塾講師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「塾講師」とは

塾講師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

塾で受験対策や学力向上のための指導を行うとともに、教材研究や保護者面談などを行う。

塾講師の仕事は主な仕事は2つあります。

ひとつは中学・高校・大学合格を目指す生徒に、受験対策を軸とした学習指導を行うこと、もうひとつは学校で定期テストの点数をとらせることで内申点の向上を目指すことです。

そのほか、生徒の学習意欲向上のための授業外でコミュニケーション、電話応対、入塾希望者を集めるための各種説明会の実施、保護者や生徒との面談なども行います。

正社員の塾講師を目指す場合、大学に進学し、就職の採用試験をクリアするというのが一般的な方法で、有名大学の出身であることがアピールポイントになります。

塾講師の初任給はほかの職業と比べるとやや高めですが、給料の伸びがゆるやかで一定の年齢になると頭打ちになることも珍しくありません。

給料アップのために、あえて非常勤となり複数の塾を掛け持つ人や、経験を生かして独立を目指す人もいます。

塾業界は少子化のなかでも業績を伸ばしつつありますが、一方で生徒集めの競争は厳しくなりつつあり、正社員が営業活動をすることも増えてきています。

「塾講師」の仕事紹介

塾講師の仕事内容

授業を行うだけでなくさまざまな仕事をこなす

授業を行い、学習意欲を引き出す

塾で行われる授業には、講師一人に対して生徒が一人あるいは二人で行われる個別授業と、いわゆる学校の授業のような集団授業とがあり、たいていの場合どちらか一方を専門に行います。

担当する年齢層や学力もまちまちであるため、それぞれの発達に合わせた対応を考えながら、授業内容を考えていきます。

また塾に通う生徒の中には学習意欲が低く、なかなか思うように結果の出ない人も少なくありません。

このような生徒に対してはコミュニケーションをとりながら、本人の気持ちを引き出したり、講師自身が自らの経験を語ったりすることが大切です。

このように授業内容を工夫したり、積極的に声をかけたりするなどして生徒のモチベーションを向上させることも塾講師の大切な仕事です。

とくに受験を控えた生徒の士気を高めるためには、学習指導以外にも生徒とのコミュニケーションをはかるなどさまざまな工夫をする必要があります。

学習指導以外の仕事もさまざまある

塾講師は生徒への学習指導だけを行っていればいいというわけではありません。

塾によっては事務員を雇用している場合もありますが、塾を運営していくための電話応対や保護者対応、広報や営業、各種説明会の実施などの業務も兼任する場合が多いです。

また保護者や生徒との面談、教室の掲示物等の整備や配布物の作成なども講師が行っている場合が多く、実際の授業以外にもさまざまな仕事を担っています。

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塾講師になるには

大学へ進学し、塾の採用試験に合格する

出身大学が重視される傾向にある

常勤の塾講師を目指す場合、大学に進学し、採用試験をクリアするのが一般的な方法です。

塾によってレベルはまちまちですが、少なくともセンター試験レベルの問題は解けるように対策しておきましょう。

大学を卒業していることは必須条件ですが、特定の学部を意識する必要性はなく、どちらかといえば学校名のほうに重きが置かれ、高卒や短大卒の採用は基本的にありません。

それまで人にものを教えたことのない人であっても、やる気と情熱さえあれば積極的に採用する傾向にあり、学校の教師と違って、教員免許の有無は問われません。

塾講師は比較的容易に求人情報を得ることができ、全国的に広く募集があるため、希望の勤務地域で求人をみつけることも可能でしょう。

アルバイトから正社員になる

アルバイト講師として採用され、実績を積めば、その働きぶりによっては、常勤講師への推薦を受けられることもあります。

塾講師は、アルバイトが大きな戦力となっている特徴があり、講師のほとんどをアルバイトでまかなっているというところもあるほどです。

正社員を目指す足掛かりとしてまずはアルバイト講師として働き、実績を積むというのもよいでしょう。

アルバイト講師は大学生でもできるため、就職活動前に経験しておくとよいアピールポイントになりますし、その働きぶりによっては、正社員登用の推薦を受けられることもあるようです。

