土木作業員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「土木作業員」とは
建設工事や水道などのインフラ整備に携わり、大型重機を用いて土地の採掘や造成をする。
土木作業員とは、道路の建設工事や河川工事などの際に、大型の重機などを用いて、土地の掘削や造成などを担当する作業者のことです。
土木作業員が携わるおもな工事の種類は、道路・ダム・橋梁・建物などをつくる大型の建設工事のほか、水道・ガス・通信などのインフラ整備、また宅地の区画整理、農地の圃場(ほじょう)整備などがあります。
土木作業員になるために特別な学歴・資格は必要なく、未経験から現場に入る人も少なくありません。
働きながら、必要に応じて各種大型車両や重機の免許、あるいは各種作業に関わる免許の取得を目指します。
特殊な免許を取得したり、経験を積んで現場の管理者になったりすることで収入アップが期待できます。
アルバイトや日雇いなど非正規で行う人も多くおり、近年では慢性的な人手不足を補うために、外国人労働者の雇用や作業ロボットの活用なども模索されています。
「土木作業員」の仕事紹介
土木作業員の仕事内容
土木工事の現場で、土工業務や重機操縦などの業務に携わる
土木作業員とは、河川や道路・橋梁・ダム・港湾・鉄道・上下水道などに関わる造成や、掘削・整備などの土木工事に携わる作業者のことをいいます。
土木工事は、水道やガスなどのインフラを整備する公共工事や、自然災害の復旧工事など社会公益性の高い業務が多く、地域機能の向上のための土台づくりを行う仕事です。
土木作業員の種類は、大きく以下の2種類に分けられます。
・土工:おもに土砂の掘削や地ならし、資材の運搬など多くの役割を担う多能工として従事する人を
・機械土工:重機免許を保有しており、オペレーターとして従事する人
いずれの業務でも、定められた仕様や方法に基づき、専門的な技術を駆使して作業を進めます。
土木作業の現場でも機械化や自動化が進んでいる
土木作業員は現場仕事がメインですが、ある程度のキャリアを積み、さまざまな工事関連の免許や資格を取得した後には、工事全体を取り仕切る「監督者」として工程管理や安全管理を担うこともあります。
なお、昨今の土木工事現場は機械化・自動化が進み、体力的なきつさは以前ほどではなくなっており、安全管理も昔より一段と徹底されています。
こうしたこともあって、近年では女性の土木作業員も少しずつではあるものの増えてきています。
土木作業員になるには
学歴不問で現場に入れるケースも多い
土木作業員になるために、高い学歴や特別な資格は必要ありません。
現場で行う作業が中心となるため、基本的には「大工」などと同じように「働きながら覚える」ことが重視されます。
土木作業員は多くの人手が必要な職業であり、積極的な採用を行っている建設会社・土木施工会社も多く、志望者に対しての門戸が広いことが特徴のひとつです。
必要な道具などはすべて会社に用意されているため、何も準備することなく仕事をスタートできる手軽さも魅力といえるでしょう。
工業高校や土木系の学校で勉強してから就職する人もいる一方、一般の高校などを卒業後、そのまま現場に入る人もいます。
なお、将来的に管理者を目指したい人、土木工事の企画に携わりたい人などは、学歴が高いほうが有利になる場合があります。
現場で仕事を覚えて一人前の作業員を目指す
未経験者が土木作業員を目指す場合、はじめはアルバイトなど非正規雇用として働くこともめずらしくありません。
その後、少しでも経験を積めば評価されやすくなり、将来的に正社員になれるチャンスは十分にあります。
また近年は、各企業が人員確保のためにさまざまな努力を続けており、以前よりもよい待遇で雇用されるケースが増えつつあります。
ただし、基本的には技術力が重視される職業のため、地道に現場で仕事を覚えて一人前を目指す心構えが不可欠です。
土木作業員の学校・学費
学歴があることで進路の選択肢は広がる
土木作業員になるために学歴は必要ではなく、熱意があり、体力面で不安がないようであれば、仕事に就くことはそれほど難しいことはありません。
早ければ10代で現場に出る人もいます。
ただ、土木工事に関する知識を学べる学校として、工業高校、土木系・建築系の専門学校、4年制大学や短大の工学部や建築学部などがあります。
現場の作業員一本で生きていくのであれば学歴はほぼ関係ないといえますが、将来は工事全体の管理者になりたい人、土木工事の企画に携わりたい人、大手企業で働きたい人などは、ある程度の学歴をもっておくほうが有利になることがあります。
自分が理想とするキャリアをイメージして、どのような学校に進むかを考えましょう。
土木作業員の資格・試験の難易度
