道路からダムまで。最先端の技術と機械を駆使し、工事の礎を築く

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測量士太田 昭次さん

東京都出身。高校卒業後、東京測量専門学校(1年制)へ進学。都内の測量会社へ就職し、2001年、株式会社CSS技術開発へ中途入社。現場のリーダーを経て、現在は測量部副部長として後輩の育成と管理、業務効率化推進等に携わる(2017年3月現在)。「基準点測量1級」取得。
座右の銘:何事も社会勉強

太田さんが測量士になったきっかけを教えてください。

学生の頃からアウトドアが好きで、外で働ける仕事に就きたいと考えていました。高校在学中、いろいろな職業を調べるなかで「測量」という仕事があることを知ったんです。

正直にいうと、最初は「図面が描ける仕事なんてカッコいい!」くらいの気持ちでしたが、一生食べていける仕事だということも聞いて、この道に進んでいこうと決意し、測量の専門学校へ進学しました。

専門学校はどのようなところだったのですか?

僕が通っていた専門学校は1年制、2年制、3年制と3コースあり、そのなかで僕は昼間の1年制コースを選びました。最短期間で学び、早く仕事がしたいと思っていたんです。

ちなみに測量士の資格を取得する方法はいくつかあって、僕の場合はまず学校で1年学ぶことで「測量士補」という資格を得て、そこから2年間実務経験を積み、申請をすることで測量士になりました。

学校には、すでに測量の仕事をしながら学んでいる30代や40代の人もいて、現場の生の声を聞けたのがよかったですね。

専門学校卒業後は、どのような会社に就職されたのでしょうか?

最初に就職した会社は、土木工事の測量を中心に手掛けている都内の会社です。学校では基礎を学んできましたが、会社に入ればいきなり応用のような仕事を任されます。もちろん、最初は不安もありました。

でも、できることからコツコツと積み上げていき、3年くらいすると「頭(あたま)」という現場を仕切るリーダーの役目を担うようになりました。

それからは直接お客さまとやりとりする機会が増えて、プレッシャーを感じていた反面、やりがいも一気に大きくなった気がします。

結局、その会社では5年ほど働いて当社へ転職したのですが、そのきっかけのひとつは、自分の出身地である多摩地区に戻って働きたいという気持ちが強くなったことです。

現在の太田さんの仕事内容を教えてください。

昨年までは外へ出て、現場の一員として測量をしていましたが、2017年1月からは社内でマネジメント業務中心に携わっています。

測量業界は昔ながらの職人気質のようなところがあり、測量工程の1から10まですべて一人でやるというケースが多いのですが、当社では「分業」制を採用していて、チームとしていかに効率的に仕事を進めるかをつねに考えているんです。

ですので、僕は外で測量をする人と、社内で図面作成などの作業をする人がうまく連携できるように調整したり、皆の仕事が滞っているところはないかチェックしたりといったサポート的な役目をおもに担っています。

測量の大まかな流れを教えていただけますか?

僕らの仕事は、まず測量をするための準備からスタートします。社内で図面や資料を見て、測量をする場所の状況を確認。

準備が整うと、お客さまと日程を調整して、現場に行く測量士の割り振りを行います。

測量担当者が決まれば、本人は準備された資料に目を通して、自分で「こういう測量をやろう」というのを考え、僕も場合によってアドバイスをします。

そして現場での測量が終われば、その内容を内勤スタッフに渡して計算や図面作成を実施。

最終的な成果品をまとめて、現場の担当者が確認し、最後に僕がチェックをして、OKが出ればお客さまに納品するという流れになっています。

このように、現場ごとにいろんな人の手を介して納品物はできあがっていきます。

社内で働いている人は皆、測量士の資格を持っているのですか?

