測量士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
測量士の仕事とは
測量士は、建設工事や土木工事を行う土地に対して、その位置や形状、面積、高さなどの測量作業を行う職業です。
建物を建てる場合であっても、道路や鉄道、トンネル、橋、ダムなどのインフラをつくる場合であっても、設計図を引いたり工事を行ったりする際には、底地に関する正確な情報が不可欠です。
測量士は、あらかじめ策定した「測量計画」に基づき、さまざまな計測機器を駆使して現地でデータを収集します。
さらに分析作業や誤差修正作業なども行って、工事の基礎となる測量図を作成することがおもな仕事です。
なお、測量作業には、こうした「土木測量」のほか、地図や航空写真、カーナビ、スマホアプリのデータなどをつくるために行われる「地図測量」や、個人・法人所有の土地を計測する「地籍測量」もあります。
昨今、測量機器や測量技術はめざましいスピードで進化・発展しており、近年の測量士は、最先端機器を使いこなす技術職としての一面が強くなっています。
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測量士の業務の内容
外業
測量士が野外で行う測量作業は「外業」と呼ばれ、通常2人~5人のチームを組んで実施されます。
それぞれが、角度を計測する「トランシット」や、距離を計測する「光波測距儀(こうはそっきょぎ)」、位置情報を計測する「GPS」など、専用の測定機器を使って各種データを収集します。
路上などで、三脚に乗った機械を覗き込んでいる測量士を見かけたことがある人も多いかもしれませんが、あの機械は、角度と距離を自動計測してくれる「トータルステーション」と呼ばれるものです。
近年は、これらの機材が飛躍的な発展を遂げており、得られるデータの質・量ともに大きく向上し、また作業の効率性も高まっています。
その一方で、各機材を扱うための知識やスキルも高度化し、測量士の業務は年々難易度が増しています。
また、昨今大きく脚光を浴びている「ドローン測量士」に代表されるように、業務の細分化・専門化も進みつつあります。
内業
外業に対して、事務所におけるデスクワークなどの作業は「内業」と呼ばれ、内業の仕事内容は大きく2種類に分けられます。
ひとつめは、外業の前に行う準備です。
具体的な仕事内容としては、安全に、かつ効率よく計測するための測量計画の立案、必要機材の手配、操作マニュアルの読み込みなどが挙げられます。
もうひとつは、外業の後に行うデータ処理作業です。
計測したデータを専用の測量ソフトで分析し、必要に応じて変換や加工、修正作業などを行って、最終的に測量図に仕上げます。
測量士というと、機材を使って屋外で作業するというイメージが強いかもしれませんが、近年は扱うデータ量が増えていることもあって、こうした屋内作業のボリュームもかなりあります。
測量士の役割
測量士の役割は、端的にいえば、さまざまな工事現場における「縁の下の力持ち」となることです。
測量士の仕事は決して華やかなものではなく、どちらかといえば裏方に属する職業です。
一つひとつの作業は地味であり、根気が求められますし、また外業など肉体労働的な側面もあります。
しかし、民間工事であっても公共工事であっても、工事の前には測量作業が不可欠であり、測量士なしには建物を設計することはできませんし、工事に着手することもできません。
また、もしも測量士の仕事が正確さを欠けば、工事の安全性が失われるばかりか、完成した建造物も著しく精度を欠くことになり、人命にかかわる重大事故を引き起こす懸念さえあります。
測量士は、日の目を見ることは少なくても、すべての工事計画の根幹を成す、非常に大きな役割を担っている職業といえるでしょう。
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測量士の勤務先の種類・有名な企業・公務員でも働ける?
測量士の勤務先としては、測量事務所、測量会社、土木・建設会社、地図作成会社などが挙げられます。
こうした測量を手掛ける企業は、事業所ごとに測量士または測量士補の資格保有者を1名以上配置することが法律によって義務付けられています。
また、資格保有者が複数いたほうが組織としての信頼度につながり、顧客から依頼を獲得しやすいこともあって、これらの企業は測量士の求人に積極的です。
さらに、土地開発や防災、環境保全などの観点から、インフラなど大規模工事についてのアドバイスを行う「建設コンサルタント会社」で働く測量士もおり、おもに工事計画段階の調査を担っています。
そのほか、数としてはさほど多くはないものの、各都道府県の土木課や上下水道課に勤務して地方公務員として働く人、また農林水産省や国土交通省所属の国家公務員として働く人もいます。
測量事務所で働く測量士
測量事務所で働く測量士は、本業である測量作業のみに専従するケースが一般的です。
かつては、ゼネコンなどの建設会社や、官公庁・地方自治体などから依頼を受け、工事のための土木測量を手掛けるケースがほとんどでした。
しかし近年は、測量データの利用方法が拡大しています。
カーナビやWeb上の地図、スマホアプリなどをつくるメーカーやIT企業などからの依頼を受けて、工事関係以外の測量を手掛ける事務所も増えています。
さらに、測量機器の高度化や多様化が進んでいる影響を受けて、たとえばドローンを操縦して上空から測量作業を行うなど、ほかとは一線を画した測量サービスを手掛けている事務所もあります。
ただ、目的や方法が違っても、測量事務所の仕事が測量作業だけに特化していることは間違いないため、とにかく測量が好き、機器を操作するのが好きという人にとっては、最も適した勤務先といえます。
建設コンサルタント会社で働く測量士
