スクールカウンセラーになるには? 仕事内容や年収を解説 無資格でもなれる?
「スクールカウンセラー」とは
心理学の専門家として、カウンセリング等を通じて学校に通う年齢の子どもの心をケアする。
スクールカウンセラーは、学校に通う年齢の子どもたちの心のケアを行う心理学の専門家です。
各種学校に配置されることが多く、子どもたちの話を聞き、その子らが抱える問題を解決させるためのアドバイスや働きかけを行います。
教師とは異なる第三者の立場として、子どもたちの健やかな学校生活をサポートするのが、スクールカウンセラーの役割です。
この仕事に就くために必須の資格はありませんが、実質的には、心理系資格の最高峰といわれる「公認心理師」もしくは「臨床心理士」が求められることが多いです。
心の問題が多様化・複雑化する現代では、スクールカウンセラーに期待される役割はますます大きくなっています。
しかし、現在の日本ではスクールカウンセラーをとりまく雇用環境や待遇が整備されておらず、「非常勤」として別の仕事と掛け持ちしながら生計を立てている人も少なくありません。
「スクールカウンセラー」の仕事紹介
スクールカウンセラーの仕事内容
学校に通う子どもたちの心のケアに携わる専門職
スクールカウンセラーは、心理学の専門的な知識をもち、就学後の児童から青年期の生徒の心のケアに携わる専門職です。
具体的には、学校などの相談室に来室した児童・生徒がどのようなことで悩んでいるのかを引き出し、最適なアプローチ方法をアセスメント(評価)したうえで、適切な心理療法を選択・実施します。
子どもの抱える問題や悩みは、学校内でのいじめや友人関係のトラブルのほか、親には相談できないこと、家庭の問題など多種多様です。
子どもの年齢や発達段階にあわせて、遊びのようなかたちや、面談・カウンセリングを通して、その子が抱える問題を引き出していきます。
教員とは異なる第三者の立場で子どもと向き合う
スクールカウンセラーの特徴は、いわゆる学校の先生である「教員」とは異なる立場であることです。
身近な親や先生には言えないことでも、第三者のスクールカウンセラーに対してであれば言える場合があります。
スクールカウンセラーはあくまでも心理の専門家として中立な立場を保ちます。
必要に応じて相談内容を担任や保護者へ報告することもスクールカウンセラーの業務のひとつですが、子どもの心を守りながら、報告内容や方法は慎重に行います。
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スクールカウンセラーになるには
「臨床心理士」か「公認心理師」の資格取得が最初の目標
スクールカウンセラーになるためには、まず「臨床心理士」もしくは「公認心理師」の資格取得を目指すとよいでしょう。
資格がなければ仕事ができないわけではありませんが、実際の現場では、上記の資格を所持していることが採用の前提条件となることが多いです。
臨床心理士の資格を取得するには、大学卒業後、「指定大学院(1種・2種)」を修了したのちに、臨床心理士の試験に合格する必要があります。
あるいは、臨床心理士養成に関する「専門職大学院」を修了し、同じように試験に合格する方法もあります。
このほかにも、いくつかのルートがありますが、いずれも心理学に関連する専門的な学びや実務経験が求められるため、簡単な道のりではありません。
公認心理師は初の心理系国家資格として誕生
もうひとつの「公認心理師」は、日本における心理学の初の国家資格として2018年から試験が開始されました。
公認心理師資格を得るにも、4年制大学で「公認心理師になるための科目」を履修し、さらに大学院で臨床心理の学びを深めていくなど、段階的かつ専門的に学ぶ必要があります。
公認心理師の国家資格制度がスタートしたことで、今後は、この資格者を優先してスクールカウンセラーとして採用するケースが増えていくと考えられます。
スクールカウンセラーの学校・学費
臨床心理士も公認心理師も、資格取得までは長い道のりになる
臨床心理士を取得する場合
スクールカウンセラーになるための実質的な必須資格である「臨床心理士」を取得するためには、大学卒業後に「指定大学院」もしくは「専門職大学院」を修了しなければいけません。
指定大学院には、第1種と第2種があり、第1種の場合は、大学院修了後すぐに臨床心理士資格審査を受験することができます。
第2種の場合は大学院修了後、1年以上の実務経験を積まないと臨床心理士資格審査を受験することができません。
専門職大学院では、大学院修了後すぐに臨床心理士資格審査を受験でき、一次試験として課せられるはずの小論文試験を免除されます。
公認心理師を取得する場合
