航空会社社員の年収はいくら? 空港で働く職員の給料も解説
配属される部門や担当業務などによって、給料・年収には大きな違いが出ることが特徴です。
この記事では、航空会社社員の給料事情や特徴について詳しく解説します。
航空会社社員の平均年収・給料の統計データ
まずは航空会社社員の平均年収・給料について紹介します。
航空会社社員の平均年収・月収・ボーナス
航空会社社員の平均年収は700万円~800万円程度といわれています。
しかし、航空会社で働く人が所属する部門や業務内容はさまざまであり、職種によって給与水準が異なります。
パイロットの給料・年収
航空会社のパイロットの年収は、さまざまな職業のなかでもトップクラスの高収入が得られる職業です。
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、航空機操縦士の平均年収は43.4歳で1,779万円となっています。
大手航空会社の機長クラスになれば年収2000万円を超えることも珍しくありませんが、小さな航空会社のパイロットだと年収1000万円未満で働く人もいます。
キャビンアテンダントの給料・年収
花形的な存在のキャビンアテンダント(客室乗務員・CA)の年収は、先に挙げた調査において34.1歳で534万円ほどとなっています。
キャビンアテンダントはキャリアを重ねて昇進することで、収入アップが見込めます。
一方、近年は航空業界の競争激化により、勤務先によっては長く働いても給料があまり上がらず、良い待遇で働けない場合もあります。
グランドスタッフの給料・年収
空港利用客へのサービスや案内をし、「地上職」といわれるグランドスタッフの年収は、300万円前後といわれています。
グランドスタッフは、大手航空会社のグループ会社や空港サービス会社に所属するケースが多いことから、大手航空会社で働く社員よりも、給与水準が低めになっていると考えられます。
さらに、グランドスタッフは契約社員やパートとして働く人が多いこともあって、一般的には高額な収入が望みにくいようです。
ディスパッチャーの給料・年収
ディスパッチャーは、航空機が安全に空を飛べるよう、気象状況などの情報を集めてフライトプランを作成する職種です。
ディスパッチャーの平均年収は400万円前後となると考えられます。
ディスパッチャーは航空会社の総合職として採用されることが多く、一人前になるまでは、特別に高い給料がもらえるわけではありません。
航空整備士の給料・年収
技術職として航空機の整備業務等にあたる航空整備士の平均年収は、450万円~600万円程度がボリュームゾーンと考えられます。
「一等航空整備士」や「二等航空整備士」などの国家資格を取得することで、基本給とは別に「資格手当」が支給される会社が大半です。
専門的な知識・技術が要求される職種であることから、経験を積んで難易度の高い資格を取得したり、難しい業務に携われたりするようになることで収入が上がっていく傾向が見られます。
総合職の給料・年収
航空会社では、「総合職」として採用され、本社で企画やマーケティング、営業、事務、システム・ITなどの業務に携わる社員も多く活躍しています。
平均年収は大手航空会社であれば500万円~600万円程度がボリュームゾーンと考えられます。
新人のうちは年収300万円~400万円ほどですが、昇進してマネジメントのポジションに就くことで基本給が上がり、年収700万円~800万円ほどになる人もいます。
航空会社社員の手取りの平均月収・年収・ボーナスは
航空会社社員の手取りは、職種や働き方によっても大きく違いが出てきますが、パイロットでは80~90万円ほどと考えられます。
キャビンアテンダントの場合、大手航空会社勤務の場合は月の手取り額は25万円〜26万円ほどと見込まれます。
航空機に乗務する職種の場合、海外や地方など遠方のフライトのたびに手当がつくため、フライト内容によって収入が変動します。
一方、地上職では年収400万円程度であった場合、手取り月収は独身者であれば18万円~20万円ほどと考えられます。
資格手当や役職手当などがつく場合には、これ以上の手取りが見込めるでしょう。
航空会社社員の初任給はどれくらい?
