歯科医師の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
非常に専門性の高い職業のひとつであり、患者さんの口腔内の健康を守るために、日々さまざまな場で活躍しています。
ここでは、歯科医師の具体的な仕事内容について解説しています。
歯科医師の仕事とは
歯医者は、歯をはじめとする口腔内全般の診察・治療を行い、患者さんの口の健康と美しさを守ります。
歯そのものだけではなく、口の中や舌に関する病気全般や、あごの病気も歯医者がカバーする領域となります。
歯医者にはさまざまな専門分野があり、子どもの口の中を扱う「小児歯科」や、矯正やホワイトニングを行う「審美歯科」を得意とする歯科医師もいます。
歯科医師として働くには、大学の歯学部や歯科大学で6年間学び、歯科医師国家試験に合格する必要があります。(さらに1年以上の臨床研修を受けることも必要です)
独立・開業ができる仕事ですが、都市部では歯科医師数が飽和に近い状態にあり、経営に苦しむ医院も増えています。
以前よりも虫歯の子どもが減ってきている状況もあり、個人の歯科医院には他の歯科医院との差別化を図ることが求められるようになっています。
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歯科医師の業務の内容
歯の健康を取り戻す
一般的な歯科医院に勤務している歯科医師の仕事内容は、患者さんの歯の治療、口腔内疾患の予防などです。
具体的に挙げると、虫歯や歯周病、その他歯や歯茎に関する疾患の治療、親知らずの抜歯、歯石の除去、入れ歯や義歯の作成などです。
虫歯や歯周病の治療以外に、たとえば口の中にできるガンの早期発見などは、歯医者の大切な役割の一つです。
また、「小児歯科」のように小児を中心に扱う歯科の場合は、成長に伴う歯並びや顎の骨の形のチェックを行います。
この他にも、歯並びやホワイトニングなど、歯をきれいに見せることに重点を置く「審美歯科」を専門にしている歯医者もあります。
最近では高齢化に伴い、「人工の第三の歯」と言われるインプラント治療に力を入れている医院もあります。
専門知識・技術を駆使して患者さんの口腔内の健康を取り戻すことが、歯科医師の仕事です。
開業医は経営者としての能力が必要
開業医として歯科医院を経営する人も多いです。
その場合には、歯科医師としての知識・技術的な能力はもちろんのこと、病院運営をする上での経営能力もあわせて身につけていなければなりません。
たとえば、人を指導する能力、人を扱う能力、金銭管理能力、マネジメント能力、先を見通す力などです。
歯科医療の現場では、複数の歯科衛生士や歯科助手、受付事務のスタッフなどと連携して診療を行うため、他のスタッフとのコミュニケーションも重要になってきます。
大病院では高度な治療を行う
歯科医師は歯や歯茎の治療をするものだと思われがちですが、実際には、喉の上までが歯科の領域になります。
そのため、大学病院や総合病院では舌癌など舌の疾患の手術、口唇口蓋裂に伴う手術など、ときには全身麻酔を使い数時間に渡る手術を行います。
また、歯科医師は歯科医院や総合病院で働く以外にも、以下のような活躍の場・活躍のしかたがあります。
-
- 大学や研究所での研究医
- 総合病院での病理医(口腔病理専門医)
- 歯科麻酔専門医
- 画像診断センター開業もしくは勤務
- 厚生労働省医系技官
- 化粧品会社や製薬会社での勤務
など
歯科医師の役割
歯の病気の予防が重視されるように
近年はとくに予防歯科に力を入れる医院が増えています。
予防歯科とは、虫歯や歯周病になってから治療するのではなく、なる前の予防に力を入れることです。
乳歯から永久歯への生え変わり、歯並びなどを重点的に見る小児歯科、歯並びや見た目の美しさを大切にする審美歯科や矯正歯科、人口の第三の歯といわれるインプラントに力を入れる歯科医院など、さまざまな医院が増えてきています。
いずれにしろ、歯科医師の大きな役割は、患者さんの歯の健康をトータル的に保つことであるといえます。
小児歯科の役割
小児歯科は、乳幼児の虫歯の治療や予防、歯並び、顎の骨の形成状態などを専門に扱います。
歯医者といえば虫歯治療がおもな仕事と思われがちですが、小児歯科ではフッ素塗布や歯磨き指導、歯の生え変わりや歯並びのチェック、歯列矯正などに訪れる人が多くなっています。
小児歯科という分野は、ひとつの独立した研究分野となっています。
矯正歯科の役割
