財務専門官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「財務専門官」とは

財務専門官の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

財政・金融のプロフェッショナルとして、国の予算執行調査や金融機関の検査・監督を行う。

財務専門官は、財務省の出先機関である全国の財務局や財務支局を中心に勤務する国家公務員です。

業務領域は大きく「財政」「金融」「その他」の3つに分けられ、国の公共事業や社会保障の予算編成をチェックしたり、金融機関の検査・監督を行うことで預金者の保護を行ったりします。

また、国有財産の有効活用によって「まちづくり」に貢献したり、地震や台風などの災害時には公共施設復旧のためにかかる費用を速やかに確認したりなど、金融・財政のプロフェッショナルとして「地域」と「国」をつなぐ架け橋となります。

財務専門官になるためには、年に一度実施される「財務専門官採用試験」の受験が必須です。

この試験に合格した人のうち、成績のよい順に採用者が選ばれていきます。

「財務専門官」の仕事紹介

財務専門官の仕事内容

国と地域をつなぐ財政・金融の専門家

財務専門官は、財務省の出先機関である財務局や財務支局を中心に勤務する国家公務員です。

業務領域は大きく「財政」「金融」「その他」の3つに分けられます。

<財政>
財政業務としては、国が行う公共事業や社会保障などの予算の内容チェック、地方公共団体への財政融資資金の貸し付け、国有財産の有効活用などが挙げられます。

<金融>
金融業務は、地方銀行や信用金庫、証券会社などの検査・監督が代表的で、預金者や投資家を保護することが目的です。

<その他>
その他の業務には、企業へのヒアリングや地域経済に関するデータの収集・分析があります。

財務専門官からの報告を基に、財務省が経済政策を企画・立案します。

財政・金融の面で国と地域の架け橋となる

いずれの領域においても、財務専門官は、財務・金融のプロフェッショナルとして、国とそれぞれの地域をつなぐ架け橋として活躍します。

地域に合わせた財政、国有財産、金融などの施策を実施するとともに、財務省や金融庁の重要施策を広報することも重要な役割の一部です。

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財務専門官になるには

財務専門官試験を受験して財務局に採用されることが必要

財務専門官になるには、公務員試験の一種である「財務専門官採用試験」の受験が最初のステップとなります。

試験合格後、勤務を希望する財務局に採用されると、財務専門官として働けます。

なお、財務専門官採用試験では、合格者のなかから成績上位順に採用されるため、たとえ試験に合格しても成績次第では内定を得られない可能性がある点には注意が必要です。

採用後は日本各地の本局や財務事務所に勤めながら、財務局職員としての基礎知識やビジネスマナーを学ぶ「基礎研修」や、より実践的な内容の「地方基礎研修」を受け、専門性を磨きながら実務に携わっていきます。

年齢次第で高卒でも応募可能、女性の活躍も目立つ

財務専門官専門試験の受験資格のうち、年齢要件については「受験年度の年齢が21歳~30歳(※試験年度に21歳の学生は、大学、短期大学、高等専門学校の卒業または卒業見込みの条件あり)」となっています。

この範囲に該当すれば学歴は関係なく受験可能ですが、試験の難易度は決して易しいものではないため、きちんと勉強する必要があります。

また、財務専門官は毎年、採用者のうち3分の2程度は女性が占めています。

女性の応募者も比較的多く、性別関係なく活躍しやすい職種となっています。

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財務専門官の学校・学費

学歴不問だが、大学に進学しておくのが望ましい

財務専門官採用試験は、受験する年度の4月1日時点で21歳未満の場合、大学、短大、高専のいずれかを卒業見込であることが必要ですが、21歳以上30歳未満であれば、学歴は問われません。

ただし試験科目には、公務員に必要な一般教養に加えて、財政学や統計学、会計学、経営学などの専門分野が多数含まれます。

すべてを独学で勉強することは非常に困難であるため、大学の法学部や政治・経済学部などに進学し、法律や政治・経済の勉強をしておくと、採用試験対策のためには少し有利になるでしょう。

