助産師の平均年収・給料は? 公務員助産師の年収や看護師との年収の違いも解説
一方で、資格取得の難しさや仕事の忙しさから、割に合わないと考えている人も多いようです。
勤務先や働き方によっても大きな差があるため、しっかりと確認しておくことが大切です。
助産師の平均年収・給料の統計データ
厚生労働省のデータによると、助産師の平均年収は約567万円です。
これを見ると助産師の月収は40万円に近く、賞与も90万円を超えていることから、平均年収はかなり高めであることがわかります。
しかし、これはあくまでも平均であるため、まだ経験の浅い若いうちは年収の上がり幅が小さく、若手のうちは350万円~450万円ほどがボリュームゾーンだと推定できます。
助産師の平均年収・月収・ボーナス
賃金構造基本統計調査
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、助産師の平均年収は、40.5歳で567万円ほどとなっています。
・平均年齢:40.5歳
・勤続年数:9.3年
・労働時間/月:159時間/月
・超過労働:6時間/月
・月額給与:395,800円
・年間賞与:919,900円
・平均年収:5,669,500円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
助産師の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
データをもとに考えると、助産師の給料は月給25万円〜35万円くらいだとみられます。
代表的な勤務先は比較的規模の大きな病院が中心となり、給与水準や待遇は比較的良い場合が多く、正規雇用であればボーナスも支給され、平均年収は450万円前後が相場となるでしょう。
同じ医療系の資格職である「看護師」よりも、多少高い水準とされています。
手取りは月収18万円~28万円ほどと考えられますが、夜勤の状況などによっても手当の額が変動し、収入に差が出てきます。
女性が活躍する職業であることから、結婚・出産によって若いうちに離職してしまう人もいますが、長く働き続けると昇給し、さらなる給料アップが望めます。
助産師の初任給はどれくらい?大卒の年収は?
初任給が高めの設定
助産師の初任給は、就職先によって異なります。
一般的には月給20万円~23万円ほどが相場といわれますが、規模が大きな総合病院に就職した場合、もう少し高めの設定となることがあります。
また基本給以外に、夜勤手当や住宅手当などの各種手当がつくと、1年目から比較的よい給料を手にしている人もいます。
たとえば虎の門病院では、「常勤助産師(準夜勤4回、深夜勤4回)」の新卒の初任給について、以下のような設定となっています。
- 基本給:275,600円
- 夜勤手当等:41,508円
- 合計:317,108円
新卒初任給の時点で月給が30万円を超えるのは、他の職種と比べてもかなり高水準といえるでしょう。
大卒が有利になる場合が多い
現在、助産師になるための学校には、助産師養成所(専門学校)、大学の助産師養成課程、大学院の3つの選択肢があります。
どのルートでも助産師資格を得ることができますが、大卒以上の学歴があった方が、初任給は高くなる傾向にあります。
また、大卒以上の学歴があることにより、大学病院・総合病院など規模の大きな医療機関に就職しやすくなります。
医療機関は規模が大きければその分給料も高めに設定されていることが多く、福利厚生も整っていることが多いため、全体的に給料が高くなる事が多いです。
助産師の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
助産師の統計上の平均年収は、10~99人の事業所に勤務する人が最も高く581万円となっています。10人以上の事業所の平均年収は567万円、100~999人は555万円、1000人以上は平均557万円となります。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
助産師の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
助産師の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、50~54歳の685万円です。
全年代の平均年収は567万円となっています。
助産師の福利厚生の特徴は?