矯正歯科では、患者さんにワイヤーなどの器具を装着し、時間をかけて歯を正常な位置に移動させる治療や、上顎骨、下顎骨の変形を防ぐことで、審美性や顎を含めた口腔機能の回復、異常成長の予防などを行います。
歯列矯正を必要とする不正咬合は、さまざまな疾患や機能障害の原因となるため、これを取り除く意味でも矯正歯科の役割は大きいといわれています。
審美歯科の役割
審美歯科は、美しく健康的な歯を保つことを重視する歯科です。
診療内容には、歯列矯正、ホワイトニング、オールセラミック、特殊材質による人工歯の埋め込みなどがあります。
インプラント外来歯科の役割
インプラント外来を持つ歯科では、虫歯や歯周病などで歯を損失した患者さんに、人工の第三の歯であるインプラントを埋め込む手術を行います。
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歯科医師の勤務先の種類
歯科医師の多くは、大学の附属病院や総合病院などの歯科・口腔外科で経験を積んだあと、独立・開業したり、親族の歯科医院の後を継いだりします。
総合病院などの口腔外科ではさまざまな症例に当たることができ、自分の追求したいテーマを決めて研究をしたり、論文を書いたりすることができるのがメリットです。
開業医になると経営はすべて自分で行うことになります。
どのような患者さんを中心に診療したいかによって、自費診療を取り入れたり、最新の機器を取り入れたりできます。
街の歯科医院と比較し、大学病院や総合病院の口腔外科に勤務する歯科医師は、口腔手術を執刀したり、より重傷な疾患の治療に当たったりと、チームで医療に携わることが求められるため、より高度な知識が必要とされます。
企業や役所、官公庁などで働く歯科医師もいます。
その場合、研究職や医療専門職として入職するなど、さまざまなかたちで歯科医師の資格を生かすことができます。
<参考:施設・業務の種別にみた歯科医師数>
診療所の開設者が58,867人、診療所の勤務者が32,922人、病院の勤務者が12,329人となっています。診療所の開設者が最も多く、多くの歯科医師が独立しているといえるでしょう。
クリニックや医院で働く歯科医師
街の一般的な歯科医院やクリニックに雇われて働く人は「勤務医」と呼ばれます。
最近、都心部では歯科医院の数が増え競争が激化していることから、「小児歯科」「矯正歯科」「審美歯科」など、分野特化型の治療を行っている歯科医院が多いです。
歯科医師になったばかりのころは、一般的な歯科治療を中心にして多くの症例を積むことが必要ですが、将来専門にしていきたい科を見据え、勤務する歯科医院を選ぶとよいかもしれません。
また、歯科医院では、院長の近くで仕事をすることにより、ゆくゆくの独立に必要なノウハウや経営などを学べるチャンスも多くあります。
大学病院などで働く歯科医師
規模が大きな病院には、大学病院などの教育機関附属の病院と、国公立や民間の病院の2種類があります。
歯科医師が病院で働く場合、そのほとんどは大学附属病院となってきます。
歯科医師になるためには、6年制の大学の歯学部もしくは歯科大学を卒業して国家試験に合格後、1年以上の臨床研修を受けることが必須です。
臨床研修の多くが大学の附属病院で行われるため、研修が終わった後もそのまま数年間勤務するケースが多くあるようです。
とくに高度医療を行う大学附属病院では、めずらしい症例や口腔ガンなど一般の歯科医師では治療が難しい高度な治療を行うほか、口腔機能障害、言語障害がある患者さんなどの機能維持・回復を目指す口腔リハビリテーションなど、チーム医療で携わる口腔外科治療にいたるまで、幅広く多様な経験を積むことができます。
日々進化する歯科治療の現場に身を置きながら、先端かつ高度な治療に携わっていきたいと考える人に向いている就職先といえるでしょう。
大学などの教育研究機関や一般企業で働く歯科医師
大学の歯学部で歯科医師を目指す学生たちを教えるのも、多くは歯科医師です。
とくに基礎科目ではない臨床系の科目の場合は、現役の歯科医師が授業を行うケースが多々あります。
また、大学の歯学部もしくは歯科大学では大学院に籍を置きながら、歯科医師が新しい歯科治療法、治療にかかわる材料や病態の解明などの研究をしています。
少数派ではありますが、歯科クリニックで使用される機器やツールを開発製造しているメーカーや製薬会社、検査機関など、歯科医師免許を生かして一般企業に就職する歯科医師もいます。
歯科医師が独立・開業するには?
