。
さらに、短答式試験をパスしても、3年以内に論文式試験に合格できなければ、再び短答式試験から受けなおさなければならないという時間的制約もあります。
不動産鑑定士試験に独学で合格することが困難である最大の要因は、この論文式試験にあるといえるでしょう。
モチベーションを維持しにくい
不動産鑑定士試験に合格するために必要な勉強時間は、2000時間が目安とされています。
仮に、土曜も日曜も休まずに1日3時間の勉強を続けるとしても、合格までには丸2年ほどかかる計算になり、たった一人で長期間にわたるつらい勉強を続けるには、強靭な精神力が必要です。
しかも、まったくの独学で試験に挑む場合、理論の理解や記述式の対策なども自分で行わなければならない関係上、2000時間よりもはるかに多く時間がかかると想定しておくべきです。
わからないことがあっても質問する相手もいないため、途中で心が折れて投げ出したくなることもあるかもしれません。
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できるだけ独学で合格するためにはどうすればいい?
独学で勉強することが難しいとはわかっていても、可能な限り経済的負担を減らしたい、あるいは他人に干渉されず、自分のペースを守って勉強したいという人も少なくないかもしれません。
そうした場合、短答式試験と論文式試験を完全に切り分けて勉強することをおすすめします。
短答式試験で問われるのは行政法規と不動産鑑定評価理論の2科目です。
市販のテキストを利用するとともに、試験範囲が重複している宅建試験用のテキストも併用するとよいでしょう。
一通りの知識を身に付けた後は、ひたすら過去5年分~10年分の試験問題を解き、限りなく全問正解できるようになるまで繰り返し演習しましょう。
短答式試験のメドが立ったら、次は大手資格専門学校などで、論文式試験対策コースを受講しましょう。
費用がある程度かかってしまうことは否めませんが、少なくとも初学者向けコースよりはかなり安く抑えられるはずです。
もしも過去に論文試験を受けたことがあるなど、文章力に自信がある場合は、単発で実施される模試を受けるだけのコースを選択してもよいかもしれません。
大切なことは、ひとりよがりにならないよう、適宜第三者からの添削を受けること、そして自分の学習進捗状況を客観的に把握することです。
自分の実力と相談しながら、最もコストパフォーマンスのよい学習方法を模索してください。