システムエンジニアの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
ITの専門的な知識・技術を生かし、人々の生活や社会を便利にするためのシステムを作り上げていくために活躍します。
この記事では、システムエンジニアの仕事や役割について、詳しく紹介します。
システムエンジニアの仕事とは
「システムエンジニア」とは、ITシステムやコンピュータ分野を専門とするエンジニア職(技術者)を指します。
「SE(エスイー)」や「ITエンジニア」と呼ばれることもあります。
システムエンジニアの仕事は幅広く、どのようなシステムにするかの仕様を「設計」することもあれば、サーバーのセットアップ作業などの「構築」を担当することもあります。
さらに、システム導入後の「運用」や「保守」をシステムエンジニアが取りまとめることもあります。
基本的にシステムエンジニアの仕事は「プロジェクト」を組んでチームプレイで進めていきます。
大規模なシステム開発案件であれば、何百人ものエンジニアと共に働くこともあります。
将来的にはチームのリーダーポジションを任されることも多いため、単に技術力だけでなく、コミュニケーション力やマネジメント力も必要となってくる職業です。
システムエンジニアの業務内容
システムエンジニアの仕事内容は、「要件定義」「設計」「構築」「運用・保守」「マネジメント」の大きく5つに分けられます。
要件定義
「要件定義」は、これからつくるシステムの大まかな方針を詰めていく仕事です。
まずはお客さまの要望や抱えている課題などをヒアリングし、「どのような目的で利用するシステムか」「どのような部分をシステム化するか」などをすり合わせます。
それをもとにシステムの大まかな方針を定義し、「要件定義書」などのドキュメントに設計内容をまとめていきます。
要件定義は、システム全体を見渡せる力や、お客さまとの対話力が問われるフェーズでもあります。
設計
要件定義の内容を踏えて、よりシステムの細かな部分を「設計」していきます。
設計は、「基本設計」と「詳細設計」の2つに分けられます。
- 基本設計:「使用するサーバーの台数や機種を決める」「バックアック運用の方針を決める」など、システムの全体的な仕様や仕組みなどを設計
- 詳細設計:「サーバーの設定値を決める」「導入するミドルウェアの設定値を決める」「導入する一つ一つのプログラムを設計する」など、各部のより細かな仕様や機能を設計
設計内容は「基本設計書」や「詳細設計書」のドキュメントにまとめていきます。
お客さまやプロジェクトメンバーたちと打ち合せやレビューを繰り返しながら、設計内容を詰めていくこととなりますので、設計においても対話力やコミュニケーション力が求められます。
構築
「構築」は、実際にシステムを作り上げていく仕事です。
たとえば、構築作業として次のような作業を行うことになります。
- サーバーやネットワーク機器の設定を行う
- ソフトウェアやミドルウェアのインストールやセットアップを行う
- サーバーにプログラムを実装する
- 動作確認テストや負荷テストなどを行う
好き勝手に作業を行うのではなく、まずは「構築手順書」や「動作確認手順書」などのドキュメントを作成することから始まります。
完成した手順書の内容をお客さまとレビューし、問題がなければその後サーバーセンターなどに出向き、手順書の内容にのっとり構築作業を進めていきます。
運用・保守
「運用・保守」は、システム稼働後、そのシステムが正しく動作し続けられるように維持管理していく仕事です。
例えば、運用・保守作業として次のような作業を行うことになります。
- 定期メンテナンス作業(データ更新やアップデートファイルの適用など)
- サーバーやネットワーク機器の実機のメンテンナンス
- 障害監視
- 障害発生時のトラブル対応
運用・保守はマニュアルに沿って行う業務が多いため、現場での作業は新人やアルバイトが中心となって行うケースが多いです。
熟練のシステムエンジニアの場合は、作業担当ではなく運用・保守チームを統括する立場として携わることが多いです。
マネジメント
システムエンジニアは、いずれ「チームリーダー」「プロジェクトリーダー」「プロジェクトマネージャー」といったマネジメント職にキャリアアップしていくのが通例です。
マネジメント職となると、タスク管理・進捗管理・課題管理・工数管理など、プロジェクトやチームを管理する業務が中心となってきます。
とくにプロジェクトマネージャークラスになると、会議や打ち合わせの毎日となり、設計や構築などの現場作業を行うことはなくなります。
