弁護士の働き方の種類とその特徴

弁護士の雇用

弁護士は、一般企業や中央省庁などの組織に勤める「インハウスローヤー」を除けば、かなりキャリアの早期のうちに独立開業することが前提となっている職業です。

このため、法律事務所などに勤める場合であっても、一般的な職業とは違って、「雇用契約」という概念は希薄であり、勤務弁護士が労働者とみなされるかどうかという点にも疑義があります。

実際の働き方をみても、勤務時間は個人の裁量に委ねられているうえ、雇い主であるボス弁(ボス弁護士)から教育的観点から指導を受けることはあっても、実務は独自の判断で進めるケースがほとんどです。

さらに、独立開業に至らないまでも、数年の実務経験を積んだ後には独立採算制に移行することが一般的であり、正社員などにように固定給が支払われる期間は新人時代のごく一時に限られています。

弁護士は、その職業特性上、個人事業主・自由業としての色合いが非常に強いといえるでしょう。

以下では、それぞれの雇用形態における弁護士の働き方を比較しながらご紹介します。

大手法律事務所の雇用形態

数百人規模の大手事務所の場合、在籍する弁護士は「アソシエイト」と「パートナー」という2つの層で形成されています。

新人はまずアソシエイトという正社員に近い雇用形態での採用となり、パートナーの下働きや国選弁護などを担当しながら、数年間の修業を積みます。

やがてパートナーに昇格すると、基本的には自力で報酬を稼ぐことが求められるようになり、実務に加えて、クライアント獲得などの営業活動もこなさなければならない立場となります。

給与については、アソシエイトは固定給、パートナーは自分が手掛けた案件で得た報酬のなかから決められた取り分を受け取る成果報酬形式です。

ただ、誰もがアソシエイトからパートナーに昇格できるわけではなく、早ければ入所2~3年目で退職を促されることもあり、またパートナーとなってからも、結果を出し続けなければ在籍することはできません。

一般的なサラリーマンと比べると、弁護士の雇用条件はかなり不安定といえるでしょう。

なお、大手事務所に勤務し、M&Aや海外訴訟などの案件を手掛けて高額報酬を受け取る弁護士は「ブル弁(ブルジョワ弁護士)」と呼ばれます。

中小法律事務所の雇用形態

数人~数十人規模の事務所であっても、雇用事情は基本的に大手事務所と大差ありません。

入所した新人は「イソ弁(居候弁護士)」として固定給を受け取り、ボス弁の指示を受けながら実務経験を積みます。

数年程度のキャリアを積んだ後には、「ノキ弁(軒先だけ借りている弁護士)」として独立採算制で働くか、独立して自分の事務所を開業するケースが一般的です。

ノキ弁は、自分で顧客を獲得して売上をあげつつ、事務所に経費を支払わなければなりませんので、働き方としては独立開業と似たようなものですが、ボス弁の看板が集客に役立つという点はメリットです。

なお、大手事務所で働くブル弁に対し、離婚問題や相続などの個人案件を手掛ける中小事務所の弁護士は「マチ弁(街の弁護士)」と呼ばれます。

一般企業の雇用形態

一般企業や中央官庁、地方公共団体などに弁護士が勤める場合、正社員として雇用されるケースがほとんどです。

ほかの社員と同じように、各社の就労規則に従って働くことになり、歩合ではなく勤続年数や役職に応じた固定給、ボーナスなどが支払われます。

また、企業によっては、弁護士資格を保有していることで月々の給与に資格手当が付与されることもあるようです。

弁護士を必要とするのは上場クラスの大企業が多いため、雇用環境はかなり安定しているといえます。

アルバイト・パート

アソシエイトやイソ弁など、固定給を得られる勤務弁護士が限られていることからもわかるように、労働時間に対して一定金額を受け取ることのできるアルバイトやパート待遇での募集はほぼありません。

子育てや介護などと仕事を両立させるため、ボス弁と交渉し、勤務時間固定・残業原則不可で働く弁護士もいるようですが、あくまで例外的なケースです。

どんな案件にせよ、依頼人との面談や書類作成、交渉、裁判など多数の作業をこなさなければならないうえ、分業もしにくい弁護士業務は、アルバイトやパートとして時間を区切って働くには不向きです。

どうしてもアルバイトやパートとして働くなら、法律事務所の補助スタッフや秘書として法律知識を生かすという手もありますが、弁護士業務からは遠ざかるでしょう。

独立開業

弁護士は、その大半が遅かれ早かれ独立する職業であり、なかには司法修習後すぐに開業する「即独」と呼ばれる人も一定数います。

また、その営業スタイルもさまざまであり、ボス弁としてほかの弁護士やスタッフを雇う人もいれば、単独ですべての作業をこなす人もいます。

さらに近年では、事務所費用を軽減するため、自宅と事務所を兼用する「タク弁」や、オフィスを持たずに携帯電話1本で仕事を受注し、カフェなどで作業する「ケー弁」と呼ばれる弁護士も増えつつあります。

弁護士数の増加によって、東京や大阪などの大都市圏を中心に競争が熾烈になっており、独立が成功する難易度は上昇傾向にあります。