中学校教師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「中学校教師」とは
中学校で専門教科の授業を行いながら、進路指導や生活指導を通じて生徒の心のケアを行う。
中学校教師の役割は、中学校において各教科の指導を行うとともに、進路指導や生活指導を通して生徒の健全な成長を支えていくことです。
具体的な業務内容は、専門科目の指導をはじめ、テストの作成・採点、部活動の指導、学校行事の準備、進路指導など多岐にわたり、事務的な業務も多くあります。
また、思春期で精神的に不安定になりがちな生徒一人ひとりと向き合いながら、心身の発達や個性を伸ばせるように手助けします。
中学校教師になるためには、教職課程のある学校で教職課程を修了し、中学校教員免許を取得したのち、教員採用試験に合格することが必要です。
採用数が多い都市部は採用倍率が低く、逆に地方は採用倍率が高い傾向があります。
公立の学校での勤務の場合、身分は地方公務員となるため待遇は安定していますが、部活動の指導などで休日を使って仕事をすることもあり、忙しく働く教師が多いです。
「中学校教師」の仕事紹介
中学校教師の仕事内容
各教科の指導を行い、生徒の成長を支援する
中学校教師は、中学校で各専門教科の指導を行うことをはじめ、生活指導やクラブ活動の指導、学校行事の運営などを担いながら、生徒の健全な成長を支援します。
中学校では、小学校よりも各教科の専門性が高くなるため、わかりやすい授業をし、生徒の確かな基礎学力を高めていくことが重要視されます。
工夫を凝らした授業を展開するために、時間をかけて授業の準備やテスト作成にあたる教師が多くいます。
担任を持った場合には、円滑なクラス運営をすることも重要な業務の一部です。
中学生は多感な時期であるため、生徒一人ひとりの個性を尊重しつつ、進路や人間関係などに不安を抱える生徒たちの心のケアにもあたります。
特別活動の支援、保護者との連携も重要な業務
中学校では、生徒会活動、クラブ活動、学校行事といった、さまざまな特別活動が行われています。
教師は、ほかの教師とも連携しながら、特別活動に生徒たちが自主的に関わり、場に即した行動・態度がとれるように支援していきます。
さらに保護者との面談も重要な業務の一部であり、学校での様子を保護者へ適宜報告したり、保護者からの教育に関する相談事にのったりすることもあります。
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中学校教師になるには
教諭の免許状を取得してから採用試験を受ける
中学校教師になるには、まずは「中学校教諭の免許状」を取得する必要があります。
この免許状は、教職課程のある大学院や大学、短大で所定の科目を修了することで取得可能です。
中学校教諭の免許状は、「国語」「社会」「数学」といった専門科目ごとに分かれているため、どの免許状を取得したいか事前に考えておくことが大切です。
学校卒業後は、就職先となる中学校を探します。
中学校は、大きく分けると「公立学校」と「私立学校」があり、前者の教師を目指す場合は各都道府県の教員採用候補者試験を、後者の教師を目指す場合は各学校が独自に実施する教員採用試験を受験します。
なお、学校によっては中学校と高校両方の免許状を求めることがあるため、高校の教員免許もあわせて取得しておくと、勤務先の選択肢は広がります。
臨時教員や非常勤講師として働く人も
中学校教師のなかには、正規雇用ではなく、非正規雇用で働く人がいます。
非正規の働き方は、大きく分けて「臨時採用教員」と「非常勤講師」の2種類があり、前者は正規雇用の教師と同じ待遇で働けますが、任期は1年以内です。
後者はアルバイトと同じ時給制で、担任や部活動を持つことはありません。
正規雇用で採用されなかった場合など、非正規で働きながら経験を積み、再び教員採用試験への合格を目指す人もいます。
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中学校教師の学校・学費
大学、短大、大学院のいずれかで免許状を取得
中学校教諭の免許状を取得するためには、所定の教科および教職に関する科目の単位を修得できる大学や短大、大学院に進む必要があります。
いわゆる「教職課程」を修得し、学校を卒業・修了することで教員免許状が授与されます。
学部の制限はありませんが、教育学そのものについて深く学びたい人は教育学部へ、各科目の専門知識を深めたい人は、関連する学部へ進学するケースが目立ちます。
たとえば国語の教師を目指す場合は文学部、理科の教師を目指す人が理学部、といった具合です。