実際、財務局で働いている職員の大半は大卒者とされているため、財務専門官を強く志望する場合、大学に進学しておくほうが望ましいです。

財務専門官の資格・試験の難易度

成績上位での合格を目指すことが重要

財務専門官採用試験は、筆記試験の1次試験、人物試験(面接)の2次試験という2段階選抜で実施されます。

1次試験でボーダーライン以上の点数を取らなければ、2次試験に進むことはできません。

この両方を突破した最終合格倍率は、2015年から2020年では5.0倍~8.6倍で推移しています。

ひと昔前に比べるとやや合格倍率は下降傾向ですが、合格した全員が採用されるわけではありません。

毎年採用予定数の3倍を超える人数が最終合格者となっており、試験成績が合格者のうちの上位25%~30%くらいに入っていないと、内定を得られない計算になります。

採用の可能性を高めるのであれば、できるだけ成績上位で合格しておく必要があります。

予備校で試験対策をする学生も多い

財務専門官採用試験の勉強のために、大学などとは別で、民間の予備校に通っている人も少なくありません。

公務員対策講座のある予備校では、財務専門官を目指すためのコースが設けられていることが多く、距離的に通えない人向けの通信講座もあります。

現役学生のほか、社会人でも受験できる講座もあるため、時間を有効に使って効率的に勉強したい人は検討してみるとよいでしょう。

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財務専門官の給料・年収

専門性に見合った高めの収入が得られる

財務専門官の給与は、国家公務員の給料を定めた「国家公務員俸給表」のうち「行政職俸給表(一)」が適用されます。

毎月の給料は1~10級まである職務の級などにより変わり、入局当初は20万円前後、8~10級になれば50万円~60万円前後の月収が見込めます。

また、ボーナス(期末手当・勤勉手当)は1年間に俸給などの約4.5カ月分が支給されます。

なお、財務専門官には勤務する地域に応じた「地域手当」が付くため、勤務地によっても収入が大きく変わってきます。

こうした諸手当も含めると、年収は30代で600万円、40代で700万円に達する人が多く、専門性の高い業務にふさわしい高給が期待できるでしょう。

国家公務員としての福利厚生が充実

財務専門官は、家族や住居、妊娠・出産、育児などに関する手当や支援制度が充実しているため、安定感のある生活を送りやすいといえます。

また、国家公務員共済組合の組合員となるため、組合から病気・けが・結婚などの場合に給付金の支給が受けられたり、医療や貯金などの制度を利用することも可能です。

長く働けば確実な収入アップが望め、経済面での不安はほぼないでしょう。

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財務専門官の現状と将来性・今後の見通し

専門性の高い仕事を通じて国や地域に貢献できる

財政や金融に関する専門知識をもつ財務専門官は、国の経済発展や地域の活性化のために欠かせない存在といえます。

災害時の復興やまちづくりなど、財務局の仕事が世間からの注目を集める場面も増えており、今後についてもさらなる活躍が望まれます。

「国民目線」で地域に密着しつつ、国全体の視点で経済を動かすプロフェッショナルとして働けることはもちろん、経験を積んで金融庁や財務省に出向すれば、世界経済へ貢献することも可能です。

国家公務員としての安定性も高く、代わりの利かない専門的な仕事に携わるため、将来性についても明るいと考えておいてよいでしょう。

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財務専門官の就職先・活躍の場

全国にあるブロックのいずれかの財務局等で働く

財務専門官は、日本各地の地域を管轄する10の財務局と財務支局、および沖縄総合事務局財務部のいずれかに所属します。

各財務局が管轄する本局や支局、財務事務所、出張所などで勤務することになり、地域の特性を踏まえたうえで、財政、国有財産、金融等に関する施策を実施します。

なお、ほかの国家公務員と同じように「異動」がありますが、その範囲は基本的に各地域内に限定されたものです。

ただ、キャリアパスのひとつとして、東京の財務省や金融庁に出向する可能性もあります。

また、海外研修や国内外留学の機会も用意されているなど、実務経験を積みながらスキルアップを目指せます。

財務専門官の1日

メリハリをつけやすい働き方

財務専門官の業務のスケジュールは、勤務する財務局や配属される課によって異なります。

ただ、就業時間は原則として1日7時間45分の勤務と決まっており、繁忙期を除けば極端に残業が多くなることはないでしょう。

デスクワーク中心の日もあれば、打ち合わせや調査などで外出する日もあります。

ここでは、金融監督課で働く財務専門官の1日を紹介します。

8:30 出勤・メール確認と電話連絡
10:00 決算分析・資料作成
12:00 休憩
13:00 銀行から届く届出書類の確認
16:00 研修を受講
18:00 残務処理後、業務終了