助産師の福利厚生事情も勤務先によって異なりますが、全体としては充実している場合が多いようです。
総合病院や大学病院であれば、社会保険完備はもちろん、通勤手当、住宅手当、夜勤手当、時間外勤務手当などの各種手当も整っています。
また病院によっては宿舎や寮が利用できたり、深夜勤務の際にタクシー代が全額支給されたりします。
一方、個人経営でお産を取り扱うクリニックでは、福利厚生の内容がまちまちです。
総合病院や大学病院ほど充実していない場合が多いですが、助産師が十分に安心して働けるだけの待遇を用意しているところもあります。
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助産師の給料・年収の特徴
夜勤の状況によって大きく収入が変わる
お産を取り扱う助産師は、24時間365日、いつでも対応できるように準備しておかなくてはなりません。
現場では、複数の助産師が交替制で働くのが一般的で、大きな病院では日勤、準夜勤、夜勤のサイクルを繰り返します。
深夜時間帯に働くときは夜勤手当がつくため、夜勤がどのくらい入るかによって、収入が変わってきます。
基本給はさほど高くない場合でも、たくさん夜勤をした月は、収入が多くなることがあります。
各種手当が充実している
助産師の年収が高めであるのは、手当が充実しているおかげでもあります。
助産師の代表的な業務である分娩に立ち会うと、多くの病院では介助手当として1回につき1万円程度支給されます。
また、病院によりますが、毎月数千円程度が助産師資格手当として支給されたり、オンコールの待機をしている場合にも、数千円程度手当がついたりします。
そのほか、産科のある病院の多くは365日24時間体制であるため、夜勤1回につき通常5,000円程度が夜勤手当として支給されます。
シフトにより異なりますが、通常1ヵ月に4回~8回程度夜勤のシフトがあるのが一般的であり、夜勤を行う助産師は、基本給にプラスして、毎月3~4万円程度の夜勤手当がついています。
20代助産師の年収は低い?
助産師は経験年数や勤続年数によって昇給していくのが一般的であり、年齢を重ねるごとに年収は増えていく傾向にあります。
助産師の平均年収は比較的高い水準である一方、厚生労働省のデータを見ると、経験年数が10年未満の助産師の平均年収は450万円を下回っています。
これは、単純に経験が浅く年収が低いことに加え、20~30代は結婚や出産・育児などで残業や夜勤が難しいケースが多いため、手当がつかないことから年収の上がり幅が小さいと考えられます。
一方で、助産師は経験を積めば積むほど年収は上がる傾向にあり、資格を生かして長く働くことができる仕事であるため、結婚や出産、育児を経験してもまた復帰する人が多い職業です。
助産師の勤務先別の給料・年収
総合病院、大学病院
総合病院や大学病院では、たいていの助産師が「産科」に勤務し、分娩の介助や帝王切開などの手術のサポートを行います。
また、助産師外来で妊産婦の健診を行ったり、授乳指導や栄養指導、沐浴指導といった育児に関する業務を行う場合もあります。
病院の規模や設備によっては、正常分娩以外を担当することもあり、仕事内容はハードなものになります。
一方で、大学病院は、助産師の勤務先のなかでは給料や待遇が最も安定しているといわれます。
民間の総合病院も、地域に根差して経営が安定している病院であれば、大学病院と同じくらい好待遇で働ける場合が多いです。
長く働くことで確実に昇進し、リーダーや管理職のポジションにつくと、年収500万円~600万円以上を得るのも不可能ではありません。
クリニック
地域の産科クリニックでも、助産師は多く活躍しています。
クリニックや診療所と名前は違うものの、入院設備が整っている場合は、分娩や婦人科系の担当をすることとなり、基本的には病院とほぼ同じ仕事内容になります。
入院設備がないクリニックや診療所の場合には、婦人科・妊婦・乳児健診の介助や助産師外来、育児指導などを担当します。
クリニックごとに院長の考え方や経営方針が異なるため、給料や待遇もまちまちです。
多くの妊婦さんが来院し、経営が安定しているクリニックでは給料が高めで、待遇も充実しています。
助産院
助産院も、助産師の勤務先のひとつです。
産婦人科医のいない助産院では「正常分娩」しか扱うことができませんが、妊婦さんにしっかりと寄り添いながら、よりリラックスした環境でお産ができるように配慮した助産院が増えています。
こちらも助産院ごとに待遇や条件は異なるため、給料や待遇もまちまちです。
産婦人科医が不足するなかで、正しい知識・スキルをもつ助産師は、大きな病院に負けないくらい良い待遇で採用されることがあります。
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助産師の正社員以外の給料・年収
派遣社員
助産師は、「派遣」の形で働くこともできます。
