キュレーターと学芸員との違いは?欧米とは何が違う?
一方で、欧米では「キュレーター」と呼び、学芸員と同じような仕事をしていながらも、その役割や地位には違いが見られます。
この記事では、日本の学芸員と欧米のキュレーターの違いのほか、日本で「キュレーター」と呼ばれる仕事をしている人についても解説します。
キュレーターと学芸員の仕事内容や役割の違い
欧米には、世界的に有名な美術館や博物館が数多くあり、その施設内では日本の学芸員にあたる職員も働いています。
英語でその種の人を指す言葉が「キュレーター(curator)」です。
ただし、欧米のキュレーターは、日本の学芸員とは仕事の内容や社会的な立場が異なっていることもあり、「学芸員」の意味合いで「curator」を使うと、少し誤解が生じてしまうといわれています。
ここでは、キュレーターと学芸員の違いについて詳しく説明します。
ときに雑務まで広く担当する日本の学芸員
日本の学芸員は、美術館や博物館などの文化施設において、展示企画や収集、研究などさまざまな業務を担当します。
学術的な専門知識を持ち、展示物の選定や解説、学術的な調査や研究を行うだけでなく、来場者への教育プログラムの企画や実施も行います。
さらに、学芸員は美術や文化に関する専門家としての役割を担い、日本の文化財や芸術品を保存・普及するために貢献しています。
具体的な仕事内容は、学術的な研究調査や収納物の管理保存など、多岐にわたります。
ただし、業務のなかにはチケットの売り子や帳簿付けや電話連絡など、日常的な雑務に近いようなものも含まれてきます。
一部の施設では、雑務専門にアルバイトが雇われることもありますが、基本的に、日本の学芸員には美術館・博物館で発生する多くの仕事に対応することが期待されます。
ときには「雑芸員」と揶揄されることもあるほどに、「何でも屋さん」として働くのが日本の学芸員なのです。
専門性の高いキュレーター
欧米のキュレーターは、日本の学芸員と比較し、仕事の範囲がもっと限定的です。
具体的には、博物館や美術館などでの展示企画や収集、保存、研究などを主に担当します。
日本の学芸員と同じように学術的な専門知識を持ち、展示物の選定や解説、研究活動を行いますが、一般的には、より専門性の高い業務を任されます。
特定の分野への専門知識を活かした展示などを立案し、その企画のために中心人物として事務や技術職員などを取りまとめて、仕事を運営していきます。
また、欧米のキュレーターは、コレクションの管理や展示のデザインにも関わることがあります。
美術や文化に関する専門家としての役割を果たす一方で、施設の運営やマネジメントにも関与することがあります。
企画のコンセプトを考え、何を展示し、どんな風に仕上げるかを熟考し、そのために周りの人材も上手にマネジメントする専門家としての役割に特化しているのです。
もちろん展示の企画と進行などは日本の学芸員も行います。
しかし、日本の学芸員はそのための事務的な部分、収集研究などの技術的な部分、一般への説明啓蒙などの広報教育的な部分など、多くの分野に関わることが多いです。
欧米はそれらの職務が分離してそれぞれ細分化されているのに対して、日本は職務としてカバーされてる範囲が広いことが、両者の大きな違いといえるでしょう。
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キュレーターと学芸員の地位の違い
日本の学芸員と欧米のキュレーターは、同じような職務内容を持ちながらも、文化的・社会的な背景において異なる側面を持っています。
キュレーターと学芸員の地位に関する違いもしばしば指摘されるところです。
日本では博物館や美術館で働く人の多くが「学芸員」として活動していますが、欧米では「キュレーター」という呼称は館内での地位が高い人が名乗る傾向があります。
この違いは、欧米のキュレーターが展示企画者としての識見と能力に加えて、人材管理やマネジメント能力も求められるからです。
欧米では、これらの能力を兼ね備えた人物が初めて「私はキュレーターです」と自己紹介することが一般的です。
また、まだ経験の浅いキュレーターは「アシスタントキュレーター」と呼ばれることもあります。
一方、日本では階級や役職に関係なく、ほとんどの場合が「学芸員」を名乗るのが一般的です。
そのため、学芸員の地位や役割には、欧米のキュレーターと比べて、あまり明確な階級や役職が存在しない傾向があります。
日本でもキュレーターが活躍している
日本では、「キュレーター」という言葉が90年代に入ってから多く使われるようになりました。
美術館などの施設に所属する専門家は従来、「学芸員」と呼ばれていましたが、フリーランスで活動する専門家に対しては「キュレーター」という呼称が、しばしば使われるようになったのです。
現在では美術館に所属する学芸員も、そのまま「キュレーター」と名乗ることが一般的になってきています。
美術館でキュレーターとして活動するには、大学で学芸員資格を取得する道以外にも、企業やメディアの文化事業部、または企画会社などで経験を積むことが一般的です。
こうした場所での経験を通じてキュレーションのノウハウやコネクションを築き、独立に向けて準備をします。
また、一部の人は美術館で学芸員として働いた後に、フリーのキュレーターに転身することもあります。
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「学芸員とキュレーターの違い」まとめ
日本の学芸員と欧米のキュレーターは、専門性や具体的な業務の内容に違いがあります。
- 学芸員:美術館・博物館での幅広い業務(場合によっては雑務を含む)を担当する
- キュレーター:より専門性が高く、施設の運営やマネジメントなどを手掛けることもある
また、学芸員には役職や階級があまりないのに対し、キュレーターは経験を積んだ地位の高い人のみを指す傾向にあります。
近年は日本でもキュレーターを名乗って活動する人が増えており、美術に特化した専門家を指す事が多いです。