食品衛生監視員の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介

食品衛生監視員の仕事とは

食品衛生監視員とは、食品衛生に関する監視・指導を行う技術系の公務員で、通称「食監(しょっかん)」と呼ばれる専門職です。

食品衛生法などの法令に基づいて、輸入食品や国内に流通している食品が安全であるかどうかを監視し、輸入者や食品事業者に対して食品の衛生に関する指導を行います。

「食品衛生のプロ」として、国民の食の安全と安心を守る仕事です。

国および保健所を設置する自治体には、必ず食品衛生監視員の資格を持つ人を置くことが義務づけられており、私たちが口にする食品や食材を日々厳しくチェックしています。

食品衛生監視員は、厚生労働省が管轄する検疫所などに配属される「国家公務員」と、各地方自治体の保健所などに配属される「地方公務員」の2種類に分けられます。

国家公務員として勤務する場合は、空港や港湾などの検疫所で、食品を海外から輸入する際にチェックをする輸入食品監視業務、病原菌や寄生虫、添加物などの検査業務、海外から訪れる船や飛行機、それに乗務している人への検疫業務などを行います。

地方公務員として勤務する場合は、各自治体の保健所などに所属して、飲食店など食品を扱う営業施設の許可事務、そうした施設に対する監視と指導、食中毒などの調査、流通食品や加工食品の検査、食品に関する苦情や相談への対応などを行います。

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食品衛生監視員の業務の内容

検疫所での業務内容

現在、日本には海外から毎日大量の輸入食品が届いています。

全国の主要な空港や港湾などに設置された検疫所で、海外から持ち込まれた食品の監視や検査などを行うのが食品衛生監視員の役目になります。

検疫所での業務は、大きく以下の3種類に分けることができます。

輸入食品監視業務

食品などを海外から輸入する際に必要となる「食品等輸入届出書」を受理し、食品衛生法に適合しているかを審査します。

検査が必要と判断された場合は行政検査を行い、また多種多様な輸入食品の食品衛生上の状況を幅広く監視する目的で、「輸入食品監視指導計画」に基づくモニタリング検査のためのサンプリングも行います。

検査の結果、食品衛生法に違反していることが判明した場合は、輸入者に対して、廃棄・積み戻しなどの措置をとるよう指導を行います。

さらに輸入者や関係事業者に対し、食品等の輸入手続きや検査制度、日本の食品添加物や残留農薬等の規制に関する情報の提供も行います。

試験検査業務

精密機器を用いて、輸入食品のモニタリング検査などの試験分析や感染症に関する検査を行います。

検査業務には微生物学検査と理化学検査があり、食品が病原微生物や寄生虫によって汚染されていないか、または残留農薬や残留動物用医薬品、添加物、有毒有害物質などが含まれていないかを検査します。

また検疫実施時に検疫感染症に感染した疑いのあるヒ卜から採取した検体と、港湾衛生業務で捕獲した媒介動物などの検体について、病原体検査を行います。

検疫衛生業務

海外から来航する船舶や航空機、またその乗組員や乗客に対して検疫を行い、国内に常在しない感染症の病原体が海外から侵入することを水際で防止します。

検疫感染症に感染している患者を発見した場合には、隔離・停留・消毒などの防疫措置を行います。

そのほか、感染症を媒介するねずみ族や蚊族などの海・空港での生息状況調査や病原体保有検査を実施し、動物からヒトに感染する動物由来感染症の侵入を防止するために、動物の輸入届出に対する審査なども行います。

保健所での業務内容

保健所は地域の衛生環境の向上をおもな業務としている行政機関で、全国各地に設置されています。

保健所で働く食品衛生監視員の業務は、以下の5種類に分けることができます。

飲食店などの営業施設の許可事務

飲食店の営業や食品の製造・販売をする場合に必要となる「営業許可」や「届出」のための実地調査を行います。

食品衛生法などに基づいて営業施設の設備が許可基準をクリアしているか厳しくチェックし、最終決定を行います。

営業施設に対する監視と指導

許可を出した営業施設に立ち入り、監視、指導、調査、検査などを行うほか、食品が基準どおりに製造されているか、温度管理がきちんと行われているか、さらに施設や設備の衛生状況についての監視や指導を行います。

なお、食品衛生監視員には、試験検査を行うために、必要最小量の食品や添加物などを無償でサンプリングする権限も与えられています。

食品の検査

飲食店などの営業施設からサンプリングした食品の検査を行い、食品衛生法で定められた基準や規格が遵守されているかの確認を行います。

基準に違反していることがわかった場合には、販売禁止や改善命令などの処分を行います。

食中毒などの調査

食中毒や食品による事故が発生した場合には、関係者や医師の協力を得て調査を行い、原因となる食品の販売を禁止したり、食中毒を起こした施設の営業を停止するといった行政処分を行います。