いえ、そういうわけではありません。測量士の資格は重要ですが、必須というわけではありません。

会社なので営業や事務などさまざまな職種の人が働いており、全員が現場で測量をやっているわけではないからです。

ただ、営業をするにしても測量の知識がないとお客さまとしっかり話せないですから、入社後、数年間は測量をやって専門的な知識や技術をある程度身につけてから、本人の希望などに応じて他部署へ移動というケースが多いですね。

太田さんの仕事の1日の流れを教えてください。

出社は8:30ごろ。まずは内勤スタッフの仕事を割り振って、測量を終えて完成した成果物に目を通します。そこからは社内会議や打ち合わせを行うことが多いですね。

夕方になると現場から測量担当者たちが帰ってくるので、内勤スタッフへの引継ぎをサポートします。

一人ひとりに声をかけて、わからないことや困っていることがあれば相談にのり、今後の仕事の進め方をアドバイスします。

全員の相談ごとに対応していると、退社はだいたい20時から21時くらいになることが多いです。

繁忙期のようなものもあるのですか?

当社の立場は、まず役所が「こういう工事をする」ということを決定します。

次に建設会社が仕事を受注して、そこからの下請けとなるため、どうしても年度末に仕事が立て込みやすいです。9月から3月までが、まさに繁忙期。

ただ、地域によっても少し事情が異なって、たとえば北海道は雪解け以降に工事が動き出すので、4月からが忙しくなります。

当社は東京以外にも拠点を設けていて、たとえば本社の人が北海道へ手伝いに行くこともあります。

測量の作業は、1つの現場あたり、どれくらいの時間をかけて行うのですか?

僕らの場合、基本的に2人で1つのパーティーを組みます。現場の大きさにもよるのですが、1日にたいてい1現場から多くても2現場くらいです。

工事の測量については、まず基準となる測量を1日から5日くらいかけて行い、工事中にも再度同じ場所で1日から2日くらいかけて測ります。

そして工事が終わってからも再びその場所へ出向いて、設計図面の数量と実際の数量を照らし合わせるという作業を行います。

このように、「測量」という仕事を通じて図面段階から完成形までを見ることができるのが、この仕事で味わえる感動のひとつ。

だから、最初に測量をした人が、最後にも必ず行くようにしているんですよ。

仕事のやりがいを教えてください。

僕らの仕事は、道路や橋など形として残るものを造るための基礎の基礎になる重要なもの。自分が手掛けた場所を車で通ったときには、言葉にできないほどの誇りと充実感が味わえますね。

当社では、東京だけでも年間で600現場ほど関わっているので、それを十年以上と続けていれば、この辺りの新しい道路なんかは、ほとんど自分が関わっているような状態になります。

あとは、お客さまから「次も頼むね」とか「太田さん次回もよろしく」と声をかけてもらったときには、自分自身を信頼してくれていることが感じられてうれしいです。

仕事で大変なこと、苦労することはありますか?

もちろんありますよ。たとえば僕らの仕事では、めったに人が足を踏み入れないような場所へ行くこともあります。

以前、ダムを造るための測量をする際に北海道の夕張の山奥を訪れた際は、4月だというのに雪がすごかった。もう、辺り一面が真っ白で、何も周りがわからない状況。

歩けば胸のあたりまで埋もれてしまったり、雪崩の跡を間近で見たりと、時にはそんな大自然の厳しさの中で仕事をすることもあります。

夏にはマタギの人をつれて、クマ避けの鈴をつけながら歩いたこともありますしね(笑)。

僕にとってはエキサイティングな経験でしたが、人によっては怖いと思うかもしれません。

それと、工事現場では必ず間に合わせなければいけない「工期」という締め切りがあるので、場合によっては雨の中で測量をしたり、夜が遅くなってしまうこともあります。

休日の曜日は決まっているのですか? また、オフの時間の楽しみ方を教えてください。

当社では、基本的に土日が休みの週休2日制です。ただ、繁忙期に関しては土曜日だけは月に1日の休みとなります。

有給は100%取得できるので、繁忙期を除けば連休をとって旅行なんかも行けますよ。

僕は子どもがまだ1歳と小さいので、休日は子どもと遊ぶことが多いですね。あとはやはりアウトドアが好きなので、自転車に乗ったり山へ出かけたりすることもあります。

測量士として働いている人は、どのような学歴の人が多いのでしょうか?

