ホームヘルパー(訪問介護員)の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「ホームヘルパー(訪問介護員)」とは
高齢者や身体の障害を抱える人に対し、食事、排泄、入浴等身の回りのお手伝いをする。
ホームヘルパー(訪問介護員)とは、高齢であったり身体に障害を抱えていたりするなどの理由で、日常生活を送ることが困難な人を援助する介護系専門職です。
ホームヘルパーの業務内容は大きく「身体介護」と「生活援助」に分かれ、利用者の依頼によって食事やトイレ、入浴など身の回りのお世話や、掃除や洗濯といった生活の手助けをします。
在宅での身体介護をするためには「介護職員初任者研修」をはじめとした講習を受け、資格を取得する必要があります。
高齢化社会が進む日本において、ホームヘルパーはまだまだ人材不足の仕事で、若い人材の活躍が求められています。
昨今の介護業界では徐々に待遇の改善傾向が見られ、また資格制度の変更によって「初任者研修」から「実務者研修」、さらに「介護福祉士」といった、キャリアアップの道筋も明確になってきています。
「ホームヘルパー(訪問介護員)」の仕事紹介
ホームヘルパー(訪問介護員)の仕事内容
介護サービスを必要とする人に援助を行う
ホームヘルパーとは、高齢であったり、身体に障害を抱えていたりして、日常生活を送ることが困難な人に対して、さまざまな援助を行う介護系の専門職です。
「介護保険法」という法律の下では「訪問介護員」と呼びます。
ホームヘルパーの仕事内容は、大きく「身体介護」と「生活援助」に分かれます。
身体介護とは、食事やトイレ、着替え、入浴の介助など、利用者さんの身体に触れる介護のことです。
生活補助とは、掃除や洗濯、調理、買い物の代行など、身体に直接触れずに日常生活をサポートする援助のことです。
介護のプロフェッショナルとして在宅介護を支えていく
ホームヘルパーが手掛ける援助の内容は、「ケアマネジャー」が事前に作成した「ケアプラン」に沿って行われます。
ケアプランには、介護を必要とする人の状態や生活状況、ニーズに応じて、どのような介護サービスを、どのような頻度で提供すべきかといった計画が記されています。
介護サービスを必要とする人は、いわゆる「介護施設」に入所する人もいますが、一方では、できる限り住み慣れた自宅で暮らしたいと考える人も多くいます。
ホームヘルパーは、そうした「在宅介護」を希望する人に対し、正しい介護の知識・技能を身につけたプロフェッショナルとして、適切な介護サービスを提供します。
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ホームヘルパー(訪問介護員)になるには
「介護職員初任者研修」の取得を第一目標に
ホームヘルパーとして働くうえで、絶対に必要な学歴や資格はありません。
しかし、在宅介護で身体介護ができるのは「介護職員初任者研修」をはじめとする有資格者のみと定められています。
生活補助だけでなく、いずれ身体介護を行うことを考えると、介護職員初任者研修は取得しておくに越したことはありません。
介護職員初任者研修は16歳以上であれば受講可能で、都道府県が指定した養成機関で講座を受講し、試験にパスすることにより資格を取得できます。
なお、ホームヘルパーの主な就職先である訪問介護事業所や有料老人ホームでは、就職時点では無資格でもOKとしているところがあります。
これからホームヘルパーを目指す人は、働きながら介護職員初任者研修を取得するのもよいでしょう。
ホームヘルパーのキャリアパス
ホームヘルパーとして訪問介護事業所などに就職すると、実際に利用者さんと関わり、実務経験を積んでいくことができます。
そこから一定の経験を積んだり、所定の講座を受講したりすることによって「実務者研修」「介護福祉士」「認定介護福祉士」とステップアップする道も開かれています。
上位の資格を得れば、より責任ある仕事を任されるようになり、待遇の向上にもつながります。
介護職として長期的にキャリアを築いていきたい人は、ぜひ挑戦していくとよいでしょう。
ホームヘルパー(訪問介護員)の学校・学費
ホームヘルパー志望者向けの養成講座がある
ホームヘルパーを目指す人が、最初に受けたい講座が「介護職員初任者研修」です。
こちらは学歴や実務経験は必要とせず、16歳以上の人であれば誰でも受けることができます。
介護職員初任者研修は、一般的に専門学校に数ヵ月通うスクーリング、もしくは通信講座+スクーリングの組み合わせで学ぶことができます。
必ずスクーリングが含まれているのは、介護の技術を学ぶ「実技」の指導や演習があるからです。
費用は通信講座が主体のものであれば数万円、スクーリング主体で学ぶものは10万円~15万円程度が相場ですが、講座によって異なるためよく比較してみましょう。
関連記事介護職員初任者研修を取得するにはどんな学校やスクールに行けばいい?
