映画宣伝の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「映画宣伝」とは

映画宣伝の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

映画の公開に合わせて効果的なプロモーション活動を行い、映画の魅力を広く世に伝える。

映画宣伝とは、映画作品が新規公開される際に、観客動員が増えるようなプロモーションプランを立案・実施していく仕事です。

映画宣伝の手法や種類はいくつもあります。

代表例を挙げると、新聞・雑誌・テレビ局などのマスコミに直接映画を売り込む「パブリシティ」、企業と共同でプロモーションを行う「タイアップ」、テレビや雑誌などに広告を出稿する「メディアバイイング」、宣伝物を作成する「クリエイティブ」などです。

映画宣伝担当者は、おもに「映画配給会社」の「宣伝部」で活躍しています。

大手配給会社は新卒採用も行っていますが、人気があり、高倍率の試験をパスして内定を得なくてはなりません。

業界経験や人脈なども重要になるため、まずは契約社員やアルバイトで現場に入り、成果を上げて正社員へ登用されるケースもあります。

現代は娯楽の多様化、動画配信サイトの普及などによって、映画興行を成功させることは難しくなっています。

映画宣伝には、時代に即した宣伝手法を取り入れながら、少しでも多くの人々に作品の魅力を伝え、映画館へ足を運びたいと思わせための創意工夫が求められます。

「映画宣伝」の仕事紹介

映画宣伝の仕事内容

映画作品の魅力を世間にPRし、観客動員数アップを目指す

映画宣伝とは、新しい映画が公開される前に、イベントやメディアへの露出などのさまざまなプロモーション活動を実施する仕事です。

映画の魅力を広く世間に知らせ、映画館へ足を運びたいと思う人、つまり観客動員数を増やすことが映画宣伝の最大の目的です。

映画宣伝の手法や種類はいくつもあります。

・パブリシティ:出版社やテレビ局などのマスコミに売り込む
・タイアップ:コンビニや食品メーカーなどとコラボをする
・メディアバイイング:新聞や雑誌などにお金を出して広告を出す
・クリエイティブ:ポスターやチラシ、パネルなどの宣材物を作成する

