作業療法士の需要・現状と将来性

作業療法士の現状

作業療法士は、かつて人材不足が懸念されたこともあって、国家は1990年代半ば頃から積極的に養成校の設置を推進し、現在では養成校の数は190校にのぼっています。

これに伴って、作業療法士の数も直近では75,000人弱にまで増加しており、人口に対する必要な人員数はほぼ充足しているとされています。

一方で、急速に資格保有者が増加した結果、作業療法士全体の年齢構成がかなり若年層に偏っており、経験不足・指導者不足などを背景とする人材の質の低下を指摘する声も聞かれます。

また、作業療法士は、同じリハビリ職である理学療法士と業務の棲み分けが完全になされているとはいえず、さらに社会一般における認知度も不十分であり、業務の重要性を理解していない人も散見されます。

作業療法士の現状は、職業としていまだ発展途上にあるといえるでしょう。

今後、作業療法士一人一人が、当事者意識をもってこれらの課題に取り組み、職業としての地位を向上させていくことが望まれます。

参考:厚生労働省 理学療法士・作業療法士の需給推計を踏まえた
今後の方向性について

作業療法士の需要

少し前までの作業療法士は、「身体障がい」「精神障がい」「発達障がい」のいずれかを手掛ける人がほとんどで、総合病院や精神科クリニックなど、医療業界からの求人が大半を占めていました。

しかし近年では、老人ホームや訪問看護ステーションなどの介護業界や、児童福祉施設などの福祉業界、特別支援学校や職場訓練校といった教育業界など、さまざまな業界からの求人があります。

なかでも、日本が本格的な高齢化社会を迎えるにあたって、廃用症候群などの「老年期障がい」に対処するリハビリに大きな注目が集まっており、介護業界からの作業療法士の需要は増加し続けています。

その一方、介護業界への就職を希望する人は少なく、とくに訪問リハビリの分野では、多くの事業所で人手不足となっています。

作業療法士の人員数は既に充足しているとされていますが、医療業界への人気が集中していることもあり、介護業界をはじめとして、実際の現場ではまだまだ足りていないのが実情です。

作業療法士の将来性

医療施設への就職は徐々に厳しくなりつつあるものの、今後も高齢者が増加し続けることを勘案すれば、作業療法士は少なくとも働き口に困るということは当面考えにくいといえます。

ただし、作業療法士は、年間5000人前後というかなりの急ピッチで資格保有者が増え続けており、もしもこのままのペースが維持されれば、そう遠くない将来に、飽和状態となることが懸念されます。

しかし、これまでも、作業療法士は時代とともにその活躍の場を拡大させてきました。

そして上述の通り、まだまだ発展途上にある職業ですので、多くの課題を抱える一方、多くの可能性も秘めているといえます。

作業療法自体も、非常に汎用性の高い治療法であり、脳卒中などによる半身不随を治療するための「川平法」など、新しい治療理論も日々生み出されています。

資格保有者が増え続けるなかにあっても、自身の努力次第で、新しい需要を掘り起こして安定的に働くことは十分に可能といえるでしょう。

作業療法士の今後の活躍の場

作業療法士の今後の活躍の場は、個々の保有スキルに応じて、より細分化されていく見通しです。

養成校のなかには、将来的に「人余り」となる事態を見越して、各業界で活躍できる高い専門性を備えた人材を育成するため、一部の内容に特化したカリキュラムを取り入れるところも増えています。

とくに、高齢者の健康寿命を延ばす「予防期」のリハビリは、介護現場の負担を軽減するため、そして増加し続ける社会保障費を抑制するために、最も作業療法士の活躍が期待される分野です。

これから作業療法士を目指すなら、漫然と作業療法を手掛けたいというのではなく、どんな人を対象に、どんなリハビリを手掛けたいかまで、明確に将来のビジョンを描いておくことが望ましいでしょう。

また、いずれかの施設に勤務するのではなく、独立開業して自身で事業を経営するという道もあります。

東日本大震災の際に、在宅療養を余儀なくされている多くの患者を支援するため、「社会起業家」として訪問リハビリや訪問介護事業を立ち上げた作業療法士の活躍は記憶に新しいところです。

リハビリの専門知識を生かして、起業する作業療法士は今後ますます増えていくものと思われます。