総務の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「総務」とは
企業や団体の従業員が働きやすい制度・環境づくりに取り組み、組織運営を裏方で支える。
総務は、企業などの組織において、従業員が働きやすい環境を整え、業務を円滑に進められる職場づくりに取り組む職種です。
組織で使用する備品・機器の調達やオフィス建物の管理、福利厚生制度の整備、社内制度の改善・推進、来客対応、会社のイベント企画・運営など、業務内容は多岐にわたります。
決して華やかな存在ではありませんが、縁の下の力持ちとして、あらゆる組織に欠かせない職種です。
民間企業の場合、大手では「総合職」として一括採用された中から会社の状況や本人の能力・希望・適性等によって総務部に配属される流れが一般的です。
小さな組織では総務と他職種の業務を兼任している人もいます。
平均年収は400万円前後がボリュームゾーンとされており、そこまで高額な収入は得にくい仕事です。
一方で管理職となったり、専門性が必要とされる業務をこなせる知識・スキルを身につけたりすると、良い待遇で働けることもあります。
総務はあらゆる組織にとって不可欠な職種であり、引き続き安定した需要が期待できます。
「総務」の仕事紹介
総務の仕事内容
企業や組織に欠かせない仕事を担う
組織運営に必要なあらゆる業務を担う
総務は、企業や役所などの組織において、従業員が働きやすい環境を整え、業務を円滑に進められる職場づくりに取り組む職種です。
その業務内容は多岐にわたり、一般的には「その他の部署では取り扱わないが、会社にとって必要不可欠な業務すべて」です。
そのため、総務を担当する人がいない企業はほとんどありません。
具体的な業務は、組織で使用する備品の調達やオフィス建物の管理、保安・防災業務、従業員の健康管理、慶弔業務、社内制度の改善・推進、株主総会の運営、会社のイベント企画などが挙げられます。
また、経営陣も含めて社内すべての部署と関係を持つため、組織の潤滑剤としての役割も担っています。
コミュニケーション能力や細かな気遣いが大切
総務は、社外のさまざまな業者とやりとりをする機会が多いため、コミュニケーション能力が必要とされる仕事です。
また、あらゆる部門の社員と関わりながら組織全体に関わる業務をこなすことから、常に広い視野を持つことが大切です。
たとえば「消耗品が切れている」「最近、残業時間が増えているようだ」など、周囲の動きや変化にすぐ気付いて、声をかけたり動いたりすることができる人は総務としても活躍しやすいです。
総務の仕事は細々としたことも多く、決して表舞台に立つ華やかな存在ではありません。
だからこそ、他人のために「縁の下の力持ち」になることに喜びを見出せる人がこの仕事には適しています。
総務になるには
入社後すぐに総務となるケースは少ない
就職先はさまざま、希望を明確に
総務は、民間企業を中心とするさまざまな組織で活躍できる職種ですので、総務になるにはまず、企業への就職を目指すことが第一歩です。
総務はどんな企業であっても必要とされる職種であり、業界や規模を問いませんので、就職先の選択肢は非常に幅広くなるでしょう。
逆にいえば、勤める先によって担うべき役割もさまざまですから、具体的に何がしたいのかを明確にしておく必要性があるといえます。
たとえば企業の規模という観点から考えると、多くの従業員を抱える大企業は、業務はそれぞれにある程度分担されているのに対し、中小企業では一人でさまざまなことをこなさければなりません。
どの企業を選ぶにしても一長一短がありますので、自分がどのような環境で働きたいかを熟慮した上で、就職先を選ぶとよいでしょう。
新卒で総務に配属される人は少ない
総務は組織や企業全体に関わる仕事を行うため、実務経験の少ない新卒が配属されるケースは少ないです。
まずは他の部署で働いて経験を積んだり、全体の動きを見られたりするようになってから異動により配属されるケースが多いです。
中途採用の場合も同様で、未経験者を雇うことは少なく、前職でも総務を経験していた人が優遇されます。
仕事をする上ではデスクワークが多いため、パソコンのスキルやプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力があるとよいでしょう。