経験を積みながら各種資格・免許の取得を目指すことが多い
土木作業員は特別な資格がなくてもできる仕事ですが、重機作業を行うには、重機の種類に応じた免許や資格が必要です。
つまり、さまざまな免許・資格を取得するほど携わることができる業務の幅が広がり、土木作業員としての評価が高まります。
昇進や手当などの収入アップにもつながるため、キャリアを積み重ねる途中で、免許・取得に挑戦する人は多いです。
重機オペレーター関連の免許・資格
重機オペレーターとして業務を行うためには、その重機の種類に対応した免許や資格が必要です。
代表的なものは、ショベルカーなどの重機を操縦するのに必要となる「車両系建設機械運転技能者」や、重量物をクレーンのフックに掛けたり外したりする「玉掛け機能講習」などがあります。
これらは、数十時間の講習を受けた後、学科と実技の修了試験を受けることが必要ですが、難易度としてはそこまで高くはなく、きちんと講習を聞いていれば合格できるレベルです。
専任技術者になるための資格
土木作業員がキャリアアップするための資格として、「土木施工管理技士」という国家資格があります。
この資格を取得すると、営業所に必要となる、一定水準以上の知識と経験を持つ「専任技術者」になることができ、さらに現場監督などの責任者としての立場を任されることもあります。
取得難易度は高く、実務経験を積むことが必要で、さらに国家試験対策としての十分な勉強量が不可欠です。
土木作業員の給料・年収
日給月給制が多く、収入は不安定となることも多い
厚生労働省の令和元年度賃金構造基本統計調査によると、土工(土木作業員を含む建築作業に携わる人)の平均年収は48.3歳で393万円となっています。
ただし、実際の現場では20代や30代の土木作業員も多く活躍しており、若手はもう少し収入が低くなると考えられます。
土木作業員の給与体系の特徴は、働いた日数によって月々の給料が上下する「日給月給制」が採用されることが多いことです。
この体系の下で働くと、悪天候で作業自体ができない日が続いた月や、工事そのものの件数が少なかったりする時期などは、収入が大きく減ってしまう可能性があります。
より安定した収入を望むのならば、固定月給制の職場を探すほうがよいでしょう。
経験や資格取得で給料をアップさせていく
土木業界では、ボーナスが少なかったり、あるいはまったくなかったりという職場も数多くあります。
また、土木作業員は資格・免許を取るなどしてできることを増やさないと、いつまで経っても給料はほとんど上がりません。
重機の操縦や玉掛け、CADなど土木関係の免許・資格を取得したり、「土木施工管理技士」の国家資格を得て現場監督として働けば、大幅な収入アップにつながりやすいです。
また、海中でのコンクリート工事や地盤の悪い土地での地下工事など、特殊な現場での経験を積んでいくと、より貴重な人材として評価されることがあります。
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土木作業員の現状と将来性・今後の見通し
慢性的に人材は不足しており、需要は安定
土木作業員が携わる土木工事業は、インフラの整備などを中心とした公共工事や民間の土木工事、災害における復旧工事、さらには設備の老朽化に伴うメンテナンスなど、人々の便利で安全な暮らしを支えるものです。
安定した需要があり、また日本各地で活躍できる職業です。
一方、建設業界は人の入れ替わりが激しく、近年は現場作業員全体が高齢化している影響もあって、人材の確保に苦しむ企業が増えています。
そのため、労働環境の改善や待遇の向上などを図る企業が増えており、より働きやすい業界に変わりつつあります。
業務自体も、かつての「きつい・危険・汚い」という、いわゆる「3K」から、機械化や自動化の進展によって、より安全に作業を進めやすくなっています。
ただし、この職業は年齢を重ねるうちに体力的に厳しくなりがちで、キャリアが頭打ちになることがあります。
長く仕事をしていくなら、働きながら重機免許や各種資格を取得して業務の幅を広げることや、経験と高度な知識を蓄積することが重要となってくるでしょう。
土木作業員の就職先・活躍の場
土木工事業を行う建設系の会社が中心
土木作業員のおもな就職先は、土木工事業を行う建設会社や土木施工会社、ゼネコンなどです。
規模は企業によってさまざまで、親方が個人でやっているところから、全国に事業展開する上場企業まであります。
土木作業員は、おもに河川や道路、橋梁、ダム、港湾、鉄道、上下水道などの公共工事や、民間工事に関わる部分において、造成や掘削、土砂の運搬、コンクリートの打設などの業務を手掛けます。
