塾講師の年収・給料はいくら? 正社員・バイトの違いや平均月収についても解説
ここでは、塾講師の年収や勤務体系、年収アップの方法、そしてほかの職業との比較についても解説します。
塾講師の平均年収・給料の統計データ
塾講師は平均年収は他の教育職よりも低めですが、指導力に定評があり、人気講師になったり大手の塾で講師をしたりすることで年収アップが期待できます。
また働き方には非常勤講師やアルバイト、塾経営などさまざまあり、それによって年収も大きく異なります。
塾講師の平均年収・月収・ボーナス
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、個人教師・塾・予備校講師の平均年収は37.9歳で415万円となっています。
・平均年齢:37.9歳
・勤続年数:9.4年
・労働時間:169時間
・超過労働:11時間/月
・月額給与:302,800円
・年間賞与:514,600円
・平均年収:4,148,200円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
塾講師の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
勤務先の塾の規模や給与体系にもよりますが、厚生労働省のデータを元に考えると、年収は410万円、月収で30万円あたりが相場でしょう。
月の手取りを考えると、24~25万円、年収では320万円前後になると考えられます。
日本人の平均年収が460万円と考えると、若干低めであることがわかります。
時給で働くアルバイトの場合は、時給1200~1500円程度が相場となるようです。
塾講師の初任給はどれくらい?
塾講師は一般的に初任給が高めに設定されています。
額としては、月給でおよそ20万円から25万円ぐらいの間に設定されているところが多く、年収で考えると、年2回のボーナスを見込んで350万円ほどからスタートするのが大半です。
しかし、その一方で給料の上がり方は比較的なだらかになります。
10年勤続した場合でも、月給で30万円前後、年収で500万円程度までしか伸びないことも珍しくありません。
授業を担当する講師は経験年数によって昇給がありますが、ある程度の年数で頭打ちになってしまうことが多いようです。
より年収をアップし、長く働くためにはエリアマネージャーなど管理職としての立場を目指すことになるでしょう。
塾講師の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
塾講師の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、50~54歳の500万円です。
全年代の平均年収は415万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「個人教師」でピアノ講師など他職業を含むデータです。
塾講師の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
塾講師の年収は、勤務先の規模が大きくなるとやや高くなる傾向があります。
10〜99人規模の事業所に勤める塾講師の平均年収は368万円、100〜999人規模は428万円、1,000人以上の規模では452万円、10人以上規模の事業所平均は415万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「個人教師」でピアノ講師など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
塾講師の福利厚生の特徴は?
待遇は比較的整っている
待遇については、住宅手当や扶養手当をはじめ、社会保険完備、退職金制度なども完備している塾も多いため、比較的整っているといえます。
また、経験や年齢に応じた研修が定期的に受けられるよう制度が整っているところも多いです。
賞与は、塾によっても違いますが、年2回、2~4か月分支給されるところが多いようです。
塾講師の特有の「授業付帯手当」
アルバイトや時給で働く塾講師には「授業付帯手当」があるところがあります。
一般的に塾講師として働く場合に、時給が発生するのは授業時間のみです。
しかし、塾で指導するには予習や教材研究の時間が必要ですし、生徒への個別対応など授業時間以外にも労働が発生します。
その労働に対する手当が授業付帯手当で、授業1コマに対して500円程度が一般的です。
ただし、月給で働いている場合には、この授業付帯手当はありません。
20代で正社員への就職・転職
塾講師の給料・年収の特徴
苦労が多い仕事
塾講師として働き始めは給料が高めですが、実際に働いている人のなかにはそれに見合った仕事量ではないと考える人も多いです。
日々授業に追われるなかで、予習や教材研究の時間を確保することに苦労することは間違いないでしょう。
また生徒の将来がかかっている仕事のため、重い責任が課せられる覚悟も必要です。
さらに勤務時間がどうしても夕刻から夜に及ぶため、生活リズムが乱れやすいこともデメリットとして挙げられます。
残業・時間外手当は出る?