建設コンサルタント会社とは、おもに規模の大きな公共工事を行う際に、その工事が周囲の環境に与える影響の調査や、より効率的な工事計画の提案、また防災上の問題点について指摘・アドバイスする企業です。
建設コンサルタント会社で働く測量士は、土木や建築に関する知識を生かして、提出された測量計画や施工計画の事前調査を実施し、アドバイスします。
このため、測量事務所とは対照的に、測量士資格はあっても自分の手で測量作業を手掛けることはまれです。
測量面や土木面に特化した会社や、小規模な会社では社員が測量するケースもありますが、測量作業はあくまで業務全体のなかのごく一部にすぎず、デスクワークやプレゼンが中心業務となります。
地方自治体で働く測量士
測量士は、地方公務員試験を受けて、各都道府県や市町村の土木課や上下水道課などに所属する地方公務員として働くことも可能です。
地方自治体は、工事を請け負う側ではなく工事を発注する側であり、測量作業については、民間の測量会社に委託するケースがほとんどです。
このため、公務員として働く場合、基本的に測量士自身が測量作業を行うことはありません。
行政を担う公務員として、公共工事の計画を立案したり、工事を建設業者に依頼したり、工事の進捗状況や予算を管理したりすることがおもな仕事となります。
なお、こうした土木業務を担う公務員については、現場の知識がないと仕事に支障をきたすケースが多いため、新卒者ではなく実務経験者のみを採用対象とする自治体が目立ちます。
独立して働く測量士
測量士のなかには、測量会社などで十分な経験を積んだあと、独立して自分の測量事務所を開く人も一部います。
測量作業には、「土木測量」「地図測量」「地籍測量」の3種類がありますが、このうち土木測量と地図測量については、大きな事業規模と長年の実績が必要であり、新規参入することはきわめて困難です。
したがって、独立するならば、少なくとも当面の間は地籍測量を手掛けることが必要になります。
しかしながら、地籍測量には登記や許認可申請などが絡むため、測量士単独で業務を行うことはできません。
このため、土地家屋調査士や行政書士と事務所提携するか、共同で事務所を経営するか、あるいは自身で資格を取得するか、いずれかの方法を取ることを考える必要があります。
最も望ましいのは自身で資格を取得する道です。
土地家屋調査士や行政書士は資格保有者にしかできない「独占業務」を有しているぶん、測量士資格だけで勝負するよりも独立が成功する可能性は大きく高まります。
測量士の仕事の流れ
測量士の仕事は、まず民間企業や地方自治体などから、測量依頼を受け付けるところから始まります。
受注元と打ち合わせして、工事予定地や工事内容、工期などを聴取し、現地視察なども行って、安全確実に、かつ効率的に作業を進めるための測量計画を立てます。
計画がまとまったら、チームを組んで現地での測量作業を実施し、必要なデータを収集します。
外業は、市街地など、整備された場所ばかりではなく、人里離れた山や森の中で行われることもあり、橋を架ける際には海を挟んで海峡の両側で行われることもあります。
このため、規模が大きい場合などは、数日間にわたる泊まり込みの作業になるケースも珍しくありません。
必要なデータをすべて収集し終えたら、事務所に持ち帰って内業に移ります。
基本的にはコンピュータ処理となりますが、測定結果に疑義があれば、関数電卓を用いて自分の手で計算することもあります。
修正作業などを終え、成果物として受注元に測量図面を納入すると、測量士の一連の仕事は完結となります。
測量士と関連した職業
測量士補
測量士補は、測量士と同じく測量法にもとづく国家資格であり、基本測量や公共測量を手掛ける職業です。
しかし、測量士とは違って、実作業を行うために必要な測量計画を作成することはできず、「補」という名前の付くとおり、測量士の指示の下、おもにサポート役として働きます。
ただ、実際の現場においては、両者の役割分担は明確ではなく、チームで協力し合いながら作業します。
給料などの待遇面についても、そこまで大きな差があるわけではありません。
業務範囲が狭まるぶん、測量士補のほうが資格取得の難易度は低めですが、測量業務に携わる人は測量士補ではなく、いきなり測量士を目指すケースのほうが多いようです。
国土地理院が行った調査でも、現場で働く測量士・測量士補の割合は6:4~7:3程度となっており、測量士補のほうが少数派です。
土地家屋調査士
土地家屋調査士とは、土地や建物の測量作業を行って、新築時の「表題登記」を行ったり、土地の境界を確定させる「筆界特定」を行ったりする職業です。
仕事内容は測量士と非常に似通っており、街中で作業中の土地家屋調査士を見かけても、測量士と見分けがつかないでしょう。
両者の大きな違いは測量作業の「目的」にあります。
測量士が公共工事のための調査や地図データ収集などをおもな目的とするのに対し、土地家屋調査士は、法務局への登記申請を目的とします。
このため、土木測量、地図測量、地籍測量と3種類ある測量作業のなかの地籍測量については、測量士ではなく、土地家屋調査士が行うケースがほとんどです。
ただし、必要な知識やスキルが重複しているのも事実であり、測量士のなかには、土地家屋調査士の資格もあわせて取得し、ダブルライセンスで働いている人もいます。
土木施工管理技士
土木施工管理技士とは、全部で29種類ある「施工管理技士国家資格」のひとつであり、道路や橋、上下水道などをつくる土木工事を管理する役割を担います。
測量士が一連の測量作業を終えたあと、土木施工管理技士が現場を引き継いで施工計画を作成したり、責任者として現場での監督業務を行ったりするため、測量士とは現場で直接関わることの多い職業です。
なお、一般的な土木工事以外にも、地震や洪水に伴う災害復旧工事の管理を手掛けることもあり、土木施工管理技士の需要は近年増加傾向にあります。