また外資系企業や海外と取引がある企業で働く場合には、語学力が必要とされることもあります。
総務の学校・学費
学歴よりもコミュニケーション能力が問われる
総務になるために特別な学歴や資格が必要になることはほぼありませんが、通常の就職活動と同様、大企業の採用試験を受ける場合は、大卒以上などの学歴が条件になるでしょう。
それよりも、社内の調整役という一面も担っている総務には、さまざまな人と良好な人間関係を築くコミュニケーション能力に優れていることが重要になります。
そのため、はじめはさまざまな部署で経験を積んで社内の仕事を覚え、その人柄を見て総務に配属されるパターンが多くなっています。
社内のいろんな部署に知り合いがいて、困ったときに協力してくれる存在が多ければ多いほど、総務として仕事がやりやすくなるでしょう。
総務の資格・試験の難易度
パソコンスキルが高いと仕事で活かすことができる
総務になるために必要な資格などは特にありませんが、ワードやエクセルなどのパソコンスキルに関連した資格は業務上役に立ちます。
さまざまな書類作成や福利厚生などの管理作業を同時並行でこなしていかなければならないため、基本的なパソコンスキルがないと仕事が円滑にまわらなくなります。
そうした能力は総務に関わらずほとんどの業務で必要になりますので、学生のうちから勉強しておくことも無駄にはならないでしょう。
また業務範囲が庶務・事務・労務・人事といった広範囲におよぶことから、業務に関連する資格を取得すると活躍の場が広がったり、ステップアップのきっかけにもなったりするでしょう。
実際に総務職に就いてから、キャリアアップのために取得を目指す人も多いようです。
総務の給料・年収
年収は平均的で、収入アップは見込みにくい
平均的なサラリーマンと同じ
総務の平均年収は、400万円前後がボリュームゾーンとされています。
ただし、給料は勤務先となる組織の規模や地域、年齢、役職、勤続年数などによって差が生じます。
また民間企業の場合、株式公開をしていない非上場の企業よりは、規模の点で勝る上場企業のほうが給与水準は高めです。
能力による給料の差は出にくい仕事ですが、管理職として部下をまとめるポジションに就いたり、総務のスペシャリストになったりすると、平均よりも高額な年収を得ることも可能です。
大幅な給料アップは見込みにくい
総務の場合、営業職のように、基本給のほかに実績に応じて報奨金が上乗せされる「インセンティブ制度」が取り入られることなく、個々の能力というものはどうしてもはかりにくい面があります。
その結果、同組織における同年代の総務職の社員間では、給料に大きな差は出にくいといわれています。
ただし、そのなかでも日々の行動がすぐれていたり、役職が上がったりすれば、徐々に収入アップにもつながっていくでしょう。
総務職はそこまで平均年収が高い仕事ではないものの、そのなかで給料をアップさせたいのであれば、やはり管理職を目指すことが一番です。
また、総務として経験を積めば、より良い条件の企業へ転職して収入を上げることも可能になってきます。
総務は誰にでもできる仕事と思われがちですが、幅広い領域の業務を一通りこなせるようになるのは決して簡単なことではありません。
関連記事総務の年収・給料はどれくらい? 初任給やボーナス、統計データも解説
総務の現状と将来性・今後の見通し
スキルアップすれば活躍の場はさらに広がる
総務は、組織全体にまつわるありとあらゆる事務を取り扱う職種であり、数多くの組織で総務としての役割を担う人が活躍しています。
小さな組織の場合、総務部が置かれていないこともありますが、総務としての業務をこなしている人は確実にいるため、就職先の選択肢は幅広く、安定した環境で働きやすい職種のひとつだといえるでしょう。
今後も総務という職種のニーズ自体が大きく減ることは考えにくいため、これからこの職種を目指していく人にとってもチャンスはたくさんあるといえます。
なかでも、株主総会のとりまとめなど高い専門性が求められる分野の知識・スキルを持っている人は、上場企業や大手企業においても歓迎されやすく、良い待遇で採用される傾向にあります。
