芸能事務所社員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「芸能事務所社員」とは
華やかな芸能界を支える、縁の下の力持ち
女優や俳優、タレントやモデル、アイドルやミュージシャン、お笑い芸人。
私たちが普段見ているテレビでは、たくさんの芸能人が活躍しています。
そんな芸能人たちの華々しい活躍を支えているのが芸能事務所であり、そこで働いているのが芸能事務所の社員です。
芸能事務所の社員というと「マネージャー」の姿を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし実際には、マネジメント以外にもさまざまな業務があります。
たとえば才能ある原石を探し求めて街角でスカウト活動をすることもあれば、オーディションやレッスンの情報収集をすることもあります。
ロケや収録の際には送迎を行うこともありますし、現場に食事や飲み物の差し入れをすることも。
ときには芸能人のプライベートを見守り、トラブルやスキャンダルに巻き込まれることがないよう指導もします。
自社に所属している芸能人をサポートするためなら何だってするのが芸能事務所社員の基本です。
生活が不規則になったりハードワークになったりすることはあり、ときにはストレスを抱えることもあります。
そのぶん自分が担当している芸能人の活躍を見ると嬉しく、やりがいの大きい仕事です。
「芸能事務所社員」の仕事紹介
芸能事務所社員の仕事内容
スカウトからロケの送迎まで何でもこなす
芸能事務所の社員は、それぞれの事務所に所属している芸能人をサポートするのが使命です。
仕事内容は幅広く、事務所の規模の大きさによってどんな仕事をするのかが異なります。
たとえば、大手の芸能事務所の場合、社員が分業しながら効率的に仕事を進めるのが一般的です。
新人を発掘するスカウト活動をするために全国を飛び回る社員。
テレビ局や広告代理店に足を運んで営業活動をする社員。
所属している芸能人のスケジュール調整や送迎などのマネジメントをする社員。
この他にも、経理や広報などの裏方を担当する社員がいることもあります。
一方で、所属している芸能人が十人に満たないような小さな事務所の場合、基本的にはそれぞれの社員が全ての業務を引き受けます。
自社の芸能人をロケやスタジオ収録の現場まで送迎し、演技やボーカルのレッスンに付き添う。
合間を縫ってメディア向けの営業活動に出向き、ときにはスカウト活動も行うのです。
また、大手事務所であろうと個人事務所であろうと、未成年を預かっている場合は社員にも大きな責任が伴います。
保護者からの信頼を受けて預かっているわけですから、学業と仕事が両立できるようにサポートしなければいけません。
地方出身者の場合は芸能界入りを目指して上京していることも多いので、私生活が乱れないように見守ることも大切です。
芸能事務所社員が、まさに親代わりの存在になるといってもよいでしょう。
芸能事務所社員になるには
芸能事務所やプロダクションに就職
芸能事務所の社員を目指すのであれば、芸能事務所やプロダクションの社員として入社することになります。
芸能界に関わる仕事ということで「特別な経歴がなければ入れないのでは」と考える人もいるかもしれません。
しかし、実際はそんなことはありません。
芸能人ではなくて芸能事務所の社員なので、一般的なサラリーマンと同じように採用試験が行われています。
新卒採用の場合は、主に高卒あるいは大卒の人を対象にしており、書類審査やペーパーテスト、面接で合否が決まります。
知名度の高い大手芸能事務所は就活生からも人気があり、採用は狭き門となることで有名です。
芸能事務所の仕事は幅が広いので、入社後にどんな仕事をするかは事務所によって異なります。
担当する俳優やタレントを決めてマネージャーをする人もいれば、メディアや広告代理店に自社の芸能人を売り込む営業マンになる人もいます。
全国各地を駆け回り、プロデュースすれば人気が出そうな魅力的な人物に声をかけるスカウトマンもいます。
もちろん、一般企業と同じように、人事や経理、電話応対、広報などの事務仕事を引き受ける人もいます。
大手の事務所ではそれぞれが仕事を分業していますが、小さな事務所では一人で何でもやるのが当たり前です。
いずれにしても、芸能事務所で働くためには裏方としてのさまざまなスキルが求められます。
採用試験では学歴や資格の有無よりも、コミュニケーション能力の高さや機転が利くかどうかを見られることが多いようです。
芸能事務所社員の学校・学費
学歴不問の芸能事務所も
芸能事務所の社員は、事務所の規模や方針によって求められる学歴が違います。
大手の事務所やプロダクションでは「大卒以上」の学歴が求められるのが一般的です。
