鳶職人が使う道具・服装の特徴

鳶(とび)職人が使う道具

鳶口

鳶口(とびくち)は、長さ1.5m~2mほどの木製の棒の先に、鳥のくちばしのような形状をした鉄製の鉤(かぎ)が付いた道具です。

木材を引っかけて運搬したり、木造家屋を解体したりするために用いられます。

江戸時代、火事の際の消火活動を手掛けていた「火消し」と呼ばれる職業が、鳶職人の由来といわれています。

火消は、鳶口を片手に高所を飛び回っていました。

消火技術の低かった江戸時代では、周りの建物に火が燃えうつるのを防ぐことが最優先されました。

そこで、手早く建物を解体できる鳶口が重宝されたのです。

現代の鳶職人が鳶口を使用する機会は多くありませんが、その道具名は職業名に受けつがれています。

ラチェット

鳶口に代わって、現代の鳶職人の必須道具となっているのが、ラチェットです。

ラチェットは、ラチェットレンチとも呼ばれる長さ20cmほどの金属製の工具で、ボルトを締めるのに用いられます。

内部は歯車によって一定方向にしか回らない構造となっており、反復運動でボルトを回すことができます。

足場や鉄骨を組み立てる際には、ひとつひとつの材料を複数のボルトで固定していくことが必要であり、ラチェットは手放せない道具のひとつです。

安全帯

安全帯は、胴体に巻きつけるためのベルト、支持物に引っ掛けるフック、そしてベルトとフックをつなぐロープが一体となった保護具です。

高所作業中は、この安全帯とヘルメットを装着することが義務づけられており、落下などの事故やケガを防ぐことができます。

安全帯は、高所で働くことが多い鳶職人にとって、文字通りの「命綱」です。

なお、2018年の労働安全衛生法改正以降は、安全帯の名称は正式には「墜落制止用器具」に変更されました。

肩・胸・腰・脚をベルトで支持する「フルハーネス型」の使用が義務化されています。

スケールと水平器

スケールは長さを測る道具、水平器は水平を取るための道具です。

足場や鉄骨がゆがんでいたり欠けていたり、何らかの不備があると、自分だけでなく他の職人や作業員の安全をおびやかすことになります。

そのため、これらの器具を使用して長さや傾きを計測しながら、慎重に作業を進めます。

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鳶職人の服装の特徴

ニッカポッカ

鳶職人が仕事中に着る服装は、一般的には「作業着」や「鳶服」、「鳶装束(とびしょうぞく)」などと呼ばれ、鳶職人の間では「ゴト着」と呼ばれます。

鳶職人は夏場でも長袖を着ていたり、リストバンドを巻いていたり、さまざまな特徴があります。

そのなかで最もわかりやすいのは、ニッカポッカというダボダボのズボンです。

ニッカポッカは、太もも周りが風船のようにふくらんでいるのが特徴です。

すその長さはかなり短く、ひざ下をひもでくくって履きます。

このような特殊な形状をしている理由はさまざまです。

足を上げやすい、膝をまげやすい、汗をかいても肌にはりつかない、足首を締めて血流をよくし、むくみを防ぐなどが理由です。

ハタハタと風になびくことで、高所作業中に風の強さをはかったり、突起物に布がふれて感知するセンサーのような役割を果たしているという説もあります。

メーカーや柄、形状などにこだわりのある職人も多く、オーダーメイドするケースもよく見られます。

経験が深く、技術の高い職人ほど、濃紺色を好む傾向にあるそうです。

手甲

手甲(てこう・てっこう)は、手首から手の甲部分までを布で保護する装身具です。

リストバンドと同じように、汗が手にたれてくるのを防いだり、額の汗を拭ったりして、汗による感電の事故を防ぐという目的があります。

また、動脈などの大事な血管が集中している手首を守る、袖が何かに引っかからないようにする効果もあります。

鳶職作業着の専門店であり、大正時代から続く「東京種田」の手甲は、機能性・デザイン性にすぐれた商品として、職人の人気を集めています。

安全靴

安全靴は、足に重いものが落下してもケガをしないよう、指先に鉄製などの固いプレートが入った靴です。

近年は有名スポーツメーカー各社も安全靴を製造しており、軽くて丈夫で、見た目も普通のスニーカーとほとんど変わりありません。

鳶職人の足元というと、かつては二股(ふたまた)の足袋(たび)にゴム底がついている「地下足袋(じかたび)」が主流でした。

地下足袋は、素足に近い感覚で、手のように足裏のでこぼこを感じることができるうえ、踏ん張りが効きやすい、バランスを取りやすいなど、数々のメリットがあります。

しかし、安全上の問題からゼネコンなどの大手企業で禁止され、安全靴に取って代わられました。

地下足袋は徐々にその姿を消しつつあります。