公認心理師の国家試験を受験する方法もいくつかありますが、大学や大学院で、公認心理師になるために必要な心理学を勉強するのが一般的なルートです。
臨床心理士と同様、大学院まで進むことを考えてしっかりと学費計画を立てておくことが必要です。
なお、資格取得自体に年齢制限はありませんが、実際の就職を考えていくと、できるだけ早くに資格を得たほうがよいでしょう。
スクールカウンセラーは実務経験が重視されるため、新人や経験が浅いうちは非常勤など、あまりよい待遇で働けないこともあります。
スクールカウンセラーの資格・試験の難易度
臨床心理士は高合格率でも採用試験が難しい
臨床心理士の試験の合格率は、毎年60%~65%程度を推移しています。
公認心理師は、まだ資格制度がスタートして日が浅いですが、今後も臨床心理士と同じくらいの難易度・合格率になるものと予想されています。
なお、臨床心理士や公認心理師の資格取得者の全員がスクールカウンセラーになるのではなく、病院や福祉施設、あるいは一般企業に勤務する人も多くいます。
資格を取得するまでの道のりは長いですが、きちんと順をたどりながら確実に勉強すれば、資格取得自体はそこまで難しいわけではありません。
スクールカウンセラーの採用人数は少ない
資格取得後、スクールカウンセラーを目指す場合は、各自治体の教育委員会、あるいは私立学校の公募に応募します。
しかし採用人数は「若干名」であることが多く、競争率は高くなっています。
スクールカウンセラーの試験としては、書類審査を1次試験とし、面接を2次試験とする自治体がほとんどです。
首都圏や地方都市では、1人の採用枠に10人以上募集があるのは当たり前ですから、臨床心理士や公認心理師を取得してもなお、スクールカウンセラーへの道のりは遠いといえます。
正規雇用が難しい場合には、非常勤で経験を積みながら、正規雇用を目指していく人もいます。
スクールカウンセラーの給料・年収
非正規雇用が多く、複数の学校を掛けもちして働く人も
現在、小学校・中学校・高校のスクールカウンセラーとして働いている人の多くが「非常勤職員」という立場で働いています。
非常勤職員は、いわゆる非正規雇用にあたり、週に何日か決められた時間だけ学校に出勤する働き方になります。
このため、給料に関しては月給制や年俸制ではなく、時給制であることが一般的です。
時給は勤務先によって変わりますが、臨床心理士や公認心理師の資格がある場合は5,000円ほど、大学教員などの資格所持者の場合はやや下がって、時給3,000円ほどが相場といわれています。
時給としては一見すると高水準に見えますが、フルタイムのように安定して長時間働けるわけではないため、どうしても年収は低くなりやすいです。
そのため、非常勤のスクールカウンセラーは、2~4校ほどを掛け持ちしていたり、別の仕事をしたりして生計を立てている人もいます。
スクールカウンセラーが安定して働くには
ここ数年、少しずつスクールカウンセラーの雇用環境は改善に向かっています。
スクールカウンセリングに力を入れている私立学校であれば、常勤で働けるところもあり、その場合は安定した月給が得られますし、ボーナスや福利厚生なども期待できます。
それでも、現状では大半の人が非常勤で働いており、長期的に同じ職場で昇進やキャリアアップを目指すのも難しいです。
経験を積み、専門性を少しずつ磨いていきながら、自分で活躍の道を模索していく努力が必要になるでしょう。
関連記事スクールカウンセラーの年収はいくら? 給料についてくわしく解説
スクールカウンセラーの現状と将来性・今後の見通し
需要は確実に拡大しており、今後の雇用環境の改善に注目
子どもたちの心のケアに専門的に携わるスクールカウンセラーを学校に配置・派遣する取り組みは、文部科学省の後押しによって平成7年度に始まりました。
それから時代が進むなかで、スクールカウンセラーの果たす役割は、さらに大きくなってきています。
スクールカウンセラーは、子どもたちのいじめや不登校の問題をケアするだけでなく、最近では発達障害のある子どものサポートなどの面でも力を発揮します。
また、ときには教育現場で働く教師のメンタルケアや、子育てに悩む保護者の相談にのることもあり、広い視野をもって、教育を取り巻く環境を支えていける職業です。
将来的にも仕事の幅はさらに広がると予想されますが、現状では非常勤雇用が中心で不安定な立場で働く人も少なくないため、この先、雇用条件がどれだけ改善していくのかに注目が集まります。
スクールカウンセラーの就職先・活躍の場
学校など教育現場を中心に活躍
スクールカウンセラーの活躍の場は、児童や生徒が過ごす小学校・中学校・高校といった教育現場です。
文部科学省の取り組みによって、全国各地の学校にスクールカウンセラーを積極的に配置する動きが年々加速しています。