システムエンジニアの役割
ここでは、システムエンジニアの会社組織内での役割と、社会的な役割について説明します。
会社組織内での役割
新規システム開発案件の受注や手配などは、基本的には営業部門側が担当します。
営業部門が取ってきた案件に参画し、実際にシステムを作り上げていくことが、システムエンジニアの会社内での役割です。
とくにSIer(システムインテグレータ)系の会社では、システムエンジニアという人材こそが会社の商品となります。
システムエンジニアがシステムを作り、それによってお客さまから得た受注料金が、SIerでは会社の売上に直結してきます。
社会的な役割
システムエンジニアの社会的な役割は、ITシステムを用いて、社会をより便利で快適にしていくことです。
道路の交通システム、携帯電話の通信システム、銀行の決済システムなど、すでにITシステムはわたしたちの生活の一部となっており、社会を根底から支えています。
未開拓の分野のIT化を進めるだけでなく、導入済みのITシステムを保守し、維持していくこともシステムエンジニアの大きな役割となっています。
システムエンジニアの勤務先・働き方の種類
ここからは、システムエンジニアの代表的な勤務先であるSIerについて紹介します。
また、システムエンジニアの主な働き方の特徴についても説明します。
システムエンジニアの代表的な勤務先
システムエンジニアの代表的な勤務先となるのは、SIer(システムインテグレータ)系の企業です。
SIerとは、システムの企画・立案設計、開発、保守・管理などを総合的に行う企業のことを指します。
大手SIerとしては次のような企業が挙げられます。
- NTTデータ
- 日本IBM
- 日本ユニシス
- アクセンチュア
- 富士ソフト
- DTS
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- 新日鉄住金ソリューションズ
- 日立ソリューションズ
- 日立システムズ
- 東芝ソリューション
- 野村総合研究所 など
これらSIer系の企業に就職し、システムエンジニアとなる人が多いです。
またSIer以外にも、昨今は多くの一般企業が「システム部門」や「情報部門」などのIT系部門・部署を自社に構えています。
そのようなIT系部門・部署にて、「社内SE」として働く道も用意されています。
大手SIerでのシステムエンジニアの仕事の特徴
「NTTデータ」や「日本IBM」などの大手SIerで働く場合、次のような環境に置かれるケースが多いです。
IT業界も建築業界と同じように、1次請け、2次請け、3次請け…といったピラミッド型の構造の業界となっています。
大手SIerは1次請けのとなるケースが多いため、上流工程を担当する機会に恵まれ、ベテランのエンジニアであればプロジェクトマネージャーなどに任命されることも多くなります。
ただし、中小SIerであっても上流工程を担当することもあるため、一概にはいえない部分もあります。
システムエンジニアの働き方
システムエンジニアの働き方は大きく以下3タイプに分けられます。
- 社外SE
- 社内SE
- リモートワーク、フリーランス
「社外SE」は、お客さま先のオフィスや外部のプロジェクトルームに常住して働くタイプとなり、「常駐型SE」とも呼ばれます。
「社内SE」は、一般的なサラリーマンと同じように、自分の勤める会社でシステムエンジニアとして働くタイプです。
また昨今は、場所を選ばず、外部からの「リモートワーク」で対応することのできる案件も少しずつ増えてきています。
社外SE
「社外SE」は、お客さま先のオフィスや外部のプロジェクトルームに「常駐」して働きます。
自社に出社する必要はなく、常駐先に直行直近の形式となり、勤務形態や就業規則も常駐先のルールに従うのが基本スタイルです。
大規模プロジェクトであれば、ビルを丸々貸し切ったプロジェクトルームにて、SIer各社から参画してきた何百人もの別企業のシステムエンジニアたちと働くこともあります。
社外の人間ばかりの独特の環境で働くため、刺激のある日々が送れ、自社の人間関係から解放されるメリットもあります。
同時に「同じ会社の人間だから」という甘えは通用しない環境となるため、責任感や緊張感を持った行動が常々必要になってきます。
社内SE
「社内SE」は、システムの自社開発を行ったり、自社に導入されたITシステムの運用・保守などを担当することが多いです。
社内SEの場合、一般的なオフィスワークの会社員と同じように自社にデスクが用意され、自社に出勤して働くことになります。