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財務専門官のやりがい、楽しさ

手掛ける業務の公共性が高く、地域貢献ができること

財務専門官の業務内容は幅広く、国家公務員として社会のための多様な仕事を経験できることが魅力です。

たとえば地震や台風などの災害発生時には被災地へ出向き、道路や河川、公共施設などの復旧にかかる費用を査定し、地方自治体に資金を融資するなどして復興を支援します。

また、国有財産を使って「まちづくり」の一端を担うこともあり、地域の活性化にも貢献しています。

金融や財務の専門知識を生かして、各地域に貢献できる充実感が味わえます。

多忙な時期もありますが、国家公務員のなかではワークライフバランスがとりやすい職種といわれており、メリハリをつけて働きたい人にも魅力的でしょう。

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財務専門官のつらいこと、大変なこと

専門的な知識習得のための勉強の日々が続く

専門的な知識習得のための勉強の日々が続く

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財務専門官に向いている人・適性

自己研鑽が好きで、向上心の高い人

財務専門官の仕事内容は多岐にわたるうえ、高度な専門知識が求められます。

このため、財務専門官として採用されると、各職場に必要な知識を学ぶための業務研修などを通して、常にスキルアップを目指す姿勢が求められます。

自己啓発を支援する通信研修制度も設けられており、制度を利用して「簿記」や「中小企業診断士」「宅地建物取引士」「ファイナンシャルプランナー(FP)」など、多様な資格取得に励む人が多いです。

また、なかには海外の大学院に留学する人もおり、仕事に対する高い意識をもつ人材の中で働かなくてはなりません。

財務専門官の職場では、全体として自己研鑽が奨励される環境にあるため、勉強好きで、向上心の高い人に向いているといえるでしょう。

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財務専門官志望動機・目指すきっかけ

国家公務員と民間企業の違いを意識することが大切

財務専門官を志望するきっかけでよく聞かれるのは、「国の機関でありながら地域に密着して貢献できること」「金融のプロフェッショナルとして活躍できること」などがあります。

財政や金融の知識を駆使して働く、専門性の高い職業であることに魅力を感じている人も少なくありません。

しかし、銀行や証券会社といった民間企業でも、同様の特性をもった仕事に就くことは可能です。

いざ志望動機を考える際には、この点を念頭に置き「どうして国家公務員を目指すのか」「なぜ財務専門官でなくてはならないのかと」いうことを、自分の言葉で話せるように準備しておきましょう。

業務内容の理解を深めるためには、財務局が実施するインターンシップに参加してみることも有用です。

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財務専門官の雇用形態・働き方

ワークライフバランスを重視した働き方が可能

財務専門官として採用された人は、国家公務員の身分で、国や国民全体のための仕事に従事します。

安定した環境でキャリアアップを目指せるのが魅力ですが、財務専門官が所属する財務局では、とくに「仕事と子育ての両立支援」に力を入れています。

たとえば、国家公務員には育児休業や、女性職員を対象とした産前・産後休暇などの制度があるほか、男性職員に対しても妻の出産に伴い休暇がとれる制度や、育児参加のための休暇制度が用意されています。