派遣助産師として働く場合には、医療・看護系を専門的に扱う派遣会社と契約を結ぶのが一般的です。
派遣会社からは勤務時間や曜日など、自分の希望に合った勤務条件の仕事を紹介してもらい、病院やクリニックなどの医療機関を中心とした派遣先で仕事をします。
医療機関との直接雇用ではないため、就業先の福利厚生は適用されませんが、一般事務職などの派遣よりもだいぶ高時給で働けるケースが多いです。
フルタイムで働くのが難しい人などが、助産師の資格や経験を生かして派遣で働く道を選んでいます。
パート・アルバイト
パート・アルバイトの助産師が募集されることもあります。
たいていは常勤助産師のサポート業務が中心で、出勤時間や曜日の相談がしやすかったり、残業や夜勤をせずに働けたりする場合が多いです。
給料は時給制となりますが、助産師として働く以上はパート・アルバイトとはいえ国家資格が求められるため、高めの時給が期待できます。
もともとフルタイムで働いていた助産師が、結婚・出産を機にパートタイムの働き方に変えるケースがあります。
独立・開業
助産師には開業権があるため、独立し、自分で助産院を開業することができます。
助産院を繁盛させ、経営が軌道にのれば高額な収入が手に入りますが、お産を扱うの特性上、自分一人だけで運営していくのは困難です。
人件費や医療機器を揃えるための費用なども必要になるため、しっかりとした計画を立てなければ、成功は難しいでしょう。
助産師と他の医療系職種との年収の違いは?
助産師の平均年収は、看護系の専門職の中でかなり高い水準です。
助産師の平均年収は、40.5歳で567万円ほどとなっているのに対し、看護師の平均年収は41.9歳で約508万円です。
助産師になるには、看護師の国家試験に合格したうえで、さらに助産師国家試験に合格しなくてはなりません。
助産師になるまでのハードルがやや高めであることから、給料は同じ医療専門職の看護師よりも、やや高めに設定されているところが多いです。
看護師も女性が活躍しやすく、安定した収入が得られる職業として人気がありますが、助産師の方が高水準だといえるでしょう。
病院など入院施設がある医療機関で勤務する場合、看護師も助産師も同様に夜勤や残業、オンコール対応があります。
勤務内容が似ている2つの職業ですが、助産師の年収が圧倒的に高いことは魅力のひとつといえます。
もう一つの看護師系の職業として、保健師があります。
保健師の年収は保健師の平均年収は、38.6歳で451万円ほどです。
保健師も助産師と同様に、看護師資格に加え保健師資格が必要なダブルライセンスの職業です。
看護師とほぼ同水準ではありますが、助産師よりは平均年収が低くなっています。
これは、保健師は自治体などの公的機関で働く公務員であるケースが多いこと、業務内容から夜勤や残業が少ないことなどが理由として考えられます。
助産師の年収は高い?その理由は?
助産師になること自体が難しい
助産師が看護師や保健師などに比べ年収が高い理由の一つとして、助産師になること自体がむずかしいということがあげられます。
助産師になるには、いくつかのルートがありますが、多くの場合は大学や看護専門学校などの看護師養成課程を経て看護師資格を取得た上で助産師養成所で1年間学び、助産師国家試験に合格する必要があります。
また、助産師として働くには、助産師国家試験だけでなく看護師国家試験にも合格しなくてはなりません。
どちらも充分な準備なしでは合格が難しい試験ではありますが、看護師資格単体よりも難易度が圧倒的に高く、専門性も高いため、助産師の方が年収が高い傾向にあるのです。
産婦人科が減って助産師が不足している
産婦人科の数や助産師の数が少ないために、ニーズが非常に高くなっていることも、平均年収の高さにつながっています。
厚生労働省「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、産婦人科・産科を標榜する一般病院数は2008年で1,496件ありましたが、2022年は1,271件と10年程度で減少傾向にあります。
これは少子化の流れを受けたものとみられますが、毎年新しい赤ちゃんが一定数生まれることは今後も変わりません。
近年は高齢出産の増加などにより、長期的な体調管理を必要としたり、産後のケアが必要になったりする妊婦も増えてきています。
そのため現場は多忙となり、助産師を高い給料を払ってでも雇いたいという病院は多くあるのです。
2022年における看護師の総数は約131万人であるのに対し、助産師の総数は約3万8,000人と大幅に少ないのが現状です。
近年では少子化が大きな社会問題となっている一方で、助産師の需要は高くなっており、ほかの看護職よりも恵まれた給与水準になっていることがわかります。
厚生労働省「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
助産師は年収1000万円を目指せる?
