独学で土地家屋調査士に合格できる? 勉強時間は?
土地家屋調査士を独学で目指す人はいる?
土地家屋調査士試験には、学歴などの受験資格が定められておらず、誰でも試験を受けることができます。
つまり、制度上は、完全に独学だけで資格を取得することも可能です。
しかし、土地家屋調査士試験は、例年合格率が8%~9%程度しかない難関で、独学での対策は非常に困難であるため、ほとんどの受験者は民間の資格予備校に通うか、通信講座を受講して勉強します。
ただ、数としては非常に少ないものの、独学で試験に挑む人もおり、そのなかには合格を勝ち取っている人もわずかながら存在します。
そのような実例は、「合格体験記」などのタイトルでWeb上に多数アップされており、検索すればすぐに見つけることができるため、興味があれば一度見てみるのもよいでしょう。
独学で試験に臨むことはリットもあるものの、その反面デメリットもあるため、誰もが独学に向いているわけではありません。
その要点を以下にいくつかご紹介しますので、自身の勉強法を決めるうえでの参考にしてください。
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独学のメリット
自分のペースで勉強できる
独学における最大のメリットは、自分に必要な分野を、自分のペースで、自由に勉強できることです。
土地家屋調査士試験は、不動産登記法や民法などの法律問題や、三角関数などの計算問題、製図問題など、多様なジャンルの問題が出題されます。
このため、人によって問題ごとの得手不得手が大きくなりやすく、極端にいえば、文系出身か理系出身かによって、解ける問題と解けない問題が真逆になることもあり得ます。
予備校であれば、ほかの受講生と足並みを揃えて勉強しなくてはなりませんが、独学であれば、自身が得意な分野は軽く流して、代わりに苦手な分野を重点的に学ぶなど、臨機応変に勉強することができます。
とくに4年制大学の法学部卒業者や理工学部卒業者など、ある程度の基礎教養が身についている人については、独学のほうが試験対策がはかどりやすいかもしれません。
費用がかからない
民間の資格予備校において、土地家屋調査士試験の対策講座を受講すると、通学制の場合は年間およそ30万円~50万円、通信制の場合は20万円~30万円ほどの学費がかかります。
しかし、独学であれば、勉強にかかる費用は1冊数千円の参考書代程度であり、問題集などを数冊購入するとしても、2万円~3万円もあれば足りるでしょう。
予備校に通うことを比べれば、はるかに経済的負担が軽くて済むことは間違いありません。
しかし、市販のテキストは、問題の解説は記載されていても、関数電卓の使い方や三角定規を用いた作図方法など、問題を解くうえで必要となる具体的な作業手順が記載されていないケースが散見されます。
まったくの独学の場合、参考書を見ても、答えに至るまでのプロセスがわからずにつまずく可能性もあるため、周囲に気軽に質問できる人がいないと、苦労することが多いかもしれません。
勉強する時間や場所を選ばない
予備校に通学する場合、授業があるたびに教室まで行かなくてはなりませんし、講義を受ける曜日や時間も決まっています。
自宅から通える範囲内に教室があるとは限りませんし、社会人として働いている人は、残業などで毎日決まった時間に通うことが難しいケースもあるかもしれません。
しかし、独学の場合、自宅でもカフェでも、あるいは通勤電車のなかでも、自分の好きな場所で勉強できますし、時間についても早朝や深夜など、自身の生活スタイルに合わせて自由に選ぶことができます。
日常のなかのちょっとした「スキマ時間」を有効に活用することで、大きく試験合格に近づくことができるでしょう。
独学のデメリット
数学スキルが身につきにくい
土地家屋調査士試験では、上述の通り計算問題や製図問題も出題されるため、数学スキルを身につけなくてはなりません。
しかし、知識だけで解ける暗記問題とは違って、数学問題は計算に用いられている原理を理解し、それを各設問にあてはめられるだけの応用力がないと、問題を解くことができません。
