動物看護師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「動物看護師」とは
獣医師のサポート役となり、入院中の動物のケアや手術・治療の補助業務を行う。
動物看護師は、おもに動物病院において、獣医師のサポートをする仕事です。
手術や治療の手伝いをしたり、検体検査や体温・脈拍の測定などを行います。
また、飼い主と獣医師との間に立ち、コミュニケーションをとったり、入院する動物のケアをしたりするのも動物看護師の役割です。
動物看護師として働くために必ずしも資格は必要ではありませんが、民間の資格として、動物看護職統一試験協議会が主催する「動物看護職」があります。
学校で動物看護学を履修するか、実務経験の年数によって、この試験の受験資格を得られます。
動物看護師は、アメリカなどでは国家資格が必要な職業です。
今後、日本でも動物看護師に求められる知識や技術は、より専門的なものになっていくと考えられます。
「動物看護師」の仕事紹介
動物看護師の仕事内容
動物の診察・治療を行う獣医師のサポートをする
動物看護師の仕事は、おもに動物病院で、獣医師のサポートにあたることです。
手術や治療の手伝い、検体検査や体温・脈拍の測定などのほか、動物病院の受付業務や診察・手術の予約管理など事務的な仕事を任されることもあります。
また、飼い主と獣医師との間に立ち、症状を飼い主にわかりやすく説明したり、動物の状態を聞き取ったりなどの丁寧なコミュニケーションをとることも重要です。
入院する動物がいれば、そのケアをするのも動物看護師の役割です。
動物の生態や病気などの知識を生かして働く
動物看護師の具体的な業務内容は、勤務先によって多少異なります。
ただ、動物看護師は、動物の診察や治療にあたるうえで、「獣医師がする仕事以外のすべてを担う」といっても過言ではないでしょう。
日本では、動物看護師に国家資格や公的な資格は現在のところ存在しませんが、動物の生態や病気、薬、ケアなどに関する深い知識が求められる専門性の高い仕事です。
動物看護師になるには
大学や専門学校に進学し、動物看護を学ぶのが一般的
動物看護師として働くために必ずしも資格は必要ありません。
団体が認定する民間資格はありますが、国家資格や公的な資格は作られていないのが現状です。
そのため、誰でも動物看護師として働けるチャンスはありますが、現実的には動物の生態や病気などの勉強をしておかないと、動物病院への就職は難しいです。
したがって、まずは大学や短大、専門学校などで「動物看護」を学ぶのがよいでしょう。
所定の学校を選択すれば、業界内では知名度の高い「認定動物看護師試験」という資格試験の受験資格が得られます。
これから動物看護師を目指すのであれば、動物看護関連の学校を卒業して、認定試験を受けるのが近道といえるでしょう。
未経験でも動物看護師になれる?
動物看護師は、未経験からなるのはやや難しい職業です。
アルバイトや受付助手として動物病院で働ける可能性はゼロではないものの、動物看護師として幅広い業務を任されるようになるには、やはり動物看護の専門的な勉強をしておくほうが有利です。
動物看護師の認知度が高まるにつれ、求められる知識・技能レベルも少しずつ高まっているため、動物系の勉強ができる大学や専門学校などに進学しておくことをおすすめします。
動物看護師の学校・学費
動物看護が学べる大学や専門学校がある
動物看護について学べる学校は、大学、短大、専門学校があります。
そのなかで、動物看護の世界では知名度が高い「認定動物看護師試験」を受けるためには、「コアカリキュラム採用校」とうたっている学校を選ぶことが必要です。
認定動物看護師の資格は就職に必須ではないものの、定められた勉強をして、一定知識の知識・技能を保有していることを示しやすい面では有利になります。
動物系の専門学校は各校で特色が異なり、動物看護師以外の動物・ペット系の資格取得(動物栄養管理士、ペット栄養管理士、メディカルグルーマーなど)も目指せる場合があります。
コアカリキュラム採用校以外の選択肢も
コアカリキュラム採用校以外でも、動物看護について学べる専門学校やスクール、通信教育はいくつもあります。
動物専門学校では年間の学費が120万円~150万円ほど必要なところが多く、それなりのお金が必要です。
スクールや通信教育であれば、もっと費用を抑えて動物について学ぶこともできます。