採用試験は非常に人気があるので、難関大学の出身者も多く受験します。
大学でしっかり勉強しておいたほうがチャンスが広がるでしょう。
学部や学科に関しては、特に関係ありません。
大手以外の中小規模の事務所やプロダクションでは、学歴にはこだわらないことが多いようです。
高卒や専門学校卒の人もたくさん活躍している業界なので、熱意がある人はどんどんチャレンジしてみましょう。
何か勉強しておきたいという場合は、映像や放送の専門学校でマネジメントのコースを選ぶとよいでしょう。
業界事情やパソコンスキル、敬語や一般常識などを学んでおくと役に立ちます。
芸能事務所社員の資格・試験の難易度
語学の資格や車の運転免許が役立つことも
芸能事務所の社員として働くにあたって、特に必要とされる資格はありません。
あくまでも担当する仕事内容によって必要なスキルは変わるのが基本です。
たとえば、外国人のタレントやミュージシャンが多く所属している事務所では、英語を話せる社員が重宝されるようです。
学生時代に英検やTOEICの試験に向けて勉強しておくとよいでしょう。
スケジュールの作成や電話の取次ぎ、広報文書の作成などの事務作業を担当する場合は、秘書検定のスキルがあると役に立つことがあります。
また、所属している芸能人の送迎を担当するマネージャーの場合、自動車の運転免許が必須となることがあります。
運転免許は取得までに時間がかかるので、早めに取得しておくのがおすすめです。
芸能事務所社員の給料・年収
事務所の規模によって決まる収入
芸能事務所の社員の年収はどのくらいになるのでしょうか。
これに関しては、芸能事務所やプロダクションの規模と経営状況によって大きく左右されることになります。
そもそも芸能界というのは、世間の流行や景気によって影響を受けやすい不安定な業界です。
大ヒットしたドラマの続編なのに、なかなか視聴率が取れない。
大流行したギャグなのに、翌年には世間からすっかり忘れ去られてしまう。
人気アイドルグループなのに、スキャンダルをきっかけにあっという間に解散してしまう。
そんなことが決して珍しくなく、むしろ日常茶飯事ともいえます。
また、大きな地震や新型コロナウイルス感染拡大のような不測の事態が起きてしまうと、芸能関係のイベントは中止にせざるを得ません。
コンサートや握手会を取りやめると莫大な損失が出てしまいます。
景気のよいときは儲かりますが、景気が悪いときには一気に落ち込むのが、芸能界の宿命ともいえるでしょう。
こうした状況がベースにあるので、大手の芸能事務所以外は給料はそれほど高くない傾向があるようです。
小さな事務所の場合、若手社員の年収は300万円以下ということは珍しくありません。
入社したばかりの頃は、毎月の手取りが10〜15万円ほどになるでしょう。
ただし、自社に所属している芸能人がブレイクした場合、事務所の経営状況が急激によくなります。
社員も給料が上がったりボーナスに反映されたりすることがあるので、仕事のモチベーションにつながります。
芸能事務所社員の現状と将来性・今後の見通し
アイディア次第で思いがけないヒットに
近年、芸能界を取り巻く環境は大きく変わり始めています。
ひと昔前までは、大手の芸能事務所が大手の広告代理店やキー局と連携しながら、たくさんの人気芸能人を生み出してきました。
ゴールデンタイムのテレビに出演できるか、映画やドラマの主演に抜擢されるか、CMのタイアップがとれるかが大事な要素だったのです。
小規模な芸能事務所や地方で活動しているローカルタレントは、注目されるチャンス自体がほとんどありませんでした。
しかし、インターネットの登場によって、動画チャンネルやSNSから人気タレントを世に送り出すことも可能になりました。
地方の事務所でも、予算が少なくても、プロデュースや宣伝の仕方次第では思いがけない人気者を生み出せるかもしれません。
芸能事務所の社員にとっては、ますます腕が試される時代となるでしょう。
芸能事務所社員の就職先・活躍の場
大手事務所から個人事務所までさまざま
芸能事務所の社員を目指す人は、全国にある芸能系の事務所やプロダクションに入社することになります。
日本で特に有名なのは、ジャニーズ事務所やホリプロ、ソニー・ミュージックアーティスツ、吉本興業などです。
人気のある芸能人を数多く輩出しているので、芸能界には詳しくないという人でも一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
もちろん、このような大手の芸能事務所以外にも、全国各地にはさまざまな事務所が点在しています。
地方にはローカルタレントが所属する事務所があり、地方局や広告代理店と連携しながら地域密着型の仕事ができるのが特徴です。