歯科医師の独立・開業の現状は?
歯科医師は、他の医師に比べて独立・開業しやすい職種です。
経験を積んだ歯科医師が開業医になるケースはよく見られます。
とはいえ、独立・開業は決して簡単なことではありません。
患者さんが多くつけば経営は安定しますが、歯科医院の競争は都心部を中心に激化しており、厳しい経営状況に陥っている医院も増えているのが実情です。
多くの場合、保険診療内での治療では医院経営が成り立たず、歯科衛生士を最低限の人数にしたり、1日に多くの患者さんを診療したりして利益を確保しています。
また、矯正歯科やインプラントなど、自由に料金を設定できる保険診療外の治療法を取り入れることも必要となってくるかもしれません。
昨今では医療機関の年間倒産数の約4割を歯科医院が占めるといわれるほど厳しいのが実情で、安易に独立・開業をしても、経営を軌道に乗せるまでには長い年月がかかります。
歯科医院の開業に必要な資金はどれくらい?
歯科医院開業には多額の資金が必要になる
歯科医師として独立・開業するには、資金は少なくとも3,000万円以上、通常ならば5.000万円は必要だといわれます。
これに土地代や建物代、もしくはテナント賃料が含まれる形になります。
ただ、内装にこだわったり、デジタル機材のグレードにこだわったりすると、たとえば、ウォーターレーザーで1,000万円、CTで3,000万円というように、さらに高額な費用がかかります。
しかしながら、そのようにして揃えた機材は永年使えるものではなく、故障や性能の良い新商品への買い替えなどで、10年も経てば追加費用が発生する場合がほとんどです。
内装もずっとそのままでよいというわけではなく、5年~10年ごとに壁紙を張り替える、外壁を塗り替えるなどリニューアルをする必要があります。
なかにはほとんどリニューアルをしない歯科医院もありますが、あまりにもみすぼらしい医院では、近所に新しい歯科医院ができたときに患者さんが流れてしまうことがあります。
そのため、定期的なリニューアルは歯科医院として必要と考えておく必要があるでしょう。
融資が受けにくいケースも
さらに、地域によっては歯科クリニックを新規開業するあたって、銀行の融資を受けにくい現状があることも確かです。
あまりに歯科医院が多い地域だと、新規開業をしても顧客を獲得するのが困難だとみなされるからです。
また、倒産する歯科医院の多さから、よほど堅実な返済計画を立てないと銀行側が貸し渋りをする場合があり、近年では自己資金が非常に少ない状態での独立・開業は難しいといわれています。
コンサルタント会社に頼ることもできる
上記の通り、最近は歯科医師として独立・開業をしても医院を軌道に乗せるのが難しくなっています。
こうしたなか、歯科クリニックの院長が、歯科経営コンサルタント会社にお金を払い、指導を受ける風潮が広まってきています。
歯科経営コンサルタント会社は、歯科クリニックの経営や経理マネジメント、人材育成から地域的なクリニックの方針や戦略の策定にまでアドバイスをします。
第三者のプロの視点で、経営に関するアドバイスをを受けることは意義があるでしょう。
しかしながら、歯科経営コンサルタント会社といってもピンキリです。
歯科経営コンサルタントは経営のプロであっても、歯科業界の内情にそこまで詳しくないこともあります。
経営知識を知るうえで必要なアドバイスをコンサルタント会社に頼るのはよいですが、独立・開業を目指すなら、自分自身で経営の勉強をする努力は欠かせません。
歯科医師と関連した職業
歯科医師に関連する職業に「歯科衛生士」があります。
歯科衛生士とは、歯科医院において歯科医師のサポートを行う職種です。
歯科衛生士には、歯石や歯垢の除去、フッ化物等の薬物の塗布を行う「歯科予防処置」、歯科医師の指示によって歯科医療の一部を補助する「歯科診療補助」、ブラッシングのやり方などを教える「歯科保健指導」の3つの役割があります。
患者さんの治療にあたるスタッフに「歯科助手」という職種もありますが、国家資格の要らない歯科助手とは異なり、歯科衛生士は国家試験に合格することが必要です。
歯科衛生士国家試験は誰でも受験できるわけではなく、歯科衛生士養成校において、所定の課程を修了することによって受験資格が得られます。
試験の合格率は95%前後なので、しっかりと勉強すれば合格することができるでしょう。
基本的に、歯科衛生士は歯科医師と一緒に働きますが、近年は福祉の分野などにも歯科衛生士の活躍の場が広がり、求人ニーズが増えてきています。