中学校教師の免許状が取得できる学校は、日本全国に数多くあります。
学費は国公立大学であれば卒業までに250万円前後、私立大学では多くの場合、年間100万円以上の学費が必要です。
短大では在学期間が短い分、金銭的な負担は抑えられますが、実際には短大卒から中学校教師を目指す人は少数です。
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中学校教師の資格・試験の難易度
中学校教諭の免許状は科目別に分かれている
中学校教諭の免許状は、取得した学校の種類によって「二種(短大)」「一種(大学)」「専修(大学院)」の3種類があります。
どの免許状であっても、中学校教師として就職後の職務の内容は変わりません。
なお、各免許状とも「教科別」となっており、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、外国語などに分かれています。
なお、中学教諭免許状を取るために必要な単位に少し追加して学ぶと、高校教師になるための免許状(高等学校教諭免許状)も取得可能です。
採用試験の倍率は下降傾向だが、易しくはない
難易度は公務員試験の地方上級レベルともいわれ、決して易しいものではありません。
受験者の大半は既卒生であり、複数回挑戦している人たちがほとんどです。
近年は、民間企業による採用の活性化などの影響もあって、採用試験の倍率が下降傾向ですが、きちんと対策しておかなければ合格は難しいです。
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中学校教師の給料・年収
安定した収入が見込めるが、労働時間は長くなる傾向
中学校教師の給与体系は、勤務先が公立中学校か、あるいは私立中学校かによって異なります。
公立中学校の教師は、地方公務員として、各自治体で定める給料表に基づく給料が支給されます。
公立中学校教師の給料表の特徴は、給与月額の4%が「教職調整額」として支給されることで、一般の地方公務員よりもやや高めの収入が見込めます。
教員特有の手当が複数あり、一般的な公務員としての福利厚生も充実しています。
ただし、時間外勤務手当(残業代)は一切支給されないため、業務量の多さに対して割が合わないという意見も出ています。
私立中学校教師の給料・年収
私立中学校に勤務する教師の場合は、各学校が独自に定める給与規定に沿った給料が支給され、福利厚生の内容も、学校によってまちまちです。
各地域の公立学校教師と同程度の水準の場合が多いですが、それ以上に待遇がよい学校もあります。
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中学校教師の現状と将来性・今後の見通し
新しい時代にマッチした教育を実践できる若手が求められている
2000年代以降「団塊の世代」が大量に定年退職を迎えたことにともない、公立中学校の教員採用者数は増加を続けてきました。
しかし、その状況も落ち着きを見せつつあり、今後は採用数が徐々に減少していくと考えられています。
一方、自治体によっては、教師の労働環境の厳しさなどからなり手が思うように集まらず、教員不足が課題になっているケースもあるのが実情です。
教科や自治体ごとに状況は異なりますが、雇用形態に強いこだわりを持たなければ、中学校教師の需要は十分にあるといえるでしょう。
昨今では、情報通信技術を取り入れた「ICT教育」や、きめ細やかな指導を行うための「少人数指導」など、教育現場にも大きな変化が見られます。
時代にマッチした教育を実践し、難しい思春期の子どもたちをよい方向へと導ける、熱心な中学校教師の活躍が求められています。
中学校教師の就職先・活躍の場
公立中学校と私立中学校がある
中学校の教師の活躍の場は、大きく分けると「公立中学校」と「私立中学校」の2種類があります。
公立中学校とは、各地域に根差しており、市町村教育委員会が運営する学校です。
中学校は義務教育であるため、公立中学校では入学試験もなく、多種多様なバックグラウンドの生徒が集まります。
基礎的な学力を伸ばすとともに、社会性を育み、生徒が希望の進路を選択できるようにサポートします。
一方、私立中学校は、学校ごとに独自のカリキュラムを設定しています。
いわゆる「カラーの違い」が大きく、公立中学校とは異なり、入学のための選抜試験を行い、授業料を集めて運営しているのも特徴です。
私立中学校には、その学校の教育理念に賛同した保護者や生徒が通うため、教師にも、その理念を体現するための指導が求められます。
中学校教師の1日
早朝から夜遅くまで忙しく働く人が多い
