動物看護師の仕事内容

獣医師とともに動物の健康管理に携わる

動物看護師は、動物の診察や手術などを行う「獣医師」をサポートする職業です。

• ベテリナリー・テクニシャン（VT）
• アニマル・ヘルス・テクニシャン（AHT）

などと呼ばれることもあります。

動物の生態や病気、薬、ケアなどに関する幅広く深い知識が求められる専門性の高い職業です。

一般的な「看護師」が人体に関連する専門知識や技術を身につけているのと同じように、動物看護師は、動物に関連する専門的な勉強をして、動物病院などで活躍しています。

国家資格「愛玩動物看護師」が誕生

動物看護師という職業には、長らく民間団体が認定するいくつかの民間資格のみが存在していました。

しかしながら、2022年には「愛玩動物看護師」という国家資格が誕生し、初めて国家試験が実施される運びとなっています。

この国家資格ができたことにより、動物の「診療の補助」は、獣医師を除くと、愛玩動物看護師の資格を有する者のみが行うことができる独占業務になりました。

ここでいう「診療の補助」の一例としては、以下のことがあげられます。

なお、愛玩動物看護師の業務独占である診療の補助以外の業務は、今後も愛玩動物看護師以外の人も行うことは可能です。

動物看護師の業務の内容

動物看護師の業務内容は、大きく「診察に関すること」「薬剤に関すること」「病院事務に関すること」「その他」に分けられます。

診察に関すること

診察に関する業務としては、以下のことがあげられます。

基本的には獣医師のそばに付いて、指示を受けながらサポートしていきます。

愛玩動物看護師の国家資格を持つ人については、診察の補助についての独占業務にも従事できます。

• 動物の保定（診察時、動物が動かないように押さえておくこと）
• 器具の準備、消毒、片付け
• 入院動物のケアや健康管理
• 体温や脈拍の測定、各種検査
• 病状や治療内容、検査結果について飼い主へ説明
• 手術の際に獣医師の助手を務める
• カルテの管理

薬剤に関すること

薬剤に関する業務としては、以下のことがあげられます。

• 病院内に保管している薬の管理や製薬会社への注文
• 獣医師が処方、調合した薬を確認し、飼い主に説明して渡す

病院事務に関すること

病院事務に関する業務としては、以下のことがあげられます。

動物病院によっては、獣医師や動物看護師とは別の「事務スタッフ」が別に配置されることもありますが、小さな動物病院など、動物看護師が以下の業務を担当することもあります。

• 受付窓口での対応
• 会計業務
• 電話やメールでの問い合わせ対応

その他

その他にも、動物看護師は以下のような業務に携わります。

• 病院内の清掃、消毒
• 診察に使用するタオルや手術用の滅菌布などの洗濯、管理
• 患者や飼い主がリラックスできるための環境づくり

動物看護師の役割

獣医師のサポートを行い、動物を助ける

動物看護師は、主に動物病院で獣医師をサポートする役割を担います。

人間が通う医療機関（病院）に医師や看護師・各種専門の技師などがいるのと同じように、動物病院でも獣医師をはじめ、たくさんの専門スタッフが協力しながら病気や怪我の動物たちを救っています。

動物看護師は、動物が暴れないよう押さえたり、治療や手術に使用する器具の準備・片付けをしたり、臨床検査や調剤を行ったりといったことから、病院によっては入院動物の世話や散歩からトリミングなどまで、さまざまな業務を担当して獣医師を手助けします。