自分の目指すキャリアや取得したい資格、予算にあった学校を選ぶとよいでしょう。
関連記事動物看護師になるための学校や必要な学歴は?(大学・専門学校)
動物看護師の資格・試験の難易度
動物看護師の資格は国家資格化も検討されている
動物看護師には取得が必須の国家資格はありませんが、業界で知名度の高い民間資格に「認定動物看護師」があります。
この資格は、もともと各団体がバラバラで認定していた各種資格を、業界として統一化させようという動きで認定がスタートしたものです。
現在は認定動物看護師資格を持たずに動物看護師として働くことは可能ですが、動物看護師をより評価されるものにしようという動きが起こっています。
近い将来には、認定動物看護師の資格が国家資格化されるかもしれません。
認定動物看護師になるための試験
「認定動物看護師」になるための動物看護師統一認定試験は、2012年にスタートした試験です。
受験するには、基本的に、動物看護師統一認定機構が推奨するコアカリキュラムがある専門学校や大学で、必要な単位を修める必要があります。
合格率は80%~90%で、そこまで低いわけではありません。
所定の学校できちんと学び、動物看護の基礎的な知識を身につけておけば合格できるでしょう。
関連記事動物看護師試験(愛玩動物看護師国家試験)の難易度・合格率
動物看護師の給料・年収
獣医師と比べると給与水準は低め
動物看護師は専門性が求められる仕事ですが、給料をはじめ、待遇面に関してはあまり恵まれているとはいえません。
同じ動物病院で働く獣医師と比較しても、獣医師と動物看護師とでは大きな差があります。
民間各社のデータをもとにすると、動物看護師全体の平均年収は260万円前後と推定できます。
東京都内の動物病院に就職した場合、月給は18万円~20万円ほどと考えられますが、地方ではこれよりさらに低めになることが多いでしょう。
勤務する動物病院によっても差が出る
動物看護師の給料は地域による差だけでなく、病院ごとの差も大きくなっています。
大きな病院で比較的待遇がよいところもあるため、その場合は年収300万円~400万円以上を見込めるでしょう。
日勤のみの個人病院に比べると、24時間体制で夜勤も入る動物病院に勤務する場合には給与水準が高めで、夜勤手当もつくため収入が増えやすい傾向です。
もちろん、経験を積むことでの給与アップの可能性もあります。
関連記事動物看護師の年収・給料はいくら? 手取り額やボーナス、国家資格手当も解説
動物看護師の現状と将来性・今後の見通し
国家資格化が議論され、待遇の改善にも期待が高まる
現代の日本では、安定したペットブームが続いています。
ペットは「家族の一員」という考え方が定着し、人と動物の関わりがよりいっそう深まっています。
また、犬や猫以外のペットへの注目度も高まり、動物病院をはじめとしたペットビジネスの需要は拡大を続けています。
獣医師や動物看護師への期待は、非常に高まっているといえるでしょう。
業界内外で議論されているように、今後、動物看護師の資格が国家資格化すれば、この職の社会的な評価はさらに高まっていくはずです。
現状では、まだ不安定な身分で働く動物看護師も多くいるものの、将来は雇用状況や待遇の改善につながるかもしれません。
同時に、動物看護師に対する期待値も高まっていくはずですから、確かな知識・技術を備えておくことが重要です。
動物看護師の就職先・活躍の場
勤務先は動物病院がメイン
動物看護師のおもな勤務先は、動物病院です。
ただ、動物病院といっても、一人の獣医師が開業した小さな個人医院もあれば、複数名の獣医師が働く大きな病院まで、規模はさまざまです。
このほか、24時間体制で救急対応も行う病院、さらには眼科や歯科のように特定の部位を専門とする病院、動物の種類による専門病院などもあります。
なかには家畜など大きな動物の診療を行うところもあり、勤務先によって、動物看護師に求められる知識・スキルなども多少変わってきます。
このほか、数は多くありませんが、動物看護師としてのスキルを生かして、ペットショップや動物保護施設、動物園などのテーマパーク、ドッグカフェなどでスタッフとして働く人もいます。
動物看護師の1日
診察時間に合わせて働くのが基本
動物看護師のスケジュールは、働く場所によって異なります。
動物病院の場合は、診察時間に合わせて、朝出勤して夕方退勤する流れが一般的です。