中学校教師の日々の業務は、担当科目の授業をおこなうことをはじめ、提出物のチェック、テストの採点、プリントなど配布物の作成、授業準備など、多岐にわたります。
加えて、職員会議への出席や、校務分掌(校内で定められた役割分担のこと)に沿った行事の準備、部活動の指導・引率、進路指導など、朝から夜遅くまで忙しく働く人が多いです。
ここでは、公立中学校で働く中学校教師の1日を紹介します。
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中学校教師のやりがい、楽しさ
生徒たちが日々成長していくためのサポートができること
中学校教師の仕事の大きな魅力は、未来ある子どもたちの教育に、最前線で深く関わることができる点です。
中学生は心身ともに成長が著しく、将来を少しずつ見据えはじめる大切な時期です。
思春期真っただ中の繊細な子どもたちに、教育者として接していくことには大きな責任が伴います。
思うように事が運ばずに頭を悩ませる日々が続くこともありますが、信念に基づく指導をし、生徒たちが少しずつたくましく成長していく姿を間近で見られるのは、中学校教師にとって非常に喜ばしいことです。
生徒と共に感動を分かち合える機会が多いこと
中学校では、年間を通じてさまざまな行事が用意されています。
行事の準備や運営は大変ですが、年間行事のスケジュールはある程度固定化されているため、慣れれば慣れるほど効率的にこなせるようになります。
生徒にとっても、行事は学生生活での楽しみのひとつです。
生徒と共に協力して準備を進めていき、無事に終わったときには、毎回感動を分かち合えます。
こうした一つひとつの思い出が、中学校教師として働く宝物になっていくことは間違いありません。
中学校教師のつらいこと、大変なこと
多感な子どもたちと接する難しさ
近年、中学校教師を含めた教員の過酷な労働環境が、社会問題として取り上げられています。
とくに中学校教師は、思春期の多感な子どもたちと接するため、苦労が大きくなりがちです。
授業の準備や生活指導、進路相談などで朝は早く、夜も長時間残業となり、さらに精力的な部活動の顧問になった場合には、休日も出勤しなくてはならないケースが増えます。
担当するクラスによっては、学級崩壊やいじめ、登校拒否といった難しい事態が起きることも想定され、心身ともにハードな日々を送ることになります。
想像以上の業務量の多さに苦労する人も
もともと中学校教師を目指す人は「子どもが大好きで、教育者として成長したい」という熱い思いを抱いている人ばかりです。
しかし、いざ現場に入ってみると、あまりに業務量が多く、疲れ果ててしまう人もいるのが現実です。
「少しでもわかりやすい指導をしたい」「生徒に充実した学生生活を過ごしてほしい」など、子どものために一生懸命になればなるほど、残業時間や持ち帰り仕事が増えがちで、自分が休めなくなるのも教師がジレンマを抱える要因です。
適度に気分転換をしたり、周囲の先生方にも相談したりしながら、上手に仕事を続けていく工夫が必要といえます。
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中学校教師に向いている人・適性
教育者として、生徒と真剣に向き合う覚悟がある人
中学校教師の適性として大切なことのひとつは、まず「子どもの成長をサポートしたい」「教えることが好き」といったものです。
教育者として、子どもの可能性を強く信じ、子どもがよい方向に歩んでいけるように深く関わっていく気持ちが不可欠です。
とくに中学生は思春期で、複雑な感情や悩みを抱えている子も少なくありません。
本気で子どもと関わっていく覚悟をもてる人に向いているといえます。
また、中学校教師は山のような日常業務を抱えながら、保護者からの要望、学級内でのトラブル全般に適切な対応をとっていく必要があります。
人の気持ちを常に思いやり尊重できるすぐれた人間性や、信頼に足る指導力、統率力、コミュニケーション能力なども重要な要素です。
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中学校教師志望動機・目指すきっかけ
なぜ中学校を希望するのかを明確にすることが大切
中学校教師を目指すきっかけは、人それぞれ異なります。
比較的多いのは、「中学生時代の担任教師が大好きで、自分も同じような教師になりたいと思った」あるいは「中学時代の部活の顧問に何度も励まされて、その後の人生に影響を与えた」といったケースです。
また、中学校になると科目ごとに担当が変わるため、「自分が好きな科目の魅力を多くの子どもたちに伝えたい」などの思いから、この仕事を目指す人もいます。
