国税専門官の需要・現状と将来性

国税専門官の現状

お金が動くところには脱税の可能性がある

国税専門官は、昔も今も、税金が正しく納められるための重要な役割を担っています。

女性国税査察官が活躍する映画『マルサの女』が公開されたのは1987年のことで、ちょうどバブル景気の絶頂期でした。

大きなお金が動くところには必ず脱税の問題があるため、『マルサの女』はまさにこうした世相を反映しており、国内外で大きな反響を呼んだのです。

では、経済の低迷が叫ばれて久しい現代において、納税がスムーズに行われているかといえば、決してそのようなことはありません。

最近、国税の滞納に関して大きな影響があったのが消費税の増税です。

消費税が5%から8%にアップした平成26年には、事業者が増税分を売上に上乗せできずに税金を支払えなくなったケースや、消費税相当分の額を運転資金として使ってしまい資金繰りがうまくいかないなどのケースから消費税の滞納が増えました。

ただし、国税滞納額が最も多かった時期に比べると、近年は緩やかに減少を続けています。

令和2年には国税滞納残高が22年ぶりに増加に転じたものの、ピーク時(平成10年)の約3割にまで減っており、この裏には国税専門官の大きな活躍もあることは間違いありません。

高所得者にも脱税者がいる

税金は、なにも「お金がないから支払いたくない」と考える人ばかりではありません。

高所得者であっても、できるだけ税金を支払いたくないと考えて脱税に手を染めるケースは見られるため、国税専門官は、そんな人たちに対してきちんと納税してもらえるように働きかける必要があります。

このようなことから、国税専門官が活躍する場は多く存在し、国税専門官たちは常に脱税手口のトレンドを追う必要があります。

国税専門官の需要

現代日本においては、国内全体の貯蓄額の6割以上を65歳以上の高齢者が所有している実情があります。

そのため、近年ではとくに相続税の脱税が多く見られ、社会問題化しつつあります。

その背景には、不十分な社会保障に対する高齢者の不安が見られ、安定した将来のために少しでも多く貯蓄を増やそうと、さまざまな手口で相続税を逃れようとするケースが多々見られます。

そのため、相続税脱税の対策が国税専門官の急務となっており、国の財政を守るためにも脱税を阻止する国税専門官は、重要な存在として位置づけられています。

国税専門官の将来性

「税金は正しく納めなくてはならない」といくら叫んでも、「少しくらいなら大丈夫だろう」と考える人がゼロになることはなく、脱税は好景気、不景気に関わらず世の常といえます。

とくに、最近では低所得者の納税率が著しく落ちており、国税専門官は税金納付の催促や滞納者の処分が急務となっています。

国税専門官は適切な租税納付を監察するだけでなく、税収と納付者をつなぐパイプ役でもあり、まさに税務業務の現場に立つ職業です。

また、働き方改革の影響により、フリーランスや個人事業主として活躍する人や、副業をする人も増えているため、これから確定申告を行う人も増えていくと予想できます。

そのため、確定申告の対応や納税に対する正しい知識の伝達なども含め、今後もその需要と活躍の場は増える一方でしょう。

国税専門官の今後の活躍の場

多国籍企業が日本進出をしたり、国をまたいだグローバル取引が増えたりしていることから、日本国内だけの税制ではなく、国際的な税制を学び対応できる人材に対するニーズが高まると考えられます。

そのため、英語力があると活躍できる場が広がりますし、海外に駐在する可能性も出てくるかもしれません。

また、最近では仮想通貨で多額の利益を得た人の税制に対するさまざまな誤解や計算方法の誤りなどにより混乱が起きました。

このように新しい情報や取引に対する税制の変更や追加は毎年のように出てくるため、きちんと勉強して知識のアップデートを行える人は、第一線で活躍し続けることができます。