教師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「教師」とは
学校で児童・生徒の学習面の指導を行い、豊かな心を育むサポートをする。
教師とは、おもに公立や私立の学校(小学校、中学校、高校、特別支援学校など)で、児童・生徒に対して学習指導や生活指導をする人のことです。
国語や数学、英語といった各教科を教えることのほか、集団生活や道徳面、部活動、進路などの指導にも携わり、児童・生徒の基礎学力を高めると同時に、思考力・判断力・表現力などを向上させる手助けをします。
教師になるには、まず教職課程のある大学などで教員免許状を取得したうえで、自治体や各学校が行う教員採用試験に合格し、採用される必要があります。
日常業務では、保護者対応や学校行事の企画・運営などの雑務も多く、多忙な日々となりますが、子どもたちの成長を間近で見られるやりがいがあります。
近年では地域によって教師不足が課題となっており、教育現場をとりまく多様な変化に適応できる熱意ある若手教師が求められています。
「教師」の仕事紹介
教師の仕事内容
児童・生徒への教科指導と学校生活のサポートをする
教師のおもな仕事は、学校(小学校、中学校、高校、特別支援学校など)で授業を行うことです。
各教科の指導を通して、児童・生徒の学力の基となる知識や技能を育み、その後の人生で必要になる思考力・判断力・表現力などを向上させる手助けをします。
同時に、生活面や道徳面の指導も行い、子どもたちが健やかに成長し、自立・自律できるよう、教育者として関わっていきます。
このほか、教師の仕事内容は学級経営や学校行事の企画・運営、部活動指導、進路指導、保護者との交流など多岐にわたります。
他の教職員とも連携しながら、学校が一体となって学校運営と子どもたちの学校生活のサポートを行います。
学校種に合わせた役割もある
教育は、大きく「家庭教育」「社会教育」「学校教育」の3つに分けられますが、なかでも学校教育は教育の中心となるものです。
ただ、同じ「教師」であっても、勤務する学校種(小学校、中学校など)によって子どもの成長度合いは異なるため、それぞれに合うサポートや指導をすることが大切です。
また特別支援学校の教師は、障害をもつ児童・生徒の日常生活のサポートを行うことも大事な役割です。
教師は、子どもたちの「生きる力」を養うことを使命としますが、細かな業務内容や役割は、学校種によっても少し異なるといえます。
教師になるには
教員免許状を取得し、教員採用試験への合格を目指す
学校で働く教師になるには、教員免許状を取得したうえで、教員採用試験に合格する必要があります。
教員免許状は、大学などで「教職課程」を履修し、指定された単位を修めることで取得可能です。
教職課程の後半には「教育実習」といい、実際の教育現場で教科指導や子どもたちとの触れ合いをする時間も用意されています。
なお、各学校種(小学校、中学校など)の教員免許はそれぞれ別のものであり、また中学校や高校では「国語」「英語」など専門科目別の免許状があります。
どの学校種の教員になりたいのか、中学校以上であればどの科目を指導したいのかを考えておきましょう。
公立は自治体の試験、私立は各学校の試験を受ける
教員採用試験については、公立学校の場合、都道府県や政令指定都市ごとに実施されます。
試験内容は自治体によって異なりますが、全体として既卒の受験者が多く、新卒での合格は決して簡単ではありません。
一方、私立学校では各学校が独自に試験を行っており、試験内容や合格基準は学校ごとに異なります。
教員採用試験に合格し、採用されることで、教師として働けるようになります。
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教師の学校・学費
教職課程のある学校は全国に数多く存在する
教職課程のある学校、つまり教員免許状が取得できる学校は、全国に数多くあります。
教職課程のある学校の種類は「大学」「短大」「大学院」の3種類があり、大学では「1種」、短大では「2種」、大学院では「専修」の免許状が取得できます。
どの免許状を取得しても教師には変わりありませんが、高校教員になるには「1種」か「専修」の免許が必要です。
また、公立学校の教師を目指す場合、自治体によっては2種免許では教員採用試験の受験ができないケースがあります。
さらに、私立学校でも教師の採用は4年制大学卒業者に限定する場合があるため、できれば大学に進学することをおすすめします。
教育について深く学びたいなら教育学部へ
教員免許状は、さまざまな学部・学科で取得できますが、「教育学」に関する授業の内容が濃かったり、教育実習の内容が充実していたりするなどの理由から「教育学部」を目指す人が多いです。
