司法書士と弁護士の違い
「司法書士」と「弁護士」は、どちらも、律を取り扱う国家資格が必要です。
しかし、司法書士業務のすべては弁護士業務に内包されているといえ、弁護士のほうが業務の幅が広いです。
この記事では、司法書士と弁護士の違いについて解説します。
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司法書士と弁護士の仕事内容の違い
- 司法書士:不動産登記や商業登記に関する手続きについての代理、法務局や裁判所に提出する書類の作成、そしてそれらの業務に関する相談対応など
- 弁護士:登記などを含めたありとあらゆる法律事務や法律相談を受け付けることが可能で、手掛ける訴訟などについても金額的な制限もなし
司法書士の仕事は、不動産登記や商業登記に関する手続きについての代理、法務局や裁判所に提出する書類の作成、そしてそれらの業務に関する相談対応などです。
また、法務省が実施する所定の研修を受けて認定された「認定司法書士」については、弁護士と同じように、簡易裁判所における訴訟手続きや依頼人の代理業務を行うことが可能です。
ただし、認定司法書士が取り扱える案件は、紛争の目的価額が140万円を超えないものに限定されます。
これに対し弁護士は、登記などを含めたありとあらゆる法律事務や法律相談を受け付けることが可能で、手掛ける訴訟などについても金額的な制限はありません。
司法書士・弁護士どちらも、法律を取り扱う国家資格であることは共通していますが、司法書士業務のすべては弁護士業務に内包されているといえます。
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司法書士と弁護士のなる方法・資格の違い
司法書士になるためには、基本的に司法書士試験を受けて合格した後、所定の研修を受けて「司法書士会」に登録することが必要です。
また、裁判所事務官や検察事務官を10年以上勤めると、十分な法律知識を備えているとみなされるため、試験を受けることなく司法書士資格が得られます。
これに対して弁護士になるには、4年制大学の法学部などに進学することが第一歩です。
大学卒業後、院試を受けていずれかの法科大学院に進み、2年間または3年間、法律について集中的に勉強します。
そして法科大学院卒業後に受けられる司法試験に合格し、その後に最高裁判所で実施される「司法修習」を受け、「弁護士会」に登録すると、弁護士として働けます。
弁護士は、検事、裁判官と並ぶ「三大法曹資格」のひとつであり、司法書士と比べると、資格を得るためには複数のステップを踏まなくてはなりません。
司法書士と弁護士の資格の難易度の違い
- 司法書士試験:毎年の合格率は3%~4%前後で推移
- 司法試験:全体の平均合格率は25%前後
司法書士試験は、毎年の合格率は3%~4%前後で推移しており、非常に難易度の高い試験として知られています。
これに対し司法試験の合格率は、どの法科大学院を卒業したかによって合格率はかなり開きがあり、全体の平均合格率は25%前後です。
ただしこの数字は一概に比較できるものでなく、司法書士試験に受験資格がなく誰でも受けられるのに対し、司法試験を受けられるのは、法科大学院で数年間にわたって法律の勉強を行ってきた学生だけです。
実際の試験の難易度は、司法試験のほうが司法書士試験よりはるかに難しいといえるでしょう。
さらに、司法試験の受験資格を得るためには、まず法科大学院入試に合格することが必要であり、法科大学院入試を受けるためには4年制大学を卒業していることが前提条件です。
弁護士を目指す場合、司法試験の受験資格を得るまでに多大な努力が必要ですので、そういった意味でも、司法書士を目指すほうがやさしいのは間違いないでしょう。
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司法書士と弁護士の学校の違い
- 司法書士:学歴要件がないため、必ず通わないといけない学校はない
- 弁護士:4年制大学に進学した後、法科大学院に進むことは必須条件
司法書士試験に学歴要件はなく、必ず通わないといけない学校もありません。