授業が終わると基本的には教室は閉まるため、残業は基本的にはありませんが、実際には塾の先生は、時間外労働をすることも多いです。
とくに授業準備などで早出をしたり、事務作業で残業をしたりしても、基本的には時間外手当は出ないところが多いようです。
通常業務以外にも、生徒の面談や個別相談、塾の営業のためのチラシ作りやポスティング、夏休みなどの特別講習などを担当しても、ボーナスなどはなく、年収は増えないのが一般的です。
残業や時間外手当については勤務先によって異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
塾の規模によって年収に差がある
基本的には大手の塾であればあるほど年収が高い傾向にあります。
大手の塾は規模も大きく生徒を大量に抱えているため、塾講師の評価は非常にシビアです。
生徒の成績が大幅に上がったり、生徒や保護者からの評判が良かったりすればするほど、担当する生徒や授業が増え、年収アップにつながります。
とくにカリスマと呼ばれるような人気講師になれば、全国各地の塾に呼ばれたり、著書を出版したりと、年収は1,000万円を越えることもあります。
また、アルバイトの場合でも高い評価を受ければ時給がアップしたり正社員にスカウトされたりするため、塾の規模や評価はとても重要です。
担当科目によって年収に違いはある?
担当科目によって年収に大幅な違いが出るということは、基本的にはあまりありません。
ただし、塾講師が指導する科目はどうしても数学と英語がメインとなりやすい現状はあります。
こうした科目は塾長など指導力があり経験を重ねている人が担当することが多くなるため、必然的に数学と英語を担当する講師は、他教科に比べると年収が高くなりやすいということは言えるでしょう。
塾講師が所属する代表的な企業の年収
会社名 | 平均年収 | 平均年齢 |
ナガセ | 794万円 | 38.0歳 |
リソー教育 | 670万円 | 40.1歳 |
早稲田アカデミー | 528万円 | 37.9歳 |
出典:2024年現在(各社有価証券報告書より)
株式会社ナガセの全従業員の平均年収
株式会社ナガセの全従業員の平均年収は、794万円です。
高校生向け受験塾「東進ハイスクール」や「東進衛星予備校」が有名で、傘下に中学受験塾「四谷大塚」や「イトマンスイミングスクール」を持つなど教育界で大きなシェアを得ています。
株式会社リソー教育の全従業員の平均年収
株式会社リソー教育の全従業員の平均年収は670万円です。
首都圏を中心に事業展開をしている学習塾「TOMAS」(トーマス)などを運営し、一対一の個別指導に定評があります。
株式会社早稲田アカデミーの全従業員の平均年収
株式会社早稲田アカデミーの全従業員の平均年収は528万円です。
関東地方に展開する中学・高校・大学受験専門進学塾で「早稲アカ」として古い歴史を持っています。
栄光ゼミナールの年収のめやす
栄光ゼミナールは、Z会ホールディングスの子会社(株式会社栄光)により運営される学習塾で、首都圏を中心に塾を展開しています。
採用情報などによると、年収のめやすは教室長で400万~650万円、課長で650万~900万円、部長で900万円以上となっています。
SAPIXの年収のめやす
SAPIXは、主に難関中学受験を対象とした学習塾で、代々木ゼミナールの関連会社である株式会社日本入試センターの経営です。
採用情報などによると、常勤・非役職者の場合年収476万円、31歳(入社3年目)で403万円(月給28万円)、38歳(入社5年、課長)で688万円(月給49万円)となっています。
20代で正社員への就職・転職
塾講師の正社員以外の給料・年収
アルバイトの塾講師
最近では、メイン講師はアルバイトであるという塾も少なくありません。
もちろん、アルバイトから正社員を目指すことも可能ですが、雇われる側もより良い条件での雇用先を求め、あえて非正規のままでいるという場合もあるのです。
非常勤講師やアルバイトの場合、一コマでの時給換算となります。
この業界の時給は比較的高く、1500円~2000円になり、経験や実力によっては3000円近くまで上ることもあります。
非常勤講師の場合の年収は、230万円~250万円ほどとなるでしょう。
副業・兼業の塾講師
非常勤として登用されている場合、複数の塾で勤務している人も珍しくありません。
もちろん、塾によってはWワークを禁じているところもありますが、非常勤の場合は副業が許されているのが一般的です。
副業は塾講師に限らず、通信教育の添削や家庭教師、あるいはまったく別の職種であることもあります。
もちろん、予習や教材研究を疎かにしない範囲で、ということにはなりますが個人の裁量で収入を伸ばすことも十分に可能であるといえるでしょう。
塾講師と教師の平均年収はどちらが高い?