航空会社社員の初任給は、職種や学歴ごとに異なります。
大手航空会社の場合、総合職にあたる職種で採用された場合、大卒で21万円~23万円ほどが相場です。
自社養成パイロットは21万円~22万円程度、客室乗務職は17~18万円前後となっています。
大学院卒の場合、上記の額から1万円~2万円ほど高めに設定されていることが多く、短大・高専・専門学校卒の場合は逆に1万円~2万円ほど低めになるのが一般的です。
また、地方の小さな航空会社やLCCでは、大手の水準よりもやや低めの初任給となっているところが多いです。
参考までに国内大手航空会社2社の初任給・初年度給与実績(2023年)を紹介します。
JAL
【業務企画職】
(コーポレートコース/オペレーションコース/ビジネス・マーケティングコース/数理・ITコース/エアラインエンジニアコース)
239,000円(大学卒) 253,556円(大学院卒)
【自社養成パイロット】
229,000円(大卒)
【客室乗務職】
199,000円 ※この額に加え、乗務時間に応じた乗務手当や各種手当あり
ANA
【グローバルスタッフ職(事務、技術)】
高専卒 月給:238,557円
大卒 月給:238,557円
院卒 月給:251,077円
【運航乗務職(自社養成パイロット)】
大卒 月額233,346円
院卒 月額242,004円
【客室乗務職】
短大・高専・専門卒 月額186,319円(職務調整手当30,000円を含む、別途諸手当あり)
大卒 月額194,221円(職務調整手当30,000円を含む、別途諸手当あり)
院卒 月額197,521円(職務調整手当30,000円を含む、別途諸手当あり)
【エキスパートスタッフ職】
短大卒 月給:197,632円
大卒 月給:211,312円
院卒 月給:217,092円
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航空会社社員の給料・年収の特徴
ここからは、航空会社社員の給料・年収の特徴を詳しく説明します。
特徴1.職種によって給料・年収に違いが出やすい
航空会社にはさまざまな部門があり、年収は職種や担当業務によって差が出ています。
航空業界において給与水準が最も高いとされているパイロットの場合、大手航空会社の機長クラスになれば年収2000万円を超える人もいます。
一方、他の職種の平均年収は400~500万円程度と、日本人全体の平均年収とそこまで変わりません。
社内で経験を積み、役職がつけば年収700~800万円ほどにアップする人もいますが、航空業界では、パイロットの収入がだいぶ飛びぬけているといえます。
特徴2.技術職とサービス職では大きな差がある
グランドスタッフやキャビンアテンダントなどのサービス系職種は、飛行機の利用者にとってはなくてはならない存在ですが、近年は航空運賃格安化や人件費削減の影響を受けて、収入は抑えられています。
一方で、ディスパッチャーや整備士などの技術職は、平均年収はさほど高くはないものの、経験によって順調に昇給していきます。
パイロットの年収は非常に高額ですが、そもそもパイロットになるためには厳しい競争を勝ち抜かねばならず、多くの人の命を預かる仕事でもあるため、高度な技術と責任に見合った十分な金額であるといえます。
特徴3.契約社員は正社員よりも給料がやや低め
航空会社では、基本的に年齢や勤続年数が上がるにつれて年収はアップしていき、役職者になればその分の手当も付くようになります。
規模の大きな航空会社ほど給与水準は高めとなっていますが、職種によっては契約社員など、正社員以外の雇用形態で働いている人もいます。
その場合、同じ職種の正社員よりもやや低めの給料・年収となるでしょう。
特徴4.経営状況によっては給料カット、ボーナスの支給に影響が出ることも
航空業界は、景気変動の影響を受けやすい特徴があります。
景気がよく、多くの人が旅行やビジネスで国内線・国際線を利用するときならよいのですが、テロや天災、感染症の流行といった世界情勢の変化が起こると、一気に利用客が減り、航空会社の経営状況が悪化することがあります。
経営状況が悪くなれば、社員の給料カット、ボーナス支給の取りやめ、最悪の場合はリストラにいたる可能性もあります。
航空業界の仕事は、通常時は比較的よい年収が見込めるとされていますが、自分ではどうにもならないことで給料や年収が減ってしまう可能性があることは頭に置いておくほうがよいでしょう。
航空会社社員の福利厚生の特徴は?