ただし、高度な医療を提供する24時間対応の動物病院の場合は、シフト制での勤務となり、日によって夜勤になることもあります。
ここでは、一般的な動物病院勤務の動物看護師の1日を紹介します。
関連記事動物看護師の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
動物看護師のやりがい、楽しさ
動物を元気にして飼い主を笑顔にできること
動物病院にやってくる動物たちは、基本的に体のどこかに病気やケガを抱えています。
また、ペットを家族のように大切に思う飼い主も不安な気持ちになっています。
動物看護師は、目の前の動物や飼い主に真摯に向き合い、獣医師たちと協力して働くことで、動物と飼い主の両方を元気にする役割を担います。
無事に病気やケガが完治し、動物の元気な姿や飼い主の笑顔を見られたときは、うれしい気持ちになるでしょう。
また、経験を積めば動物の変化にいち早く気付けるようになったり、獣医師からも信頼を寄せられて多様な業務を任されたりするようになります。
専門性が問われる仕事なだけに、自身の成長を実感できたときにも充実感が得られます。
動物看護師のつらいこと、大変なこと
動物の命を救えなかったとき
動物も人間と同じように、いつかは命の終わりを迎えます。
動物病院にやってくる動物たちは、どこかしらに病気やケガを抱えていることが多く、たとえ獣医師や動物看護師が全力を尽くしても助からないこともあります。
動物が好きだからこそ、動物が苦しむところを目の当たりにし、死に直面するのはつらいと感じてしまうかもしれません。
ときには言葉を発せない動物と接することの難しさ、自分の技量不足を歯がゆく思うこともあるでしょう。
それでも、動物が好きでやりがいをもって働いている人はたくさんいます。
とはいえ、動物看護師の仕事は多忙で、その割に待遇がよくない場合が多いこともあり、厳しさや苦労を感じる人もいます。
動物看護師に向いている人・適性
人ともコミュニケーションをとるのを苦にしない人
動物看護師は、人間とは異なり会話ができない動物を相手にするため、治療方針や病状、薬の説明などはすべて飼い主に行います。
大切な動物の具合が悪く不安を抱える飼い主の気持ちに寄り添い、それでいて専門的な話もわかりやすく、丁寧に説明しなくてはならないため、コミュニケーション力が求められます。
いくら動物が好きでも人は苦手という人では、なかなかこの仕事を続けていくのは難しいでしょう。
動物を大切に思う心はもちろんですが、そこから一歩進んで、「飼い主と動物が幸せな関係を続けていけるよう、獣医師と共にサポートする」という視点をもてる人は、動物看護師に向いているでしょう。
関連記事動物看護師に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
動物看護師志望動機・目指すきっかけ
なぜ動物看護師なのかを明確にする
動物看護師を目指す人に、動物嫌いな人はまずいません。
実際、「動物が大好きだから」「動物の命を助けたいから」などの理由で、動物看護師を志望する人は大勢います。
毎日さまざまな動物と接するわけですから、動物が大好きで、たっぷりの愛情を注げることは非常に大事だといえるでしょう。
しかし、動物と深く関われる仕事は、動物看護師以外にもトリマー、ペットショップ店員、ブリーダーなどたくさんあります。
いざ志望動機を本気で考えていくときには、数ある職業のなかで、「なぜ動物看護師を選んだのか」をしっかりと考えていくことが大切です。
また、志望先については「なぜこの病院を選んだのか?」まで問われることが多いため、よく考えておきましょう。
関連記事動物看護師の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
動物看護師の雇用形態・働き方
アルバイトやパートなど非正規雇用も多い
動物看護師は、正社員で働く人がいるほか、アルバイトやパートとして働く人も少なくありません。
小規模の個人病院ではパートなど非正規の求人が多めとなっており、とくに未経験者や経験が浅いうちは、なかなか安定した働き方ができない場合があります。
動物看護師になるための勉強中の人が、動物看護の専門学校などに通いながら、空いている時間を使って現場経験を積む目的でアルバイトとして働いているケースもあります。