同じ会社の上司や後輩とともに働ける環境となるため、社外SEに比べれば緊張感は減り、設計内容などの議論をする上でも、同じ会社の人間同士ですので比較的融通が利きやすいです。
ただし社内SEが担当するのは小規模な案件が多く、社外SEに比べると経験やスキルが積みにくい部分もあります。
フリーランス
システムエンジニアは、技術スキルが武器となる職業であるため、経験を積むことで独立し「フリーランス」として活躍することも可能です。
なお、フリーランスというと、在宅などで自由に働けるイメージを抱かれがちですが、システムエンジニアの場合はフリーランスとなってもお客さま先のオフィスに常駐し、日々出勤して働くケースが多めです。
とくに政府系のプロジェクトや金融系のプロジェクトなどでは、情報漏洩防止のため、フリーランスであっても外部からのリモートワークは一切禁止とされるケースがあります。
とはいえ、小規模な案件では最近はリモートワーク化も進んでおり、まったく出勤の必要なく、完全リモートワークで対応できるフリーランス向けの仕事も登場しています。
システムエンジニアの仕事の流れ
システム開発の全体的なサイクルとしては、要件定義→基本設計→詳細設計→構築→運用・保守の順に、フェーズを区切って進めていきます。
大規模な開発プロジェクトであれば、1つのフェーズに1年以上を要すこともあります。
ただ、一人のエンジニアが初めから最後まですべてのフェーズに携わるということは少ないです。
たとえば「基本設計のフェーズのみ1年ほど参加、1年後は後任のエンジニアに引継ぎ別の案件に移動」といったような働き方をするケースも多いです。
フェーズが変わる際や、4月や9月などの人事異動の時期に、定期的に体制が見直されることもあります。
システムエンジニアと関連した職業
IT業界では、システムエンジニア以外にも、さまざまな専門領域のスキルを持つエンジニアが活躍しています。
以下では、各種ITエンジニアの代表的な種類と、システムエンジニアと勘違いされやすいエンジニアの特徴を紹介します。
システムエンジニアと各種ITエンジニアの違い
IT業界では、システムエンジニアの他にも、以下のようなITエンジニア職が存在します。
- サーバーエンジニア(主にサーバーやOS周りを担当)
- インフラエンジニア(主にソフトウェアやミドルウェア周りを担当)
- ネットワークエンジニア(主にネットワークや通信環境を担当)
- データベースエンジニア(主にデータベースやバックアップなどを担当) など
これらは担当分野で細分化し各々の呼び名が付けられていますが、広義の意味ではシステムエンジニアに含まれてきます。
たとえば、ネットワークや通信環境を得意とするエンジニアを「ネットワークエンジニア」と呼ぶことがあります。
ただし、ネットワークも大きくみればシステムの一部となるため、ネットワークエンジニアをシステムエンジニアと呼ぶこともあります。
システムエンジニアとプログラマーの違い
「プログラマー」は、ITシステムの一部となるプログラム部分をメインで担当する職業です。
対して「システムエンジニア」は、それらのプログラムを載せることになるITシステムという土台を考え作り上げていく職業です。
大きくみればどちらの職業もITシステムを作っていることには変わりはなく、システムエンジニアとプログラマー連携して仕事を進めることもあります。
ただし、プログラム設計やプログラミング作業は、基本的にはプログラマーの仕事です。
システムエンジニアは、「このシステムにはどのようなプログラムが必要か」「どの部分をプログラム化すべきか」といったような視点でプログラムに関わっていくことになります。
システムエンジニアとハードウェアエンジニアの違い
パソコン、サーバー、ネットワーク機器などの電子製品を製造するエンジニアは「ハードウェアエンジニア」や「ハードウェア技術者」と呼ばれます。
ハードウェアエンジニアは、パソコンメーカーや電機メーカーで働いており、システムエンジニアとは活躍する業界が異なってきます。
対して「システムエンジニア」は、パソコンやサーバーそのものを製造する仕事ではありません。
パソコンやサーバーを活用し、それらを束ねたITシステムを考案していく「ソフトウェア」側の仕事となります。
「システムエンジニアの仕事内容」まとめ
システムエンジニアは、ITシステムやコンピュータ分野の専門的な知識・技術を持つ技術者です。
どのようなシステムにするのかを具体的に決める設計や、システムを作り上げる構築、またシステム導入後の運用や保守といった業務を担当します。
SIerなどの企業に勤めるほか、独立してフリーランスで活躍する人も多くいます。