ただ、試験の難易度が高いことや、法律知識が問われることを勘案すると、大学の法学部に進学することが望ましいといわれます。
大学に加えて、民間の資格専門学校や予備校に通って「ダブルスクール」で合格を目指す人も大勢います。
これに対し、弁護士になるためには、4年制大学に進学した後、法科大学院にまで進むことは必須条件です。
法学部でなくても構いませんが、法学部を卒業していると、ほかの学部卒業生よりも法科大学院での勉強期間が1年間短くて済むメリットがあります。
弁護士への志望が固まっているなら、法学部に進学したほうがよいでしょう。
学費面については、大学院まで進学しなければならない関係上、弁護士を目指すほうが司法書士よりも多くかかるとみておくべきです。
司法書士と弁護士の給料の違い
- 司法書士:年収250万円~400万円・独立の場合は年収1000万円
- 弁護士:年収800万円~1000万円・独立の場合は年収約1400万円前後
司法書士事務所や法律事務所に勤務しているケースを比較すると、司法書士の年収は250万円~400万円、弁護士の年収は800万円~1000万円とされており、両者には数倍もの開きがあります。
勤務司法書士については、いずれ独立するための修業期間であるとみなされることもあって、平均的なサラリーマン以下の収入しか得られないケースも多いようです。
独立開業した場合を比較しても、弁護士の平均年収が約1400万円前後とされているのに対し、司法書士で年収1000万円を超えている人は多くありません。
開業弁護士のなかには、複数の大企業と顧問契約を結び、年収数千万円~1億円という高収入を得ている人もいますが、司法書士で同等の収入を得ることはほとんど不可能といえます。
ただ、司法書士・弁護士ともに実力主義の世界であり、どちらの資格を持っていたとしても、それだけで収入が保証されるわけではありません。
十分に案件を獲得できるだけの営業力がなければ、食べていくのがやっとという可能性もありますし、生活さえままならず、廃業してしまうケースもあります。
司法書士と弁護士はどっちがおすすめ?
どちらも法律を取り扱う専門資格であり、制度上は弁護士業務のなかに司法書士業務があるという位置づけですが、実際には、司法書士と弁護士の業務はある程度棲み分けがなされています。
法務局への登記手続きや供託業務など、司法書士が取り扱える分野を弁護士が行うことは基本的になく、弁護士は司法書士にはできない法律相談や金額の大きな民事事件、刑事事件などを手掛けます。
資格取得に至る道のりが大きく異なるため、どちらの資格がおすすめかは一概にはいえませんが、法律全般を広く取り扱いたいなら弁護士が、登記や相続などの専門家になりたいなら司法書士がおすすめです。
ただ、どちらの資格を目指すにしても、資格取得までには長期間にわたる勉強が必要ですので途中で挫折してしまわないためにも、志望動機は自分のなかで明確にしておいたほうがよいでしょう。
また、近年は司法書士法の改正によって、司法書士業務が弁護士業務にどんどん近づきつつありますので、将来的には両者の垣根はより曖昧になっていくかもしれません。
司法書士と弁護士の違いのまとめ
司法書士と弁護士はどちらも「法」を扱いますが、司法書士業務のすべては弁護士業務に内包されているといえます。
資格取得方法には違いがあり、司法書士は学歴が関係なく誰でも受験で、裁判所事務官や検察事務官を10年以上勤めると、試験を受けずに司法書士資格が得られます。
対して、弁護士は4年制大学に進学した後、法科大学院にまで進むことが必須条件です。
試験の難易度に関しては、法科大学院で数年間にわたって法律の勉強を行ってきた学生だけが受ける司法試験のほうが、司法書士試験よりもはるかに難しいといえるでしょう。
開業弁護士のなかには、複数の大企業と顧問契約を結び年収数千万円~1億円という高収入を得ている人もいます。
一方、司法書士が独立した場合は年収1000万円収入ほどの収入で、弁護士と同じ収入を得ることは難しいとされています。
ただし、司法書士・弁護士ともに実力が重視されるため、どちらの資格を取得したとしても、それだけで高収入が得られるとは限りません。