また、最近では大学にも専用の「相談室」を設け、スクールカウンセラーが配置されるケースが増えてきました。
昨今のスクールカウンセラーは、子どもたちはもちろん、教職員や保護者のメンタルケアにも携わるケースが増え、幅広い活躍が期待されています。
このほか、地震や津波などの自然災害、事故被害などが発生した場合にも、子どもの心理的な負担をケアする目的でスクールカウンセラーが派遣されることがあります。
スクールカウンセラーは、心理学の専門知識を生かし、教育現場以外でも心のケアを必要としている人を助けることができる職業です。
スクールカウンセラーの1日
非常勤の場合は契約内容によって1日の流れが異なる
スクールカウンセラーの雇用形態は、大きく分けると「常勤」と「非常勤」の2種類があります。
実際には非常勤で働く人が多く、その場合は週に1日~2日ほど、担当の学校へ出勤します。
「午前中だけ」「午後だけ」などの勤務形態になる日もあり、1日の流れは契約内容によって異なります。
以下は、小学校で働く非常勤スクールカウンセラーの一般的なスケジュールの一例です。
ただし、時間内で業務が片付かない日は残業をして対応することもあります。
関連記事スクールカウンセラーの1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
スクールカウンセラーのやりがい、楽しさ
子どもの心をケアできた実感が得られたとき
スクールカウンセラーの使命は「子どもたちの心のケアを通して、その健やかな成長を支えること」です。
思春期の子どもの心は非常にデリケートで、ささいなことで傷ついたり、自信をなくしたりしてしまうものです。
また、なかには家庭環境など複雑な事情を抱えている子どももおり、一筋縄では解決できない場合もあります。
しかし、スクールカウンセラーがそのような子どもに関わることで、その子の心が少しでもよい方向に向かったり、物事がポジティブに動き出したりしたときに、やりがいを感じられます。
関わった子どもが楽しそうに友だちと笑い合っているのを見たとき、悩みや問題を乗り越えてたくましく成長していく姿を目の当たりにしたときなどに、自分が役に立ったという実感を得られるでしょう。
スクールカウンセラーのつらいこと、大変なこと
子どもの心と真摯に向き合い、命を守る覚悟が必要
子どもたちが抱える悩みや不安は、クラス内の人間関係や友人関係、家庭問題、あるいは自身の性格や進路についてなど、さまざまです。
とくにデリケートなのはいじめ問題であり、これは場合によって担任やその他職員との慎重な連携が必要になります。
子どもの性格はさまざまであり、スクールカウンセラーに対しても100%本音を打ち明けるとは限りません。
しかし、どこかでSOSを出していることがあり、それに気づくことができなければ、最悪、命を落としてしまうような事件・事件に巻き込まれる可能性もあります。
スクールカウンセラーの仕事は、それだけ責任の重いものであり、また発達途中の子どもの将来を左右する重要な役割を担う存在であるといえます。
しかし、なかには限られた時間で物事の解決まで持っていくことが難しい場合があり、そこに苦悩を感じる人もいます。
スクールカウンセラーに向いている人・適性
子どもの気持ちに寄り添い、約束や秘密を守れる人
スクールカウンセラーとして大切なのは、関わる子どもたちの気持ちにしっかりと寄り添えることです。
相手が安心して本音で話せるような人柄を備えるために、頼もしさや誠実さ、正義感、明るさなど、さまざまなものが求められてきます。
日頃から嘘をつかない、裏切らないなどを心がけ、人との約束や秘密をきちんと守れるタイプの人であることも大事です。
なお、さまざまな心理職のなかでも、スクールカウンセラーの相談援助の場面は「教育現場」が中心となることから、小学校から大学生までの学童期から青年期までの発達過程にとくに興味・関心がある人に向いています。
教職員や保護者、医療機関と連携することもあるため、多くの人と接することに抵抗がなく、主体性のある人に向いている仕事だといえます。
関連記事スクールカウンセラーに向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
スクールカウンセラー志望動機・目指すきっかけ
自分自身が心の悩みで苦しんだ人も多い
スクールカウンセラーを目指す人は、自分自身が子どもの頃や学生時代に、さまざまな悩みを抱えていたと話す人が少なくありません。
あるいは、もともと内省的な性格で自分自身と向き合う時間が長く、自然と心理学に興味をもったことから、大学で心理学を学んでいくようなケースもあります。