財務局は、該当する職員のこれらの制度の利用率100%を目指しており、周囲に気を遣って休暇を取りづらいといった心配は必要ありません。

財務専門官は女性の人数も比較的多く、性別関係なく、仕事と家庭生活を両立させやすい職種といえます。

財務専門官の勤務時間・休日・生活

安定した生活スタイルを送りやすい

財務専門官は国家公務員であるため、勤務時間は原則1日7時間45分、週38時間45分に定められています。

財務専門官の仕事は地域金融機関や自治体との関わりが多いため、先方担当も日中に業務を行っていることから、夜遅くまで働くようなことはほとんどありません。

繁忙期には残務処理などで残業をすることもありますが、そうでないときは早めに仕事を終え、プライベートを充実させる人が多いようです。

普段は土日祝日が休みで、年末年始休暇や特別休暇の内容はほかの国家公務員と同様です。

毎週水曜日は「全府省一斉定時退庁日」となっており、どの職員も定時で仕事を終える取り組みがなされています。

ワークライフバランスはとりやすい職種です。

しかし、財務省や金融庁に出向をする場合は例外で、財務局勤務時よりはるかに多忙となり、年度末などは連日深夜まで残業を強いられる激務になる可能性が高いです。

財務専門官の求人・就職状況・需要

年間の採用人数はだいたい150人

財務専門官として実際に採用される人数は、年度によって多少の上下があるものの、近年では130人~170人前後で推移しています。

定年などによる退職者は毎年出ることもあって、一定の安定した需要がある職ではありますが、志望者も多いために狭き門といえます。

なお、採用はそれぞれの地方を管轄する財務局単位で実施され、採用人数は各財務局によってかなり差があります。

採用人数は管轄エリアの人口におおむね比例し、関東財務局では50人前後、近畿財務局で20人前後、東北財務局で10人前後となっています。

性別についていうと、全体でも各採用局でも、男性と女性の比率はおおむね2対1から1.5対1くらいになっており、男性のほうが多いものの、女性も決して少なくありません。

財務専門官の転職状況・未経験採用

難関試験を突破する対策が必要

財務専門官採用試験には「30歳未満」という年齢制限がありますが、この要件をクリアしていれば、民間企業などでの社会人経験者も受験可能です。

中途採用枠はないため、新卒者と同じ土俵で勝負する必要があります。

近年の競争倍率を考えれば、働きながら合格・採用に必要な成績を収めることは非常にハードルが高く、強い意思をもって計画的に勉強していく必要があるでしょう。

市販の参考書や問題集を使って独学で勉強する道もありますが、学生よりも時間が限られる分、公務員試験対策を専門に実施している社会人予備校に通い、効率的に学習したほうがよいかもしれません。

働きながら試験対策を希望する人向けに、休日や夜間に開講される講座もあります。

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財務専門官の勤務地・転勤は多い?

基本は採用された財務局管内で2~3年ごとに異動がある

財務専門官の主要な勤務地である「財務局」がある地域は、以下の9ヵ所です。

・北海道(札幌市)
・東北(仙台市)
・関東(さいたま市)
・北陸(金沢市)
・東海(名古屋市)
・近畿(大阪市)
・中国(広島市)
・四国(高松市)
・九州(熊本市)

これに加えて「福岡財務支局」と「沖縄総合事務局」のいずれかに勤務します。

各財務局や財務支局にはそれぞれ管轄する地域に事務所や出張所が点在しており、それらも勤務地です。

財務専門官は、ほかの国家公務員と同様に異動があり、通常は2~3年で別の勤務地に移ります。

基本は採用された財務局管内での異動ですが、各地域で広域に事務所がある以上、転居を伴う可能性になることも十分に考えられます。

またキャリアの過程で、東京にある財務省や金融庁、また他地域の財務局での勤務を命じられることがあります。

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財務専門官と国税専門官の違い

スペシャリストとして異なる役割や仕事内容をもつ

「財務専門官」と「国税専門官」は、どちらも財務省に関連する国家公務員です。

ただ、両者には役割や仕事内容に明確な違いがあります。

財務専門官は、財務省や金融庁の施策を地域に広めるとともに、地域の意見や要望を国にあげる役割を担います。

おもな業務は国の資産管理や災害立会い、地域金融機関の検査・監督、証券会社の監視などで、金融や財務のプロフェッショナルとして活躍します。

一方、国税専門官は国税庁や税務署に所属し、税金関連の調査や指導を行う役割を担っています。

滞納された税金の徴収や財産の差し押さえ、脱税調査などにまで関わる、税金のスペシャリストです。

どちらも、なるにはそれぞれ別の種類の採用試験を受験し、合格後、採用される必要があります。

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