ホームヘルパー(訪問介護員)の資格・試験の難易度
介護職員初任者研修はホームヘルパーの基本
ホームヘルパーを目指す人がまず取得する「介護職員初任者研修」は、かつては「ホームヘルパー2級」として試験が行われていたものです。
介護職を目指す人にとっての基本資格として、広く認知されています。
介護職員初任者研修は、所定の講座を受講し、カリキュラムの最後に行われる「修了評価」に合格することで資格を取得できます。
具体的な合格率、試験の難易度は公開されていませんが、ほぼ受験者全員が受かるように考えられています。
きちんと講座を受けていれば、まず合格できると考えておいて問題ありません。
さらに上位資格を目指していける
ホームヘルパーとして介護業界に入る人は、この初任者研修をファーストステップとし、将来的には上位資格の「介護福祉士実務者研修」や「介護福祉士国家試験」を目指していく人が多いです。
介護の資格制度は時代が進むにつれて改正が進んでおり、より高度な資格を取っていくことで、着実にキャリアアップすることが可能です。
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ホームヘルパー(訪問介護員)の給料・年収
非正規雇用も多く、給料は上がりにくい
国や民間求人サービスの調査データを見ていくと、ホームヘルパーの平均年収は300万円~350万円程度がボリュームゾーンと考えられます。
「人の介護をする」という大変な役割を担う仕事でありながら、あまり高額な収入が得られる職業とは言い難いのが実情です。
実際、仕事内容に見合った給料や待遇ではないという声はたくさん上がっており、徐々にではあるものの、待遇改善の方向には進んでいます。
ただ、ホームヘルパーは、現状ではパートなど非正規雇用で働く人も多いことから、どうしても給与水準が低めになっている面があります。
ホームヘルパーが収入を上げるには
ホームヘルパーの収入アップの方法として、実務経験を積み、より上位の資格を取得する方法があります。
「実務者研修」の修了が一般的ですが、さらに「介護福祉士」まで取得する人もいます。
これらの資格があると「サービス提供責任者」になることができ、一般的なホームヘルパーよりも収入は上がることが多いでしょう。
さらに経験を積んで「ケアマネジャー」にまでなれば、業務範囲も広がり、より高待遇で働ける場を見つけやすくなります。
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ホームヘルパー(訪問介護員)の現状と将来性・今後の見通し
高齢化社会により需要は拡大、若手の力がさらに必要に
日本国内では高齢化が進み、介護を必要とする人がますます増加していることから、ホームヘルパーのニーズも高まっています。
しかし介護職に対して「仕事がハードなのにあまり稼げない」というイメージはまだ根づいており、なかなか人が集まらずに苦労している事業所は多いようです。
一方、熱意のある人材を採用して長く働き続けてもらうために、より働きやすい環境づくりや、キャリアアップ制度の整備に取り組んでいる事業所も増えつつあります。
現在の介護保険制度は改正が進み、一般的なホームヘルパーから「実務者研修」「介護福祉士」「ケアマネジャー」など上位資格の取得を目指すことも可能です。
業界全体の待遇も、さらに改善されていくものと考えられます。
ホームヘルパー(訪問介護員)の就職先・活躍の場
訪問介護事業所に所属し、介護サービスを提供する例が多い
ホームヘルパーの代表的な就職先は、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)です。
民間企業のほか、NPOや社会福祉法人など、さまざまな団体が運営しています。
訪問介護事業所による介護サービスは、介護保険の要介護(1~5)または、要支援(1~2)の認定を受けている方が利用できるものとなっています。
