スクールカウンセラーとソーシャルワーカーの違い
スクールカウンセラーとソーシャルワーカーの仕事内容の違い
近年、全国各地の学校ではスクールカウンセラーが相談室で生徒の相談にのることが増えてきましたが、学校によっては「スクールカウンセラー」と「スクールソーシャルワーカー」の二本柱の体制で生徒のサポートをしているところもあります。
どちらも「悩んでいる子どもの力になる」という意味では似ている仕事のように感じられますが、ふたつの職業にはさまざまな違いがあります。
また、ソーシャルワーカーは教育現場以外に、医療・介護・福祉などのさまざまな業界で働く人も多いです。
以下ではまず、スクールカウンセラーとソーシャルワーカーの仕事面の違いについて説明します。
スクールカウンセラーは「心の治療」を
簡単に言うと、スクールカウンセラーは悩んでいる子どもたちの心のケアをし、一方のソーシャルワーカーは悩んでいる子どもたちの福祉面の環境を整えるサポートをします。
たとえば、ある学校に親からのネグレクト(育児放棄)が疑われる生徒がいるとします。
給食費の滞納、連絡物の未提出、子どもの元気のなさなどを心配した教師からの相談を受け、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーが問題解決に向けて動きはじめます。
この際、スクールカウンセラーのメイン業務は「子どもや保護者の話を聞いて本音を引き出しながら、心の問題を整理するのを手伝う」ことです。
家庭でのトラブルや親子間の気持ちのすれ違いが発生している場合には、じっくり話を聞きながらその原因を探ります。
スクールソーシャルワーカーは「環境の整備」を
一方、ソーシャルワーカーのメイン業務は「子どもや保護者の話を聞いて状況を整理しながら、福祉の制度で利用できるものを一緒に考える」ことになります。
このとき相談内容などによっては、経済的な状況のことも踏まえた上で活用できる制度がないか検討します。
貧困家庭であれば生活保護を受けることをすすめる、親が病気であればヘルパーに家事を手伝ってもらうなど、さまざまな制度や方法を提示し、福祉面での環境を整えることを手助けしていきます。
ソーシャルワーカーは福祉制度の内容を熟知する必要がありますから、日々の勉強はもちろん、関係者との連携を意識した取り組みが必要不可欠です。
スクールカウンセラーとソーシャルワーカーは公務員?
スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーともに、教育現場においては時給制の非常勤としての採用が一般的です。
各自治体や学校との契約によりますが、ほとんどの場合は公務員としての位置づけではありません。
ともに週1~2回程度の出勤となる契約がほとんどであるため、毎日学校へ出向くこともありません(ソーシャルワーカーの場合は、週4日での契約をしている自治体もあります)。
ですが、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーともに今後需要の増加が予想されているため、将来的には公務員として常勤の職員(公務員)となる可能性もゼロとはいえません。
希望する学校を所管している自治体に問い合わせる、求人票の内容を確認するなど、雇用条件をよく確認しておきましょう。
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スクールカウンセラーとソーシャルワーカーのなる方法・資格の違い
スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーともに、教育現場においては子どもたちに関わる仕事には変わりありませんが、それぞれ必要な資格が異なってきます。
まず、スクールカウンセラーになるには「臨床心理士」または「公認心理士」の資格を取得するのが一般的です。
臨床心理士になるには、大学院(指定大学院1種・2種、もしくは専門職大学院)にて臨床心理士として必要な知識や実習をおこない、臨床心理士試験に合格する必要があります。
一方、公認心理士は、大学・大学院で所定の科目を履修するか、大学にて必要な科目を履修したのち、一定期間の実務経験を積み、公認心理士国家試験に合格することが条件となります。
ソーシャルワーカーになるには、「社会福祉士」の資格を取得する必要があります。
福祉系の大学や専門学校(社会人の方は養成施設で学ぶことが一般的)にて社会福祉士として必要な知識を習得し、社会福祉士国家試験に合格することが必要です。