ただ、中学校や高校の教師を目指す人は、数学、英語など、将来教えたい科目について専門的に学べる学部に進学する人も多くいます。
教育学部以外に進学した場合は、通常の学部の講義以外に教職課程の講義を受けなくてはならないため、学校生活が忙しいものになりがちです。
学費の目安は国立の4年制大学であれば4年間で250万円ほど、私立大学であれば文系で330万円、理系で450万円ほどが相場とされています。
教師の資格・試験の難易度
教員採用試験の合格倍率は自治体によって異なる
教員免許状の取得自体は、教職課程できちんと学び、単位を修めれば、さほど難しいことではありません。
しかし、公立学校の教師志望者が受験する「教員採用試験」は、自治体によって採用数が大きく異なることもあり、合格難易度・倍率には差が出ます。
全体的な競争倍率で見ると、小学校は3~4倍、中学校や高校は7倍前後、特別支援学校は4倍前後になることが多いですが、とくに採用者数の少ない校種・教科は合格難易度が高くなりがちです。
既卒の受験者も多く、十分な試験対策が必須
教員採用試験は既卒の受験者が多いため、新卒で合格を目指す場合には、受験予定の自治体の過去問題や傾向を調べて、十分な対策をとることが大切です。
合格者全体の約半数は、臨時講師などでの教職経験者というデータもあり、決して簡単な試験ではないと考えておいたほうがよいでしょう。
現在は少子化が進み生徒数が減少傾向にあるため、今後は必要な教員数も減ることとなり、採用試験の難化や、合格率がさらに下がる可能性があります。
教師の給料・年収
民間平均よりやや高めだが公立教師に残業代は出ない
公立教師の教師の給料は、各自治体の「給料表」に基づく金額に沿って支給されます。
そのため、勤務する自治体や勤続年数、役職などによって金額が違ってきます。
各種手当についても、各自治体の条例に基づいた内容が適用されます。
教師全体の平均年収は450万円~650万円程度がボリュームゾーンとされており、民間の会社員の平均年収よりはやや高めです。
ただし、公立学校の教師の給料には給与月額の4%が「教職調整額」として含まれており、残業代は別途支給されません。
そのため、多くの業務を抱えて長時間労働をしている教師にとっては、決して業務量に見合う給料ではないという声もあります。
私立学校では、学校ごとの給与規定に沿って給料が支給されます。
教師が収入を上げていくには
自治体の給料表では、基本的に勤続年数が上がるほど給料も増えるかたちとなっています。
長く働けば働くほど、少しずつでも収入アップします。
また、指導教諭、主幹教諭、教頭、校長などの管理職になることで、役職ごとの手当もつきます。
なお、非正規の「非常勤講師」として働く場合には、給料は通常、時給制となります。
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教師の現状と将来性・今後の見通し
時代の変化にも柔軟に対応できる教師が求められる
2020年から小学校では「英語」が教科化、「プログラミング教育」も必修化されるなど、学校教育のあり方は時代ごとに少しずつ変化しています。
昨今は教師による一方的な指導でなく、児童・生徒自身が主体的に学びに参加する「アクティブラーニング」など、新たな教育スタイルも生まれています。
これからの教師には、教育現場をとりまく多様な変化に適応するために、常に自らの知識・技能を高める姿勢がますます求められるでしょう。
現状、教師の労働環境はやや厳しいという意見が目立ちますが、政府が掲げる「働き方改革」の取り組みが、教育現場でもスタートしています。
適切な労働時間の管理や業務内容の見直しなどによって、教師が安心して長く働き続けられる環境づくりが、今後さらに進んでいくものと考えられます。
教師の就職先・活躍の場
日本全国の公立学校や私立学校を中心に活躍
教師の活躍の場は、基本的に日本全国にある学校です。
学校種ごとの教師のおもな役割は下記の通りです。
・小学校:満6歳から12歳の児童に対し、基礎的な学習や生活を指導する
・中学校:基本的に教科担任として自分の専門科目をもって授業を行う
・高等学校:科目が中学校よりも細分化され、自分の担当教科で、より高い専門性をもった授業を行う
・特別支援学校:障害をもった児童や生徒に対して授業を行うとともに、日常生活のサポートも行う
さらに、下記のような分類もできます。
・公立学校:地方公共団体が設置している学校で、文部科学省が定める学習指導要領に基づいて教育を行う
・私立学校:私立学校法に基づく学校法人が設置する学校で、各校独自の教育方針に沿って教育を行う
教師の1日
児童・生徒と過ごす時間以外にも仕事をする
教師の1日のスケジュールは、勤務先となる学校種や役職、担当業務などで変わってきます。