さらに被害拡大防止と再発防止のための措置を行います。

食品に関する苦情や相談への対応

一般市民から、流通している食品に関する苦情や相談が寄せられた場合は、その原因の調査や再発防止対策を行います。

また食品関係営業者に対して講習会などを行い、食品衛生に関する知識や技術の普及に努めます。

食品衛生監視員の役割

日本に流通する食品は約6割を海外からの輸入品に依存しており、今や輸入食品なくして国民の食生活は成り立たないものとなっています。

輸入食品には品質面や安全面でリスクもありますが、「食品衛生のプロ」である食品衛生監視員が空港や港でしっかり監視・指導をしてくれているおかげで、国民は安心して食事をとることができます。

飲食によって生じる危害の発生を未然に防ぎ、国民の健康と食の安全・安心を確保することが食品衛生監視員に与えられた大きな役割です。

また飲食店などから検査のために無償で食品などを収去することは食品衛生監視員のみに認められた権限であり、食品衛生法に違反していた場合は販売禁止や改善命令などの行政処分を行うことができます。

さらに一般市民からの食に関する苦情や相談にも対応するなど、食品衛生の分野における警察的役割も担っています。

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食品衛生監視員の勤務先の種類

食品衛生監視員は厚生労働省に所属する国家公務員と地方自治体に所属する地方公務員の2種類に分けられ、どちらに所属するかよって勤務先も異なります。

国家公務員として勤務する場合は、おもに空港や港湾にある検疫所や検疫検査センターに配属されます。

検疫所は厚生労働省が所管する国の機関で、全国の主要な空港・海港に、13ヵ所の本所のほか14ヵ所の支所と83ヵ所の出張所が設置されています。

また厚生労働本省や全国7ヵ所にある地方厚生局などの部署に検疫所から出向して勤務することもあります。

一方、地方公務員として勤務する場合は、採用試験を受けた都道府県などの保健所や広域を担当する健康安全研究センターなどに配置されます。

保健所とは、地域住民の健康や衛生を支えるため、地域保健法に基づき都道府県、政令指定都市、中核市などに設置されている公的機関で、全国で469ヵ所あります。(令和2年度現在)

また各都道府県、政令指定都市などの本庁で、食品衛生行政に関する業務を担当している食品衛生監視員もいます。

このほかに日本各地にある卸売市場の検査所で監視指導や試験検査を行う場合もあり、食品衛生監視員の活躍の場はさまざまです。

平成30年度時点では、全国の都道府県、政令指定都市、中核市、保健所設置市、特別区には約8,400人の食品衛生監視員がおり、厚生労働省(検疫所を含む)でも約400人が活躍していると発表されています。

参考:全国保健所長会(保健所設置数・推移)
参考:厚生労働省 平成30年度衛生行政報告例 第5章

食品衛生監視員の仕事の流れ

食品衛生監視員の業務にはさまざまなものがありますが、ここでは具体例として、自治体に設置された保健所などで、食品製造施設における衛生監視業務を行う場合の流れを紹介します。

1.監視機材などの準備

食品製造施設に入る前に、監視の目的に合わせて中心温度計や検査キットなど監視機材を準備します。

また検査のために原材料や製品を採取する場合は、採取機材のほか滅菌容器、耐熱容器、保冷バッグなども準備します。

2.事前打ち合わせ

施設に入ると、品質担当者に食品製造状況や衛生管理状況などの聞き取り調査をし、必要に応じて製造記録や衛生管理に関する記録などを確認します。

3.製造施設への立ち入り監視

施設全体を歩きながら、施設、設備、機械、器具、原材料、添加物、表示ラベルなどの管理状況を監視します。

また食品の取り扱い、作業工程、従事者の動きなどの観察も行います。

4.収去

衛生状況の確認のため、製品や中間製品、原材料、食品添加物、包装用資材などを検査に必要な量だけ採取します。

5.衛生指導

施設監視の後、観察結果をもとにして衛生管理状況を評価し、必要があれば課題を提示して衛生指導します。

収去検査などの検査結果によりさらに衛生指導が必要な場合は、再度施設に立ち入り、実現可能な改善策を協議・指導し、後日効果の確認を行います。

6.違反措置

監視や検査の結果、法令などへの違反が発見された場合は、すみやかに調査を行い、回収などの必要な措置を行います。

食品衛生監視員と関連した職業

食品衛生監視員と似たような職業に「食品衛生管理者」があります。

いずれも「食品衛生」に深く関わる仕事ですが、仕事内容や活躍の場に違いがあります。

食品衛生監視員は飲食店などの営業施設の立ち入り検査や指導、輸入食品の監視業務などを行うことがおもな仕事です。

一方、食品衛生管理者は乳製品や食肉製品などの食品・添加物の製造・加工施設における衛生管理をおもに行います。

また食品衛生監視員が厚生労働省が所管する検疫所や各自治体の保健所などに配属される「公務員」なのに対して、食品衛生管理者は食品メーカーや食品の製造加工工場など民間企業に勤める「会社員」という立場になります。

どちらも「任用資格」であり、資格を取得後、職務に任命されて初めてその職業名を名乗ることができるようになります。

食品衛生監視員と食品衛生管理者の違い