総務の就職先・活躍の場
さまざまな民間企業で働くことができる
総務は、民間企業を中心とするさまざまな組織で活躍できる職種です。
総務になりたいと思ったら、企業への就職を目指すことが一般的な道となります。
ありとあらゆる業界・規模の企業において総務は必要とされているため、就職先の選択肢はとても広いといえます。
総務は、どの組織においても「従業員が働きやすい環境づくりや制度整備に取り組む」といった根本的な役割は同じですが、「どこで働きたいのか?」はしっかりと考えたほうがよいでしょう。
なお、公務員にも総務を担当する人はいますが、公務員の場合は異動が多く総務の仕事だけを長く担当することは非常に難しいため、一般的には民間企業への就職をするケースが大半です。
総務の1日
社内外を問わず多くの人と接する
総務は、社内の関係各部署だけでなく、外部のさまざまな業者とのやり取りも頻繁に行われる仕事です。
多くの人とコミュニケーションを取りながら円滑に業務をこなしていくためには、仕事の優先順位を把握してスケジュールを調整することが重要になります。
総務のやりがい、楽しさ
人をサポートする喜びがやりがいにつながる
総務の役割は、社員がそれぞれの仕事でより活躍できるよう、手助けをすることです。
備品の発注や管理など、地味な仕事も多いですが、社員が業務に集中できるのは、総務が裏方に徹し、陰で支えているからこそです。
社内で目立つ存在になるというよりも、むしろ社員をサポートすることに喜びを見出せる人にとっては、総務は非常にやりがいのある仕事といえます。
また「○○さんがいてよかった」と声をかけてもらえたときには、大きな達成感が得られますし、もっとがんばろうという気持ちになれます。
総務担当が複数人いるような大企業の場合は、組織をよりよくしていくという連帯感を味わえることも、総務の魅力のひとつでしょう。
総務のつらいこと、大変なこと
ありとあらゆることを任される
組織全体に関わる仕事をする総務の特徴は、とにかく他部門に比べて守備範囲が広く、さまざまな業務をこなさなくてはならないことです。
特定の専門分野に業務が偏っていない総務は、スペシャリスト(専門家)でなくゼネラリスト(広い範囲の知識や能力を持つ人)でなければなりません。
それには高い実務能力が必要ですし、新しい業務に出くわすたび日々勉強する必要があります。
また、ときには苦情対応や消費者からの問い合わせなど、他の部署がやりたくないことを押し付けられるケースも少なくありません。
自分が間違ったことをしていなかったとしても、会社を代表して謝罪をしなくてはならない機会も出てくるため、責任の重さを感じたり、ストレスが溜まりやすかったりする一面があります。
総務に向いている人・適性
自発的に仕事をすることができる人
積極的に仕事ができる人
総務の仕事は、ともすると目的意識を見失いがちで、受け身になってしまう傾向があります。
組織や会社のなかの雑多な業務を意欲的にこなし続けるためには、待っているだけでなく、自ら働きかけることが大切です。
さまざまな部署と交流があることを活かして、会社全体を巻き込むような大きな社内改革に取り組むなど、仕事に対して自発的な姿勢でのぞめる人が、総務に向いているといえます。
また、総務は、表からは見えにくいところで、組織が円滑に動くよう日々さまざまな仕事をこなしています。
裏方としての役目であっても、人の力になることに喜びを感じられる人、あるいは人から何かを頼まれたときに気持ちよくそれに取り組めるような人は、総務にとても向いています。
同時進行で仕事を進められる人
業務範囲が広い総務は、同時に複数の物事を進めていかなくてはならない場面が多々あります。
総務は組織全体を見渡さなくてはならないポジションにいますから、広い視野を持つことが不可欠です。
一点集中型の人よりは、並行していろいろなことに取り組むことを苦にしない人のほうが、総務に向いているといえるでしょう。
また、周囲の状況の変化などによく気が付く人も総務には向いているといえます。
人付き合いがよく、フットワークが軽いことは、仕事をスムーズに進めるためにはとても重要です。
さまざまな立場の人と自ら関わりを持とうとする人は、総務としての適性もあるといえるでしょう。