かつては、動物看護師には国家資格が存在しなかったため、いわゆる病院の受付事務のような業務まで担うことが多くありました。

しかしながら、その専門性の高さや業務の重要性などが認知され、2022年には国家資格が誕生しています。

ペットを飼う人が増えている現代において動物看護師への期待は高まっており、専門スキルを持った人材がますます求められるようになっています。

飼い主と獣医師をつなぐ役割

動物は言葉を話せないため、動物看護師は、ペットの飼い主とも密なコミュニケーションをとることが大事です。

具体的には、動物の病状を説明したり、入院後の経過報告をしたりといったことを日々行っています。

また、獣医師は毎日たくさんの動物を診るため、一人ひとりの飼い主となかなかゆっくり会話をする余裕がありません。

そこで動物看護師は獣医師の指導の下、飼い主が不安にならないように説明をし、安心して来院してもらえる雰囲気づくりに努めます。

同時に獣医師が診察しやすい環境を整えることで、獣医師も診察や治療に専念できるようになります。

動物看護師は、まさに獣医師と動物・飼い主をつなぐ架け橋のような存在といえるでしょう。

求められる役割が多岐に渡るだけに大変な仕事ですが、動物が好きな人、動物を守りたい気持ちが強い人にとっては、やりがいを感じられる場面も多々あるはずです。

動物看護師の勤務先の種類と仕事内容の違い

動物看護師の主な活躍の場は、動物病院です。

ただし、ひとことで動物病院といっても、その種類は以下のように多岐にわたります。

なかには家畜など大きな動物の診療を行うところもあり、勤務先によって、動物看護師の仕事の流れや携わる業務範囲には多少の違いが出てきます。

また、動物病院以外では、以下のような場所で活躍する動物看護師もいます。

• ペットショップ
• 動物保護施設
• 動物園
• ドッグカフェ

これらの場でも、動物看護師の資格を持つ人が積極的に採用されることがあります。

動物病院で働く動物看護師

動物病院は全国に1万軒ほどあるといわれていますが、その規模や特徴はさまざまで、職場によって仕事内容や勤務スタイルは少しずつ変わってきます。

地域に根付いた小さな病院の場合は少人数のスタッフで回していくため、動物看護師は診療補助に加え、受付から会計業務などまで幅広く担当することが多いです。

そして病気や怪我の診察だけでなく、爪切りや健康診断など動物の日常的なケア目的で来院する患者も比較的多い一方、獣医大学の付属病院の場合、個人病院では対処しきれないような難しい病気を抱えた動物も多数やってきます。

また、入院施設を備えた24時間体制の病院であれば、動物看護師は夜勤を含めたシフト制で勤務することも少なくありません。

どういった動物病院で働くかによって、動物看護師の働き方もだいぶ異なるといえるでしょう。

ペットショップ・ドッグカフェ等で働く動物看護師

ペットの需要が増える中、ペットショップやドッグカフェ等のペット施設で働く動物看護師もいます。

販売されたり来店されたりするペットの体調や健康管理に気を配るほか、動物病院とは違いトリミングやしつけの知識も求められるようになります。

動物看護師の知識があることで、ペットショップやドッグカフェに来たペットのケガや病気を早期に発見できるというメリットもあります。

このほかには、以下のような場所でも活躍できます。

• ペットホテル
• トリミングサロン
• しつけ教室

これらのは近年では動物病院に併設されることも多いため、動物看護師の仕事の場はどんどん増えていると考えてよいでしょう。

動物保護施設・動物園で働く動物看護師

動物の保護施設や動物園などのテーマパークで働く動物看護師もいます。

動物の保護施設では、ケガや病気のために運ばれてきた動物を獣医師と共に回復に向かわせます。

犬や猫だけでなく、サルやシカ・野鳥など野生動物に関わることもあるため、ペット以外の動物の知識、より専門的な看護の知識が必要となります。

動物園などテーマパークで飼育されている動物の健康管理を任される動物看護師も同様です。

ときには大型の動物を扱うこともあるため、動物の生態を知るだけでなく、飼育方法や飼育環境なども勉強します。

動物園などの閉鎖的な空間では、一度病気が発生してしまうとほかの個体や動物にも広がってしまう恐れがあるため、毎日の健康チェックや早期の対策は欠かせません。

近年は、「アニマルセラピー」といって、ペットショップや動物園などから動物を運び、人が動物と触れ合うことでの心のケアにつなげたり、子どもの教育に役立てたりする動きも活発化しています

動物看護師の仕事の流れ

動物看護師は、出勤するとまず白衣に着替え掃除をし、開院の準備をします。

入院している動物がいれば、症状に変化はないかを細かくチェックします。

動物病院が開院すると、受付やカルテの記入、診察後の会計、問い合わせ対応、事務作業、獣医師の診察・手術の補助など、病院内のあらゆる仕事をこなします。

すべての診察が終わると、院内をきれいに清掃して帰宅します。

動物看護師と関連した職業

動物看護師と似た職業に「ペット看護師」があります。

どちらも動物病院などにおいて獣医師のサポートをする職業で、主な違いは名称の違いのみとなっています。

ただし、動物看護師は「愛玩動物看護師」という国家資格ができたことで、この資格を持たない人が「動物看護師」に似た名称を名乗ることは認められなくなりました。

ペット看護師には「ペット看護士」という民間の資格が存在していますが、こちらは愛玩動物看護師とは異なる資格であるため、注意が必要です。

動物看護師とペット看護師の違い

「動物看護師の仕事内容」まとめ

動物看護師は、動物・ペットの生態や病気・薬・ケアなどに関する深い知識が求められる職業です。

診察に関わることから、飼い主とのコミュニケーション、病院内の清掃・消毒までさまざまな業務をこなします。

また、愛玩動物看護師の国家資格を取得した人は、採血・投薬・マイクロチップ挿入・カテーテルによる採尿といった一部の行為も、獣医師の指示の下で施せるようになっています。

より専門性の高い職業として、これからさらに評価されていくでしょう。