アイデアだけでなく、想いを実現する力が大切

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映画宣伝プロデューサー清宮 礼子さん

1980年4月14日東京都生まれ。明治大学文学部文学科にて演劇学を専攻し、大学卒業後、松竹株式会社に入社。映画宣伝パブリシストを経て、映画宣伝プロデューサーとして活躍中。
座右の銘:為せば成る。為さねば成らぬ何事も。

映画宣伝プロデューサーの仕事内容を教えてください。

映画宣伝プロデューサーは、一言で言うと映画宣伝の責任者です。担当する映画に関して、どのように映画を商品として売りだしていくのかを考えるのが仕事です。

映画監督や出演者、プロデューサーの方々の意向を聞き、さまざまな関係者と打ち合わせをしながら、公開日に向けて宣伝戦略を考え、実行します。

弊社の場合、一つの映画ごとに映画宣伝プロデューサーと3〜4人の映画宣伝パブリシストがチームを組んで、映画宣伝の仕事を進めます。プロデューサーはパブリシストに売り方の方向性を示したり、取りまとめたりしています。

宣伝パブリシストとはどんな仕事ですか?

実は宣伝プロデューサーになったのは、昨年のことで、それまでは宣伝パブリシストをしていました。

パブリシストとは、マスコミにタダで映画を取り上げてもらえるように、ネタを考え、売り込みをする役割を担っています。具体的には、出版社に行って雑誌に取り上げてもらうようにお願いしたり、試写会やトークイベントなどの企画をします。

マスコミに「おもしろいネタ」として取り上げてもらうためにどうすべきかを常に考えています。

イベントでは会場の演出を考えたり、映画と親和性の高いタレントさんに来てもらったりと、いろいろなことを一から手配しなければいけません。

この業界に入ったきっかけを教えて下さい。

この業界は映画マニアの方もたくさんいらっしゃいますが、私は学生時代は、人並みに好きという程度で、ものすごく映画が好きという訳ではなかったんです。でも映画が人に与える影響はとても大きいと思っていました。

流行だけでなく時代を映し出したり、人生の局面に寄り添うような何かが映画にはあると感じていました。

就職活動中にたまたま今の会社の求人を見つけて応募したのが、この業界に入ったきっかけです。没頭できて、公私共に楽しめるような仕事を探していて、これだ!と思ったんです。

実際に映画業界で働いてみてどうでしたか?

この業界ではよくあることなのですが、正社員ではなく契約社員としてスタートしました。でも仕事内容は先輩の正社員と一緒です。

最初は宣伝パブリシストとして、女性雑誌にも担当する映画を取り上げてもらえるように、女性編集部をたくさん周りました。パブリシストはどの媒体にどれだけ露出を稼げたかという結果がすべてです。人によってはそれがつらかった人もいたみたいですが、私は楽しくて仕方がなかったんです。

あの憧れの雑誌の編集者の人と仕事してるって思って(笑)

楽しかったからこそ、そして想いが強かったからこそ人一倍がんばれたし、それが次第に評価されて正社員にして頂けたんだと思ってます。

どんなところにやりがいを感じますか?

担当しているのは邦画なので、とにかくたくさんの人と一緒に仕事をします。熱い気持ちを持った監督さんやスタッフの方、オーラのあるキャストさんと一緒に働くと、すごく触発されますね。

通常、映画ごとに制作委員会が結成されます。その制作委員会のプロジェクトメンバーが一丸となって、一つの映画の成功にむけて動きます。

多くの人が関わるため、いろいろな問題も起こりますが、成功したときの喜びも大きいです。目標を目指す中で、お互いに信頼感が生まれ、人と人との気持ちがつながり、心のやりとりが生じます。

さまざまな困難を乗り越え、目標を達成したときには、本当にやりがいを感じますね。

反面、この映画に関わる人たちの想いを裏切れないというプレッシャーを感じながら仕事をしています。映画の興行がうまくいっても失敗しても、その映画に関わった人たちのキャリアとして残っていくわけですから。

何か思い出深いエピソードはありますか?

