ドクターヘリパイロットとは? 年収や仕事内容、なり方も解説

ドクターヘリパイロットとは、医師看護師を乗せて現場に急行し、患者に救命医療を行いながら医療機関まで搬送する人のことです。

高い操縦技術と集中力が必要な職業で、未経験から目指すには、さまざまな条件をクリアする必要があります。

この記事では、ドクターヘリパイロットの仕事内容やなるまでのルート、年収、求人状況などをまとめて詳しく解説します。

ドクターヘリパイロットの仕事内容

ドクターヘリパイロットとは、航空機を操縦するパイロットの中でも、救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)を操縦する人を指します。

ここでは、ドクターヘリパイロットの仕事内容を説明します。

ドクターヘリを操縦する専門家

ドクターヘリパイロットは、救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)を操縦する専門家です。

ドクターヘリとは、救急医療のための機器を搭載したヘリコプターを指しています。

ドクターヘリパイロットの主な任務は、医師や看護師を乗せて現場に急行し、患者に救命医療を提供し、医療機関まで搬送することです。

ドクターヘリのパイロットが、報道ヘリや他のヘリのパイロットと大きく異なる点は、「今すぐ治療が必要な患者に医師を搬送する」という役割があることです。

パイロットはヘリを操縦して「フライトドクター(医師)」や「フライトナース(看護師)」を現場に送り、患者を医療機関まで届けます。

ドクターヘリパイロットの操縦技術は一刻一秒を争う救急医療の場において、大きな役割を果たします。

冷静な判断力が求められる

ドクターヘリパイロットの主な仕事内容は、以下の2つです

  • 現場からの要請を受け、医師や看護師、救命機材などを輸送する
  • 患者を安全に医療機関まで搬送する
  • ドクターヘリのパイロットの仕事は、いかに早く、いかに確実に、現場に到着できるか、患者さんを安全に医療機関に搬送できるかにかかっています。

    要請の連絡は突然入るため、いつでも出動できるように整備士とヘリの整備状況を確認し、その日の天候や気象の変化について確認することも大切な仕事です。

    また、飛ぶか飛ばないかの判断や、飛行ルートの決定はチームで行いますが、最終的にはパイロットが決定します。

    そのため待機中もヘリが飛べる状態にあるかどうか、気象状況をチェックしなくてはなりません。

    さらに、急行する現場には着陸が困難な場所もあり、足場が悪かったり狭かったりするため、高度な操縦技術と集中力が求められます。

    また、現場からの情報が正確でないこともあり、不確実性と緊張の中で冷静な判断力が必要です。

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    ドクターヘリパイロットになるには

    ドクターヘリパイロットになるには、操縦士としての特別なライセンスを取得する必要があります。

    さらに、ドクターヘリを運航する会社へ就職することが一般的なルートです。

    操縦士ライセンスを取得する

    ドクターヘリパイロットになるには、「自家用操縦士」と「事業用操縦士」の2つのライセンスが必要です。

    この取得には少なくとも1年半から3年、場合によっては5年程度かかります。

    ライセンスを取得するには、以下のようなルートがあります。

    1. 海外で自家用ヘリのライセンス取得後、日本で事業用のライセンスを取る
    2. 自衛隊を退官して民間のライセンスを取りなおす
    3. ライセンスの取れる大学に入りパイロットを目指す

    ただし、日本では自家用操縦士の取得基準が厳しく、長期間を要することが一般的です。

    一方、アメリカでは比較的短い期間で取得できる傾向があります。

    どちらの場合も、専門のスクールでの教育が必須であり、授業や教材の大半が英語で提供されるため、英語の習得が不可欠です。

    ライセンス取得にかかる費用は、日本国内で1600〜1900万円、アメリカで自家用操縦士のライセンスのみを取得すると1400万円程度とされています。

    ドクターヘリパイロットの派遣会社に就職する

    ドクターヘリは、基地病院が民間の航空会社(運航会社)に運航を委託しているため、パイロットや整備士はその会社から基地病院に派遣されます。

    そのため、ドクターヘリのパイロットになるには、ライセンスを取ることに加えてパイロットを派遣している会社に就職する必要があります。

    その後、ドクターヘリのパイロットに必要な条件である「総飛行時間1,500時間〜2000時間以上」を目指します。

    これには5年以上かかることが一般的です。

    また、日本航空医療学会のドクターヘリ講習会を受講する必要もあります。

    講習会にはパイロットだけでなく、フライトドクターやフライトナース、整備士なども参加しており、ドクターヘリの運用にかかわる基本的な内容について学んだり、実習を行ったりしていきます。

    そのほか、操作技術の維持を目的とした口述・実技による航空運送事業機長定期審査が年に1回、さらに半年に1回の航空身体検査もあります。

    ドクターヘリパイロットの資格・試験の難易度

    ドクターヘリパイロットには、自家用操縦士と事業用操縦士の2つの資格が必要です。

    これらのライセンスがなければ、仕事を行うことはできません。

    2つのライセンスの特徴
    • 自家用操縦士:一般人が飛行機やヘリを操縦するためのライセンス。収入を得ることはできませんが、人を乗せてフライトすることが可能
    • 事業用操縦士:「仕事」としてヘリを操縦するために必要なライセンス