この他に、芸能人が個人で設立した小規模な事務所もあります。
芸能事務所社員の1日
担当する芸能人に合わせたスケジュール
芸能事務所で働く社員は、所属している芸能人をサポートするために仕事をしています。
ここでは、人気女優のマネジメントをしている社員のスケジュールをご紹介します。
芸能事務所社員のやりがい、楽しさ
自社の芸能人の活躍を見て感動
芸能事務所の社員がやりがいを感じるのは、所属している芸能人が活躍している姿を見る瞬間です。
芸能界において「デビューしてすぐに人気が出て大成功する」というパターンはほとんどありません。
まずはデビューするまでに、演技や歌、ダンスなど、たくさんのレッスンを積み重ねます。
デビューしてからもオーディションを受け続け、メディアや広告代理店の関係者に顔を覚えてもらうことが大切です。
人気が出てからも、ファンサービスをしたりSNSで情報発信をしたりする工夫が必要です。
一見すると華やかな業界に見える舞台裏には、芸能人とそれを支える社員の地道な努力があります。
だからこそ、自分の関わった芸能人が活躍する姿を見ると、まるで親のように嬉しい気持ちになれるのです。
苦労も大きいぶん感動も大きいのが芸能事務所の仕事です。
芸能事務所社員のつらいこと、大変なこと
周りへの気配りがストレスになることも
芸能事務所の社員は、常に周りに気を配らなければいけません。
マネジメントを担当している芸能人が気難しい性格であれば、態度や言葉に十分気をつけながら信頼関係を築きます。
時間にルーズなタイプであれば、寝坊することがないようにモーニングコールや車での送迎を行います。
恋愛や友人関係などの私生活に心配な点があれば、スキャンダルになる前にアドバイスや生活指導を行います。
また、メディアや広告代理店の関係者と円滑な関係を保てるよう、挨拶まわりや御礼などの礼儀は欠かせません。
このように、朝から晩まで周りの人に気を配らなければいけないため、ストレスを感じる人も多いようです。
仕事がオフの日に、しっかりリフレッシュすることが大切です。
芸能事務所社員に向いている人・適性
芸能界を愛していてコミュニケーション能力が高い人
芸能事務所の社員に向いているのは、まずは芸能界に対する興味や関心が高い人です。
大好きなアイドルやタレントがいる、俳優や女優の情報を知るのが好き、デビューしたばかりの新人をチェックするのが楽しい。
あるいは、テレビや映画を観るのが好き、雑誌やインターネットをよく見ている。
そんな人であれば、芸能界に携わる仕事を楽しむことができます。
また、コミュニケーション能力が高いことも重要です。
芸能事務所で働くうえでは、メディアや広告代理店の関係者から芸能人までさまざまな立場の人と知り合う機会があります。
失礼のない言葉遣いや態度で接することができて、誰からも好感を持たれる人のほうが適任でしょう。
学生時代からたくさんの人と付き合い、信頼関係の築き方を学ぶことが大切です。
芸能事務所社員志望動機・目指すきっかけ
大好きな芸能界で働きたい
芸能事務所の社員を目指す人の多くが、「芸能界で働きたい」という気持ちが志望動機につながっています。
テレビや映画が大好きな人、アイドルや俳優に憧れがある人、エンターテインメントの世界を間近で見たい人。
そんな人にとっては、芸能事務所の仕事は刺激的で魅力があるのです。
また、社員のなかには「もともとは自分も芸能人を目指していた」という人もいます。
俳優やミュージシャンを目指していたもののチャンスに恵まれず、年齢的にデビューが厳しくなってきたので、裏方にまわる。
そんな経緯で芸能事務所の社員に転身することもあります。
この他には、「スカウトマンとして原石を発掘して世間に送り出したい」という理由で社員を目指す人もいます。
芸能事務所社員の雇用形態・働き方
非正規雇用で働いている社員も多い業界
芸能事務所の社員は、雇用形態がさまざまです。
大手の事務所やプロダクションの場合、新卒採用で正社員として雇用し、研修や育成に力を入れています。
しかし、中小規模の企業の場合は、正社員だけではなく契約社員も多いといわれています。
芸能界は流行や景気に左右されやすい業界なので、事務所の経営状況も不安定であることが珍しくありません。
稼ぎ頭となる売れっ子のアイドルや俳優がいればよいのですが、その人気も翌年まで続くかどうかわからないのです。
ですから、人件費を抑えるために正規雇用ではなく非正規雇用をしている企業が多いのが現状です。
入社後はまず非正規雇用として数年間働き、一人前になれば正規雇用にするというケースもあります。
芸能事務所社員の勤務時間・休日・生活
フレックス制の働き方が基本