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塾講師の学校・学費

生徒の志望校より上の学歴があることが重要

塾講師の学歴は大学卒が基本で、生徒の受験指導に関わるという面から、有名大学の出身であることが一つのアピールポイントになることは事実です。

学校名をどの程度重視するかは、塾のレベルによるところも大きいです。

補習塾ではなく進学塾をめざすのであれば、大卒以上の学歴が必須であるのはもちろんのこと、名の通った大学を出ていることが求められます。

また、難関私立中学受験に力を入れる塾であれば、講師の出身大学のみならずどの中学・高校を出たのかにも注目が集まります。

大学にしろ、高校にしろ、指導される側は自分の行きたい学校をしのぐレベルの講師を望むことが多いです。

そのため、就職先を考えるにあたっては、各塾に通う生徒の偏差値を前提に検討しなくてはならないでしょう。

塾講師の資格・試験の難易度

資格は不要だが、試験の難易度は高い

塾講師は比較的未経験者を歓迎する職種で、やる気と情熱さえあれば積極的に採用する傾向にあり、目指すにあたって特別な資格は必要ありません。

大学を卒業していることは必須条件ですが、学校の教師と違い、教員免許の有無は問われません

もちろん、講師や教師経験のある人、教員免許を持っている人は採用の際の大きなアピールポイントとなり、優遇される可能性が高くなります。

一方、塾の就職試験は一般企業に比べると難しいものが多いです。

学生を本当に指導できるレベルにあるのかが問われているため、生半可な学力では落とされてしまいます。

また、多くの塾ではディスカッションや論文などを試験に取り入れ、学力以外の部分もチェックしていることが多いです。

塾講師の給料・年収

初任給は高めだが、頭打ちも早く伸び悩むことも

若いうちは給料が高めに推移する

塾講師は一般的に初任給が高めに設定されており、350万円ほどからスタートすると考えていいでしょう。

しかし、その一方で給料の上がり方は年齢が上がるにつれて比較的なだらかになり、10年勤続した場合でも年収500万円程度までしか伸びないこともあります。

収入を伸ばすもっとも手堅い方法は、塾内で責任のあるポストにつき、役職手当アップを目指すことです。

能力があるのなら大手予備校の人気講師をめざすのもよいでしょう。

一方、雇われる側もより良い条件での雇用先を求め、あえて非常勤講師として勤務し、複数の塾をかけ持つ人などもいます。

非常勤講師やアルバイトの場合、一コマでの時給換算となり、時給は比較的高く、1500円~2000円になります。

経験や実力によっては3000円近くまで上ることもあるため、年収としては230万円~250万円ほどとなるでしょう。

苦労が多く責任が重い仕事

塾講師として働き始めは給料が高めですが、それに見合った仕事量ではないと考える人も多いです。

日々授業におわれるなかで、予習や教材研究の時間を確保することに苦労することは間違いなく、どうしても長時間労働になりがちなため、その割には給料が低いと感じる人もいます。

また生徒の将来がかかっている仕事のため、重い責任が課せられる覚悟も必要です。

さらに勤務時間がどうしても夕刻から夜に及ぶため、生活リズムが乱れやすいこともこの仕事のデメリットとして挙げられます。

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塾講師の現状と将来性・今後の見通し

少子高齢化により生徒の奪い合いが加速していく

少子化のなか生徒の奪い合いは加速していく

少子化の中、意外にも塾業界は着実に業績を伸ばしています。

ゆとり教育が見直されたことにより、かつての学力重視の風潮が高まりつつあることが、背景にあり、保護者の教育に対する不安が高まるなかで、学習塾の需要が上がっているのです。

その一方で、生徒の奪い合いによる競争は加速しています。

成績や点数が思うように上がらないと、塾に対する満足度も上がらず、結果的に生徒がライバル塾に流出してしまうという事態を招いてしまいます。

このような状況が続けば廃業という最悪の結果になりかねず、常に授業内容の「品質」を管理し、求められるレベルに達していなければ淘汰されるという厳しい状況が続きます。

非常勤講師や独立を目指す人も

塾講師は、初任給は高めに設定されているもののその後の伸び率が悪く、激務のわりに収入の面で報われないと考えている人も多いです。

収入を増加させるためには管理職につくという道がありますが、学習指導から離れてしまうため、生涯一講師で過ごしたいと考える人が多いのが現状です。

結果、正社員にならずに非常勤講師として複数の塾をかけ持つ人や、自ら塾を開業するという道を選ぶ人もいます。

独立は給与アップのみならず、自身の理念のもとに教育活動を行えるという利点もあり、将来的な目標として据える人が増えてきています。

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塾講師の就職先・活躍の場

塾の規模やレベルはさまざまある

塾講師の勤務先は、全国にある学習塾です。

一口に塾といっても、全国展開しているような大手の学習塾や大手予備校から、個人で経営している塾まで規模はさまざまです。

指導形態も幅広く、大教室で集団授業を行うもの、少人数指導、個別指導、映像指導と、世の中のさまざまなニーズに応えています。

受験科目すべてに対応しなければならない塾もあれば、一つの科目に特化している塾もあり、そのレベルや目的を見極めて、自分の能力を活かせる場を考えていくことが必要です。