また、こうした仕事を総括的に見ながら宣伝チームを指揮するのが「映画宣伝プロデューサー」です。

映画宣伝プロデューサーは、上記で挙げた各宣伝方法にどれだけの予算を使うかや、宣伝の方向を決める責任を担います。

映画業界における映画宣伝の役割

映画作品は、映画をつくる人、映画を買い付けて配給する人、そして映画を宣伝する人など、さまざまな立場のプロフェッショナルが協力することで、公開まで進みます。

映画宣伝は、監督や俳優などのように表舞台に出ることはありませんが、映画の製作が決定した当初から公開終了まで裏方で奮闘しなくてはなりません。

作品に合わせて最良の宣伝方法を検討しなくてはならず、世の中のトレンドや流行も常に追い続けることが大切です。

宣伝プロデューサーなど上位職になると、とくに邦画では作品の企画段階から制作チームに入り、意見を出すこともあります。

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映画宣伝になるには

映画配給会社の内定を得て、宣伝部への配属を目指す

映画宣伝の仕事をするためには、「映画配給会社」と呼ばれる企業へ就職するのが最も一般的で、近道となります。

配給会社というのは、作品の買い付けを行い、上映する映画館の確保などの事業を手掛ける会社のことです。

日本の大手配給会社として有名なのが、東宝、東映、松竹、東北新社、東映アニメーションの5社です。

このほか、いわゆる「単館系(ミニシアター系)」と呼ばれる作品を扱う小規模の配給会社も多数あります。

配給会社では、社内に「宣伝部」を設置し、そこで映画宣伝担当者が活躍しています。

大手の配給会社では定期的に新卒採用を行うところが多いため、入社試験では宣伝部門に入りたいことを積極的にアピールしましょう。

映画宣伝に求められるもの

映画業界は非常に人気が高く、配給会社の内定を得るのは簡単ではありません。

大手企業では応募資格に「大卒以上」の学歴を求めるところが多いですが、これといった資格や専門性が必要なわけではありません。

どちらかといえば魅力的な人間性と、映画に対する情熱のようなものが重視される傾向です。

また、映画宣伝であれば企画力や発想力、コミュニケーション力なども問われてきます。

狭き門ですが、業界に入らない限り、なかなか映画宣伝の仕事にたどりつくのは難しいのが現実です。

まずは契約社員やアルバイトとして入社し、やる気や働きぶりをアピールして、正社員登用を目指すといった人もいます。

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映画宣伝の学校・学費

映画について学べる学校もあるが、大きく有利になる学校はない

映画宣伝として働くために、必ず通わなくてはならない学校はありません。

ただし、大手配給会社の採用試験を受験するには「大卒以上」の学歴が求められることがあるため、とくに大手志望の人は大学に進学しておくとよいでしょう。

とくに有利になる学部・学科はなく、文系出身者が多いものの、理系からでの就職も可能です。

映画業界は人気がある割に採用人数が少なめで、非常に厳しい競争になります。

どこの大学を出たかというよりも、映画業界に対する理解や情熱、人間性、発想力のようなものが重視されるため、学生時代に磨いておきましょう。

なお、人によっては、大学とのダブルスクールで映画の配給・宣伝、マーケティングを学ぶ専門学校やスクールに通い、映画業界の仕事に関する知識・スキルを身につける人もいます。

映画宣伝の資格・試験の難易度

必須の資格はないが、外国語のスキルは評価されることも

映画宣伝の仕事をするために、特別な資格が求められることは通常ありません。

資格というよりも、映画業界の現状や構造といった知識の習得、またアイデアや企画力などが重視される職種です。

特定の資格を取得すれば大きく有利になるといったこともないため、資格試験に関しては気にしなくてもよいでしょう。

ただし、就職・転職時のアピール材料になるかもしれないのが、外国語の語学力を証明できる資格です。

映画配給会社では洋画作品も取り扱うため、英語をはじめ、外国語ができる人が評価されることがあります。

映画業界に入る可能性を広げるためにも、外国語の能力を伸ばし、それに関する資格試験を受けておくのもよいでしょう。

映画宣伝の給料・年収

大手配給会社社員の平均年収は800万円以上

映画宣伝は、おもに映画配給会社に勤務しており、勤務先によって給与水準が異なります。

業界トップの大手配給会社(東宝、松竹、東映など)は比較的待遇がよく、平均年収が800万円を超えているところもあります。

一方、小さな配給会社は大手ほどの給料は得られないことが多く、ある程度キャリアを重ねた人でも、年収400万円~500万円ほどに落ち着くケースもあります。

アルバイトや契約社員として雇用されるケースだと、年収はさらに低めとなり、正社員のような手厚い待遇は望みにくいです。

映画宣伝として安定した収入を得たいと考えるのなら、大手配給会社の正社員として就職するのが最も確実です。

映画宣伝が収入アップするには

映画宣伝がキャリアアップして収入も上げていくには、経験を積み、きちんと成果を出していくことが重要です。

自分が宣伝に関わった作品がいくつもヒットすれば、それだけ評価を得られる可能性が高まります。

社内で昇格し「宣伝プロデューサー」クラスになれば、宣伝に関わる仕事を総括的に行うことができ、給料も大幅にアップします。

また、この職種は経験者が優遇されやすいため、身につけた知識・スキルを強みに、別の配給会社へ転職するという方法もあります。

その一方で、中堅どころや、映画宣伝を専門に行っている宣伝会社など、規模が小さくなるにつれて給料は安くなってくると考えられます。

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映画宣伝の現状と将来性・今後の見通し

時代に合わせた新しい宣伝方法の模索が重視されている

現在の映画業界は、娯楽の多様化や有料動画配信サービスの普及といった数々の要因によって、厳しい状況が続いています。

しかしながら、映画自体がなくなることはまずあり得ませんし、シネコンや3D・4DX映画の登場などにより、新たな顧客層を獲得できるチャンスも広がっています。

また、近年は邦画の人気が大きく、テレビドラマやアニメ、小説が映画化にいたる例が非常に多いことも特徴です。

多様な映画作品が生まれ続けるなかで、映画業界を盛り上げるためにも、映画宣伝への期待はますます大きくなっているといえます。

なお、従来の映画宣伝の多くは雑誌や新聞、テレビ、街頭広告といった各メディアを利用して行われるものでしたが、最近はインターネットを使ったオンラインでの宣伝も重要になっています。