芸能事務所の社員は、勤務時間が固定されていないフレックス制で働くことが多いようです。
営業や広報の仕事をしている場合、先方の都合に合わせてスケジュールを組むのが基本です。
また、芸能人のマネジメントを担当している場合は、テレビの収録やイベントなどの予定に合わせて動くことになります。
ロケや収録が長引くのは日常茶飯事なので、深夜残業が発生することも珍しくありません。
流動的なスケジュールで働くものだと考えておいたほうがよいでしょう。
週休二日制をうたっている企業が多いですが、実際は休日出勤があることも。
売れっ子の芸能人を担当していれば、土日や祝日でもなかなか休めないのが実情です。
しかし、それだけ仕事があるということは芸能事務所にとって喜ばしいことでもあります。
芸能事務所社員の求人・就職状況・需要
年間を通じて募集している企業も多い
芸能事務所は慢性的な人手不足に悩まされているところが少なくありません。
芸能界という特殊な世界の空気になじめない。
仕事がハードワークで体力がついていかない。
人間関係が複雑でストレスがたまる。
そんな理由から短期間で離職する人が多いため、人材の入れ替わりが激しいのです。
人手不足を解消するため、春先だけではなく、年間を通してずっと求人を出している企業もあります。
気になる芸能事務所がある人は、HPをチェックしてみるとよいでしょう。
なお、俳優や芸人が設立する個人事務所もありますが、こうした事務所ではほとんど求人を出していません。
もともと親交のあったスタッフや親族を社員にして経営することが多いようです。
芸能事務所社員の転職状況・未経験採用
年齢やキャリアに関係なく転職できる
芸能事務所の社員は、転職が盛んなことで知られています。
この仕事は資格や免許が必要なわけではなく、年齢や性別も特に制限してないことが多いのです。
学歴に関しても不問としている企業は多いので、高卒や専門学校卒の出身でも問題ありません。
とにかくコミュニケーション能力が高くて、マネジメントのスキルが高い人が求められています。
こうした事情から、転職で中途採用に応募するチャンスがたくさんあります。
マスコミやメディア関係で働いていた人、一般企業で広報や広告の仕事をしていた人。
そして、もともと自分がアイドルやモデル、俳優やミュージシャンを目指していた人。
さまざまな人が転職で芸能事務所に飛び込み、活躍しています。
大手の芸能事務所
人気俳優やミュージシャンを数多く輩出
日本の芸能界には、誰もが名前を知っているような大手の芸能事務所がたくさんあります。
たとえば、国民的アイドルといわれるような男性のアイドルグループを数多く輩出してきたジャニーズ事務所。
若手のお笑い芸人の育成からマネジメントまで幅広く手掛ける吉本興業。
大規模なオーディションを行って原石を発掘することでも有名なホリプロ。
このような芸能事務所は、まさに日本の芸能界をけん引してきた存在だといっても過言ではないでしょう。
この他にも、人気俳優を抱えているオスカープロモーションやスターダストプロモーションがあります。
ミュージシャンが多く所属しているソニー・ミュージックアーティスツやアミューズなども有名です。
芸能事務所のスカウトの仕事内容
全国各地を駆け巡り、光る原石を見つけ出す
芸能事務所といえば、未来のスターを探し求めて声をかける「スカウト」のイメージが強いのではないでしょうか。
オーディションやコンテストが山のように開催される現代社会でも、スカウトはやはり大切な活動のひとつです。
都心で生まれ育ったり親が有名人や芸能人だったりすると、芸能界は身近なものなのかもしれません。
しかし、地方出身者で一般家庭で育った人の場合は、自分が芸能界に入るなんて想像さえしたことがないのが普通です。
そんな人たちの中から光る原石を見つけ出し、芸能界に興味をもってもらえるように話をする。
そして本人だけではなく家族と粘り強く交渉し、事務所に所属してもらうのがスカウトの役目です。
スカウトというと「渋谷や原宿で行うものでは?」と思う人がいるかもしれません。
しかし、実際はそうとはかぎらず、敏腕スカウトマンの場合は全国各地を駆け回りながら逸材を見つけ出していきます。
「レストランのアルバイトの女子大生がすごく可愛い」「大人気の高校生ロックバンドがいる」。
そんな噂がきっかけでデビューにつながることもあるので、スカウトマンにとっては情報収集が命です。
最近では、インターネットを中心にスカウト活動をしている人もいます。
インスタグラムで自撮りをアップしていたり、動画チャンネルでトークを披露していたりする一般人が増えているからです。
昔ながらの対面のスカウトだけではなく、メールや電話、SNSでのコンタクトを通したスカウトなど、活動の幅が広がってきています。