心理の専門家として活躍できる場や領域は多様ですが、とくに「教育」への関心が強く、子どもたちの心のケアに携わりたいと考えたことが、スクールカウンセラーを目指すきっかけになります。
自身が学生時代にスクールカウンセラーのお世話になった経験があり、そのときの感じたこと、救われた気持ちなどから、スクールカウンセラーを志望する人もいます。
関連記事スクールカウンセラーの志望動機の例文・面接で聞かれること
スクールカウンセラーの雇用形態・働き方
小・中・高校では非常勤の雇用が圧倒的に多い
学校で働くスクールカウンセラーのほとんどは「非常勤」であり、1つの学校につき、1週間に1日~3日程度の出勤となることが多いです。
そのため、月曜はA学校、火曜はB学校…といったように掛けもちをして、毎日異なる学校に働きに行く人もめずらしくありません。
最近では少しずつ常勤雇用も増えつつありますが、公立の小・中・高校では非常勤雇用が中心となっています。
一方、私立の高校や専門学校、大学では、常勤職員としてスクールカウンセラーを配置しているところもあります。
それでも全体の求人数から見れば非常勤雇用が圧倒的に多く、不安定さを覚悟しながら、地道に経験を積んでいこうとする若手のスクールカウンセラーは多くいます。
スクールカウンセラーの勤務時間・休日・生活
雇用形態や契約内容によって勤務スタイルが異なる
スクールカウンセラーは非常勤で働く人が多いため、一般企業の正社員のように、毎日同じ職場で働くとは限りません。
いくつかの学校を掛けもちするケースがほとんどで、各学校との契約内容によって、勤務する時間帯や出勤数などにも違いが出ます。
基本的には残業はなく、事前に定められた時間内だけ働くことになります。
土日祝日は基本的に休みですが、学校によっては土曜日も出勤することがあります。
また、出勤時間に対して業務量が多い学校で働くと、面談記録など事務的な業務がなかなか進められず、時間外に仕事をする人もいます。
スクールカウンセラーの求人・就職状況・需要
教育委員会からの求人は秋頃にチェック
公立の小・中・高校で働くスクールカウンセラーは、1年契約の非常勤雇用が中心となっています。
求人が出る場合、募集要項が発表されるのはたいてい9~10月頃で、各自治体の教育委員会のホームページに掲載されます。
一方、私立学校や専門学校のスクールカウンセラーは、常勤雇用されるケースが多いことから、前任者が仕事を辞めない限りポストが空きにくく、求人が出回ることはまれです。
全体として志望者に対して求人が少なく、とくに首都圏のスクールカウンセラーは、臨床心理士や公認心理師の資格を取得していないと応募が難しい場合が多くなっています。
スクールカウンセラーの転職状況・未経験採用
心理学の専門知識を身につけないと転職は難しい
スクールカウンセラーは、専門的な勉強さえすれば、転職を目指すことも可能です。
実際に、臨床心理士の指定大学院に通うのは、高校からストレートで大学、大学院に進んだ若者だけではありません。
すでに医学博士を持っている人や、養護教諭として20年勤務してきた人、あるいは元看護師の人など、多様なキャリアを重ねている人も少なくありません。
つまり、社会人の転職先としてもスクールカウンセラーは人気の職業であり、別の仕事からの志望者も多いということです。
一方、まったく心理学や精神領域の専門知識や実務経験がない人が、未経験で転職するのは非常に厳しくなっています。
心理学とはまったく関連のない領域で働いていた人は、一から勉強をしなおすつもりで、転職準備に臨む必要があるといえます。
スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの違い
異なる専門家の立場から悩みを抱える子どもを助ける
最近では「スクールカウンセラー」と「スクールソーシャルワーカー」の両方の職業を配置する学校が増えています。
どちらの職業も、教育現場においては「心に悩みを抱える子どもを助ける」という点が共通しています。
スクールカウンセラーが、おもに心理カウンセリングなどを通して子どもの心のケアを担当するのに対し、スクールソーシャルワーカーは、おもに子どもの福祉面の環境を整えます。
ここでいう「福祉面の環境を整える」というのは、たとえば貧困家庭であれば生活保護を受けることをすすめる、親が病気であればヘルパーに家事を手伝ってもらうなどです。
スクールソーシャルワーカーは、社会福祉の制度に関する幅広い知識をもっており、その子が置かれている状況に応じて、どのような福祉制度を活用すればよいのかを検討し、提案します。
両者は一般的に必要とされる資格にも違いがあり、スクールカウンセラーは「臨床心理士」もしくは「公認心理師」を取得しますが、スクールソーシャルワーカーは「社会福祉士」を取得するケースが大半です。