勤務先によって、掘削工事を多く請け負うところもあれば、舗装工事をメインにしているところもあるため、どのような作業に携わりたいかをイメージして、勤務先を探すのもよいでしょう。
現場に入ったばかりの頃は、力仕事をメインとして、先輩の下で経験を積みながら仕事の流れを覚えていきます。
その後、重機の免許や各種土木作業関連の資格を取得することで、責任の大きな業務を任されるなど、活躍の場を広げていくことが可能です。
土木作業員の1日
朝は早く、こまめに休憩を取りながら働く
土木作業員の業務は、大半が肉体労働です。
体力の消耗が激しいうえ、疲れて注意力を失った状態で働くと、思わぬケガや事故を引き起こすこともあり得ます。
このため、1日に複数回の小休止を挟み、水分補給などを行って体力の回復を図りつつ、集中力を維持しながら慎重に働きます。
また、朝は早く、夜は日が暮れる前に作業を終えるのが通常の流れです。
ここでは、現場で働く土木作業員のある1日の流れを紹介します。
関連記事土木作業員の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
土木作業員のやりがい、楽しさ
社会貢献度が大きく、作り上げたものが形として残る
土木作業員のやりがいのひとつは、トンネルやダム、橋など、人々の生活基盤となるものをつくりあげる大きな仕事に携われることです。
ときには山を切り崩したり、原野を切り拓いたりと、地形を大きく変えるような仕事をすることもあります。
できあがった建造物は長く世に残りますし、自分のやってきた日々の業務が形になることは、やはりうれしいものです。
世の中に不可欠なものをつくるという社会的意義の大きさ、貢献度の高さも、土木作業員一人ひとりのやりがいにつながっています。
このほか、経験を積むなかで特殊な重機の操縦ができるようになること、専門的な資格や免許をどんどん取得してスキルアップすることにやりがいを感じる人もいます。
土木作業員のつらいこと、大変なこと
屋外で仕事をするため体力的にハード
土木作業員の仕事は、そのほとんどが屋外での作業です。
日差しが照り付ける日、風の強い日、雪が舞い散る極寒の中など、季節ごとの過酷な環境にさらされながら作業に従事するため、体力的にはハードといえるでしょう。
また、自分の体が元気でないと仕事にならず、収入にも影響をおよぼすため、常に健康管理には気をつけなくてはなりません。
もうひとつ、建築工事に切り離すことはできない、現場での事故やケガなどの労働災害には十分注意する必要があります。
土木作業員は、重たい資材を持ち運んだり、ドリルなどの刃物を扱ったり、危険な重機を操ったりします。
自分では気をつけていても、予期せぬタイミングで鉄骨が落ちてきたり、トンネルが崩落したりするリスクもゼロとはいえず、いつ事故に見舞われるかはわからないところがあります。
こうした危険とも隣り合わせの仕事であることを十分に理解して、注意深く仕事に臨まなくてはなりません。
土木作業員に向いている人・適性
体力に自信があり、注意力や集中力がある人
土木作業員に向いているのは、まず自分の体を動かすことが好きな人です。
室内でじっとパソコンに向かうデスクワークよりも、屋外で動き続ける仕事がしたいというタイプの人には、土木作業員向きといえます。
なお、業務で必要な体力は、働いているうちに少しずつ身についていきますし、たとえばアスリートのように強靭な肉体や才能が求められるわけでもありません。
それよりも、現場作業を苦にしない人、また大型の機械を扱うことに興味がある人などが、土木作業員に向いているでしょう。
なお、土木作業員の業務は危険がともなうものが多いため、周囲に対して注意を払うことができ、集中力を持続することが重要です。
きちんと周りの状況を確かめて、注意深く行動できる人も、土木作業員の適性があります。
関連記事土木作業員に向いている人の性格や特徴は? 未経験者にもわかりやすく解説
土木作業員志望動機・目指すきっかけ
自分が身につけた技術で世の中に役立ちたい
土木作業員を目指すきっかけとしては、「体を使った仕事がしたい」というものが多いようです。
運動をずっと続けていて体力に自信がある人などが、自分の身で稼ぐことができるという点に魅力を感じて、土木作業員を目指すことがあります。
このほか、「生活の基盤となるインフラを構築する工事に携わりたい」「形として残るものをつくりあげたい」といった思いから、土木作業員を目指す人もいます。
自分の技術力によってものづくりをする、職人的な仕事ということが志望動機につながることもあります。
また、幼いころから乗り物や機械が好きという人は、重機を操る土木作業員になりたいと考えることが多いようです。
土木作業員の雇用形態・働き方
正社員のほか、アルバイトや日雇いなどの雇用形態も