ホームヘルパーは基本的に担当制となり、介護サービス利用者の自宅に一人で訪問し、介護計画に基づいて必要なケアを行います。
なお、最近では利用者の自宅以外に、高齢者専用住宅やサービス付き高齢者住宅、介護サービス付き高齢者住宅などの各施設にホームヘルパーが出向き、各居室で訪問介護サービスを提供する例も増えてきています。
ホームヘルパー(訪問介護員)の1日
介護計画に基づき、利用者さんの自宅で援助を行う
ホームヘルパーの1日の過ごし方は、勤務先となる施設、また担当する利用者さんによっても変わってきます。
多くの場合、利用者さんの自宅に出向いて必要な援助を行います。
介護サービス内容や稼働時間は事前に計画されているため、突発的な残業はほとんどありません。
ここでは、身体介護をメインで担当するホームヘルパーのある1日の例を紹介します。
関連記事ホームヘルパーの1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
ホームヘルパー(訪問介護員)のやりがい、楽しさ
人との深い関わりができ、人や社会の役に立つ実感が得られる
ホームヘルパーのやりがいは、一人ひとりの利用者さんや、その家族と深い関わりができることです。
訪問介護では、施設でのケアとは異なり、利用者の方の日常生活に寄り添いながら、より濃い時間を過ごすことができます。
お互いが慣れない間は緊張してしまうこともありますが、信頼関係を築くと笑顔が見られ、どんなケアをされるとうれしいと感じてくれるのか、気持ちを理解できるようになります。
普段、介護をしているご家族からも「ありがとう、助かります」と声をかけてもらえることが多く、非常にやりがいを感じます。
また、介護職は社会でも不可欠な職種と認識されており、自分の力によって、人や社会に貢献している実感を得やすいことが魅力です。
ホームヘルパー(訪問介護員)のつらいこと、大変なこと
決して楽な仕事ではなく、責任感や判断力が必要
ホームヘルパーは、利用者の自宅を訪問して身体介護や生活補助を行います。
利用者の性格や人柄によっては訪問介護に来るのを嫌がり、ケアはもちろん、話もまともにしてくれない、という方もいらっしゃいます。
どんな利用者と出会っても根気強く関わり、少しずつ信頼関係を築いていくことが大切です。
また、身体介護のなかには排泄の介助など、決してきれいとは言えない仕事も含まれます。
介護の仕事では「当然」ともいえることですが、強い気持ちをもっていないと、いざそうした出来事を目の当たりにしたときに、嫌な気持ちになってしまうかもしれません。
ホームヘルパー(訪問介護員)に向いている人・適性
人と深く関わることが好きな人
ホームヘルパーは、人が好きで、人とじっくり信頼関係を築くことに前向きになれる人に向いている職業です。
利用者さんと長く接するうちに、ときには家族に話せない家庭の悩み、経済的な悩み、あるいは将来の悩みなどを打ち明けてくれることもあります。
身体的なケアはもちろん、悩みを傾聴するという精神面のケアも大切ですから、人と向き合い続けることが好きな人に向いています。
とくに高齢者との関わりが好きな人には、適しているといえるでしょう。
ただ、ホームヘルパーの仕事では失敗もつきものです。
うまく介護できずに、利用者さんに嫌な思いを与えてしまったり、直接お叱りの声をいただくこともあるかもしれません。
そんなときには反省し、ダメだったところは次に生かそうと思えるような前向きさ、気持ちの切り替えが早い人のほうが、仕事を続けやすいでしょう。
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ホームヘルパー(訪問介護員)志望動機・目指すきっかけ
困っている人を助ける仕事がしたい気持ちが根底に
ホームヘルパーを目指す人は、誰もが多かれ少なかれ「誰かの役に立つ仕事がしたい」という思いをもっています。
介護職は決して楽とはいえませんが、間違いなく世の中に必要とされている仕事であり、たくさんの人材が求められています。