塾の仕事以外に、本や記事の執筆、講演会などを行う場合もありますが、こうした仕事を依頼されるのは大手塾の有名講師がほとんどです。

塾講師の1日

昼すぎから出勤し夜遅くまで働くケースがほとんど

塾の営業時間は生徒たちの学校が終った後の夕刻から夜にかけてであるため、講師の出勤はお昼過ぎになります。

その分、終業時刻は深夜になることも珍しくないため、睡眠や食事の時間を確保しづらいといったデメリットもあります。

<塾講師の1日>

11:30 出社準備
13:00  出社
13:30 講師ミーティング
14:30 保護者との面談
15:30 休憩
16:30 授業で使用する教材の準備
17:00 通塾時の安全指導
17:30 授業開始
20:30 補習
21:30 生徒の見送り・帰宅時の安全指導
21:40 ミーティング
22:00 教室の片付け・明日の準備
23:00 退社

関連記事塾講師の1日のスケジュール・生活スタイル

塾講師のやりがい、楽しさ

生徒とのコミュニケーションが最大の魅力

塾講師のやりがいの最たるものは、生徒の成長に貢献できるという点でしょう。

未来ある生徒たちと交流しながら仕事ができる魅力は、普通の会社勤めにはないものです。

毎年別れがあるぶん、新しい出会いもあり、たくさんの生徒と交流することができます。

自分が担当した生徒の成績向上や、志望校合格などの目に見える結果が出ることも大きなやりがいの一つでしょう。

結果を残せば、生徒はもちろん、保護者からも感謝され、より新しい生徒が増えていきます。

さらに、どうすれば相手に伝わるのか、日々試行錯誤しながら生徒に向き合ううちに、自分自身が大きく成長していることに気付いたときにも、塾講師という仕事の魅力を感じるでしょう。

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塾講師のつらいこと、大変なこと

勉強以外にも業務量が多く仕事に追われる

塾講師はやりがいがある分、生徒のためならなんでもするのが当然であるかのような風潮があります。

数年勤めていれば教材の使い回しも可能ですが、最初のうちは授業の何倍もの時間をかけて予習をし、教材を準備しなければなりません。

残念ながら、採点や教材作成を持ち帰りの仕事にしている塾は多く、手当がろくにつかない中で働かされるケースもあります。

また、生徒により多くの授業を履修させる働きかけをしたり、休暇中の特別講習や合宿への参加を促したりなど、営業活動を行うことも求められます。

塾講師はもともと子どもが好きで、学習指導に携わりたいと考える人が志望する職種であるため、このような営業的な仕事やサービスに抵抗感があるという人も多いです。

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塾講師に向いている人・適性

生徒への指導力やコミュニケーション能力が必要

塾講師に必要な能力は、生徒に対する指導力です。

どんなによい学校を卒業し、高い学力を持っていたとしても、指導力がない講師は必要とされないため、生徒の関心を引き出し、わかりやすく伝える能力を磨いていかなくてはならないのです。

また、塾講師を目指す人はもともと成績がよく優等生であることが多いため、学力が低い、成績が伸び悩むという生徒の気持ちに寄り添える心も必要です。

さらに保護者や生徒と話し合いを持つ機会が多いため、コミュニケーション能力も大切な要素です。

塾にかかる費用はけっして安くはないので、保護者は常に講師が信頼に足るかどうかをチェックしているため「この人なら安心して任せられる」と思ってもらえるような振る舞いが求められます。

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塾講師志望動機・目指すきっかけ

なぜ塾講師を志望するのかを考えておくことが大切

志望動機は人それぞれ

得意な勉強を活かしたい人、何かを教えることが好きな人、子どもとコミュニケーションをとりたい人、子供の学力の底上げを図り、社会に人材を送り出したい人など、志望動機はさまざまです。