志望動機に正解はありませんが、採用試験に向けて志望動機を考える際には、同じ教師でも「小学校教師」や「高校教師」ではなく「なぜ中学校教師なのか」を明確に言えるように準備しておきましょう。
子どもと関わる職業は教師以外にもたくさんあるなかで、中学校や中学生に対して、自分がどのように関わっていきたいのかを深く考えることが大切です。
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中学校教師の雇用形態・働き方
正規雇用のほか、非正規雇用で働く教師もいる
中学校教師の雇用形態は「正規雇用」と「非正規雇用」の2パターンに分かれます。
正規雇用はいわゆる常勤で、雇用期限がなく、定年に向けて長く働き続けることが可能です。
待遇面も安定しているため、多くの教師志望者は正規雇用で働くことを目指しています。
しかし、現場では非正規雇用で働いている中学校教師も決して少なくありません。
非正規雇用の教師は「臨時的任用教員」と呼ばれ、「常勤講師」と「非常勤講師」の2種類に分かれます。
この場合の常勤講師は担任は持てますが、期限付きの雇用で、産休育休を取得している教師の代わりとして働くのが通例です。
一方、非常勤講師は授業単位での穴埋めを行うために雇用されておる、いわゆる時給制で働くアルバイトのような形態です。
教師不足の地域を中心に、非常勤講師が活躍するケースも目立ちます。
中学校教師の勤務時間・休日・生活
定められた勤務時間を超えて働く教師が多い
公立中学校では、8時前後が勤務開始時刻で、終了時刻は16時から17時の間に設定されています。
しかし、この時間内のみで働く中学校教師はほとんどおらず、早朝から夜遅くまで仕事をしている人が多いです。
生徒が校内にいる時間は、授業やホームルーム、部活動の指導など、生徒との関わりが業務の中心になります。
生徒の下校後には、保護者からの電話対応、授業準備、プリント作成、テストの採点など、膨大なデスクワークを処理していきます。
公立学校で働く中学校教師の場合、基本的に土日と祝日は休みですが、部活動の顧問をしていると、週末の練習や試合などで出勤しなくてはならない場合があります。
実際の忙しさは各学校の体制によっても多少異なるものの、プライベートを最重要視したい人には、中学校教師は厳しい職業といえそうです。
中学校教師の求人・就職状況・需要
自治体によって採用人数や倍率には差がある
公立中学校教師になるための教員採用試験は、自治体によって採用人数が異なります。
ただし全体として、小学校の採用試験に比べて中学校の採用試験では倍率が高くなりがちです。
現状では、教師不足の影響で安定した需要があるといえますが、自治体によっては高倍率となりますし、今後は少子化の影響で採用人数が大きく抑えられる可能性も考えられます。
なお、昨今では予算の問題もあって、非正規の形態で雇用される教師が増えています。
正規雇用で採用されなかった場合には、非正規として働きながら次回のチャレンジのために勉強を続ける人もいます。
中学校教師の転職状況・未経験採用
年齢制限は緩く、異業種からの転職も可能
中学校教師は人手不足の状況にあるため、異業種からの転職を目指すことは決して不可能ではありません。
昨今では、公立中学校で働くための教員採用試験に、年齢制限を設けない自治体も増えています。
年齢制限がある場合でも、自治体によっては59歳まで受験できるなど、何歳になっても目指せる可能性があります。
ただし、教員採用試験は試験範囲が非常に広いため、突破するには十分な準備期間が必要です。
現在の仕事を続けながら転職を目指す場合は、勉強時間をどれだけ確保できるかが大きなポイントとなります。
学級担任を持っている教師と持っていない教師の違い
担任を持たない教師は「非常勤講師」の場合も
公立中学校では、教師として正規雇用されている場合には、基本的にほとんどの教師が担任を受け持ちます。
とくに若手のうちは、積極的に生徒との触れ合いの機会を増やすために、担任に就くことが多いです。
キャリアを重ねていくと、担任に加えて「学年主任」の役割を任され、ほかの担任のまとめ役を担います。
一方、担任を持たない教師もいますが、その場合はたいていが「副担任」となって、担任をバックアップします。
副担任になるケースの多くは、ほかの教師よりも授業数が多い場合や、家庭の事情などを考慮してというのが一般的です。
また、非正規雇用の「非常勤講師」として採用されている場合には、担任を持てません。
担任を持つと、クラス運営や行事準備など多忙になりがちですが、担任を持たない教師であっても、そのぶん校務分掌の仕事が多く割り当てられるなど大変な面があります。