土木作業員の雇用形態は、土木工事会社などに勤務する場合、正社員であることが多いです。
「日雇い」や「短期」などの働き方のイメージも根強い業界ですが、実際には正社員として安定的な働き方をすることも十分に可能です。
ただし、アルバイトや派遣のような非正規で働く人もいないわけではありません。
たとえば道路建設などの大掛かりなインフラ工事や、地震や豪雨などに伴う災害復旧工事では、一時的に大量の人手が必要になるため、短期のアルバイトなどで土木作業員の募集がなされるケースもよくあります。
待遇面でいえば、やはり正規雇用が最も安定しているといえますが、「多様な現場を経験したい」「ひとつの環境に縛られず、さまざまな技術を身につけたい」などの理由で、あえて非正規で働く人もいます。
人によっては、現場経験を積むと独立し、フリーランスの親方になるケースもあります。
ただし、経験が浅い作業員がいきなり独立というのは現実的ではないため、まずはどこかの企業に所属して、確かな技術を身につけていくことが大切です。
土木作業員の勤務時間・休日・生活
基本的には作業計画通りに勤務し、残業はあまりない
土木作業員の勤務体系は、規則正しい「日勤」が主体です。
8:00~17:00前後で働くことが多く、作業はすべて屋外で行われる都合上、安全上の問題や近隣住民に対する騒音の問題から、通常は日が暮れる夕方までに1日の業務を終えます。
ただし、道路工事や鉄道工事などは、夜間に行われる場合もあります。
勤務時間中は高い集中力が求められ体力的にハードですが、安全面からもほとんどの場合は定時で作業を完了させ、残業は少ないです。
休日は日曜日と祝日となるケースが多いものの、勤務先によっては隔週で土曜日が休みになることもあります。
昨今の公共工事などでは、「働き方改革」の一環として労働環境の整備が進められ、週休2日を確保する動きも見られます。
徐々にではありますが、土木作業員にとっては働きやすい環境が整ってきています。
ただし、年度末や期末にかけては、工期の遅れがある場合など休日に作業を行うこともあります。
土木作業員の求人・就職状況・需要
慢性的な人手不足により、好待遇で採用されることも
土木作業員の求人は、工務店やゼネコンなどの建設会社や、土木施工会社などを中心に出ています。
大手企業から個人経営のところまで規模はさまざまですが、業界全体として、作業員の高齢化と慢性的な人手不足の影響が深刻です。
そのため、土木作業員の求人数は非常に多く、積極的に募集を行う会社がよく見られます。
未経験者でも積極的に正社員として採用し、社内で必要な教育を行う企業も増えていますが、一方では非正規の募集もよく見られます。
場合によっては短期勤務でもOKとする内容であったり、スキルによっては派遣などでも高収入が得られるものだったりと、求人の内容はバラエティに富んでいます。
自分の希望条件に合う勤務先を探しやすい状況ですが、土木業界の企業のなかには、いまだに労働基準法を遵守していないなど、いわゆる「ブラック企業」も一部残っているため、就職先は慎重に吟味すべきでしょう。
土木作業員の転職状況・未経験採用
求人数は多く、とくに若い世代は歓迎される
土木作業員は、現状業界全体で人手不足が深刻化していることもあって、転職するための敷居が低い職業といえます。
現場経験者や重機免許を持っている人、建築関連資格を持っている人は、とくに好条件で採用されるケースが目立ちます。
一方、未経験者であっても熱意があれば採用される可能性は十分あります。
補助業務を経て経験を積みながら、徐々に難しい仕事に移行していくため、「未経験者歓迎」と表記して募集を行う会社も多くあります。
ただし体力を必要とする業務が中心となるため、未経験者は年齢が若いほうが有利です。
応募後即採用、次の日から出社のようなスピード転職も目指せますが、余裕があれば土木系の専門学校や職業訓練校などに通って、知識や技能、資格などを身につけてから転職するのもひとの方法です。
土木作業員の人間関係は?
職場によって異なるが、上下関係が厳しいところもある
土木作業員が活躍する建築・土木関連の業界は、「人間関係がきつい」と噂されることがあります。
実際のところは、どの仕事でもそうですが、「職場(現場)による」というのが正確な答えになるでしょう。
ただ、全体としていえることは、土木作業員はいわゆるガテン系の肉体労働であり、男性中心の世界です。
職人気質の人が多く、挨拶など礼儀に厳しかったり、上下関係を気にする人が多かったりすることは特徴的です。
また、現場が忙しくピリピリした雰囲気になると、少しミスをしただけでも厳しく咎められたりすることもあります。
とくに下っ端のうちは何かとストレスを抱えやすく、業務そのものは楽しくても、人間関係が苦痛で仕事を辞めてしまう人もいるのが現実です。