入社一年目のときに、「子ぎつねヘレン」という映画を担当しました。このときは制作宣伝といって、映画の制作段階の時点で、現場から情報を発信するところから担当しました。

映画がつくられていくのを初めて目のあたりにし、まだ右も左も分からないという状態でしたし、ロケ地も網走という馴染みのない土地ということもあり、とにかく毎日が試行錯誤で…。やる気はあったのですが失敗ばかりしていました。

そんなとき、ロケが終わった後に、現場スタッフで現地のバーに飲みに行く機会があったんです。そこに出演者だった俳優さんがいらっしゃって。

実は大ファンだったので、撮影現場で同じ空気を吸っていると思っただけでも舞い上がってしまったりして(笑)

そんな憧れの俳優さんと一緒に飲めるということでドキドキしてたところ、途中でいきなり話しかけられたんです。でもそれが、仕事に対するダメ出しで…。その俳優さんはとても熱い人なんですよね。

「がんばってるのはわかるけど、方向性が違うんじゃないか。このままじゃ心配だ。」って言われちゃって。失敗続きだったのもあって、その場で泣いちゃいました。

そのとき、「ここで自分がしっかりしなければ、この映画は失敗してしまう。そうしたらその俳優さんやこの映画に関わるみんなに迷惑をかけてしまう。」って強く思ったんです。

結果はどうでしたか?

「子ぎつねヘレン」は興行18億円という、いい成績を残すことができました。映画宣伝の一担当として、ほっとしましたね。

その2年後に、その俳優さんと再会する機会があったんです。そうしたらそのときのことを覚えていてくださって、「あのとき泣くとは思わなかったよ(笑)」と言われました。

覚えてもらっていたのも、一生懸命がんばった甲斐があったなあと実感しましたね。

いま手がけているのはどんな映画でしょうか?

メインで担当しているのは、「ひまわりと子犬の7日間」という映画です。20年間、山田洋次監督の愛弟子として師事した平松恵美子さんが監督で、出演者は、主演が堺雅人さんでヒロインが中谷美紀さん、ほか豪華なキャストが共演陣です。

実話から生まれた「愛情の連鎖」がテーマの母犬と人間の話です。飼い主のおじいさんとおばあさんが亡くなり、野良犬になってしまった犬が子犬を授かるのですが、野良犬なので保健所に連れて行かれてしまうんです。

命がけで我が子を守ろうとする母犬と、保健所職員の堺雅人さんが話の軸になります。人を信じることができなくなってしまった母犬が、昔おじいさんとおばあさんに受けた愛情を、保健所職員さんが献身的に愛を注ぐうちに思い出すというストーリーです。

人と犬の心のつながりを通して、一度受けた愛情の記憶は決して消えず新しくつながれていくという愛の姿を表現した作品です。私は、冒頭のおじいさんとおばあさんが亡くなってしまうシーンで既に泣いてしまいました。きっと感動すると思います。

公開日はいつですか?

2013年の3月16日です。大分先に感じるかもしれませんが、映画宣伝の仕事は、公開の半年以上前からスタートすることが多いんですよ。

CMやタイアップ企画など露出のピークは、だいたい公開の一ヶ月前くらいです。撮影スケジュールによっても宣伝にかけられる時間は変わってきますが、公開直前に合わせて、半年近く仕込みをします。

将来の目標はありますか?

まだ宣伝プロデューサーとなって間もないので、まずは担当した映画を確実に成功させたいと思っています。あまり先のことは考えすぎず、今の仕事に100%取り組んでいきたいです。

仕事以外では、多趣味になりたいと思っています。今はヨガぐらいしか趣味がなくて(笑)

プライベートでより視野を広げることが、きっと仕事の成功にもつながっていくと思います。

映画宣伝の仕事を目指す人にメッセージをお願いします。

映画宣伝の仕事は、本当に多くの人と関わる仕事です。スムーズに仕事が進むことのほうが少ないでしょう。誰かが教えてくれるという状況でもないので、熱いハートを持って、自分で考えて、こうしたいという想いを持った人がうまくいく仕事です。

何かおもしろいことや新しいことをやってみたいと思っていて、困難に負けずに起き上がってくるような気持ちを持った人は、必ずやりがいを感じることができると思います。

アイデアだけでなく実行力もある人と、一緒に働きたいと思っています。