また、担任を持っているか、部活動の顧問をしているかなどでも異なります。
基本的に、児童・生徒が学校で過ごしている時間帯は、子どもたちにつきっきりになることが多く、それ以外の時間を使って事務作業や会議などをします。
したがって、早朝や夕方以降に仕事をしている教師も多いです。
ここでは、公立中学校で働く教師の1日のスケジュール例をご紹介します。
教師のやりがい、楽しさ
子どもたちの成長と変化に深く関わっていくこと
教師にとって大きなやりがいのひとつは、子どもたちの変化や成長を感じられることです。
学校生活を送るなかで、少しずつ勉強ができるようになったり、難しい困難や課題を乗り越えたりして、次第にたくましい顔つきになるさまを間近で見られるのは、教師の喜びです。
また、教師は子どもの人格形成のサポートにも携わります。
たった一人の教師の教えが、その後の子どもの人生や進路に大きな影響を与えることも珍しくはありません。
責任のある仕事に就くプレッシャーはありますが、だからこそ、得られるやりがいも大きなものとなります。
自分の教え子が立派に成長し、巣立っていく姿を見るのは何度経験してもうれしいことです。
教師のつらいこと、大変なこと
業務量が多く、多忙な日々を送る人が多い
教師は、とにかく多忙な日々を送る人が多いです。
ただ授業を行うだけが教師の仕事ではなく、授業のための準備、テストやプリントの作成、採点といった事務作業にかける時間も膨大なものとなります。
さらに、保護者への対応や学校行事の運営、部活動の指導、生活指導、進路指導など、毎日やるべきことが山積みです。
決められた勤務時間内ではとても仕事が終わらないため、毎日遅くまで残業をしたり、残務は自宅に持ち帰ってまでやっていたりする教師も少なくありません。
「子どもたちのために」と思えば思うほど、一つひとつの仕事に丁寧に向き合いたくなり、結果的に忙しくなってしまうこともあります。
教職員や保護者とのコミュニケーション
教師は、子どもたちとの関わりのほか、他の教職員や子どもの保護者とのコミュニケーションの機会も多いです。
どれだけ子どもたちのことが好きでも、職場での人間関係がうまくいかなかったり、保護者から理不尽なことをあれこれ言われたりすると、ストレスを抱えてしまう人もいます。
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教師に向いている人・適性
どのような子どもにも平等に愛情を注げる人
教師は昔から人気がある職業ですが、優れた教育者になるのは簡単なことではありません。
児童・生徒たちは、個性や価値観、そして家庭環境や境遇も異なります。
そうした子どもたちと平等に向き合うには、教師自身が「教育」の本質と徹底的に向き合い、人格を磨かなくてはなりません。
子どもに対するやさしく温かな気持ちと、どの子どもにも平等に愛情を注げることは、教師にとって欠かせない要素です。
また、学校生活では日々さまざまな出来事やトラブルが発生します。
子どもたちの様子をしっかりと把握できる観察力や洞察力を持ち、優先順位をつけながら、同時にいろいろなことをこなせるスキルがある人に向いている仕事です。
教師志望動機・目指すきっかけ
影響を受けた教師の存在や、理想の教師を目指して
教師を目指す人の多くが抱いている気持ちは、「子どもが好きで、子どもと深く触れ合う仕事がしたい」といったものです。
また、過去に大きな影響を受けた先生の存在や、親など身近な人が教師であることがきっかけになるケースもあります。
中学校教師以上を目指す場合には、自分が得意な科目を子どもたちに教えることで、その科目を好きになってもらいたいという思いを抱く人も多いです。
「こんな先生になりたい!」という夢や希望は、教師を目指す原動力になるでしょう。
しかし、教師の仕事では、ただ子どもが好きなだけでは務まらない、大変な面や厳しさもあります。
教師の役割の本質をきちんと理解したうえで、目指す教師像を具体的に示せるようにしておくと教員採用試験などでも評価されやすく、教師になってからも正しい道を進めるでしょう。
教師の雇用形態・働き方
正規教員以外に常勤講師や非常勤講師として働く人も
多くの教師は、常勤の「正規教員」として雇用され、勤務しています。
これは、いわゆるフルタイムでの働き方で、民間企業の正社員と同じような働き方です。
正規の新任教員として採用された人は、担任を持って子どもたちとの日々の関わりを通し、ときに先輩教師からアドバイスや指導を受けたりしながら業務を覚え、一人前の教師を目指します。
授業以外の仕事(行事運営、PTA活動、部活動指導)などにも携わります。
キャリアを積むうちに役職がつき、管理職になる人もいます。
このほか、教師には「臨時的任用教員(常勤講師)」や「非常勤講師」の働き方もあります。
