弁護士と司法書士の違い
弁護士と司法書士の仕事内容の違い
弁護士は、社会のなかで起こるさまざまな事件やトラブルについて、法律の専門家としてアドバイスを行い、必要があれば依頼者の代理人となって相手方と交渉したり、裁判で争ったりする仕事です。
これに対し司法書士は、弁護士と同様法律の専門家ではありますが、手掛けられる業務は弁護士より限られており、不動産登記や商業登記、供託業務などが仕事の中心です。
また、司法書士は、顧客から依頼を受けて事務手続きを代行することはできても、弁護士とは違って、訴訟を起こしたり、代理人業務を手掛けることができないという点も大きな違いです。
ただし、法務省が実施する研修を修了した「認定司法書士」については、簡易裁判所で行われる140万円以下の債務整理は、弁護士と同じように、代理人となって交渉や訴訟を手掛けることができます。
そのほか、借金や離婚、相続などに関する法律相談についても、弁護士・司法書士どちらも行うことが可能であり、双方の仕事内容には重複している部分も少なくありません。
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弁護士と司法書士のなる方法・資格の違い
弁護士になるためには、司法試験に合格した後に司法修習を受け、弁護士会に資格を登録することが必要です。
しかし、司法試験を受けるためには、4年制大学を卒業した後に法科大学院に進学し、数年間の課程を修了するか、司法試験予備試験に合格する必要があり、どちらを選ぶにしても長い道のりを要します。
一方、司法書士になるには、試験に合格して規定の研修を受け、司法書士会に登録するという一連の流れは弁護士と似通っているものの、試験に受験資格はなく、誰でも受けることができます。
実質的に司法書士試験が唯一の関門であり、複数のステップを経なければならない弁護士と比べると、資格取得への道はシンプルです。
なお、司法書士の場合、裁判所事務官や検察事務官として10年以上の実務経験を積むと、無試験で資格を取得することが可能です。
弁護士と司法書士の資格の難易度の違い
司法試験と司法書士試験の合格率を比較すると、前者が25%前後、後者が3~4%前後となっています。
しかし、この合格率の差は上述の通り受験資格の有無が大きく影響しており、司法試験を受験できる人がごく一部の法律既修者に限られる一方、司法書士試験は誰でも受験可能です。
合格率とは反対に、試験そのものの難易度は司法書士試験より司法試験のほうが上であるのは間違いありません。
また、弁護士になるには、司法試験の前に大学入試と法科大学院入試、あるいは合格率3%前後の難関である予備試験にも合格しなければならないため、資格の難易度としては弁護士のほうがかなり高いでしょう。
ただし、あくまで双方を比較すれば弁護士のほうが難しいというだけで、司法書士試験もきわめて難関であることには変わりなく、合格までには数年間にわたる努力を要するケースが一般的です。
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弁護士と司法書士の学校・学費の違い
弁護士になるための学校・学費は、法科大学院ルートと予備試験ルートのどちらを選ぶかで大きく変わります。
法科大学院ルートの場合、4年制大学に通った後、法学部を卒業した人については2年間、それ以外の学部卒の人については3年間の課程を修了しなければなりません。
公立か私立かで学費は異なりますが、一般的には1年間でおよそ100万円ほどの費用が目安とされており、弁護士になるには最短でも約600万円ほどかかる計算になります。
一方、予備試験ルートの場合、試験に学歴などは関係ないため、どの程度学費がかかるかは自分次第です。
ただ、試験の難易度が非常に高いことから、大抵の人は民間の予備校などに通って数年にわたって対策授業を受けて勉強に励んでおり、学費は1年につき数十万円ほどかかります。
さらに、大学入試や院試、予備試験、そして司法試験本番のすべてに一発合格できるとは限りませんので、浪人時の費用も考慮する必要があるでしょう。
これに対し、司法書士になるには、司法書士試験に合格しさえすればよく、受験資格もありませんので、学習方法にはさまざまな選択肢があるものの、弁護士より経済的負担は軽いでしょう。
民間の予備校に通う方法もあれば通信教育で勉強する方法もあり、一例として予備校の費用をみれば、年間20万円~60万円ほどが相場となっています。
弁護士と司法書士の給料・待遇の違い
弁護士の年収は、法律事務所や企業などに勤務している場合、年収800万円~1000万円ほどが相場とされています。
独立開業すると、平均年収はさらに上昇して1400万円ほどになり、大きな事務所を経営している人のなかには、年収数千万円~1億円を稼いでいる人もいます。
これに対し司法書士は、司法書士事務所や法務事務所に勤める場合、年収250万円~600万円ほどが相場であり、キャリアや勤務先による差が大きいものの、弁護士ほど高給が得られるわけではないようです。
独立開業した場合でも、年収1000万円に達する司法書士は少数派で、独立弁護士のほうが稼げる可能性としては高いでしょう。
ただし、上記はあくまで平均値であり、弁護士・司法書士とも、実際の収入は個人によって大きな開きがあります。
とくに弁護士は、近年資格取得者が急増している影響もあって、稼げる弁護士と稼げない弁護士の二極化が進行しており、年収300万円に満たない弁護士も一定数いるようです。
平均値についても、一部の高所得者が全体を大きく押し上げているという要因もあり、弁護士全体のなかで最も受け取っている額が多い「中央値」は、600万円前後であるという統計もあります。
弁護士と司法書士はどっちがおすすめ?
弁護士も司法書士も、きわめて取得が難しい法律系難関資格ですが、取り扱うことのできる業務の範囲が異なります。
代理人業務についてみれば、弁護士はあらゆる案件を手掛け、依頼者をトータルサポートすることができる一方、司法書士はたとえ認定司法書士となっても、扱える案件・金額には大きな制限があります。
一方、法務局に対する不動産登記や商業登記などについては、制度上は両資格とも手続き可能ではあるものの、実際には棲み分けがなされており、弁護士がそれらの業務を手掛けるケースはほぼありません。
したがって、幅広い案件を取り扱い、訴訟業務や代理人業務を手掛けたい人は弁護士が、登記手続きや供託業務など、特定の業務に特化した専門家になりたい人は司法書士が、それぞれ向いているでしょう。
また、経済的側面に目を向けるなら、高いコストをかけてでも将来的に大きく稼ぎたいなら弁護士が、そこまで高収入は要らないから、資格取得にかかるコストを抑えたいなら司法書士が、それぞれおすすめです。