裁判所事務官の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
日本各地の裁判所に勤務し、裁判を円滑に進めるための事務的な業務を中心に手掛けます。
この記事では、裁判所事務官の詳しい仕事内容や活躍の場、キャリアなどについて詳しく説明します。
裁判所事務官の仕事とは
裁判所事務菅は、国の機関である裁判所で働く人のことです。
裁判所では、大きく分けて「裁判官」「裁判所書記官」「裁判所事務官」が働いており、このうち「裁判所事務官」は、裁判所運営に必要になるさまざまな事務作業を担う職種です。
裁判を円滑に進め、裁判所に務める人をサポートすることが、裁判所事務菅の役割です。
裁判所事務官は「裁判部門」もしくは「司法行政部門」のいずれかに属し、それぞれで仕事内容は異なります。
なお、裁判所事務官を10年以上経験すると、司法書試験を受けずに「司法書士」の資格を取得することが可能となっています。
さらに一定以上のキャリアを積むと、「裁判所書記官」「簡易裁判所判事」「執行官」「副検事」などにキャリアップできる可能性があります。
裁判所事務官の業務の内容
裁判所事務官が働く場所は全国各地の裁判所です。
具体的には、以下のいずれかで勤務します。
- 最高裁判所
- 高等裁判所
- 地方裁判所
- 家庭裁判所
- 簡易裁判所
それぞれの裁判所は「裁判部門」と「司法行政部門」に分かれており、裁判所事務官はそのどちらかに属します。
担当範囲は異なりますが、どちらの部門でも裁判手続きの流れに深く関わるのが裁判所事務官の特徴です。
裁判部門の仕事
「裁判部門」に所属する場合、裁判所書記官のもとで、裁判がスムーズに行なわれるよう裁判に関する事務手続きや運営・進行に携わります。
具体的には、呼出状や訴状といった各種書類の作成や送付、弁護士との打ち合わせなど、裁判を進行するために必要な各種業務を担当します。
もちろん、これらの業務にあたるうえでは「法律に関する知識」も必要です。
そのほか、裁判の進行に合わせて法廷・和解室の準備や開廷表の提示、入廷前の事件番号の読み上げなど、裁判所事務官の業務内容は多岐にわたります。
さらに、公判に呼ばれた証人の旅費などが発生した場合の請求書の提出や、マスコミ対応、警備の手配など、司法行政部門との連携が必要になる業務もあります。
また、2009年より日本でも始まった「裁判員制度」により、裁判員関連の手続きに関しても、裁判所事務官の仕事の一つとなりました。
これにより裁判員の選任手続き、受付、説明会などの業務も担当することとなり、一般の方が目にする機会も以前より増えているといえるでしょう。
司法行政部門の仕事
「司法行政部門」で働く裁判所事務官は、総務や人事、会計などの業務に従事し、裁判所に務める人々を支えます。
たとえば、物品調達や給与事務、労務管理などを担当するケースが多く、一般企業の事務職に近い役割を担います。
それに加えて「裁判の傍聴券の交付」など、一般の事務職では行わないような仕事もあります。
とくに世間の注目度が高い裁判では、マスコミや一般人でも傍聴を希望する人がたくさん集まるため、司法行政部門での適切な対応が必要不可欠です。
また「裁判所の広報活動」も司法行政部門の重要な業務の一つです。
具体的には、裁判所内の見学会の手配をしたり、仕事の魅力や裁判員制度について裁判官自ら語ってもらう出張セミナーなどを開催しています。
このように、各種のイベントを通して「法」や「裁判」についての啓発活動を行なうことも、司法行政部門が担うべき大切な役割です。
裁判所事務官の役割
裁判を円滑に運営・進行していくためには、裁判所事務官の役割が欠かせません。
「裁判」と聞くと、法廷の場にいる裁判官や裁判所書記官の仕事をイメージするかもしれませんが、法廷を開くまでにはさまざまな準備や事務手続きが必要になります。
たとえば、裁判所に出頭するよう通知する「呼出状」の準備や、訴えの内容について述べた「訴状」の手続きなども、裁判所事務官が担当しています。