そうした事実を知ったときに、自分も介護の世界で働きたい、人助けになる仕事がしたいなどと考え、挑戦する人が多いようです。
キャリアアップを目標に介護業界に入る人も増えている
家族など身近な人の介護をしたことを機に、プロとしての知識や技術を身につけたいと思うようになったと話す人もいます。
介護職として専門性を磨いていけば、日本全国どの地域でも働ける魅力があります。
将来的には「介護福祉士」、あるいは「ケアマネジャー」など上位資格の取得を目指していきたいと強い熱意をもって、介護業界に入る人も少なくありません。
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ホームヘルパー(訪問介護員)の雇用形態・働き方
パートの求人が多いが、正社員としてキャリアアップする道も
ホームヘルパーの雇用形態として多いのは非常勤のパートです。
ホームヘルパーのサービスは、事前に定められた訪問介護計画に基づいて行われるため、決められた時間内で働きやすい職種です。
主婦が家庭に支障のない範囲で働くことも多く、比較的融通が利く働き方ができます。
もちろん正社員としてのニーズも多々あります。
「実務者研修」を修了して資格を得れば、サービス提供責任者になることもでき、より安定した雇用形態・待遇で働きやすくなります。
長期的にキャリアを築いていきたいと考えるのならば、ぜひ実務者研修を目指していくとよいでしょう。
ホームヘルパー(訪問介護員)の勤務時間・休日・生活
基本的には日勤で、希望した時間の中で働く
訪問介護事業所に勤務するホームヘルパーの勤務体系は、直行直帰型の非常勤(パート)が一般的です。
「サービス提供責任者」の訪問介護計画に沿う形で、自宅から利用者宅まで直行直帰で働く形態が一般的です。
事前に、自分の都合のよい日時を伝えることができ、週末の土日だけ働く人もいれば、平日の週2〜3日だけ働く人もいるなどさまざまです。
訪問介護事業所では「日勤」のみの仕事になることがほとんどですが、なかには24時間の訪問介護サービス・年中無休で対応している事業所もあります。
いずれにしても、決められたスケジュール通りに働くため、大幅な残業はほとんどありません。
ただ、企業によってはサービス提供責任者は24時間連絡がとれるようにしておく必要があります。
また、緊急時には優先的に利用者のところへ向かえるよう、常に携帯電話をつながるようにしておき「自宅待機」をするホームヘルパーもいます。
ホームヘルパー(訪問介護員)の求人・就職状況・需要
人員不足により、多くの若手人材が求められている
実践的な「身体介護」と「生活援助」の両方ができるホームヘルパーは、訪問介護事業所でも有料老人ホームなどの施設でも人手が不足しています。
健康で元気な若い力を求める企業や施設は多々あるため、日本全国どのような地域でも活躍できるチャンスは多々あります。
「介護職員初任者研修」を修了して資格を得ておけば就職時に優遇されますが、一部の事業所では無資格の状態でも採用され、働きながら資格取得を目指せます。
求人数は豊富なため、まずはどのような事業所で働きたいのかを明確にし、自分の希望に合う場所を探していきましょう。
ホームヘルパー(訪問介護員)の転職状況・未経験採用
転職はしやすく、未経験採用も好調
介護業界の人員不足の影響もあり、ホームヘルパーへの転職はしやすい状況です。
とくに豊富な経験を積んだホームヘルパーであれば、どこの企業や施設でも内定がもらいやすいでしょう。
施設から訪問介護事業所への転職、訪問介護事業所から施設への転職といった例はよくあります。
一方、未経験者や無資格者の採用も活発で、熱意さえあれば積極的に採用し、仕事を通じてキャリアアップしていける職場も多々あります。
「介護職員初任者研修」を修了すれば、在宅での身体介護を含めた幅広い業務に従事できるようになるため、まずは受講を考えるとよいでしょう。
介護施設によっては、働きながら介護職員初任者研修を受けられるところもあります。