鳶職人に事故は多い?

鳶(とび)職人に事故は多い?

多くの人が想像するように、鳶職人はかなり危険を伴う職業であり、仕事中になんらかの事故にあう確率も決して低くありません。

鳶職人の生命保険の加入金が、パイロット、ボクサーなどと並んでトップランクであることからも危険度がわかります。

危険度の要因としては、まず鳶職人の仕事は高所での作業が非常に多いということが挙げられるでしょう。

高所は、足場が制限されてバランスを取りにくいうえ、ほんの小さななミスがすぐ重大事故に直結します。

残念ながら、死亡事故もいまだに発生しています。

また、高所だけでなく地上での作業も、鉄骨の下敷きになるなど、さまざまなリスクであふれています。

このため、その日の仕事を始める前に、どんな危険があるのかを職人全員で確認しあう「KY(危険予知)ミーティング」を行うことが、どこの現場でも徹底されています。

安全管理への取り組みもあって、危険度は年々減少しつつあるものの、それでも鳶職人が一般の職業よりはるかに危ないことは変わりありません。

鳶職人は、いついかなるときでも緊張感を保ち、神経を集中させて作業にあたることが大切です。

以下では、鳶職人に多い事故やけがなどについて、いくつかご紹介します。

鳶職人に多い事故、けが、病気

転落

鳶職人が高いところに上る際は、ロープとフックが一体となった「安全帯」と呼ばれる専用の装備を身につけることが規則となっています。

設営済の足場など、しっかりと固定された支持物にフックをかけ、それと自分自身の身体をロープでつなぎます。

安全帯は、鳶職人にとって、文字通りの「命綱」です。

しかし、慣れや油断、あるいは作業を急ぐなどの理由で、安全帯の使用がおそろかになるケースもあります。

そこに、突発的な強風にあおられる、出しっぱなしの工具につまずく、雨で滑ってバランスを崩すなど、別の要因が重なったとき、落下事故が発生します。

2018年には、まだ10代の鳶職人が落下事故によって死亡しましたが、そのときは安全帯を装着していなかったうえ、たまたま筋交いを外していた足場に体重をかけたことが原因でした。

転落事故を起こさないためには、どんなに仕事が忙しくても、きちんと安全帯の使用を徹底することを、まず第一に考えるべきです。

なお、こうした危険性を考慮して、18歳未満の人が高所作業をすることは法律で禁止されています。

熱中症

鳶職人に限らず、屋外で働く人が最もかかりやすい病気が熱中症です。

夏の炎天下での作業は、自分が思っている以上に短時間で体力を消耗しやすく、大変危険です。

熱中症になると、頭痛や吐き気、めまい、筋肉の痙攣(けいれん)などが起こり、とても仕事どころではありません。

とくに高所での作業中に熱中症にかかった場合の危険性は、いうまでもないでしょう。

体力に自信があっても決して油断することなく、こまめに休憩し、水分を補給しながら慎重に働くことが大切です。

コンディションが悪いと熱中症にかかりやすくなりますので、バランスのよい食事や十分な睡眠など、日常生活から気を配ることも必要になるでしょう。

感電

意外に思う人もいるかもしれませんが、鳶職人の労災事故において、落下と同じくらい多い事故が感電です。

足場は、強度や組み立てやすさの観点から、鉄やアルミなど、電気を通しやすい金属製品が使用されます。

手・足ともに、金属の足場に触れている時間が長い鳶職人は、非常に感電しやすいといえます。

とくに夏場は汗をかきやすいため、自分の汗で感電のリスクがさらに高まるでしょう。

鳶職人は、こまめにタオルで汗を拭いたり、絶縁のゴム長靴やゴム手袋をつけたりして、感電事故の防止に努めています。

材料の受け渡し時のけが

地上での作業で気を付けなければならないのが、足場などの材料を受け渡すときです。

足場材はひとつひとつが非常に重いため、高所で作業する職人から受け取るときに、手の甲にぶつけて骨にヒビが入ったり、顔にぶつけて歯が欠けたり、手のひらに深い切り傷を負ったりすることもあります。

また、地上から投げ上げたとき、高所で作業している人がキャッチに失敗して、上から部材が降ってくることもあります。

こうした事故を防ぐためには、職人同士でひんぱんに声をかけあい、意思を確認しなければなりません。

あらかじめ次の指示を予測し、先回りして材料などを準備しておくことで、作業をスムーズに行うことも大切です。

材料の受け渡し時は、自分だけでなく、ほかの職人も巻き込んでしまう可能性が高いため、とくに注意する必要があります。