助産師として働いていくことだけで年収1000万円を目指すことはむずかしいでしょう。
ただし、看護部長などの役職についたり、大学病院など規模の大きい医療機関に勤めることができれば、まったく不可能なわけではありません。
長い期間勤務していくことで、徐々に年収自体も上がり、管理職などの役職につくことで今よりも高い年収を得ることができます。
助産師が収入を上げるためには?
公務員の助産師になる
公務員の助産師には「公立病院」で勤務する助産と「保健センター」で勤務する助産師がいます。
公立病院で働く場合は、「特定地方独立行政法人」が運営する病院で働く助産師が対象で、ほかの病院と同様に分娩などを行います。
保健所や保健センターにて勤務する助産師は、主に自治体が主体となっている母子保健業務などを行います。
国家公務員として働く「保健師、助産師、看護師、准看護師」の平均給与月額を見ると、月額35万8479円(平均年齢47.7歳、平均経験年数22.3年)となっています。
一般的な助産師と比べて大幅に高いわけではありませんが、定年まで働くことを考えた場合、退職金や年金などは民間の病院よりもかなり高い設定となっています。
実際に、若手のうちは民間の病院の方が年収が高いため、転職してしまう人も多いようですが、生涯賃金や働きやすさを考えた場合、公務員のほうが総合的に多くの収入と安定した福利厚生を得ることができるといわれています。
管理職になる
助産師として経験を積み、管理職になることで基本給がアップしたり、役職手当がついたりすることで収入がアップします。
管理職になった場合、助産師や看護師の監理や指導に当たることが多く、実際に現場に出て働くことは少なくなることが多いです。
分娩介助で妊婦さんや赤ちゃんに携わるよりも、マネジメント業務の方が多くなり、責任やストレスを感じる人も多いようですが、これまでと違うやりがいと感じる人も多いです。
管理職を目指し、ステップアップしていきたいのであれば、助産師としての経験をに積み重ね、スキルや技術を磨いていくこと、同僚や上司から信頼を得られることが重要です。
より良い条件の病院へ転職する
今よりも高めの収入を手にしたいと考えるのであれば、経営が安定している大きな病院に勤務するのがよいでしょう。
大学病院や、地域の中核をなす総合病院であれば、会社員の平均年収以上の収入を手にできる可能性は高いです。
福利厚生面も充実していますし、昇進やキャリアパスの制度も確立していることから、安心してキャリアを積んでいけるはずです。
独立・開業する
それ以上の大きな収入アップを求めていくのであれば、独立・開業を視野に入れるのもひとつの道です。
最近では自宅出産や家族での立会出産など、できるだけ自然な形でお産に臨みたいと考えている妊婦さんや家族が増えています。
大きな病院ではできない、妊婦さんのニーズにきめ細やかに応えられる助産院がつくれれば、大きな利益が出せるかもしれません。
しかし、人の命を扱う助産院の開業は簡単なことではありませんし、多くのリスクを伴うことは確かです。
助産師として何を目指していきたいのかをよく自分に問いかけて、働き方を選択していくほうがよいでしょう。
助産師の年収のまとめ
助産師は女性の職種でありながら、資格取得の難易度や専門性の高さから、年収水準が高い職業です。
しかし、就職してすぐに高い収入が得られるわけではなく、経験を積んでいくことで着実に年収はアップしていきます。
助産師のニーズの高さは今後も続くと考えられており、助産師が不足していくと考えられる今後は、さらに年収がアップしていくことも期待できます。