航空会社における福利厚生の内容は、各社で異なります。
代表的な諸手当は、通勤手当、家族手当、住居手当、深夜勤務手当などです。
航空会社社員は、職種によっては深夜に勤務しなくてはならないため、手当が確実につくことで収入アップにつながります。
その他の福利厚生については、一般的なもので各種社会保険、有給休暇、育児休職制度、各種休職・休暇制度、寮制度などが挙げられます。
また、航空会社ならではといえる福利厚生は、社員優待制度です。
社員優待の内容は企業によって異なりますが、空席があれば航空機に格安(最大90%~100%程度)で乗ることができたり、系列ホテルにも格安で宿泊できたりします。
家族も利用できる場合が多いため、家族旅行の費用をグンと抑えられますし、旅行好きな社員には人気のある福利厚生です。
ただし、福利厚生は大手企業のほうが充実しており、小さな航空会社ではここまでよい待遇が用意されていない場合があります。
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航空会社社員が所属する代表的な企業の年収
会社名 | 平均年収 | 平均年齢 |
日本航空株式会社 | 707万円 | 40.3歳 |
ANAホールディングス株式会社 | 495万円 | 45歳 |
スターフライヤー株式会社 | 500万円 | 37.9歳 |
出典:2020年現在(各社有価証券報告書より)
日本航空株式会社の平均年収
日本航空株式会社の平均年収は、平均年齢40.3歳で707万円と、業界内では最も高水準です。
売上高は国内線、国際線ともにANAホールディングスに次いで2位であり、世界中に多くの路線を有しています。
ANAホールディングス株式会社の平均年収
ANAホールディングス株式会社の平均年収は、平均年齢45歳で495万円です。
日本航空に次いで高めの年収で、他社に比べて平均年齢もやや高めとなっています。
売上高としては国内線、国際線ともに首位で、傘下にはLCCのピーチ・アビエーション社もあります。
スターフライヤー株式会社
スターフライヤー株式会社の平均年収は、平均年齢37.9歳で500万円です。
同社は北九州を拠点とする新興航空会社で、ANAが筆頭株主です。
国内線のほか、アジアで近距離国際線も展開しており、規模が小さめの航空会社のなかでは給与水準が高めです。
航空会社と航空業界の他業種・関連職種との年収の違い
ここからは、航空会社と、航空業界における他業種や、関連職種との年収の違いについて紹介します。
空港運営会社、グランドハンドリング会社との年収の違い
航空業界は、人や物を運ぶ航空会社と、民間航空機に空港を使用させ、離発着にかかわるさまざまな事業を行う空港運営会社から成り立っています。
航空会社は、いわゆるメガキャリア(JAL、ANA)とローコストキャリアのLCC(格安航空会社)があります。
メガキャリアとローコストキャリアでは、メガキャリアのほうが年収が高い傾向にあります。
空港運営会社は、空港の着陸料や物販、飲食の提供などで収入を得ており、働き方にもよりますが、年収はやや低めとなることが多いです。
また、航空機の誘導、機内の清掃、手荷物の搬送などを専門に行う会社をグランドハンドリング会社といいます。
グランドハンドリングスタッフの年収は、さまざまな資格が必要なことから500万円前後となることが多いようです。
関連職種との年収の違い
運輸関連職で比較すると、鉄道会社社員の平均年収は600万円~700万円、海運会社社員の平均年収は700万円~800万円前後がボリュームゾーンとなっています。
航空会社、鉄道会社、海運会社のどれもが一般的な会社員の年収に比べると高めとなっています。
どの会社でも、勤続年数に加え、役職や階級が上がれば基本的に給与もアップするしくみであり、航空会社のみならず、鉄道会社や海運会社も歴史ある大手企業が多いため、安定した収入が得られる傾向にあります。
航空会社社員は年収1000万を目指せる?
航空会社社員の年収は一般的には比較的高い水準にありますが、年収1000万円を超えるのはごくわずかです
エンジニアやパイロットなどの専門職、管理職として昇進していけば年収1000万円を超える場合もあります。
ただし、そのような高収入を得るためには、高度な技術や経験、専門知識が必要であり、競争率も高いため、入社後の努力や継続的なスキルアップが求められます。
パイロットなど一部の職種を除いて、年収1000万円以上を得るのは難しいでしょう。
航空会社社員が収入を上げるためには?
航空会社社員の給料・年収は、まず所属する会社の規模によって変わってきます。
よりよい収入を求めるのであれば、やはり大手2社(ANA、JAL)への入社を目指し、キャリアを積んでいくのが確実です。
大手であれば、たとえば急激な業績悪化などで一時的に給料やボーナスカットなどの処遇にはなっても、もともとの給与水準が高めで待遇も充実している分、ある程度の安定した収入が見込めます。
また、組織が大きな分、管理職のポストも多くあるため、収入を上げるチャンスを掴みやすいといえるでしょう。
職種によっては、同業界内での転職によって収入アップを目指す道もあります。
たとえば、キャビンアテンダントは転職者が比較的多く、経験を積んでからよりよい給料や待遇を求めて、別の航空会社へ移る人もいます。
外資系航空会社に勤務し、長距離路線に多く乗務すれば乗務手当が増えますし、会社によってはフライト先での滞在中にステイ費の手当がつくこともあります。
外資系では為替変動の影響もあるため、一概に高い収入が得られるとはいえませんが、経験があれば業界内での転職はしやすいです。
「航空会社社員の年収・給料」まとめ
航空会社社員は、他業種の企業で働くよりも、比較的高い年収を得ることができます。
しかしながら、航空業界では職種や配属先によっても収入差が出やすく、パイロットの平均年収は1000万円を超えますが、グランドスタッフやキャビンアテンダントなどは、そこまで高くありません。
また、地方の航空会社よりも、大手航空会社のほうが給与水準は高めとなっています。