また、塾講師を目指すのは塾に通った経験を持つ人が大半であるため、職場環境が想像しやすいといったこともあるでしょう。

定期テストや受験など、節目節目で、成果がはっきりと出る職業なので、仕事を通してやりがいを感じたい人が選ぶ傾向にあります。

こうしたきっかけも重要ですが、なぜそもそもなぜ塾講師を選んだのかは明確にしておく必要があります。

勉強を教える仕事は、教師をはじめ塾講師以外にもさまざまあるため、なぜ塾講師でなくてはならないのか、という点は自分なりの考えを持っておくべきです。

志望動機を考える際のポイント

志望動機を考える際は、塾講師を目指したきっかけなどと共に、自分自身が持っている強みや自己アピールを盛り込むことで、より採用されやすくなります。

また、塾は全国に数多くあるため、なぜその塾を志望したのか、なぜその企業に勤めたいのかをしっかりと伝える必要があります。

同業他社を比較したり、業界研究をしたりするなどして、自分なりの考えをまとめておくとよいでしょう。

塾ごとに事業の方針や求めている人材が異なるため、それに見合った志望動機を書けるようにしておくことが大切です。

塾講師の雇用形態・働き方

アルバイトが中心で中小規模ほど非正規雇用が多い

塾の雇用形態はさまざまですが、講師の場合はアルバイトや非常勤が中心となっています。

塾の規模によっても変わりますが、中小規模の塾ほど非正規雇用が多く、塾長以外は皆アルバイトというケースも少なくありません。

その場合、アルバイト代は授業分だけしか出ず、事前準備や質問応対、報告書の記入、採点に対しては手当が出ない塾が大半です。

サービス残業が常態化していないかなど、事前にできるだけ情報を集めておくのがよいでしょう。

常勤講師の場合、授業はもちろん、教室運営の仕事も担うため、どうしても授業以外の負担が大きくなるという特徴があります。

もちろん常勤講師となれば給料や待遇も安定しますが、現場以外の仕事が増えるため、非常勤講師を掛け持ちするという人も多いです。

塾講師の勤務時間・休日・生活

仕事が生きがいでなければ長く続けるのは難しい

塾講師の休みは基本的に日曜日だけとしているところが多いです。

その日曜日も模試や受験前、受験当日には駆り出されることが多く、休日にはあまり期待が持てない業界です。

出勤時間が遅めであるため、午前中にゆっくり過ごせるという利点はありますが、その分、帰りが遅いことも覚悟せねばなりません。

夕方から夜にかけてが仕事の中心であるため、どうしても生活リズムが安定せず、健康的な生活が送れないと考える人もいます。

さらに塾によっては、採点や教材準備の持ち帰りが慣例化しているところもあります。

プライベートと仕事を切り分けることが、現状なかなか難しい業界であり、私生活よりもやりがいを優先したい人でなければ、続けるのは厳しいかもしれません。

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塾講師の求人・就職状況・需要

全国的に講師のニーズは常にあり、就職はしやすい

塾講師は地域によって塾の需要は異なりますが、全国的に求人は常時あり、就職するのはさほど難しくはないでしょう。

塾業界は転職や離職の割合も高いため、いい人材がいればいつでも確保したいと考えていますし、未経験者でも受け入れる傾向にあります。

また、塾講師は生徒との年齢が近いほうが親近感をもってもらえるため、ベテランは管理職に、現場は若い人材に、という考えを持ち、新卒採用や若手の採用に力を入れている塾もあります。

常勤講師になるのは難しい面もありますが、アルバイトは大学生や大学院生が多く、毎年入れ替わるため、とくに年度末や年度初めなどのタイミングによっては多くの募集があります。

塾講師の転職状況・未経験採用

未経験者採用も多く、転職しやすい業界

塾業界は転職しやすい業界であり、塾講師経験者の採用はもちろん、未経験採用もけっして少なくありません。

その背景には、休日出勤を含む長時間労働が常態化していて、それに対する手当も充分ではないという、業界の課題が背景にあります。

入社数年での離職率が高いため、足りない人手を埋めるために未経験者であっても採用される傾向にあります。

塾が求める学力基準に達していて、生徒とのコミュニケーションにも問題がなければ、転職できる可能性は高いでしょう。

一方で、常勤講師や正社員登用への道は簡単なものではありません。

最初は非常勤講師として経験を積むのが一般的で、複数の塾を掛け持ちして、収入面の不安をカバーしている人も多いです。

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