パティシエが独立・開業してお店を持つには?
パティシエの独立・開業
パティシエを目指している人の最終的な夢の一つに「独立」があります。
自分の名前の店を持ち、自分の思い通りの空間でオリジナル商品を販売できるのは、とても素敵なことです。
ここでは、パティシエが「独立して店舗を持つ」ということについて考えてみましょう。
独立後の働き方と仕事内容
独立後のパティシエと、雇用されて働くパティシエとでは、働き方や仕事内容が異なります。
正社員やアルバイトとして働くパティシエは洋菓子作りがメインの仕事となりますが、独立後はお菓子の製造に加えて、お店のプロモーションや衛生管理、売上の管理など、店舗を存続させるための業務が重要となります。
また、固定給や時給で働くパティシエとは異なり、独立したパティシエに決まった勤務日やシフトは普通ありません。
お店に出勤しない日にも営業や取引先とやりとりをしたり、休みの日にも新商品のアイディアや世の中のトレンドに目を光らせたりと、仕事とプライベートの境界があいまいになることが多いでしょう。
店舗経営には責任が伴う
パティシエとして認められるためには、「腕(洋菓子作りの技術)」と「センス(洋菓子の見た目の美しさ)」の両方を持ち合わせている必要があります。
しかし、店舗経営はそれだけでは成り立ちません。
マネジメント能力や経営能力といったビジネス的なセンスも必要になってくるのです。
そのためには、経理の勉強やコスト意識を養うことが必要であり、経営の勉強をしていくことが不可欠です。
オーナーとして従業員を雇うということは、自分だけではなく従業員やその家族も背負うということです。
独立開業には、それだけの責任が伴います。
20代で正社員への就職・転職
パティシエが独立・開業するまでのキャリアパス
まずはパティシエとしての技術を磨く
パティシエは、自分の腕一本で勝負する仕事です。
男女は関係ない、実力主義の厳しい世界で生き残るには、お菓子作りの技術やセンスはもちろんのこと、洋菓子に関する幅広い知識、味の研究などが欠かせません。
資金さえあれば誰でもお店は開けます。
しかし、現実的にはパティシエとして経験を重ね、技術と知識を高めたうえで独立しなければ成功はひじょうに難しいです。
実際に、独立して自分の店を出した人の多くは、国内の有名店や本場フランスなどで修業を積んでいます。
何でも経験することが大切
オリジナルのケーキを作るのは簡単なことではありません。
いろいろなお店で修業をしたり、洋菓子に関する本を読み漁ったり、あちこちの店舗を食べ歩いたり、レシピを研究したり…と、日々の努力が欠かせません。
大切なのは、失敗を恐れずに何でも経験することです。
また、お金と時間が許すならば留学をするのもよいでしょう。
数週間、数ヵ月の経験であっても、海外での洋菓子作りの経験やそこで出会った人から学べることは、後々の人生に役立つはずです。
「どんなことにもチャレンジする」という気持ちこそが成長の源なのです。
下積み時代を大事にする
独立開業したパティシエに「何が一番大切なことか?」と聞くと、口を揃えて「下積み時代を大事にすること」と返ってきます。
オリジナリティ、創作意欲も大切ですが、下積み時代はパティシエとしての一番基礎の部分を培う大切な時間。
たとえ単純作業と思えることであっても、製菓に対してつねに真摯に向き合う癖をつけることは、この業界で生きていくために何よりも大切なことです。
独立のタイミング
独立する人の年齢はさまざまです。
40歳を過ぎても有名店で働き続けるパティシエもいますし、数年修業をしたのち、20代後半で店舗を構えてしまう人もいます。
独立のタイミングは、自分が何を目的とした店舗を作るかによって変わってきます。
重厚な面持ちの店舗で、高級素材にこだわり、有名人などを相手にするような専門店を開きたいのであれば、高い経歴や技術・知識が必要となり、とても20代では実現が難しいでしょう。
逆に、デザインにこだわった焼き菓子やチョコレートなど、自分の世界観をぎゅっと押し込めた小さな店舗は、若手の新しい感性が発揮される可能性があります。
独立・開業のメリットとデメリット
オリジナルが武器になる
パティシエとしてお店を持つことの最大の魅力は、お菓子を通じて自分の頭の中にあるイメージを形にできる、つまりオリジナル商品を作れることです。
パティシエの卵として修業を積んだのちに独立し、さまざまな工夫を凝らしたオリジナルの菓子を作ることを生きがいにする人もいます。
「このパティシエにしか作れない」というオリジナルのお菓子はたちまち評判を集め、場合によっては遠方からもたくさんの注文が入るほど繁盛する場合もあります。
街を歩けば、こだわりを持っている店がたくさん見つかります。
たとえば、「アレルギーに配慮したケーキ店」「無農薬無添加で作った洋菓子店」「季節のフルーツにこだわったお店」「糖分を控えめにした洋菓子店」などです。
パティシエの信念が表現されたケーキや焼き菓子が、お客さまを魅了するのです。
小額投資で開業することもできる
雇われパティシエを経て独立した人の中には、店舗を構えずに自宅で洋菓子作りをする人もいます。
そういった人は自宅のキッチンを改装して業務用オーブンを入れるか、車庫や庭を改装して小さなお店を作ります。
大がかりな店を構えなくても、小額の投資で自分の感性を発揮した洋菓子作りをすることもできます。
店舗に勤務する場合と比べて作れる洋菓子の種類は減るでしょうが、その分素材にこだわったり、細かな工夫を凝らしたりすることもできます。
このようにして、自分で作った洋菓子をカフェや雑貨屋、小さなホテル、旅館などに提供するパティシエもいます。
独立・開業のデメリット
店舗を構えると、パティシエとしての役割は少し変わってきます。
同じパティシエでも、「従業員」と「オーナー」ではまったく立場が別物になるのです。
オーナーの場合、経営がうまくいかなければ廃業となるリスクをつねに考えておかなければなりませんし、リピーターが付かなければお店は数ヵ月も持たないかもしれません。
何から何まで自分一人でやるとなれば365日休みなしになってしまいます。
そのため、経営を安定させるためには従業員を雇い、教育し、仕事を安心して任せられるようにする必要があります。
いちスタッフであればお菓子作りにだけ集中していれば良かったとしても、オーナーになるとお菓子作り以外の多くのところにまで目を向けなければならないのです。
始めはつらいことが多いかもしれませんが、真面目にお客さまが喜んでくれるお菓子を作り続けることで、経営はきっと軌道に乗っていくでしょう。
20代で正社員への就職・転職
独立後のパティシエの給料・年収
パティシエの平均年収は300万円ほどと決して高いとは言えませんが、独立・開業して自分の店舗を持つオーナーの年収はおおよそ600万円以上になるといわれています。
洋菓子業界では念願かなって開業しても存続させるのが難しいという現状もありますが、独立してファンをつけたりヒット商品を生み出したりすれば、1000万円以上の年収を稼ぐことも不可能ではありません。
知名度が上がり有名になったお店のオーナーパティシエのなかには、年収が数千万円に上る人もいます。
しかし、パティシエの仕事は労働時間が長く体力を必要とするため、独立開業を途中で諦めてしまう人も少なくありません。
独立して成功すれば年収の大幅なアップも夢ではないので、まずはお店を存続させるための地道な努力を重ねることが大切です。