たとえ無名監督やインディーズの作品でも、宣伝方法がうまくいけば、爆発的な大ヒットにつながる可能性もあります。

現代の映画宣伝には、人々のニーズやライフスタイル、業界の潮流が変わり続けるなか、いかにして消費者の心を掴むことができるかが強く試されています。

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映画宣伝の就職先・活躍の場

映画配給会社の宣伝部に所属する人が多い

映画宣伝は、おもに国内の映画配給会社に置かれる「宣伝部(映画宣伝部)」で活躍しています。

映画配給会社は大手から中小企業まで数が多く、また取り扱う映画作品によって、いくつかの種類に分類できます。

最も代表的で名前もよく知られているのが、大手配給会社です。

東宝、東映、松竹、東北新社、東映アニメーションは「主要5社」と呼ばれ、国内作品はもちろん、洋画のさまざまな話題作の配給も多数手がけています。

また、上記で挙げた東映アニメーションのように、アニメ作品を得意とする配給会社もあります。

小規模の独立系配給会社も多数

大手以外には、独立系(インディペンデント系)、ミニシアター系と呼ばれる配給会社も多いです。

一例を挙げると、ギャガ、ヘラルド、ザジフィルムズ、セテラ・インターナショナル、ミモザフィルムズなどがあります。

中小規模の宣伝部は規模が決して大きくなく、数人で回しているところもめずらしくありません。

配給会社以外には、広告代理店やデザイン会社でも、一部の映画宣伝業務に携われる場合があります。

映画宣伝の1日

流動的な動きになることが多い

映画宣伝の業務スケジュールは、一般的な日勤の会社員とさほど変わりはありません。

ただし、映画を含めたエンターテインメント業界は、やや朝がゆっくりめになる傾向で、会社によっては10時始業というところも見られます。

そのぶん、日によっては遅くまで残業します。

また、業務内容や日々の動き方が流動的になることから、「フレックスタイム制」を採用している職場も多いです。

ここでは、映画宣伝部のパブリシティ担当のある1日のスケジュール例を紹介します。

10:00 出社
11:00 スタジオで取材準備
11:30 スタジオ入り・セッティング
13:00 取材開始・進行管理
18:00 スタジオで撤収作業
18:00 帰社後、プレスリリース配信
20:00 企画書の作成・メール返信などの雑務
22:00 勤務終了

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映画宣伝のやりがい、楽しさ

自分が関わった作品がヒットし、世に受け入れられること

映画宣伝の仕事のやりがいはたくさんありますが、最高にうれしい瞬間のひとつは、自分が手掛けた作品が大ヒットすることです。

映画宣伝は、作品ごとに効果的な宣伝方法を検討し、議論を重ねたうえで実行していきます。

その過程では「本当に人々に受け入れられるだろうか…」とドキドキする時間もありますが、結果的に、宣伝方法がうまく当たり、目標を超えて作品がヒットしたときは大きな達成感を味わえます。

自分のアイデアや発想力、経験も存分に生かせます。

また、宣伝担当者は作品のエンディングロールには宣伝広報として自分の名前も流れます。

仕事の成果が目に見えると、ますますやりがいを感じられるはずです。

貴重な出会いが多く、人脈ができる

映画宣伝の仕事をしていると、映画監督や俳優・タレント、あるいは原作を手がけた作家など、多様な人物と出会うチャンスが多いです。

各分野の最前線で活躍する人との出会いは刺激的ですし、仕事を通して築いた人脈は自分の財産になります。

キャリアを重ね、宣伝プロデューサークラスになれば、作品の企画や脚本から参加する機会も得られます。

宣伝担当者としてのやりがいは、さらに大きくなっていきます。

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映画宣伝のつらいこと、大変なこと

多方面への気配りが求められ、心身ともにハードな現場も

多方面への気配りが求められ、心身ともにハードな現場も

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映画宣伝に向いている人・適性

人の心を動かせる、人間的な魅力を備えていくこと

映画宣伝は、映画制作に直接携わるスタッフをはじめ、芸能事務所、出演者、映画の出資者、マスコミなど、多様な人との関わりが多い職種です。

それぞれ異なる立場の人とコミュニケーションをとりながら、担当する作品がいかに魅力的で話題性があるかを、適切にアピールしていかなければならないのです。

そのため、映画宣伝に最も求められるのは、まず人に信頼され、人の心を動かせる強い「想い」と「実行力」、さらにいえば「人間性」といえるでしょう。

周囲の人々を惹きつけることができ、どんどん巻き込んでいけるタイプの人は、映画宣伝の適性があります。

映画の知識は、好きであればいくらでも覚えられるはずです。

まずは、学生時代からさまざまなことを経験し、人間的な魅力を備えていくことを意識するとよいでしょう。

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映画宣伝志望動機・目指すきっかけ

映画が好きな気持ちが原点に

映画宣伝に限らず、映画業界を志望する人のほぼ100%が「映画が好き」という思いを抱いています。

映画に関わる仕事を探していくなかで、映画宣伝に惹かれて志望したと話す人は多いです。

なかには、大手配給会社ではなく、個性的な作品の配給を多く手掛けている独立系・インディペンデント系の配給会社を強く志望する人もいます。

次に多いのが「宣伝やプレスの仕事に興味がある」という声です。

パブリシティ会社に就職し、映画宣伝に携わったことがきっかけで、映画宣伝を本格的にやりたくなったという人もいます。

華やかなイメージに魅了されて映画宣伝をやりたいと考える人もいますが、憧れだけで務められるほど楽な仕事でもないため、いざ映画宣伝の採用試験を受ける際には、強い意思や本気度合いが求められてきます。