スクールカウンセラーとソーシャルワーカーの資格の難易度・必要なスキルの違い
スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーそれぞれになるために一般的に必要とされる資格は、以下の通りです。
・臨床心理士、公認心理士(スクールカウンセラー)
・社会福祉士(ソーシャルワーカー)
それぞれの受験者数・合格者数・合格率は以下の通りです。
<臨床心理士>
・受験者数:2,133人
・合格者数:1,337人
・合格率:62.7%
※令和元年度
<公認心理士>
・受験者数:16,949人
・合格者数:7,864
・合格率46.4%
※第2回公認心理士試験の結果
<社会福祉士>
・受験者数:39,629
・合格者数:11,612
・合格率:29.3%
※令和元年度
スクールカウンセラーが心のケア、ソーシャルワーカーが社会福祉の制度を活用し、適切な支援を行っていく仕事となるため、資格取得に必要な知識にも違いが出てきます。
そのため、一概にどちらの資格が難しいとはいえません。
それぞれの特色を理解し、徹底した受験勉強が必要になります。
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スクールカウンセラーとソーシャルワーカーの学校・学費の違い
スクールカウンセラーになるために臨床心理士の資格を取得するには、指定大学院(1種、2種)または専門職大学院に進学する必要があります。
公認心理師になるためのルートはいくつかありますが、大学で心理学について学び、さらに大学院まで進むケースが一般的です。
大学院の学費は、国公立であれば、初年度で約80万円です。
私立になると、学校によって大きく金額が異なるものの、初年度で約100万円以上かかります。
ソーシャルワーカーに必要な社会福祉士の資格を取得するためには、4年制大学・短大・専門学校などで勉強するのが一般的です。
国公立の場合は初年度で約80万円前後、私立になると約100万円以上になります。
大学と大学院などの違いはありますが、国公立であれば約80万円から、私立になると100万円以上の学費がかかります。
進学予定の学校へ問い合わせて資料請求するなど、事前の確認を徹底しましょう。
また、学校ごとに奨学金を設けている場合もありますので、奨学金もうまく活用していくとよいでしょう。
スクールカウンセラーとソーシャルワーカーの給料・待遇の違い
スクールカウンセラーとソーシャルワーカーでは、契約内容などにもよるものの待遇面で違いが出てきます。
スクールカウンセラーは、時給制の非常勤職員として採用される場合、1つの学校には週1~2回の出勤となり、午前中・午後どちらかだけの勤務という場合もあります。
平均的な時給は約3,000円~5,000円といわれていますが、学校を所管する自治体によって異なります。
教育現場で働くソーシャルワーカーもスクールカウンセラーと同様、非常勤職員としての勤務が一般的です。
勤務形態は週1~2回の出勤をともなう7時間勤務が多く、自治体の嘱託職員としての雇用であれば、週4日以上の勤務をする場合もあります。
時給は約2,500円~5,000円とされますが、詳しい待遇については各自治体や学校へ問い合わせて条件を確認してください。
スクールカウンセラーとソーシャルワーカーはどっちがおすすめ?
スクールカウンセラーは主に「子どもの悩みを聞き心の問題を解決すること」が大きな使命です。
誠実で相手の立場になって考えることができる人にぴったりな職業です。
ですが、相手の立場になるあまり、自身の精神を病んでしまう場合もありますから、仕事とプライベートを分けて考え、割り切ることのできる精神力も必要となります。
基本的には学校で働くことが多いため、教育業界への関心が強い人には向いています。
ソーシャルワーカーは、社会福祉の制度を用いて子どもの手助けをする職種です。
各関係機関との連携や、問題を解決するための道筋を考える論理的な思考が必要になります。
福祉を取り巻く環境を変えたい、人の役に立ちたいという強い思いがある方にぴったりです。
スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーともに「子どもの成長を助ける」という意味では共通しているものの、業務の内容が異なるため、どちらを目指すのか明確にしておきましょう。
また、教育現場以外でも福祉の専門家として相談支援に携わりたいと考えている人は、ソーシャルワーカーを目指すための専門的な勉強をしておくと、活躍の場が広がると考えられます。