総務志望動機・目指すきっかけ
「組織を支えたい」と考える人が多い
総務を志望する人は、自分が組織の中心となって周囲を引っ張っていくというよりも、皆のために黒子となって組織をサポートしたいと考える人が多いようです。
また、一つの分野に限定せず、幅広くさまざまなことを学びたい場合、総務という職種は希望に合致しているといえます。
新人教育や労務管理、イベント企画などの実務に携わった経験のある人が、業務の幅を拡げるためのスキルアップを目指して、総務を志望するケースもあるようです。
ただし総務はあらゆる企業や組織で必要とされている職種だからこそ、志望動機を考える際は「なぜそこで働きたいのか」についても言えるようにしておくことが大切ということです。
企業理念やビジョン、価値観などは企業ごとに必ず異なるため、それらをよく確認して置くことが大切です。
総務の雇用形態・働き方
働き方は企業によってさまざま
総務は他の部署と同じように正社員としてフルタイムで働くことが一般的ですが、企業によって業務量が大きく異なることもあり、契約社員やパート・アルバイトとして雇用されるケースもあります。
なかには派遣社員として働く人もいますし、特定の曜日や時間だけ働く短時間勤務を採用しているところもあります。
こうした非正規雇用の立場から、正社員として採用されることもあります。
また働き方と同様、身に付くスキルも企業によってさまざまです。
ベンチャー企業などではより経営陣に近いため会社運営に関するスキルが身に付いたり、分業化された大企業ではリスク管理やコンプライアンスなど法律知識が身に付いたりする場合もあります。
それらを活かして他部署に転身していくというキャリア形成も可能でしょう。
総務の勤務時間・休日・生活
企業規模や時期にもよるが残業はあまりない
一般的に総務の勤務時間はそこまで長くなく、休日出勤もほぼありません。
省庁による「働き方改革」が進められている昨今、それを組織内で司る立場にある総務は、企業によっては担う業務を整理するなどして、できる限り残業時間を減らす取り組みもしています。
ただし採用活動の時期は残業が立て込むこともありますし、会社の主宰するイベントがあれば土日祝日に働くこともあります。
とくに忙しくなりがちなのは、総務が人事・労務・庶務・経理といった複数の領域の業務を兼任する場合です。
たとえば経理業務を行う場合、給与計算が入る月末月初や、年末調整を行う年末は業務量が増えて多忙となりやすいです。
しかし総務担当者が多い大企業ほど、業務が分担されており、一人一人の負担が少ない傾向にあるようです。
総務の求人・就職状況・需要
ピンポイントで総務になれるとは限らない
総務部を設置している企業は数多くありますが、新卒で企業に入社する場合、希望しても必ずしもすぐ総務になれるとは限りません。
企業の新卒採用は役割を問わない「総合職」としての募集が一般的で、入社が決定した後に、それぞれの希望や適性に応じて各部署に配置されます。
多くの場合は新卒ですぐ総務に配属されることは少なく、いくつかの部署で経験を積んだのちに人柄や希望などを配慮して配属されるケースが多いです。
もちろん最初に配属された部署で定年まで勤めなければならないわけではありませんし、定期的に部署間の異動は行われるため、長い目で見れば希望は叶う可能性はあります。
ただし、入社できたからといってすぐ総務になれるとは限らない点には留意しましょう。
総務の転職状況・未経験採用
未経験からでも始めやすいが、経験者は優遇される
特に専門的な知識やスキルが必要とされない総務は、未経験からでも始めやすい職種といえます。
多くの人と接する機会の多い総務職は、基本的なビジネスマナーを身に付けたり、コミュニケーション能力を向上させるのに最適です。
総務として学んだ経験を活かして、人事部や労務部、広報部などの他部署に移籍することもできますし、パソコンスキルを磨いて事務職に専業することもできるでしょう。
ただ中途採用の場合は経験豊富な即戦力を求められるケースも多く、経験者であれば転職の際に優遇されることも多いです。
とくに総務担当の数が少ない場合は、経験者を優先的に採用する傾向にあります。
転職の際は求人条件をよく確認しましょう。