作業療法士のつらいこと・大変なこと・苦労

作業療法士のつらいこと・大変なこと

患者への説明が難しい

作業療法士は、「ADL」と呼ばれる、食事、更衣、移動、排せつ、入浴などの日常生活動作を要素として取り入れたリハビリを実施します。

訓練プログラムは明確な医学的根拠にもとづいていますが、一見しただけでは普段の生活動作と変わらず、目的を理解してもらうのに苦労することがあります。

そもそも、作業療法士は高次脳機能障害や認知症などをもつ患者を担当するケースが多いため、最初から理解してもらうハードルが高いという事情もあります。

患者によっては、「なんのためにこんな作業をやらせるのか」と怒って、まともにリハビリに取り組んでくれない人もいます。

しかし、患者にきちんと意図を汲んでもらわなければ、リハビリを行っても大きな効果は期待できないため、粘り強く、辛抱強く説得を繰り返すことが必要です。

訓練内容の説明に苦慮しやすいという点は、作業療法士ならではのつらさといえるでしょう。

常に自己研鑽が求められる

医療技術は日々めざましい勢いで進歩しており、リハビリの手技手法についても同様です。

このため、作業療法士は、ほかの医療職と同じように、常に勉強して自身の知識を最新のものに更新し続けることが求められます。

業務終了後にカンファレンス(症例検討会)や勉強会を頻繁に実施している施設も多く、また自宅での学習をこなさないといけないこともあり、分量が多いと勉強のために休日が潰れるケースもあります。

そうした自己研鑽は、自分の知識を増やして各患者に最適なリハビリを行うためにどうしても必要になることとはいえ、負担は決して軽くありません。

また、そうやって専門知識や技術を習得しても、給料などの待遇面に反映されるケースは少なく、努力を続けるモチベーションを保ちにくいという声も聞かれます。

作業療法士の悩み

作業療法士の多くが抱える悩みとして、職業自体の知名度がそれほど高くないことが挙げられます。

患者の家族や友人などに作業内容を説明する際も、なかなか理解されづらく、「理学療法士」と混同されることもよくあるようです。

さらに、施設によっては、同じ医療スタッフからもきちんと理解されていないケースも見られ、職場内での地位が低かったり、ほかの職種と同等の専門性が認められなかったりすることもあります。

とくに、老人ホームなどの介護施設では、医療職全般に関する知識に乏しい職員も珍しくないため、「お手玉や体操などをして遊んでいるだけ」と軽んじられることもあるようです。

知名度の向上は、作業療法士協会および作業療法士全体で取り組むべき、今後の大きな課題といえるでしょう。

作業療法士を辞める理由で多いものは?

介護施設の離職率は高め

作業療法士が職場を辞める理由として最も多いのは、患者やほかのスタッフなどとの人間関係によるものです。

医療施設より介護施設のほうが離職率は高くなりがちといわれます。

その背景には、介護施設のほうが高齢者が多く、コミュニケーションに苦労するケースが多いことが考えられます。

また、作業療法士は男性よりも女性のほうが多い職業であり、結婚や出産を機に辞めるという人も一定数います。

ただし、育児がひと段落した後は、再び職場に戻るという人がかなり多いようです。

作業療法士を辞める人は多い?

作業療法士はポジティブな理由で現在の職場を離れるケースも珍しくなく、「人間関係」に続いて離職する理由で多いのは「スキルアップを図るため」となっています。

たとえば新卒で整形外科クリニックに就職した人が、数年働いた後に脳卒中専門の病院に移るなど、作業療法士としてのスキルを深めるために、現在の職場と分野の異なる職場を選ぶケースが目立ちます。

育児などを理由に一時的にキャリアを中断する人や、スキルアップのために転職を繰り返す人が多い事情を勘案すると、作業療法士という仕事そのものを辞める人はかなり少ないといえるでしょう。