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映画宣伝の雇用形態・働き方

正社員が中心だが、採用人数は少なく、非正規で働く人も

映画宣伝の仕事に就きたい人の多くは、大手映画配給会社で正社員として働くことを志望しています。

しかしながら、このような会社に新卒採用で入るのは簡単ではありません。

映画業界は、最大手といわれるクラスの企業でも全従業員数は400名~500名前後です。

さらに宣伝部門に配属される人数は限られてくるため、正社員として、映画宣伝の仕事をするのは狭き門であるのが実情です。

ただし、アルバイトや契約社員の採用であれば、もう少し可能性は高まります。

とくに中小規模の配給会社では、正社員は経験者のみで、新人は全員を非正規で採用するといったところもあります。

そのため、まずは非正規雇用として業界に入り、経験を積んで正規雇用へのステップアップを目指す人もいます。

映画宣伝の勤務時間・休日・生活

多忙のため、自分で上手にスケジュール管理をすることが求められる

映画宣伝の勤務時間は、一応は会社によって定められているものの、その通りにはいかないこともしばしばあります。

というのも、マスコミからの問い合わせは、早朝・深夜問わず入ってくるため、それに速やかに対応しなければならないからです。

また、取材や映画のイベントは土日祝日に入ってくることが多々あり、必ずしも暦通りに休めるわけではないということは知っておくとよいでしょう。

映画宣伝は、あくまでもその時々に担当しているプロジェクトに合わせて動きます。

ルーティンワークというよりも、柔軟さと臨機応変さが求められる仕事です。

朝から夜遅くまで休む間もなくバタバタとする日もありますが、そのぶん自分でスケジュール管理できる余地が大きく、仕事が落ち着いている時期を見計らって、まとめて休むといったことも可能です。

映画宣伝になったら、しっかりとスケジュール管理をして、リフレッシュする時間を上手に捻出するスキルも大切といえるでしょう。

映画宣伝の求人・就職状況・需要

業界に入るために非正規雇用からスタートする人も

映画宣伝の求人を出している企業の多くが、映画配給会社です。

多様な作品を扱う大手配給会社をはじめ、独立系・ミニシアター系の小さな配給会社まで、さまざまな配給会社が存在します。

新卒での就職を目指すのなら、東宝や東映などの大手が最有力候補となるでしょう。

大手配給会社では定期的な新卒採用を実施していますが、採用人数は全体でもたいてい10~20名程度、あるいはそれ以下と多くなく、そこから宣伝部門に配属される人はごくわずかです。

小さな配給会社になると、まったく採用されないケースもあります。

そのため、新卒で配給会社に入社できなかった人は就職浪人をするか、アルバイトや契約社員などの非正規雇用で働く道を模索しています。

映画業界は経験や人脈も重視されるため、非正規であっても、業界で地道に存在感を示せば、将来的に宣伝の仕事に就ける可能性はあるでしょう。

ただし、相当な努力と行動力が求められてきます。

映画宣伝の転職状況・未経験採用

マスコミ関係からの転職希望者は多い

映画宣伝が活躍する配給会社では、新卒採用だけではなく、中途採用も盛んに行われています。

中途採用でとくに多いのはマスコミ業界からの転職者です。

一例を挙げると、雑誌の編集者、テレビの広報担当者、あるいは芸能事務所のマネージャーなどのケースがあります。

このような職業からの転職者で、ある程度、映画業界の内情や構造を理解している場合は歓迎されることが多く、転職成功率も高いようです。

一方、まったくエンターテインメントやメディアとは関係のない業界から転職を目指すのも、不可能ではありません。

たとえば一般企業での宣伝や広報を務めていた人でれば、そこで得た知識やスキルを映画業界でも生かせることはあるでしょう。

ただ、いずれの場合も映画業界は狭き門であり、誰もが楽に就職・転職できるわけではありません。

明確な転職の目標と意思を持ち、自分が各社に貢献できることを十分に伝えていかないと、転職は難しいでしょう。