塾講師は一般的に初任給が高めに設定されており、350万円ほどからスタートすると考えていいでしょう。
しかし、その一方で給料の上がり方は年齢が上がるにつれて比較的なだらかになっていきます。
一方で、厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、中学校教師の平均年収は、41歳で661万円ほどとなっており、大きな差があります。
ただし、同じ教育に携わる仕事であっても、塾講師と教師の業務内容は大きく異なります。
塾講師は、勉強を教え生徒の成績を上げる事のみが期待されますが、学校には生活面や部活など授業以外にも多くの指導が必要です。
業務の幅は教師の方がはるかに広いため、年収の違いよりも業務内容の違いについてしっかりと把握しておく必要があります。
塾講師と予備校講師の平均年収はどちらが高い?
予備校講師の平均年収は300~400万円程度であり、塾講師平均収入と比べても大差ありません。
塾講師との大きな違いは、予備校講師の給与は「能力に応じた基本報酬×担当コマ数」で計算されることが多いことです。
実力を認められれば基本報酬は上がり、担当コマ数も増えていきます。
塾講師が収入を上げるためには?
管理職になり役職手当を増やす
塾講師として収入を伸ばすにはまず、塾内で責任のあるポストにつき、役職手当の部分を大きくさせるという方法があります。
講師として入社した後、経験を積み、勤続10年前後で主任職、その後塾長や教室長といった管理職をまかされるのが一般的です。
管理職に就くと講師としての職務から離れ、経営者という要素が強くなるため、抵抗を感じる人も多いようです。
しかし、現在の生徒の動向や周囲の学校の様子、受験傾向など講師の視点とは違った立場で教育に関われることは大きなやりがいであるといえます。
また保護者や生徒から相談を受けたり、講師の指導をしたりとコミュニケーションの機会も多く、全体の精神的支柱として機能する立場であるため、長い目で考えて大きなスキルアップになるということができるでしょう。
給料についても塾長クラスになると700万~1000万といった年収を得ることも可能になってきます。
大規模展開している塾の場合、塾長としてさらにキャリアを積んだ後、いくつかの塾をまとめるマネージャー職についたり、少数ではありますが本社勤務となったりする場合もあります。
こうなってくると講師としての要素は極めて薄くなってきますが、収入アップという面から考えた場合は、このような道も考えておくとよいでしょう。
人気講師になる
大手の塾の人気講師になれば年収は大幅にアップします。
テレビに出演したり、全国に出張したりするようになれば年収は1,000万円にもなるといわれます。
人気を集めるためには、わかりやすく面白い授業をする、生徒との円滑なコミュニケーションを心掛ける、親からの評判を得るなどさまざまな努力が必要です。
しかし、昇級ルールが決められている塾も多く、どれだけ人気が出ても年収が頭打ちになってしまうことも少なくありません。
昇給制度についてはしっかりと調べておく必要があります。
副業やダブルワークをする
副業やダブルワークが禁止されていなければ、複数の塾の講師をして掛け持ちすることもできます。
とくにアルバイトや非常勤講師の場合は、空いた時間で別の塾の講師としてダブルワークをしたり、家庭教師や通信講座の添削等の副業をしたりする人も少なくありません。
個人塾を立ち上げる
実力があれば、自分で塾を立ち上げることもできます。
ただし、一度失敗すれば経営が成り立たなくなりますし、自分自身の評判にすべてがかかっているため、責任も重くなります。
一方で、自分自身が塾長となれば、上司や会社の方針などのしがらみなく自分の理想の教育を行うことができ、成功すれば高収入にもつながります。
塾講師は年収1000万円を目指せる?
一般的な塾で生徒を指導しているうちは、年収1000万円を目指すのは難しいといえます。
年収1000万円を目指すには、大手学習塾のトップや人気講師になったり、動画配信や書籍販売などをして成功したりする必要があります。
基本的には生徒から絶大な人気があり、大手の塾で実力を認められなければ年収1000万円には届かないでしょう。
もう一つの道としては、塾を個人経営し、経営者兼講師をする道が考えられます。
塾経営を軌道にのせることができ、複数の教室を持つなどすれば、年収1,000万円も夢ではないでしょう。
塾講師の平均年収・給料のまとめ
塾講師の給料はほかの職業と比べて低めであり、昇給幅が小さいため、年齢を重ねるごとに大幅な年収アップは難しくなってきます。
塾講師として年収アップをするためには、管理職の道を選ぶか、独立して個人の塾を持つなどの方法があります。
少子高齢化が進んだとしても塾に通う生徒がいなくなることは考えにくく、これからも需要のある職業です。
今後大幅に年収がアップするとは考えにくいですが、アルバイトなども含め幅広い働き方ができるといえるでしょう。