    これらのライセンスは非常に高難易度とされています。

    パイロットのライセンスに関する詳細は、国土交通省のページで確認できます。
    →参考:国土交通省 パイロットになるには

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    ドクターヘリパイロットの給料・年収

    飛行機のパイロットの収入は高めで、年収1000万円以上を得ている人が多くいます。

    しかし、ドクターヘリのパイロットの給料は一般的なパイロットよりもやや低く、年収は約800万円から1000万円程度といわれています。

    なお、ヘリのパイロットには高度な技術や経験が求められるため、平均年齢が高く、50歳前後の方が多い傾向があります。

    年齢を考慮すると、若い頃のパイロットは上記の年収を下回る可能性があります。

    ドクターヘリパイロットには、収入への期待以上に、人命にかかわる責任ある仕事に対する熱意が必要といえるでしょう。

    ドクターヘリパイロットに向いている人・適性

    ドクターヘリパイロットには、長期間の学習をコツコツとこなせる忍耐力や計画性がある人、飛行を安全に行う集中力を持つ人が向いています。

    患者や乗員の命を預かるドクターヘリパイロットの仕事には、何よりもまず高い操縦技術が求められます。

    そのためには、スクールに通って専門的な知識と実技を習得しなくてはなりません。

    また、他のスタッフとの連携も重要になるため、コミュニケーションを大事にできる人も適性があります。

    ドクターヘリでは、救急隊などと話をし、フライトドクターやフライトナースをサポートするのもパイロットの仕事です。

    わからないことは積極的に聞き、情報交換を密に行っていくことで、患者さんの安全な搬送につながるのです。

    ドクターヘリパイロットの雇用形態・働き方

    ドクターヘリパイロットは、基本的に正社員として働きます。

    仕事はその性質上、激務になることが多いと考えておくほうがよいでしょう。

    医師や救急隊員と同様に、現場からの出動要請がいつあるか予測できないためです。

    ドクターヘリの出動件数は増加傾向にあり、2016年には全国で2万件を超えています。

    これは10年前と比較すると5倍にも上ります。

    一方で、パイロットの不足が深刻化しており、厳しいシフトでの勤務が避けられないケースも少なくありません。

    ドクターヘリパイロットの勤務時間・休日・生活

    ドクターヘリパイロットとして働く場合の勤務時間や休日は、勤務先となる航空会社の職務規定に準じます。

    大手航空会社では複数のドクターヘリパイロットがおり、早番や遅番などのシフト制勤務や交代制での休日が行われています。

    1日の実働時間は通常7.5時間から8時間程度で、週休2日が基本となります。

    ただし、急な要請に応じて出動する必要があるため、実際には定時の勤務や休日が確保できない場合もあります。

    ドクターヘリパイロットの就職状況・需要

    ドクターヘリは全国で56機(2023年3月時点)が運用されていますが、ドクターヘリパイロットの数は約150名ほどに過ぎません。

    そのため、就職先は非常に限られており、競争率が高い職種です。

    ドクターヘリパイロットには長年の経験が求められるため、50歳以上のパイロットが全体の60%以上を占めています。

    しかし、団塊の世代が定年を迎えることで大量のパイロットが引退し、業界は深刻な人手不足に直面しています。

    一方で、出動数は年々増加しており、需要が高まっているため、これからドクターヘリパイロットを目指す若い人にもチャンスは十分にあるといえます。

    ドクターヘリパイロットの転職状況・未経験採用

    ドクターヘリパイロットの求人募集は年間を通じて多くはありません。

    その理由は、働く場所自体が限られているためです。

    しかしながら、経験者が限られており、かつ各社ともパイロット不足に悩まされている現状ですから、パイロット経験・技術を生かした転職も十分に可能でしょう。

    未経験からドクターヘリパイロットに挑戦したい場合は、自家用操縦士の資格と事業用操縦士の資格、そして1500〜2000時間以上のフライト経験が必要です。

    転職先の候補はあまり多くないものの、団塊の世代の引退により、業界は深刻な人手不足に悩まされているのが現状です。

    操縦ライセンスなどの条件を満たしてさえいれば、採用される可能性は十分にあります。

    ドクターヘリパイロットの将来性・今後の見通し

    ドクターヘリパイロットが人気を集めている理由の一つは、「人の命を救うやりがいのある仕事」という点です。

    また、職業の安定性も大きなメリットとして挙げられます。

    経験者が少数であるため、一度パイロットになれば職を失う危険性もほとんどありません。

    さらに、災害や事故など救急医療を必要とするシーンが増えており、その結果、ドクターヘリの出動回数も増加しています。

    このような背景から、今後もドクターヘリパイロットの需要は高まっていくことが予想されます。

    「ドクターヘリパイロット」のまとめ

    ドクターヘリパイロットは、救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)の操縦を担当する仕事であり、高い操縦技術と集中力が求められます。

    未経験からドクターヘリパイロットに挑戦する場合、自家用操縦士の資格、事業用操縦士の資格、そして1500~2000時間以上のフライト経験が必要です。

    就職先は限られてはいるものの、業界として高齢化が進み、人手不足の会社も増えているため、ライセンスを取得すれば採用されるチャンスはあります。