常勤講師は正規の教員と同じ労働時間で働き、担任をもつこともありますが、非正規の身分であり、正規教員とは給料などの面で差がつきます。
非常勤講師も非正規の教員で、フルタイム勤務はせず、受け持っている授業の時間だけ勤務するスタイルです。
教師の勤務時間・休日・生活
抱えている業務によっては勤務時間外に仕事をすることも
公立学校で働く教師の所定勤務時間は、一般的に8:15~16:45で、休憩を除いて1日当たり7時間45分、1週間当たり38時間45分と設定されています。
ただし、この時間通りに仕事をしている教師はそこまで多くないようです。
教師は多岐にわたる膨大な業務を抱えており、長時間労働になる人が少なくありません。
休日については基本的に土日・祝祭日・年末年始ですが、部活動の顧問をしている場合など、休日出勤をする教師もいます。
休暇制度に関しては、公立学校の教師の場合、ほかの地方公務員と同様に年次有給休暇、病気休暇、特別休暇、介護休暇が適用されます。
私立学校では、各学校が定める勤務時間や休日に沿って働きます。
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教師の求人・就職状況・需要
教師不足が課題だが、地域によって需要に差がある
近年、教師不足が社会問題のひとつとなっています。
教師の激務ぶりがメディアなどで話題になることが増え、以前に比べると、ポジティブな気持ちで教師になりたいと考える人が、やや減っているようです。
ただし、2020年以降は退職者の減少と少子化の影響によって教師の新規採用者数が抑えられ、教員採用試験の競争倍率は上昇していくことが見込まれます。
現状では、地域によって教師のなり手の数にはだいぶ差が出ています。
自治体ごとに採用人数にもばらつきがあるため、就職のしやすさは、地域によっても大きく異なると考えておいたほうがよいでしょう。
教師の転職状況・未経験採用
転職は可能だが、民間からの転職者はさほど多くない
教師は、社会人経験者が転職によってなることも可能です。
しかしながら、民間企業から教師に転職するケースは、まだそこまで多くないのが実情です。
教員採用試験の受験者は既卒者が多いものの、その大半は「教職経験者(国公私立学校の教員経験がある人)」です。
いわゆる一般企業の会社員など、教職とは異なる職業からの転職者はさほど多くありません。
しかし、なかには社会人経験を積むなかで教育に強い関心をもち、教師への転身を目指す人もいます。
なお、教師は転職で目指していく場合でも、新卒者と同じように「教員免許状の取得」と「教員採用試験の合格」は必須となるため、計画的な準備が必要です。
教師と教員の違い
教師は教え導く人、教員は学校で教育に従事する人
「教師」と非常によく似た言葉が「教員」です。
この2つは、同じような意味で使われることが多いですが、厳密にいうと、以下のような違いがあります。
・教師:知識を授け技芸を指導する立場にある人
・教員:学校と名のつく教育機関で教育に直接従事する人
(※新明解国語辞典 第八版より)
「教」の字には「教える」「導く」「告げる」などの意味が、「師」の字には「先生」などの意味があります。
教師の主要な活躍の場は学校ですが、それ以外に、たとえば「家庭教師」などのように、学校以外の場で働くことも考えられます。
一方、教員は、学校で勤務する人のことを指す言葉です。
そのなかでも学校事務などの職員とは異なり、教育に携わる仕事をする人のことを意味します。
ただし、実際のところは厳密に区分せず、どちらも同じように「学校の先生」という意味合いで使われることも多々あります。
教師に髪型や服装の決まりはある?
「常識の範囲内で」と決められる場合が多い
教師を目指すにあたり、多くの人が「髪型や服装には特別なルールや規則があるのか」ということが気になるでしょう。
結論からいうと、明確な決まりは設けられないことが多く、校長の考えの下、「常識の範囲内で」と言われるのが一般的です。
「常識」は人によって異なりますが、忘れてはならないのは、教師は児童や生徒に対して髪型や髪の毛の色、制服の着用方法について指導する機会も多くあるということです。
教師の側が奇抜な髪型やカラーリング、服装をしていたら、どれだけ子どもたちに注意をしても、まったく説得力がない言葉になってしまうでしょう。
また、教師は常に保護者や地域の人々からも見られる存在であり、身だしなみには人一倍気をつけなくてはなりません。
基本的な髪型や服装は?
通常、男性の教師は黒髪が原則で、女性は暗めの茶髪はOKですが、金髪やメッシュなどはNGとされます。
服装はTPOに応じたものとされ、スーツが基本ですが、オフィスカジュアルくらいは許される場合も増えています。
また、体育教員のようにほぼ1日中ジャージを着ているような教師もいます。