正社員となると、どうしても実務経験者や動物看護専門学校の卒業者であることが応募条件になることが多いです。
一方、非正規雇用であれば経験不問での募集も多いため、未経験から現場で仕事を覚えていきたいといった人にもチャンスが広がります。
動物看護師の勤務時間・休日・生活
勤務先の診察時間や営業時間による
動物看護師の勤務時間は、基本的に、勤務する動物病院の診察時間に合わせるかたちとなります。
朝から夕方にかけて働くのが一般的ですが、入院設備をもっている病院で動物看護師が宿直を担当する場合には、24時間を交代で回す「シフト制」の勤務になります。
また、どのような動物病院でも共通するのは、自分の都合だけで仕事を終えらせるのは難しいということです。
人間と同様、動物の容態が急に悪化したり、緊急対処が必要な動物がやってきたりすることもあります。
各病院の人員体制などにもよりますが、突発的な残業が入ったり、定時にきっちり帰れないことも多々あると考えておいたほうがよいでしょう。
動物看護師の求人・就職状況・需要
動物病院以外にも需要が拡大
動物看護師の主要な就職先は、動物病院です。
個人の動物病院から、高度な病気にも対応できる2次診療専門の大型動物病院まで、勤務先の規模や種類はさまざまです。
このほか、安定したペットブームの影響から、動物病院以外の職場でも活躍できる場は増えています。
たとえば、ペットショップやグルーミングサロン、ペットホテル、ペットが宿泊可能な一般のホテル、動物関連企業などです。
このような場でも動物看護師として、動物のケアや健康管理に関する専門的知識をもっている人材が募集されることがあります。
そこまで求人数が多いわけではないものの、正社員以外の雇用形態まで含めれば、多様な活躍の場があるといえるでしょう。
動物看護師の転職状況・未経験採用
未経験の場合はアルバイトから
動物看護師は、基本的には特別な学歴や資格が求めらる職業ではないため、誰でも転職したいと思ったときに目指せます。
ただし、動物看護師は全体として求人数があまり多くなく、安定して働ける正規雇用となると、なおさら狭き門となります。
動物看護の専門学校を出たとしても、正社員での採用口が見つからず、アルバイトなどで仕事を続けながらスキルアップを目指す人もいるほどです。
未経験から転職を目指す場合も、アルバイトからのスタートになる可能性は十分にあり、年収は大きく減ってしまう可能性もあります。
また、動物看護師は専門職でありながら、身体を使う仕事が多かったり、ときに雑用もこなさなければならなかったりと、心身ともにハードな場面も多いです。
転職で動物看護士を目指す人は、こうした厳しい条件にもあきらめない覚悟を持つことが必要です。
動物看護師とペット看護師の違い
どちらも動物看護の専門職であることは共通
動物看護師とペット看護師は、どちらも動物看護に関わる専門職です。
どちらも国家資格は存在しておらず、仕事内容や役割は、ほぼ同じと考えておいて問題ありません。
あくまでも便宜的に使われる名称が異なっているだけで、獣医師のサポートをする立場として、診察や手術の補助、検査や調剤、入院動物の看護などを担当します。
ただ、あえて「動物看護師」と「ペット看護師」を分けて使うときには、同じ動物看護に携わる仕事でも、前者は動物園や動物保護施設なども含めた場所で幅広い動物に関わる人、後者は動物病院にてペットだけを専門にする人を指すこともあります。
なお、動物看護の資格は、現在は「動物看護師統一認定試験」による「認定動物看護師」が主流となっており、今後はこの資格が国家資格化されるかもしれません。
動物看護師になるために勉強すること・必要な知識
動物の生態に関する「知識」と「技術」の両方の習得が必須
動物看護師として働くためには、動物の生態や病気に関する知識の習得が不可欠です。
具体的には、動物看護学、動物行動学、動物栄養学、動物病理学、飼育管理学などが挙げられます。
幅広い動物の体の構造や機能、しつけ、食事管理、疾病に対する薬の種類などの知識を身につける必要があります。
同時に、動物看護師は技術面を向上させることも大切です。
たとえば血液や尿などの検査、麻酔、手術補助、グルーミングなどは、実践しなければなかなか身につきません。
そのため、動物看護について学べる専門学校などでは、座学のみならず実習の時間も多く設けており、手を動かしながら技術を習得していくことが可能です。