家庭裁判所調査官と裁判所書記官の違い
家庭裁判所調査官と裁判所書記官の違い
家庭裁判所調査官と裁判所書記官の仕事とは?
家庭裁判所調査官の仕事は、家庭裁判所が扱う家事事件や少年事件について、事件の原因や背景を調査し、裁判官が参考とする調査報告書を作成します。
一方裁判所書記官は、法廷立会、調書作成、訴訟上の事項に関する証明、執行文の付与、支払催促の発布など、公に証明する書類を作成する法律の専門職として、固有の権限が与えられる仕事です。
また事件に関わる多くの法令や判例を調査し、事前に争点を整理したり、コートマネージャーとして弁護士、検察官、訴訟当事者などと直接打ち合わせを行うこともあります。
裁判が円滑に進むように進行管理という大きな役割もあるため、広い視野が必要です。
同じ事件を扱う場合の役割の違い
たとえば家庭裁判所で少年事件を扱う場合について、それぞれの仕事のちがいについて見ていきましょう。
家庭裁判所調査官は少年の犯した事件の原因や、少年が抱える問題などについて調査し、調査報告書を作成します。
調査報告書をもとに、裁判官が審判期日に処分を決定するため大きな責任のある仕事です。
一方で裁判所書記官は、送致書や証拠書類の点検、また審判期日に少年や保護者を呼ぶこと、調書の作成が主な仕事です。
そのほか、家庭裁判所を訪れる多くの事件の当事者に対して書類の書き方や、手続きの流れなどを説明する窓口の役割も行っています。
また裁判官や家庭裁判所調査官、参与員などの様々な職種のメンバー、少年鑑別所や保護観察所などの連携機関との調整や情報交換を行わないと、審判までの進行がスムーズに進みません。
この進行管理の仕事も、裁判所書記官が行っています。
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家庭裁判所調査官と裁判所書記官になる方法・資格のちがい
家庭裁判所調査官になるには、裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)の試験に合格して採用されることが必要です。
ただしすぐにデビューできるわけではなく、まずは家庭裁判所調査官補として合同研修や実務修習などの合計2年間の研修を受けなければいけません。
その後任官され、晴れて家庭裁判所調査官になることができます。
一方、裁判所書記官になるには、裁判所職員採用試験(裁判所事務官)に合格し、裁判所事務官として採用されることが必要です。
まずは裁判所事務官として一定の期間勤めたあと、裁判所職員総合研究所書記官養成課程入所試験という内部試験に合格しなければいけません。
そして、研究所で約1〜2年の研修を受けたのち、裁判所書記官になることができます。
どちらも試験のあとすぐに仕事ができるわけではなく、数年の勤務や研修で専門知識やスキルをしっかり身につけてから任官されるのが特徴です。
家庭裁判所調査官と裁判所書記官の資格・必要なスキルの違い
家庭裁判所調査官と裁判所書記官になるために、資格は必要ありません。
しかしどちらもそれぞれの採用試験に合格し、数年の研修を受ける必要があります。
家庭裁判所調査官に必要なスキルは、家庭内の紛争や少年が起こした事件について調査するための法律や行動科学の理論や技法といった専門知識です。
さらに心を開いてくれない当事者や、悩みの大きさに混乱しているさまざまな人に対応する実践的な技術も求められるため、職場でのOJTやその後の研修で経験を積みながら専門性を高めていきます。
また裁判所書記官に必要なスキルは、法律的な知識はもちろん、調書作成のスキル、裁判運営を円滑に進める進行管理能力、裁判所の手続きをわかりやすく人々に説明する力などが必要です。
実際に「最終的には裁判所書記官になりたい」という理由で裁判所事務官を目指す人も多く、事務官の70〜80%の人が書記官になっているともいわれています。
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家庭裁判所調査官と裁判所書記官の学校・学費の違い
家庭裁判所調査官の学校・学費
家庭裁判所調査官になるための採用試験は、大学卒業程度区分と院卒区分の2種類があります。
学歴や学部といった制限はないので、幅広い人がチャレンジできますが、難関大学卒業生の受験も多いため合格には相当な努力が必要でしょう。
学費は大学に行く場合、初年度が81万円〜144万円ほどとなります。
裁判所書記官の学校・学費
裁判所書記官になるには、まずは「裁判所事務官」として数年勤務しなければいけません。
裁判所事務官になるには、4つの採用試験が用意されています。
・総合職試験の院卒者区分
・総合職試験の大卒程度区分
・一般職試験の大卒程度区分
・一般職試験の高卒者区分
それぞれに受験資格があり、院卒者区分の場合は大学院の修士課程や専門職大学院の課程を修了すること、総合職の大卒者区分の場合は大学卒業が必要です。
一般職の大卒程度区分は大学卒業と短大・高等専門学校、一般職の高卒者区分は高卒見込みか卒業後2年以内、または中学卒業後2年以上5年未満でも受験することができます。
それぞれの受験資格を満たしていれば試験を受けることができるので、学科や学んだ専門分野は問われません。
学費は大学・短大は初年度108万円〜152万円ほど、専門学校では初年度70万円〜122万円ほどです。
ちなみに書記官になるための「裁判所職員総合研究所書記官養成課程入所試験」の受験へは、多くの人が実務を通じて法律を一生懸命勉強し、合格を目指しています。
家庭裁判所調査官と裁判所書記官の給料・待遇の違い
給料の違い
家庭裁判所調査官と裁判所書記官の給料は、国家公務員採用試験採用者と同じであるためちがいはありません。
裁判所書記官は、採用時の裁判所事務官の給料となりますが、2020年4月1日現在の東京都特別区内に勤務する場合の初任給は以下のとおりです。
・総合職試験(院卒者区分)255,600円
・総合職試験(大卒程度区分)224,040円
・一般職試験(裁判所事務官:大卒程度区分)218,640円
・一般職試験(裁判所事務官:高卒者区分)180,720円
勤務先のちがい
家庭裁判所調査官の場合、家庭裁判所への勤務が基本です。
そのほかキャリア昇進に応じて、高等裁判所などに勤務することがあります。
一方裁判所書記官は、立ち会わなければ法廷を開くことができないため、家庭裁判所だけでなく地方裁判所を含めたどの裁判所にも配置される職種です。
そのため勤務先の候補は、家庭裁判所調査官よりも裁判所書記官の方が多いでしょう。
家庭裁判所調査官と裁判所書記官はどっちがおすすめ?
家庭裁判所調査官は、家事事件や少年事件の当事者と向き合い、その事件の背景や心情を調査する仕事です。
非行少年に対して教育的にかかわり、その家族にとって最適な解決策を考えられるので、より深く人と接する仕事がしたい人に最適でしょう。
家庭裁判所調査官が作成する調査報告書は、裁判官が審判を下す際に重視されるため、当事者の人生を左右するほどの影響力があるものです。
そのためよりよい人生を一緒に考えられる人、ひとりでも多くの家庭内の紛争に巻き込まれている子どもを救いたい人に向いています。
一方裁判所書記官は、法廷に立ち会ってそのやりとりを記録する調書を作成したり、法律に定められた手続に従って必要な書類を送達する仕事です。
書記官なしに法廷は開かれないため、裁判所の仕事を円滑に進めることで社会貢献したい人や、専門知識などのスキルを生かして仕事をしたい人が向いているでしょう。
家庭裁判所だけでなく地方裁判所にも勤務するため、民事事件だけでなく刑事事件にもかかわることができます。