一概に「こう」とはいえないと思います。当社でもこの数年、新卒採用を積極的に行っていますが、新卒の子たちは専門卒もいれば大卒もいます。

また、学校で測量をまったく学んでこなかった人もいますし、文系も理系も、学部や学科もさまざまです。

自分の経験を踏まえていうと、測量の学校で身につけた知識は土台になりますが、もしそれがなかったとしても、会社に入ってから責任感を持って真面目にやれば大丈夫。素直に吸収する気持ちが大切です。

測量士というと、土木の職人さんのような「ガテン系」のイメージを持つ方もいると思うのですが、実態はどうなのでしょう?

たしかに、会社によっては職人気質で「見て学べ」という雰囲気もあるかもしれません。

でも、決してガテン系といわれるような仕事ではありませんし、おとなしい人にでも務まる仕事ですよ。

測量士の仕事に、向き不向きや適性はあると思いますか?

どんな仕事でもそうかもしれませんが、僕が部下の指導をするようになって感じているのは、きちんと話を聞く人、真摯に仕事に向き合う人がグッと伸びるということです。

たしかに人によって成長スピードの速い遅いはありますが、「図面を描く」といった専門的な仕事も、教育を受けて皆できるようになっていますし、元からものすごく特殊な能力がなければできないものではありません。

先輩や上司に言われたことはきちんと受け止めて、責任を持ってやり遂げること、誠実に取り組むことを心がけていれば、ほとんどの人がきちんとできるようになると思っています。

測量士には、どのような性格の人が多いですか?

そうですね…当社にもマイペースな人からせっかちな人まで、いろんなタイプの人がいます。

でも、共通しているのは皆「真面目」ということ。きっちりと物事を進めるのが得意な人が多くて、雑な人にはちょっと難しい仕事だとは思います。

女性でも、測量の現場で活躍することはできるでしょうか?

できると思います。

当社の場合、女性はある程度の測量経験を積むと、内勤でのサポート業務や営業などの仕事へ移ることを希望する人が多いですが、現場のリーダーとして活躍することも不可能ではありません。

正直、体力や肉体労働で大変な現場もなかにはありますが、男性とチームを組むなどの工夫によって測量をずっと続けていくこともできるでしょう。

太田さんの今後の目標を教えてください。

少し前までは「一人の技術者」としてスキルアップすることを目指していましたが、管理職になったことで、視野を広く持ち、お客さまだけでなく、後輩や会社全体も意識して目を向けるようになりました。

そんな僕の今の目標は、難易度の高い測量を、どんどんできるような若手を育てていくこと。

将来、彼ら彼女らから「太田さんに育てられた」なんて言われるようになったら、ものすごくうれしいだろうなと想像します。

測量士の職人技のようなものはありますか?

職人技といえるかはわかりませんが、何百現場という経験を重ねるうちに、だいたい「こういう測量結果になるだろうな」という見立てができるようになってきます。

そうなれば、現場監督と打ち合わせをして、自分で最良と思える方法を提案することもできるようになります。

技術職なので、人によって経験の差がおおいに現れる仕事だと思います。メンバーの測量士の技量を高めていくことが僕に課せられた使命だと考えています。

測量の業界は、これからどのようになっていくと思いますか?

とにかく、技術と機械の進歩はめざましいものがあります。

昔はもっと閉鎖的な世界でしたし、図面は鉛筆を使っての手書きでしたが、今はCADというソフトを使ってパソコンで描くのが当たり前です。

誰でも簡単に立体図を見られるようになっており、最先端の機械も使われています。
今後も、技術革新によって作業が簡略化されるとは思いますが、その基礎の部分は変わらないので、そこは人間がきちんと覚えてコントロールする必要があると考えています。

最後に、測量の仕事に興味を持っている人へメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、測量の技術は日進月歩です。

すでにドローンを飛ばして図面まで作れるようにもなっていますし、とにかく新しい技術が次々と出ています。

だからこそ覚えることは多いけれど、やりがいがあるし、測量の需要は無くなりません。

この仕事に興味を持つきっかけは「ラジコンが好き」くらいの単純なものでもよいと思います。

工事の礎は測量です。土木はものづくりの中でも、最も大きな規模のものづくりです。

「新しいものを造る」ということに関わることができる職業なので、ぜひたくさんの若い人に測量士を目指してもらいたいなと思います。