それに加えて、当日の裁判が円滑に進行するよう事前に弁護士と打ち合わせを行うことも、事務官の重要な役割です。
そういった業務のなかで、これから裁判や調停に臨む人たちを精神的にサポートすることが、裁判所事務官には求められています。
以上のように、裁判所事務官の仕事は事務的な手続きだけでなく、裁判に関係する人たちとの細やかなコミュニケーションも大切な業務のひとつです。
裁判所事務官の勤務先の種類
裁判所事務官には「総合職」と「一般職」の区分がありますが、勤務先については、どちらで採用された場合も希望地区の高等裁判所の管轄内での裁判所となります。
たとえば「東京高等裁判所」を希望する場合であれば、関東1都6県に加えて新潟県・山梨県・長野県・静岡県が管轄区域となっています。
以前までは、総合職採用の場合は全国転勤が前提となっていましたが、現在は一般職と同様に管轄区域内での勤務に変更されました。
この点に関しては、総合職と一般職で違いはありませんが、総合職は高等裁判所での勤務が中心となり、最高裁判所での勤務を経験する可能性が高いでしょう。
異動のペースとしては、おおむね3年を目安におこなわれるケースが多いようです。
裁判所事務官として出世していくにつれて、県をまたいだ転勤を命じられるケースも考えられます。
裁判所事務官の仕事の流れ
裁判所事務官の仕事の流れは、勤務先が「裁判部門」か「司法行政部門」かによっても異なります。
「裁判部門」では裁判所書記官のもとで、裁判の当事者への呼出状や訴状といった各種書類の作成や送付、また弁護士との打ち合わせなどを進めていきます。
裁判の当日には、法廷に出席する関係者の手続きや案内を行ない、裁判の進行に合わせて法廷や和解室の準備、開廷表の提示など、裁判を円滑に進行できるような立ち回りが求められます。
一方、「司法行政部門」では総務課や人事課、会計課などの部署があり、一般企業の事務職と似たような仕事を行います。
デスクワークが中心となりますが、裁判所というミスが許されない場所で働くため、関連部署とコミュニケーションを密に取りながら慎重に物事を進めていく必要があります。
法律に直接関わる業務も多く、六法を片手に関連する法律を調べながら仕事を進めていくこともあります。
裁判所事務官と関連した職業
司法に関連する職業は、裁判所事務官以外にもいくつもあります。
ここでは、「裁判所書記官」と「司法書士」を取り上げて、裁判所事務官との違いを紹介します。
裁判所事務官と裁判所書記官の違い
裁判所書記官は、事務官としての経験を積み、研修などを受けた人がなれる専門職です。
裁判所事務官は、基本的に裁判所書記官の指揮の下で業務を進めます。
この2つの職にははっきりとした立場の違いがあり、裁判所書記官は法廷に立会い調書を作成するほか、法令や判例を調査する役割を担います。
裁判所事務官で働く人のなかには裁判所書記官を目指している人も多く、事務官として経験を積んだ後、試験に合格して研修を修了することで裁判所書記官にキャリアアップすることも可能です。
裁判官事務官と司法書士の違い
裁判所事務官から裁判所書記官にキャリアアップするほかに、「司法書士」としての道を選択する人もいます。
司法書士は裁判所事務官とは異なり、裁判所や検察庁に提出する書類を実際に作成したり、本人に代わって登記手続などを行うことがメイン業務としています。
裁判所事務官として10年間勤務したうえで法務大臣の認定を受けると、司法書士試験に合格せずとも司法書士の資格を取得することが可能となっています。
司法書士の資格取得後は、司法書士事務所に転職する人のほか、長期にわたる実務経験で得た人脈を生かし、自ら事務所を立ち上げ独立する人もいます。
「裁判所事務官の仕事」まとめ
裁判所事務官は、裁判を円滑に進めるための、さまざまな事務的な業務を担う職種です。
各職場で裁判部門と司法行政部門のいずれかに配属され、裁判の手続き案内や書類作成などの業務を担当します。
キャリアを積み、知識やスキルを磨くことで、より専門性の高い上位職へのキャリアアップも目指せます。