参考書を睨みつつ、試行錯誤しながら粘り強く考えれば、やがて解けるかもしれませんが、余分な時間と手間がかかることは間違いないでしょう。
それと比べると、考え方や解き方のコツを知っている講師から習うほうが、はるかに手っ取り早いといえます。
わかりやすくまとめた市販のテキストもあまりないため、計算問題は独学で挑む場合の大きな関門となるでしょう。
記述式問題の対策が難しい
土地家屋調査士試験では、マークシート形式の選択問題だけでなく、記述式の問題も出題されます。
同試験の記述問題は、1問あたりの配点が非常に大きく、ボリュームのある長文を書かなければならない点が特徴的です。
時間も限られているため、問題の論点をできる限り正確に掴み、わかりやすい構成を組み立てて、スピーディーに文章を記述できなければなりません。
しかし、独学の場合、自分の書いた文章を自分で客観的に評価するのはどうしても限界があり、自分では完璧な論理を展開したつもりでも、第三者からすれば穴だらけということもあります。
記述問題を自分で添削するのは非常に困難であり、できれば予備校で記述問題の対策講座だけでも受講して、専門の講師による指導を受けたほうがよいでしょう。
モチベーションを保ちにくい
土地家屋調査士試験の合格に必要な勉強時間は、およそ700時間~1000時間が目安とされており、1年間ほどかけて受験対策を行うケースが一般的です。
しかし、独学で挑む場合は、教えてくれる人がいない分、より時間がかかるとみておくべきです。
とくに社会人として働きつつ仕事の合間に勉強するなら、2年や3年、あるいはそれ以上かかる可能性もあります。
それだけの長い期間にわたって、つらい勉強を続けるモチベーションを保つのは大変です。
たとえ勉強をさぼっても、誰が見ているわけでもないため、仕事が忙しかったり、あるいはいくら考えてもわからない壁に突き当たったりしたとき、面倒になって投げ出してしまうこともあるかもしれません。
独学で土地家屋調査士を目指すなら、自分を厳しく律することのできる強靭な精神力が必要といえるでしょう。
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独学で土地家屋調査士を目指す場合のポイント
測量士補の資格を取る
土地家屋調査士試験の筆記試験は、午前の部と午後の部に分かれていますが、「測量士
」「測量士補」「一級・二級建築士」のいずれかの資格があれば、午前の部の試験が免除されます。
午前の部で出される問題は、測量計算や作図問題などですが、測量士補試験で出される問題のほうが簡単であるため、多くの受験者は先に測量士補の資格を取得して免除認定を受けます。
独学で挑むなら、この測量士補の資格を取得して、土地家屋調査士試験の難易度を下げることはほぼ必須といえるでしょう。
テキストを細切れにして持ち歩く
がんばって測量士補資格を取得できたら、あとは択一式と記述式の試験勉強だけに集中できます。
法律知識を身につけるためのポイントは、日常生活のなかで、折に触れては何度もテキストを読み返すことです。
ただ、参考書などのテキストを丸々一冊持ち歩くのは大変ですし、実際に1日で目を通せる量は限られています。
このため、カッターナイフで裁断したり、コピーを取ったりして、テキストを細切れにして持ち歩く方法をおすすめします。
そうすることで、持ち歩く負担が減るのはもちろん、その日覚えなければならない範囲が明確になり、モチベーションも保ちやすいでしょう。
「やらないこと」を決める
独学の場合、試験についてのノウハウが十分でないため、どうしてもあまり重要でない分野まで詳細に勉強してしまいがちです。
土地家屋調査士試験は、ほかの多くの試験と同様おおまかな傾向があり、たとえば民法については、債権に関する問題はほぼ出題されない一方、物権や相続関連の問題はかなりの頻度で出題されます。
勉強の効率性を上げるためには、10年分くらいの過去問に取り組んだり、ネットで情報収集するなどして出題の傾向をつかみ、重要度の低い分野を切り捨てていくことも大切です。
「あれもこれも」と手を出すと、知識の定着率が下がりますし、やる気も失ってしまいがちです。
あえて「やらないこと」を決めることが、合格に近づくコツといえるでしょう。